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何もない空間が歪み、そこから一人の少女が姿を現す。
その手には銃が握られ、目的の部屋まで気配を消して接近する。
窓一つない部屋。こじんまりとした部屋で、あるのはソファとテレビのみ。
そして、ソファに座ってテレビの画面に映る映像を観賞する人物の姿がそこにいた。
少女は冷徹な目で狙いを定め、構えた銃のトリガーに指をかけた。
すると、テレビを鑑賞していた人物がそれに合わせて息を吐き、そして口を開いた。
「思っていた以上に遅かったですね。お陰でこうして鑑賞する時間ができたのですが」
テレビを鑑賞していた人物…コンコースはソファに凭れ掛かりながら、来訪者の顔を見ることなく喋り出す。
「それにしても不思議です。何故推理系の作品に登場する犯人は、態々探偵という不確定要素を排除せずに自由にするのでしょうか? 邪魔者は早急に取り除くべきだ。それが正しい行動だと私としては考えるのですが」
独り言とも言える発言の内容は、如何にも謎多き人物らしい台詞であった。
しかし、少女にとっては興味もない話題である為すぐに無視する旨を選択する事にした。
銃口をコンコースに向ける。その行為に対しコンコースは余裕すら感じさせる態度を見せる。
まるで脅威と思われていないかのようである。それが逆に不信感を煽ってしまう要因となった。
「貴方は私を殺せない。何故なら先生の居場所を知るのは私だけだから。そして此処に先生はいないのだから」
コンコースは振り向き、口端を釣り上げる。
「私は既に証明を終えた。故に、過程は必要としていない。私にとって、結果が全てなのだから」
どこまでも自信満々に言い放つ様に苛立ちを覚えるものの冷静さを保ち続けるよう努めなければならない。
少女は引き金にかかる指の力を僅かに強める。コンコースの言う通り、少女にはコンコースを殺害することはできないのだ。
「ご安心を。私は先生に危害を加えるつもりはありません。そういう契約です。そういう取引なのです。まあ、少しばかり遊ぶつもりですが。但し、これも契約に基づいた上でですから、問題ありません」
コンコースの言葉に、少女は眉間にシワを作る。
その契約の当事者が誰か、コンコースは語らないが大方予想はついている。
ゲヘナの風紀委員長、空崎 ヒナ。
ヒナであれば、先生の安全確保と引き換えに自身の身を差し出すのは容易に予想がつく。
何故、先生とヒナがコンコースの手に堕ちたか考えれば、概ね理解できる範疇にある。
空崎 ヒナという個で最強格の存在であろうとも、先生という存在が足枷となる。
キヴォトスの外から来た先生にとって銃弾一発ですら致命傷に至るのだから、幾ら彼女が強いと言えども守り切れるものではない。そして、先生を守ろうとしたならば、それが弱点になると判断するのは難しいことではなかったのだろう。
そして、先生は愚かではないが無茶を平然と実行する人物でもある。
ゲマトリアからの招待状、そんなものを放置しておく性格ではないことは周知の事実。
誘拐事件という名の罠で獲物が飛びつくのを待っていたのだろう。
その罠にはまってしまえば最後。逃げ道など皆無であり、捕虜となる運命しか用意されていない。
だが、コンコースの証明はそれで終わりではないのだろう。
コンコースが成したいことはもっと別の意味合いを持っていそうだが、その詳細については不明瞭かつ曖昧である以上憶測で推測するしかないのが現状である。
何を企んでいるのか察することすら難しい状況なのだ。
僅かな沈黙の後、テレビの画面に映し出されていた映像が切り替わり、エンドロールが流れ始める。
「……さて、時間潰しのつもりで流していた映像でしたが、分かり切った結末ほど退屈なものはない。あの映画で探偵を演じた人物は有名俳優でしたね。世間では評価されているかもしれませんが、個人的には駄作中の駄作ですよ」
