※この作品はR-18です。

ソシャゲ書き散らし   作:半田花

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投稿遅れてすみませんでした


赫き鳥の籠、忘却の檻(ジューチャオ、オトギフロンティア)

 見渡す限りの緑、生命の息吹。その上空を、一筋の紅い流星が駆け抜ける。

 

「ん〜っ! 今日もいい天気! 風が気持ちいい〜!」

 

 背中の真紅の翼を大きく広げ、ジューチャオは風と遊んでいた。編み込まれた赤い髪が太陽の光を浴びてきらきらと輝く。彼女は「五獣」の一柱、南方を守護する朱雀の化身である。

 本来ならば畏怖されるべき神鳥の力を持っているはずだが、彼女の頭の中は、眼下に広がる景色への純粋な好奇心と、「今日は何を食べようかな」という悩みで占められていた。

 

「神農のじっちゃんから頼まれた時はどうしようかと思ったけど、ここ、いいところだよねぇ。人間たちもみんな優しいし!」

 

 彼女はくるりと空中で旋回すると、地上にある小さな集落を見下ろした。

 そこは、彼女が守護する信民たちが暮らす村だ。彼女が着任してからというもの、村人たちは彼女を熱烈に歓迎した。美味しい供物を捧げ、悩み事があれば相談し、彼女の「アホの子」ゆえの失敗も笑顔で許してくれた。

 

「みんなのために、あたしが頑張らなくちゃ! なにか困ってることはないかな〜?」

 

 彼女は急降下し、村の広場へと降り立つ。

 ふわり、と着地した瞬間、近くにいた数人の村人たちが駆け寄ってきた。みな、日焼けした肌に純朴そうな笑みを浮かべている。

 

「おお、ジューチャオ様! 今日も素晴らしい飛びっぷりでしたな」

「へへっ、そう? もっと褒めてもいいんだよ?」

 

 ジューチャオは胸を張り、得意げに笑った。その笑顔には一点の曇りもない。疑うことを知らない、無垢そのものの輝きだ。

 一人の村人が、申し訳無さそうに帽子を揉みながら声をかけた。

 

「実はな、ジューチャオ様。また森の奥の祠(ほこら)で妙な音がするんだ。オラたちじゃ怖くて近づけなくて……」

「えっ、また? まかせてよ! あたしが見てきてあげる!」

 

 彼女は即答した。

「また」と言われたことに、彼女は違和感を抱かなかった。

 先週も、先月も、同じような頼み事を聞いた気がする。けれど、一晩ぐっすり眠れば、細かいことは忘れてしまう。それが彼女の美点であり、そして、これから最大の呪いとなる性質だった。

 

「いつもすまねえな、ジューチャオ様。……へへ、お礼はたっぷりと用意してあるからよ」

「ほんと!? じゃあ、突撃ー!」

 

 元気よく飛び立つ彼女の背中を、村人たちは見送った。

 その目は、慈愛に満ちたものでも、感謝に満ちたものでもなかった。

 ねっとりとした欲望と、獲物が罠にかかったことを喜ぶ、嗜虐的な濁った色をしていた。

 

「……チョロいもんだな、あのμは」

「ああ。だが、今日は『特別』だ。いつもの杖の出力も上げてある」

「前回の記憶、少し残ってるみてぇだったからな。体が震えてやがった」

「なら、今日は徹底的に『教育』して、また真っ白に戻してやればいい。……俺たちの、可愛い肉便器様にな」

 

 村人たちは顔を見合わせ、下卑た笑い声を押し殺して森へと向かった。

 

 

 

 森の奥にある古い祠。そこは本来、神聖な場所であるはずだったが、異様な甘い香りが漂っていた。

 

「おっかしいなぁ……魔物なんていないみたいだけど?」

 

 ジューチャオは首を傾げた。周囲を警戒するが、鳥のさえずりさえ聞こえない静寂が広がっているだけだ。

 その時、背後でガサリと草木が揺れた。

 

「わっ! ……あ、なんだ、みんなかぁ。びっくりさせないでよ〜」

 

 振り返ると、そこには先程の村人たちが立っていた。しかし、その数は十数人に増えている。彼らは一様に無言で、じりじりとジューチャオを取り囲むように間合いを詰めてきていた。

 

「ねえ、どうしたの? みんな、顔が怖いよ……?」

 

 ジューチャオの本能が、遅まきながら警鐘を鳴らし始めた。

 μの直感が「逃げろ」と叫んでいる。だが、彼女の「人間は仲間」という認識が、その足を止めさせた。

 村人の一人が、懐から一本の杖を取り出した。

 それは奇妙な装飾が施された、禍々しくも神々しい光を放つ杖だった。「正しさの杖」。かつて彼女がその詳細を知らされぬまま、村の宝として祝福を与えたものだ。

 

「あ……それ……」

 

 杖を見た瞬間、ジューチャオの体が跳ねた。

 呼吸が荒くなる。心臓が早鐘を打つ。

 

