※この作品はR-18です。

相棒の放浪騎士:氷と炎のパコられふたりたび   作:ハンノーナシ

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模擬戦か……血が騒いで来るな。

 

ケイシーとアレンとメギラスは、先に試合場で行われていた模擬戦の様子を見ていた。

先生達はボンボンである騎士候補生達をヨイショする為か、あえて負けていたり……手加減ばかりしている様だった。

メギラスはその様子に腸を煮えくり返している様で……目を鋭く尖らせていた。

 

「……今の学校は腐敗している。騎士としてではなく、名声や立場を求めている物ばかりだ。この光景だって、そうだよ。クレームや、援助金が無くなる事を恐れ……責任から逃れようとする、指導者としてあるまじき行為が行われている」

 

ミリスはまたももの憂げな表情を見せる。

ケイシーは心配そうに、その横顔を見つめ……一つ、決心した様だ。

確実に、現実を理解させる。

その覚悟を。

 

──────……

 

「さぁ、次の相手は誰ですか〜いっと!」

 

ケイシー、アレン、そしてメギラス……三人はボンボンの騎士候補生三人の前に立ちはだかる。

ケイシーは剣を掲げると……ゆっくりと下ろし、剣先を候補生に据え。

……横へ払う。

 

「……抑えていた能力を解除するぞ、アレン、メギラス」

 

「勿論」

 

「既にわかっている」

 

抑えていた力を、解除するや否や……今まで押さえ付けられていた力の本流が抑え切れずケイシー達から溢れ出す。

その禍々しいまでの気は、戦う前から力の差を思い知らせていた筈だが。

 

「……実力が足りないのか、気が見えない様だな」

 

「……余裕綽々って感じの態度だね」

 

「それとも、気が見えているにも関わらず実力の差を把握出来ていないのか」

 

三人は現状に呆れ果てた様で……一切の容赦をしないと決めた。

模擬戦が始まると、大将を選び……メギラスが今回の大将となった。

アレン、ケイシー、メギラスの順で戦う様だ。

 

「わたくしにかかれば、元白光騎士団の者と言えど楽勝でしてよ!」

 

髪を縦ロールに巻いた、金髪の女生徒がくるりと回りながらそう言い放つ。

はは……と呆れた笑いが飛び出るアレンだった。

 

「ルールは単純、お互いに設定され体力のバリアを攻撃で削り合う。その攻撃の威力や体の強さでバリアの耐久力、削れ方が決まる」

 

ミリスはアレンとケイシーとメギラスにそう説明していた。

ならば……結末は明白だろう。

 

「試合、開始!」

 

女生徒は勢い良く走り出すと、アレンに剣を振りかぶる。

 

(ふふん、先程の様に楽しょ……)

 

……アレンは女生徒の剣を掌で受け止めると……溶岩の様な灼熱の炎を剣に浴びせる。

剣は蕩け出し、剣先から徐々に溶け落ちていく。

 

「わ、わたくしの、剣……」

 

「剣を振るうなら、傷を負い、刃こぼれ程度する覚悟じゃなきゃ。その程度の覚悟も無くずっと、綺麗なままでいたいなら……」

 

溶け出した剣を見て、意気消沈している女生徒に……アレンは片手で剣を大きく振りかぶる。

片手剣の筈が……その剣は炎を纏い、特大剣の様な大きさになっていく。

 

「……親元で、剣の代わりにその傲慢さを振るうといい」

 

女生徒を叩き潰す様に剣を下に振るうと……灼熱の温度と共に、女生徒の真隣で何メートルも先まで燃え盛る跡が着く。

あえて、外した様だ。

 

「降参って、ルールにあるんでしたっけ?」

 

アレンは後ろに振り向き、ミリスに問う。

 

「……残念ながら、無いね」

 

「なら……」

 

アレンは剣の鞘で女生徒を頭をとん、と叩く。

すると……女生徒がいる地面に大きな穴の跡が着き、バリアが掻き消える。

 

「しょ、勝負あり……」

 

女生徒は呆けてしまい、上の空。

残りの大将と中堅に引き摺られ、自陣へと戻っていく。

 

「次は……私か」

 

ケイシーは研いでいた剣を鞘に収め、歩き始める。

ケイシーの通った道の足元には……霜が出来ていた。

 

「……僕様の相手になるんだから、気持ち良く勝たせろよな!」

 

「……先程の光景を見て、言えるその威勢と度胸は……認められるべきだろ」

 

試合開始の合図が鳴ると、ケイシーはその場を動かない。

鞘に手を置いたまま……一歩も。

 

「な、なんだよ、気持ち悪いな……クッソ、舐めるなよ!!」

 

ケイシーに向かい、剣を振るうと……生徒の剣は、空気に跳ね返された様な感覚に陥る。

ケイシーは何もしていない、何も動いていないのに……ケイシーに剣を振るうと、弾き返される。

バリアの硬度の問題でも無さそうだが。

 