映画評論家のような辛辣なコメントを述べつつ、『あれでは主人公側を盛り上げるために当て馬にされている犯人が可哀想でしょう』と補足して批評を終えた後、改めて少女の方へと視線を移した。
少女もまた銃を下げないままであることを確認してからゆっくりとした調子で語り始める。
「さて、それではどうしますか? 私は何をされようと口を割るつもりはありません。これは私の証明なのですから。私の存在定義の為なのですから」
「貴女に屈する事はありませんよ。砂狼 シロコさん。別の時間軸から流れ着いた客人である貴女に、我々の正統な権利を譲渡するつもりはないのです」
そう言って両手を広げ、撃てと言わんばかりに挑発する姿勢を示すのであった。
その姿に、別の時間軸から流れ着いたシロコは彼が白状する事はないと確信し、引き金を引いた。
数発の銃声音の後、ドサリと身体が地面に倒れる音が室内に響き、静寂を生み出した。
死んではいない。しかし、先生とヒナを傷付けた彼の行いは許せない行為だ。だが、それでコンコースを撃ち殺すことを先生は望まないだろう。
正確には、どんな理由であれ、シロコの手が汚れる事を望まないからと理解しているからこそ、シロコはコンコースに重傷を負わせるだけに留めたのである。
倒れ伏すコンコースを見下ろし、そのまま踵を返す。
この間にも、コンコースのシナリオ通りに事は進行しているのだろう。
早く二人を救出しなければ、手遅れになってしまう。
そんな焦燥感を持ちながら、シロコは空間に溶け込むように姿を消す。
その背中に向かって、コンコースが何やら呟いたが、シロコの耳には届かなかった。
「……フフッ、キヴォトスは広い。果たして、先生達を見つける事が出来るでしょうか?」
腹部には被弾した痕跡があり出血しているが、痛々しい損傷に対して苦悶の声一つ洩らしていない。いや、それ以上に、自身の目的が達成し、その結果を見る事が出来る安堵感から自然と笑みが零れ出ていた。
「既に私の計画の中に私は必要ない。それでも、それでも――」
ゆっくりと四肢を動かし、何とか体勢を変えて上半身を起こすことに成功するも、出血で視界が霞み、立ち上がることは叶わない。
「――証明は為されたのだ。彼女が…空崎 ヒナが私と契約した瞬間に、私の証明が……ふふっ……はっはっは」
コンコースは自らの血が飛び散ったカーペットの上で哄笑を上げながら、恍惚な表情を浮かべるのであった。
シロコにより、コンコースが重傷を負って再起不能となった後も、先生とヒナの境遇が変わる事はなかった。
変わり映えしない何もない部屋での生活。そしてコンコースが事前に用意していた『ゲーム』でヒナの尊厳を悉く踏みにじっていく。
再び部屋を訪れた傭兵と対峙する事となったヒナだが、その結末は一方的なものだった。傭兵は慣れた手付きでヒナを組み伏せ、馬乗りの状態で顔面を何度も殴打する。口内を切ったのか唇の端から流血しており、頬には腫れが出来てしまっている。
「がっ……あ"……ぐっ……!!」
抵抗しようと藻掻くも、髪を掴まれ、そのまま床に叩きつけられる。二度、三度と何度も後頭部を打ち付けられ、意識を失いかけたヒナは頭皮が千切れそうになる激痛によって覚醒してしまう。
「ご……ぶぇっ……!! おえ"え"え"え"ッ!?」
更に喉元を踏みつけられ、激しく噎せ返る。内臓を吐き出し兼ねない程の猛烈な嘔吐感に苛まれ、ヒナは舌を出して涙を流し、嘔吐を繰り返した。
傭兵はヒナの嘆きや悲鳴を聞いている様子はなく淡々と事務的に処置を行うかのように作業しているようにしか思えない。
反応が鈍くなればブーツを履いたままの脚で何度も顔を踏み付け、意識を奪いにかかる。
最早、『ゲーム』という名の拷問以外の形容しようがない。
血塗れになり、踏み潰されるたびに身体が痙攣し、目は虚空を見つめたまま焦点が合っていない。
