相棒の放浪騎士:氷と炎のパコられふたりたび 作:ハンノーナシ
「ふぅむ……欲望、欲望……」
ヴィズは頬杖を着きながらメギラスの新設した酒場のテーブルで考え事をしていた。
メギラスはその間もせっせこせっせこ働いている。
時折、赤面しながら母乳を出している姿に当初は困惑したものの……客と一緒に上の階に上がって行った時は『あ、そういう感じねなるほどなるほど』と納得した物である。
「人間の欲望って言っても、多種多様だしなぁ……アタシは可愛いオトコのコとか好きだけどぉ……男がそのパターンってそうそう無いよねぇ」
「独り言が大きいぞ、ヴィズ。全く、ケイシーは今頃何をしておるのか……」
欲望、欲望、欲望。
そんな事をぽつりと呟きながら、頭を人差し指でとんとんと叩いていると……少し昔の記憶が蘇る。
昔、とある港町に新設された巨大カジノ施設は沢山の人間の欲望を集めていた。
金、背徳、豪遊……。
「……カジノ?」
その一言を呟き、目をぱちくりと開くと……テーブルをドン!と叩き立ち上がる。
テーブルに乗ったワインがこぼれかけていたが、ぐらぐらと揺れた後体制を立て直した。
「魔王ちゃんちょっと借りるね〜!」
「おわわ!!吾輩を抱えるでな〜い!!!」
メギラスはこの街と隣接する、広大な空き地に足を運ぶ。
ここが予定地としては……相応しいだろう。
「でも、もうちょっと足りないなぁ……ねね、魔王ちゃん。空間を広げるとか、出来たりしない?」
「……空間の広さをねじ曲げる事なら可能だが……」
「なら、それお願い!ここをすーーーんごい大きくして!」
魔王は渋々、と言った顔で掌をくるりと回す。
すると……辺りの空気が歪み初め、気が付けば広大な土地は更に広く。
更に街が一つ新設出来そうな程の広さの空間が確保出来た。
「せっかくなら、建物は金ピカでド派手でおっきい方が欲求を刺激されるよね〜♪魔王ちゃん、カジノって見た事ある?」
「そ・う・い・え・ば……魔界で昔作られておったなぁ……。それをある程度再現するのは可能だぞ!」
魔王は行動は早くした方が良い、と銘打つと……中央に大掛かりな魔法陣を描き始める。
「こういうのは、召喚形式でやった方がある程度上手く行くのだ……」
「それ、アポゼリュクス召喚魔法陣形式?」
「そうだ、手軽さを犠牲に大掛かりな召喚を行える奴だな」
……なんだかよくわからない話である。
数十分後……地に魔法陣を書き終え、魔法陣から少し離れると魔王は両手を掲げる。
すると、掌が青色に光り始め……地の底から何かがせり上がってくる。
目に悪い程眩しいライトが何十、何百と取り付けられ……建物は黄金に。
大きな円形に象られ天井は大きく穴が空いているが、魔法バリアで雨の対策もされている。
入口は街路樹で彩られ、暗い夜空を眩しい光が貫く。
「うわぁ……!」
「これ程大掛かりな施設だ、お前ら5人程度居たとしても手が回らんだろうしなぁ……そうだ、吾輩の部下を……」
魔王は謎のタブレットの様な物を何回かタップすると、召喚陣が魔王の横に現れる。
そこから緑色の髪をした褐色の角を生やした女性が現れる。
「おぉ、ハーレーが出たぞ」
「……急に呼び出されたと思ったら……魔王様、勝手にどこ行ってたのって!というか、これ……カジノ?なっつかしいなぁ……」
「お前の知り合いの同僚とかを何百人規模程度呼んでおいてくれ、お前らはこれから、この街で働いて貰うぞ」
「はぁ?!……もう、勝手なんだからぁ……仕方無い、ちょっと総合連絡窓に書き込んどきますって……」
──────……
「内装を完璧だね〜!アタシの想像通りのカジノかもっ!」
アレンは魔族の男や女達が配備されたカジノ内を歩き回る。
カジノ内は煌びやかな赤・黒・金色が主体の色構成になっている。
