相棒の放浪騎士:氷と炎のパコられふたりたび 作:ハンノーナシ
すまねぇ、みんなっ……こんなはずじゃなかったんだっ……!
久しぶりの校舎、だね。
ケイシーとアレン達は宿屋の経営の手伝いをしてくれる者達が現れると、経営方針や様々な作業のやり方を教え……住居へと帰っていく。
ケイシーの要望で、昔の様な少し狭いが……居心地の良い住まいになっている。
ケイシーが家のポストに、一通の手紙が入っている事を発見すると……手紙を取り出す。
「それ、綺麗な紙だね……良い育ちの人の所からかな?」
「蝋で封がされている……家に入ったら、開けてみる」
ケイシーとアレンは手紙の内容をウキウキと楽しみにしていた。
ケイドやメギラス、ヴィズや魔王は遅れて家へと帰って来ていた。
────
「さて、開けてみるか……」
「一体どんな人からの手紙だろうね?クレームとかだったらどうする……?」
ぱりっと蝋を割り……ぺりぺり、と封を開ける。
中にある手紙を取り出し、広げる。
中の手紙は……癖のある達筆だが、少し硬い文字で書かれていた。
────
『ミリスから愛するケイシーとアレンに向けて:久しぶりだね、ケイシー、アレン。君達が今、街を作っているという噂を聞いて久しぶりに手紙を書いているよ。あまり良い気分では無いだろう、もう一度騎士である私の名前を聞くのは』
『君と一緒に白光騎士団を抜けたアレンも一緒に居るんだろう。書いていても懐かしい響きだ。君達を生徒として剣を教えていた毎日を思い出すよ。そうだ、本題に入らなければ』
『君達を近年新校舎が設立された騎士養成学校、ネリアに招待したい。しばらくネリアに留まり、先生として新たな騎士の卵達に暖かい孵化の風を吹かせて欲しい。残念ながら今の騎士達は、あまり誰かを守る為に、等と言う理想を掲げてはいない』
『私利私欲、親の強制力。そんな物を生徒達を支配している。だからこそ、君達の様な過去の教育を受けた騎士が必要だ。誰かを守る為に剣を振るう、誇りを持った騎士達が』
『住所は昔と変わらない、王都南部のモーダス街。昔と比べて、随分と大きくなったけどね。きっと人徳のある君の事だ、仲間も増えただろう。その仲間と共に新たな先生として生徒達に教えを授けて欲しい。色良い返事を期待して待っているよ。ミリスより』
『PS.メギラスさんも君達といると聞いた、彼女は騎士を直々に指揮、修練を与えていたと言う話がある。きっとしばらくの間、いや、少しの間でも先生になってくれれば、より良い影響が生まれるだろう』
────……
この手紙を読み終わった瞬間、ケイシーは……懐かしさからの反射なのか。
すぐさま言葉を発していた。
「……行くぞ、モーダスに」
「うん、ケイシーはミリス先生の事、好きだったからね……そう言うと思った!」
「モーダスか、手紙の通り……最近校舎が新校舎になり、規模や収容人数も大幅に増えたからのう。騎士の名門として、名高い評価を受けている」
「あはは〜……僕もその学校、行く予定だったけど……家、抜け出してきちゃったからな〜……」
「なぬ、吾輩は置いてけぼりか?」
ポテトチップスを貪っていた魔王が声を上げる。
残念ながら、その通りである。
「お前は……この街を守ってくれ」
「そう言うと思っていた、任せておけ!吾輩がしっかりこの街の安全を守り抜いてやるぞ!」
「魔王ちゃんも馴染んだねぇ〜」
ヴィズがうんうん、と頭を振る。
ケイシーは早速、明日の予定を立て始めた。
馬車の停留所に朝早くから乗り込み、モーダスへと向かう。
先生になるという判断は着いてからにする、と。
「今は……彼の顔が、見たい」
──────……
翌日、早朝。
五人は重量オーバーを回避する為、分けて馬車に乗っていた。
アレンとケイシー、メギラスが同じ馬車に。
「懐かしいね、ケイシー!あの頃は木造校舎だったよね?」
「あぁ、部活動も、あったな……」
「部活かぁ……騎士にしても、色々派閥があったからね……部活毎の模擬戦とか、色々あったよね」