(なに、これ……? 知らない、はずなのに……怖い……っ)

 

 記憶にはない。この杖で何をされたのか、彼女は覚えていないはずだ。

 だが、身体の奥底、子宮の芯が、キュと縮み上がった。冷や汗が背中を伝う。

 

「ジューチャオ様。貴女は少し、南方を守るには未熟すぎる」

「え……?」

「だから、我々が教えて差し上げるのです。真のμとしての喜びを」

 

 男が杖を掲げた。

 瞬間、目に見えない波動がジューチャオを襲った。

 

「う、あ……っ!?」

 

 力が抜ける。翼を羽ばたかせるための力が、霧散していく。

 膝から崩れ落ちた彼女は、地面に手をついて荒い息を吐いた。

 

「な、なにこれ、くっ、あぅっ、力が、使えない……っ!? どうして……っ」

 

 パニックに陥る彼女の頭を、太い腕が乱暴に掴んだ。

 編み込んだ髪が引っ張られ、無理やり上を向かされる。

 

「うああああっ!? な、何するのっ、は、放して……っ!」

 

 視界に入ってきたのは、欲望を剥き出しにした男たちの顔と、下半身から露出した醜悪な肉棒だった。

 それを見た瞬間、ジューチャオの瞳孔が開いた。

 

「ひっ……!」

 

 悲鳴すら出なかった。

 性的なものへのトラウマ。

 本来の彼女なら、それを嫌悪し、拒絶し、吹き飛ばすことができたはずだ。

 けれど今の彼女は、ペニスを見ただけで恐怖で動けなくなっていた。

 

(いやだ、いやだ、いやだ……! 見たくない、怖い、痛い、苦しい……ッ!)

 

 脳裏に、存在しないはずの記憶の断片がノイズのように走る。

 

 ──腹を突き上げられる感覚。

 ──首を絞められる苦しみ。

 ──熱いものを注ぎ込まれる屈辱。

 

「あ、あ、が……っ」

「いい反応だ。記憶は消したはずなのに、身体は正直に覚えてるらしい」

「それだけ前回、たっぷりと種を植え付けてやったからな」

 

 村人たちは嘲笑いながら、無抵抗な少女の服に手を掛けた。

 鮮やかな赤の衣装が、乱暴に引き裂かれる。

 白く柔らかな肌が露わになり、森の空気に晒された。

 

「やめてよう、どうしてこんなことするの!?」

 

 ジューチャオの叫びは、誰にも届かない。

 彼女は地面に押し倒され、両手両足を押さえつけられていた。四肢の自由を奪われ、股間を大きく開かされる。そこは、守護獣としての威厳など欠片もない、ただの無力な少女の姿だった。

 

「困ってたところを助けてくれたお礼にずっとそばでお手伝いしてあげる、 って言ってたよな?」

 

 村人の一人が、彼女の発言を真似てねっとりと囁いた。

 

「これが『お手伝い』だ、ジューチャオ。俺たちの精を処理し、村の繁栄のために子供を産む。それがお前の役目だ」

「ちが……っ! そんなの、聞いてない……っ! あなた達には言ってない……!」

「聞く必要も言う必要もねえよ。お前はただの穴になればいいんだ」

 

 ズチュッ。

 乾いた音と共に、一人の男が容赦なく自身を挿入した。

 

「ぎぃっ……!!!!」

 

 裂けるような痛み。異物が体内に侵入する絶対的な拒絶感。

 不死身のμである彼女にとって、肉体的な傷はすぐに治るかもしれない。だが、この行為がもたらす精神的な破壊は、再生など追いつかない速度で彼女を侵食していく。

 

「んんっ! ん、ぐっ、ふぅっ……! くる、しっ……はぁっ」

 

 首を絞められ、酸素を奪われる。

 意識が遠のきかけると、緩んだ喉元に酸素が戻され、強制的に現実に引き戻される。

 その繰り返し。

 窒息の恐怖と、下腹部を蹂躙される快楽の強制的なリンク。

 

「下も……っ、なんか、んっ、あっ、太いのが……めりめりって、入ってきてて……そっちも、んぅ、ふぅっ、ぐる、しい……っ」

 

 彼女は泣き叫びたかった。

 助けて、と誰かの名前を呼びたかった。

 けれど、ここには、彼女を助けてくれた「人間さん」はいない。

 彼女を助けてくれるはずの信民たちが、今、彼女を犯しているのだ。

 

(どうして……あたし、みんなを守りたかっただけなのに……)

 

 涙がボロボロと溢れ出る。

 その涙さえも、村人たちは舌で舐め取り、興奮の糧にした。

 入れ替わり立ち替わり、男たちが彼女の中に欲望を吐き出していく。

 一人が終われば次。休みなどない。

 彼女の小さな子宮は、彼らの種を受け入れるだけの器として扱われた。

 次第に、ジューチャオの抵抗が弱まっていく。

 体力の限界ではない。精神の摩耗だ。

「正しさの杖」の影響か、それとも極限状態の防衛本能か、彼女の思考は溶け始めた飴のように形を失っていった。

 