これは成金達も唸る、立派なカジノだろう。
エレベーターで階層を移動する形式になっている様で、魔族の技術力にはアレンは感心するばかりだった。
「何階層かに別れて、金額みたいな物が変化しておったのを思い出してな!高階層な程、リスクは高いが……得るリターンも大きいという感じだったぞ!」
「チップ、だよね!チップもちゃんと千……いや、億は作ってもらわなきゃ!」
「……吾輩だけ重労働なのは、変わらんなぁ……」
魔王は涙をちょいちょいと流しながら、魔族達に服を着せていく。
女魔族には典型的なバニースーツ、男には襟の立てられたスーツ。
しばらくすると……騒ぎを聞きつけたのか、いつもの残り四人がそそくさと現れた。
──────……
「ほう、随分と目が痛いが……立派な名物になりそうな物を作り上げたのう」
「……ギャンブルは、欲望と言う不安定な何かを象徴する物だ。この歓楽街には、丁度良いだろうな」
「ヴィズ!ナイスアイデア、だね。カジノなんて人生で見た事ないけど……ここまで煌びやかで豪華な物だったなんてね」
「カジノかぁ〜……お金持ちの人が寄るには、ピッタリかもね〜」
四人はカジノに感心し……カジノ内でのゲームやスロットを確認して回っていた。
少しだけチップを借りてスロットを回して、ろくな当たりが無かったのは別の話。
チップの交換レートを決め、景品や金貨交換の場所を設け……。
魔王の情報網を駆使し、王都全体のギルドや街中に宣伝チラシを貼り付け……二日程度。
荒れ果てた街に不相応なまでの巨大なカジノは、成金達の注目の的となっていた。
ゴロツキ達もカジノになけなしの金で参戦し、はした金で勝ちを掴み成功を収めた物や、あえなくわかり果てた失敗をする物も居た。
五人と魔王は暫く、カジノの手伝いをする事にした様だった。
メギラスはギルドに書いていた従業員募集が上手く言った様で、しばらく切り盛りから離れられる様だった。
しかしメギラスの母乳が看板メニューでもある為か、しばらくは不評が続いていたのも別の話。
五人はカジノオーナーや土地の主、領主である者というのを表す為……一風変わった服装にする事にした様だった。
一風変わった服装と言っても……薄い本からの得た知識である服装という時点で、察しは着くが。
魔王がいつもの服装変更ビームを五人に放ち、いつも通り煙に包まれ、現れた姿は……。
今回は珍しく、全員着させられる物がなんとなく把握出来ていた様で……何気にノリノリだった。
恥ずかしがっているのはケイドのみである。
「逆バニー、か」
「ケイシーはこういう男が好きな世俗的な物、案外知ってるよね〜」
「スースーするよ〜……も〜……」
各々服装に対してコメントを残していると……大量のチップが落ちる音が聞こえ始める。
どうやら『ジャックポット』とやらが出た様だった。
「店舗も早くも大赤字ってカンジ?!」
「建設費も何も無いじゃろう……赤字というより、無から生み出した有と言った感じじゃろうな……」
「というか、ジャックポットのお客様には……特別メニュー、だったっけ?♡」
アレンがそう言うと、全員が顔を見合わせる。
ケイドのみ『ほんとにやるの?!』と言った顔で四人を見つめていた。
ジャックポット限定のメニューを決める、と言った荒唐無稽な提案をした本人である魔王はぽけーっとした顔で五人を見つめていた。
「チップを合計、金貨500枚以上の価値になるまで集めたお客様は特別な賭けが出来る特殊階層にご案内と……♡」
「オーナー直々に、お客様に感謝の奉仕活動だ……♡貴方をVIPルームに案内する……♡」
「おおっ、なんだねなんだね……♡下品な乳ぶら下げた女達が私の元に……♡」
……一体、何が起こるのであろうか。