そして、ようやく解放されても全身の筋肉が弛緩してしまい立てない程弱り果てたヒナを床へ投げ捨てる。
それも、先生の目の前、ガラスで阻まれ手が届かないギリギリの距離に向けて投擲されたのだ。
「――っ……ヒナっ!」
先生はただ、その凄惨な現場を見届ける事しか出来ないでいた。
うつ伏せで倒れ伏すヒナに、傭兵は頭を抑え付けた状態でポケットから針なしの注射器を取り出し、それを首筋に当て、注入した。
「が……ぁ……っ!?」
ヒナの体内を薬液がめぐっていく。コンコースが彼女と契約した際に提供した薬と同じものだ。先生と変わらぬ身体へ作り変える。ヒナにとっては苦痛を与えられる薬となる。
「っぐ……ぅっ……はぁ……っ!」
薬が浸透していくにつれ、ヒナの身体が震え出し、額から大量の汗が噴き出した。息遣いも浅く短くなっていき、全身を襲う疼痛の強さは尋常ではない程増幅され、耐え難い苦しみとなっていた。
「あっ……がっ……はっ……!!」
意識が飛びそうになるも、傭兵によって頭頂部を掴まれて吊し上げられ、強制的に覚醒させられてしまう。
そのまま、傭兵はヒナの腰を浮かせると、お尻にイチモツを押し当て、ゆっくりと沈め込めていく。
場所は本来生殖行為に使われる場所ではなく排泄器官の肛門だ。
異物が入り込む感覚もそうだが、それ以上に痛覚がヒナの神経を蝕んでいた。
「ぃあぁっ!!! あっ……っ!! くっ……!!」
初めは入口を押し拡げるだけでも相当な苦痛があったが、そこを越えてしまえば後は意外と簡単に入り込めるようになったのかズブズブと吸い込まれていった。勿論、快楽とは真逆方向にある刺激が与えられるわけで、ヒナにとってすれば拷問以上の責め苦だろう。
しかしそれでもまだ序の口であり本番はここから始まるのである。完全に入りきってから引き抜いて、また差し入れるピストン運動を開始された時には今までで一番大きな絶叫を上げて苦しんだ。
「あがっ!! いぎぃっ!? いっ、ひゃあっ!!」
腸内を掻き回される違和感、そして痛み。当然感じる筈もない性的快感など全く得られないどころか耐えがたくなるほどの苦しみで一杯であった。
涙をボロボロと流し、助けを求める眼差しを先生に向けるものの、どうすることもできない無力感から固まってしまう他に選択肢はない状態にあった。そんな先生の姿を見てヒナは自分を責める気持ちに駆られてしまう。
(全部、私が悪い。私が原因なんだ)
自分が弱かったせいだ。
自分が弱かったからこんな目に遭っている。
先生が巻き込まれたのも、全て私の責任なんだ。
悔恨に苛まれながらも、それでも現実は非情にも容赦なく残酷で過酷なものへ変わっていく。
傭兵は一定の速度で往復運動を行い、時折深く掘削したり角度を変えたりなどの工夫をしてくることもあり、その都度苦悶に満ちた呻吟の旋律が奏でられた。
「っ!? あ"っ!! あぐっ!! ああっ!!」
必死に歯を食いしばろうとするも、どうしても歯の根が合わなくなるくらい震えが止まらなくて口から涎や血を流す有様になってしまった。床に爪を立て、必死に耐え忍ぼうとするが無駄骨でしかないのであった。
下半身が焼けるようであり、燃え尽きそうであった。そして、腸内を抉る極太の竿によって刺激を受け続けた直腸粘膜は真っ赤に炎症し始め、内部組織も糜爛しているのであった。
激痛が断続的に走り、その都度悲鳴が出てしまう為口を塞ぐのも困難なのである。
「っぎぃ!! あっ! あぁっ!!」
それでもなんとか耐えようと努力している途中だったがついに限界を迎えてしまう瞬間が到来したようで急激に身体全体から力が抜けてしまった。脱力してしまったために臀部が落下してしまうも、ズルズルとイチモツが引き抜かれていく痛みは無くなったわけではない。
再び腰を鷲掴みにされ、そそり立ったイチモツを一気に根元まで打ち込めば、ヒナの身体が弓なりに大きく跳ね上がった。
バチュン!
