相棒の放浪騎士:氷と炎のパコられふたりたび 作:ハンノーナシ
アレンはヴズルィーフを正面に見据え、言葉を放つ。
確かな意思と決意の交じった言葉で……ヴズルィーフを説得しようとしていた。
「君は、私は処刑人として産まれた。神として、天罰を与える物として。けれど、人間は君の予想以上に愚かだった……」
「うん、そうだね……人間は愚かで下等な生き物だった。争いを繰り返して、傲慢な罪を犯し続ける。アタシはそんな人間に呆れたの」
「でも……君はとある人間の女の子に出会った。その女の子の優しさと……人間性に、君は人の可能性を見たんだ……」
「けれど、その子も人間に殺された。神に不当に近寄った罰としてね」
アレンはヴズルィーフにしかわからない過去を語り続ける。
ヴズルィーフと共鳴し、融合しかけた事によって……ヴズルィーフとしての記憶を取り戻した様だった。
「でも、君は全ての人間を罰する事はしなかった。人間の可能性を信じて……けれど、人間は罰を恐れ君に刃を突き刺し封印した」
「だから、今再誕し……愚かな人間を滅ぼす事に決めたの」
「でも……君は、私だ。私として生きて、何年も過ごして……現代の人間を見て、躊躇が生まれているんだろう?」
そう言われ、ヴズルィーフは俯く。
ケイシー、メギラス……騎士養成学校の同級生、先生、白光騎士団の皆。
産まれた当初は……ヴズルィーフ様の再誕により愚かな人間をもう一度焼き付くし、産まれ直させると言う神頼りで無知蒙昧な宗教の人間ばかりだった。
しかし成長していくにつれ、世界を見る。
そこには、あの時出会った少女の様な……優しくも厳しく、しかしながら暖かい人間の姿があった。
「だから……私と一緒に、また世界を見ないかい?相棒のケイシーも一緒さ、人間を滅ぼすのはまた後にしようよ。きっとこれからは楽しい事も辛い事も……ちょっとエッチな事も経験して、学べる事がある筈だから」
「……そうだね、でも……アタシが居なければ、誰が人間を裁くの?」
「それは……人間さ。神頼りの人間は今は少ないんだ、私達は運悪く神頼りの人間達の所に産まれてしまったけど……今は確実に、目の前を見て自分の力で歩んでいる人間達がいる」
「そっか。なら……アタシは、お役御免か……はは!」
ヴズルィーフは笑顔を見せると、ゆっくりとアレンの元に歩いて行く。
アレンに手を差し伸べると、ゆっくりと力を注ぎ込んでいく。
魂も、存在も。
しかし、アレンはその力を受け取らない。
「いや、私の中に戻らなくてもいいんだ……ヴズルィーフは、神の君は君として……私は人間の私として、共に歩むんだ。君の失ってしまった神としての存在意義は、私達と一緒に探そうよ」
そう言われ、はっと目の前が明るくなる感覚に陥るヴズルィーフ。
自分の存在意義は人を罰する事のみだと思っていた彼女には、その言葉は甘く……切ない物だった。
「本当に、人間のアタシはお人好しに産まれたね……でも、良いよ。その提案、乗ってあげるよ」
ヴズルィーフは部屋に蔓延している炎を消すと、ゆっくりと息をする。
今を生きている感覚が、確かにそこにはあった。
「話は終わったか……?」
「全く、迷惑をかけおって……だが、久しぶりの強者との戦いに胸が踊った。感謝するぞ」
火の粉まみれになった二人が、アレンとヴズルィーフを呆れながら……笑い、見つめていた。
その二人にアレンとヴズルィーフはそれを笑顔で返すと、二人に近寄る。
「立てる?……ごめんね、相棒」
「立てる、気にするな……ヴィズ」
「ヴィズって呼んでって言ったの、覚えてくれてるんだ……嬉しい」
ヴズルィーフ……ヴィズは嬉しそうに手を口に当てふふ、と微笑む。
「メギラスさん、本当にお疲れ……宿屋に着いたらゆっくり休もうよ」
「特に疲れてはおらん、三日三晩戦い続けた時よりか幾分はマシじゃ」
メギラスはそう言うが、確かに疲れは溜まっている様で……ふぅ、と溜息を吐いている。
アレンは自分のせいで人に迷惑をかける事には慣れていなかったが……周りには、優しい者ばかり。
自分は恵まれていると、確かに実感した。
「それで……私もこう呼ぼっか、ヴィズ。まずは……魔力を封印しないとね」
「どうして?別に力はあっても困らないでしょ?」
「神そのもののオーラが出過ぎている。人前に出る時に威圧感と畏怖で人が倒れるかもしれん……」
「じゃあ、封印しといた方がいいか。でもアタシ、封印魔法なんて知らないけど……あ、そっか。こういう時はいつも通りケイシーがやってくれるんだったね?」
「やはり、お前は……アレンだな……」
「やっと認めてくれた?」
四人は地下室で、先程まで死闘を繰り広げていたとは思えない程呑気に……そして、和気あいあいと会話を続ける。
魔力の封印が完了し、四人は外に出る。
ケイドを待たせ過ぎている。
「……ケイドって子、可愛いよね……♡アタシ、好みだなぁ……♡」
「それもわかるのかい……♡やっぱり、君は私だね……♡」
二人は横目で呆れた様にヴィズとアレンを見つめる。
地上に出ると……ケイドが泣きそうな顔で三角座りで蹲っていた。
ケイシーが声をかけると、ケイドはぶわっと泣き出し……ケイシーに抱き着いた。
「姉さん、心配かけないでよ〜……も〜……!」
「ケイド……すまなかったな」
しんみりとした空気が二人に流れる中……ヴィズとアレンは興奮と母性に満ちた顔でケイドに近寄っていた。
「ケイドくん♡アレンお姉ちゃんだよ〜♡」
「ケイド♡初めまして、だね♡ヴィズお姉ちゃんだよ♡」
「阿呆が増えたの……」
「うわぁ〜……アレンさんが2人になってる〜……?幻覚〜……?」
うわぁと言われ心に矢が刺さった様に二人は白目を向く。
やはり邪神と人間だが……確実に同じ人物の様だ。
五人の大所帯は和気あいあいと宿屋に向かうと、チェックインを済ませ部屋に入る。
五人部屋なんて物は無かったので、二人部屋に行く事になったが……。
「ケイドくん、アレンお姉ちゃんと一緒に寝ようか♡ケイシーとも寝たいけど……私は分裂出来ないし……」
「アタシもケイドと一緒に寝るから、メギラスと相棒でよろしくね♡」
「なんで僕の選べる選択肢が無いのかな〜……?」
ケイドはアレンとヴィズにむぎゅむぎゅと挟まれ、ベッドに押し倒されていた。
ケイシーは凍てつくような冷ややかな目でアレンとヴィズを見つめる。
「ケイシーの本気の軽蔑の目線だ……ご、ごめん……」
「実の姉の力は流石に強すぎる……敵わないかも……」
二人はそそくさとケイドから離れると、ケイシーはケイドを抱き締めベッドに入る。
ケイドは自分に選択肢が無い事に絶望しながら虚空を見つめていた。
メギラスは三人を呆れた目で見ながら、物思いに耽っていた。
……この後の夜に待つ惨状を、ケイドは知らない。
「ねぇ、アレン……ケイドに魅了魔法と興奮魔法をかけて、エッチな気分にさせない……?♡アタシ達で気持ち良くしてあげようよ……♡」
「名案、と言わせて貰うよ……♡」
次はケイドくん夜這い回よ!!!!