──

 

「ケイシー、あの頃から技術を磨いたみたいだね……」

 

「あえて攻撃しないのは、情けなのかな……」

 

「抜刀の瞬間さえ、見えぬ速度か。……やはり、諸々の速度だけで言えば我を遥かに上回っておるな、ケイシーは」

 

──

 

「クソッ、クソッ……!な、なんで当たんないんだよっ……!」

 

「……」

 

ケイシーは何も発さない、ただ黙っているだけ。

生徒は段々と息を切らし始め……剣を振る速度も段々と落ちて来た。

底の見えぬ恐怖、絶望……近い筈なのに剣の届かない、無意識の遠さ。

 

生徒は諦め、剣を下ろす……その瞬間。

ケイシーは剣を抜く、研ぎ澄まされた刃が閃光の星の様に煌めくと。

──一閃。

ケイシーは生徒をすり抜けた様に、向こう側に立っていた。

生徒とケイシーの間に、一本の……細い銀色の線が切られていた。

 

生徒が呼吸をした、瞬間。

バリアはとてつもない音を立て、割れる。

生徒はその衝撃で倒れ、気絶する。

 

「……これで理解しただろう」

 

ケイシーはその一言を残すと、試合場から姿を消した。

 

────……

 

「さて、我の番か」

 

メギラスは高みの見物の様に座っていた椅子から降りると……紫の雷で形作られた薙刀を手に。

 

「俺の相手にゃ不足しねぇな……けっ、アイツら……ろくに役にも立たねぇで」

 

生徒は悪態を着きながら、剣を構える。

その構え方は口調とは程遠く、整っており……右足を軸に、左足を支えに。

剣を相手へと傾け、メギラスを見つめる。

その頬には汗が伝っていた。

 

「……貴様、気が見れる程度の才覚があるな。……けれど、まだ原石か」

 

試合開始の合図が鳴ると、お互い動かない。

お互いに、相手の行動を見てから動くタイプの様だった。

 

「……埒が明かねぇな、おい、アンタ。その薙刀、魔法で作ってんだろ?なら……俺も使っていいよな?」

 

生徒は人差し指の上で鋭利な水球を形作ると、メギラスに勢い良く投げつける。

メギラスはその動きを見た瞬間、生徒の目の前から姿を消す。

 

「……わぁってんだよ、そんくらい」

 

メギラスの動作を予測したのか、右腕と左腕の両腕でしっかりと剣を抑え……攻撃を抑える動作をする。

その予想は当たっていた様で、ぴたりとメギラスが現れた。

 

「……飛び出してくるのを殴る機械じゃねんだぞ、オイ」

 

「この程度は、予測出来るか。だが……受け切れまい」

 

メギラスの薙刀は、剣を伝い……雷を迸らせる。

生徒のバリアに直接雷の力が伝わり……徐々に削れていく。

 

「消耗戦術かよ……ダリィ。これがトップのやることか?」

 

「……手加減をしてやっていると言うに、生意気な童じゃ」

 

メギラスは……思わぬ原石の発掘に、心踊っていた。

生徒はバリアが徐々に削れていく状況に、僅かな焦りを覚えていた。

 

「なら……一発でかち割ってやる」

 

「ほう?我と正面から殴り合うと言うか」

 

生徒は先程のスタイルから一変し、堂々と正面から攻め込んでいく。

右から左に、斜め右から斜め左に振り下ろす。

メギラスは軽々とその攻撃を受け止めるが、生徒は諦める様子を見せない。

 

「温室育ちの童だと思っておったが……ふ、面白いの」

 

「余裕綽々かよ、ムカつくな……」

 

しかし、生徒のバリアはもはや薄く……消えかけていた。

伝達した雷がじわじわとバリアを蝕んでいたのを、無視出来なかった様だ。

生徒は膝をつき、染み渡る麻痺雷に抵抗する術を見いだせない。

 

「……まだ、本気の一割も出していないのに、終わりか?」

 

「テメェが手加減してるのは、理解してる……オーラ?みてぇなのがあの紹介の時より遥かにうっすいからな……」

 

……生徒はもう立ち上がれない、ただバリアが削れるのを待つのみ……そう思っていた時。

生徒の剣が、動く。

生徒の水の魔法が、剣を動かしていた。

 

「……ッ!」

 

バリアに、剣が触れ……メギラスのバリアが少し削られた。

 

「へっ……余裕こいてるから、こんな雑魚に一矢報いられんだよ……テメェは、調子こきすぎだ……」

 

メギラスの雷にバリアが削り切られ、生徒は倒れる。

メギラスは……自分を負かす事が出来るかもしれない、新たな強者の卵の登場に。

無意識に身を捩らせ、ゾクゾクとした感覚が体を支配していた。

 

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