勢い良く叩きつけられてしまい最奥部まで貫かれてしまった瞬間激しい閃光とともに何か大切なものが壊れてしまったのではないかと思われるほどの衝撃が全身隅々にまで及び、声にならない雄叫びを上げて悶絶していた。
ビクンビクンと大きく身体を揺らし続け、瞳孔は開いたまま天井の方へ向けられており焦点が定まっていない状態となっている。呼吸も乱れっぱなしであり、肩だけでなく胸全体を使った荒々しい息遣いをしている有様である。しかも顔色は明らかに青褪めており、冷や汗も滴るくらい浮き出ていた。
そこで傭兵は一度停止し、その様子を眺めた後、腰から手を離し、握り拳を作った。
そして……。
「おごぉっ!!?!」
ヒナの後頭部に拳を振り下ろし、そのまま床に顔面を叩きつけた。ゴツンッという鈍い音を奏で、ヒナの顔が沈む。更に何度も拳を振り下ろし、何度も何度も頭蓋骨を粉砕するかのように執拗に攻撃を加えていく。
「がっ……!」
「あぎぃ……っ!」
「ごぷっ……っ!」
殴打の度に血飛沫が舞い散り、髪の毛が絡みつく音が耳障りなほど響き渡る。何度目かの打撃を与えた所で、ピクピクと細かく痙攣をする程度の反応しか起こさなくなった。
意識を消失した様子で呼吸も浅かったが、それでも死にはしない。
痛覚は兎も角、身体はまだ、キヴォトスの基準なのだから。
何の反応も示さないヒナの身体を、傭兵は再び使い始める。
突き上げるたびに呼吸が乱れ、身体は前後に揺さぶられるだけの機械的な動きを繰り返す。
そして、傭兵の男根は急速に肥大化し、遂に臨界点を超えた時に、堰を切ったように膨大な量の精液が吹き出した。
ドクッドクッ、と脈動するペニスからは絶え間なく熱い滾りが次々に排出されていき、腸内が精液で満たされていく。
決して孕む事のない性欲の捌け口としての行為に、ヒナは身勝手に翻弄されるだけの人形の如く扱われたのだった。
しばらくして男の絶頂を迎えたペニスが引き抜かれると同時に勢いよく排出された白色の液体が溢れ出し床へ水溜まりを作っていった。それは彼女に対する侮辱であり汚辱そのものでもある証明でもあったわけだ。
そんな惨憺たる有り様になったにも拘らず当人は依然として意識朦朧の状態であり焦点の合わない虚ろな目つきで虚空を見据えていた。
あまりにも悲惨な光景。目を背けたくなる現実。
けれど、先生はそれを拒否することはできなかった。目を閉じ、耳を塞ぐことが可能でも五感を通じて情報が流れてくる以上遮蔽物にはならないからだ。
結局何も変えられない自分の無能さに打ち拉がれてしまい、拳を握り締め唇を噛み切ってしまうほど悔悟の感情を膨張させていく一方だった。
傭兵はヒナの身体を持ち上げ、二人を隔てる分厚いガラスに向けてヒナを放り投げる。衝撃音と共にガラスに身体を打ち付けるが、ヒナは反応を示さない。
その代わり、無残なヒナの身体がガラスに張り付く形になり、そのままズルズルと落下する。
剥き出しになった菊門からゴポゴポと精液が滴り落ちていく。
「ヒ……ナ……」
先生はそれを見て、只々呆然とすることしかできなかった。
「うっぅ……っ」
呻き声を上げながら、ただ見届ける事しか出来ない。それがどれほど辛いか想像するに易いというものだろう。特に大切な存在である生徒の醜態を目の当たりにして平静を装う方が不可能といってもいいほどだ。
涙腺は崩壊寸前。いつ崩れ落ちてしまってもおかしくはない状態なのである。
傭兵は二人の事を気にも留めず、そのまま退室する。
コンコースの声は聞こえない。
ゲームが終われば声が聞こえると思ったが、今日はそれがない。
だが、消灯と共に静寂に包まれれば、今日のゲームは終了したのだろう。
その事だけは理解できた。
一日が終わり、次の日が始まる。
そして、先生とヒナにとって最低最悪の連鎖が始まる事となるのだ。