「我も昔一日だけ行った事がある、新校舎になってから行っては居ないが……生徒も教師も、教える、教えられるモチベーションを持っていたのう」
ケイシーとアレンは思い出話に耽っていた。
夜に後者の寮から抜け出して、近くの禁域の森に遊びに行った事。
その後、行方不明になった二人を泣きながらミリス先生が探し……見つかった二人はしっぽり怒られた後抱き締められたこと。
先生と生徒の模擬戦で、ミリス先生にあっけなく敗北したケイシーが……ミリス先生に剣の教えを乞う機会に恵まれたこと。
口を開けば、ケイシーはミリスの事ばかり。
どれだけ彼に愛着を持っているのか……それは甚だ不明である。
「……私が、親に無理に剣を強いられているのを見つけたミリス先生は、私の親に直接直談判してくれたんだ。その時のミリス先生の決死の顔が、今でも焼き付いて離れない……」
「脳を焼かれちゃったって奴だ!」
そんな事を話していると、がたっ。
と言う音を鳴らし、馬車が止まる。
どうやらモーダスに着いたようだ。
白いレンガ造りの青と白を基調とした街並み。
長い長い坂道の街並みの先に、大きな校舎が見える。
ケイシーとアレンは懐かしさで急いで走り出す。
メギラス、ヴィズ、ケイドはその後ろで坂道をゆったり歩いていた。
──────……
「わぁ……すっごく、綺麗になったね……」
青と白を基調とした、左右にも大きな第二、第三校舎が立てられ……本校舎は更に大きく。
大きな時計が目印の、立派な校舎に生まれ変わっていた。
辺りでは木が植えられ、緑が豊かな芝生に……芝生の中に張り巡らされた道の中央には大きな噴水が。
昔の狭く古い校舎からかなり変わっていた。
「誰、あれ?」
「あの二人、白光騎士団のケイシーさんとアレンさんだ!!!それに……一位の!!!メギラスさんも!!」
ドタドタ、と三人衆と中の一人の女生徒が走り込んでくる。
水色の髪をショートヘアにした、活発な雰囲気を持つ少女。
ぱっちりと開いた目には希望が満ちていた。
「あ、あの……サインとか、ありますかっ!?」
「……除名された私にサインなど必要ないと思っていて、作らなかったが……」
「もっ、ケイシーは!ちょっと待ってね〜?こういう時は、新しいサインを作ってあげた方が特別感があって嬉しいんだよ!」
アレンは黒いマークペンを取り出すと、学生の少女のメモ帳に書き込んでいく。
やけにスタイリッシュで何書いているか正直よくわからんサインを書き込むと、ケイシーにペンを渡す。
ケイシーは……サインという文化にあまり触れなかったせいか。
『ケイシー』と馬鹿正直に書いていた。
メギラスは女生徒のメモ帳の端に小さく名前を書いた。
メギラスはサイン文化に慣れている様だった。
「やっ…………たぁ〜!!!家宝にします、家宝にしますっ!!!」
「カーリー、遅れちゃうよ!そ、その人達、偉い立場の人だからっ……」
女生徒は跳ねて喜びながら、勢いよく頭を下げ……他の女生徒と共に校舎の方へと走っていく。
その騒ぎを聞きつけた先生が、走り出してくる。
「ちょ、ちょっと!この校舎は関係者以外立ち入り禁止で……」
「いや、その人達は関係者さ。これから、関係者になってくれるかもしれない……と言った方が正しいかもしれないね」
奥から、老けているが若々しい雰囲気を両立する……茶髪の男がゆっくりと現れた。
タレ目の下に着いた目の隈が印象的だ。
その姿を見た瞬間、ケイシーは目を輝かせ……その男に歩み寄る。
「ミリス、先生……その、隈は……」
「久しぶりだね、ケイシー、アレン……それに、お仲間さん達も連れて来てくれたのかい?……最近忙しいだけさ、気にしないで」
「先生〜!!!全然老けてませんね!!」
二人は嬉しそうにミリスを取り囲む。
ミリスは恥ずかしそうに『へへ……』と言った顔で自分の頭を撫でている。
「とりあえず、思い出話とか……諸々の先生になって欲しい事とかに関しての詳しい話は校舎内で話そう。お客さんの対応室に行こうか」
ケイシーとアレン、そして一行はミリスに着いて行く。
これからどんな事が繰り広げられるのか……見ものである。