「はあっ、あっ、頭が、ぼーっとしてきてぇ……っ、なんか、よくわかんなく、なってる……っ」

 

 苦痛が、痺れるような感覚に変わる。

 恐怖が、依存的な何かにすり替わっていく。

 村人が耳元で囁く「催眠」の言葉が、抵抗力を失った脳に直接染み込んでいく。

 

『気持ちいいだろう? ジューチャオ』

『お前はこうされるのが好きなんだ』

『五獣とかμなんて辞めて、ただのメスになれ』

 

「な、なに言ってるの……っ、はあっ、ん、あぁっ、何……?」

 

 彼女は必死に首を振る。

 だが、体は言葉とは裏腹に、男たちの動きに合わせて蠢き始めていた。

 拒絶していたはずのペニスを、子宮が自ら吸い付くように締め付け始める。

 

「いや、なのにぃ……っ、なんか、だんだんよくなってきちゃってる……どうして、こんなことされて、あたし……っ、あ、あぁっ、んんっ! 興奮、しちゃう、なんてぇ……っ」

 

 絶望だった。

 自分の体が、心を裏切っていく。

 守護獣としての誇りも、正義感も、ドロドロの快楽と精液の中に溶けて消えていく。

 彼女の中で何かが「パチン」と弾ける音がした。

 

 

 

 日は傾き、森は薄暗い闇に包まれていた。

 行為は既に数時間に及んでいた。

 ジューチャオの目は虚ろで、焦点が合っていない。

 口からは涎とあえぎ声だけが漏れ、かつてのような元気な言葉はもう出てこない。

 

「んぁっ、そ、そんなこと、言わないでよぉ……っ! あたし、棒だけあれば、感じるような、やつじゃ、ないのにっ!」

 

 そう言いながらも、彼女は自ら腰を振っていた。

 村人たちの輪姦は、単なる暴力から、おぞましい儀式へと変貌していた。

 彼らは彼女を壊すだけでなく、作り変えようとしていたのだ。

 村人専用の、便利な処理穴へと。

 

「いいぞ、ジューチャオ。その顔だ」

「たっぷりと中に出してやる。妊娠するまでな」

「種、って……っ、だ、だめぇっ、そんなのっ、ん、あぁっ! むりっ、やだっ、放してっ! ぜったい、やだぁっ!」

 

 最後の理性が、妊娠への恐怖を叫ぶ。

 神獣が人間の子供を孕む。それは生物としての尊厳の喪失を意味していた。

 だが、男たちは止まらない。

 一番奥、子宮口をこじ開けられ、大量の白濁液が注ぎ込まれる。

 

「んん、んんぁああああああああっ!!」

「あぅ……はあっ、はっ……おなかの、おくが……あつい……」

 

 お腹が膨らむほどの量を注ぎ込まれ、ジューチャオはビクビクと痙攣した。

 熱い。お腹が焼けるように熱い。

 それが命の素だと理解する前に、意識が白濁していく。

 

「ふふ……あは……うぁぁ……はぁっ……ううぅぅ……」

 

 彼女は壊れたレコードのように、呟いた。

 文脈などない。意味などない。

 その瞳には、もう光は宿っていなかった。完全に「濁った目」になっていた。

 事後、村の長老らしき男が、満足そうに頷きながら「正しさの杖」を再び掲げた。

 

「さて、仕上げだ。今日の『教育』の結果を身体に刻み込み、記憶だけを消す」

「長老、この膨らんだ腹はどうします?」

「……今回はこのままでいいだろう。リセットは子宮の状態まで戻すが、あえて『種が着床した感覚』だけを残留させるよう調整する」

「へへ、そいつは傑作だ。処女のつもりで目覚めたら、なぜか孕んでるような感覚に襲われるってわけか」

 

 杖が光を放つ。

 ジューチャオの身体を包み込む光は、慈愛の輝きなどではない。

 彼女の魂をレイプし、都合よく編集するための、悪魔の光だ。

 

「なに、それ……もう、やめてよ……ん、ふぅっ……あたし、もうわけわかんなくて……」

 

 光の中で、ジューチャオの意識が途切れる。

 最後に彼女が感じたのは、絶望的な敗北感と、それに勝るほどの甘美な服従の悦びだった。

 

 

 

 翌朝。

 ジューチャオは、村の宿舎のベッドで目を覚ました。

 

「ん……あれ? あたし、いつの間に寝ちゃったんだろ?」

 

 彼女はむくりと起き上がり、大きく伸びをした。

 身体は軽い。昨日、何があったのかは全く覚えていない。

 辛いことや悲しいことも一晩寝れば忘れる単純っぷりは、今日も健在だった。

 

「ふわぁ〜、よく寝た! 今日もいい天気かな?」

 

 彼女は窓を開け、外の空気を吸い込んだ。

 いつもの朝。いつもの風景。

 何も変わらない日常が始まるはずだった。

 けれど。

 

「……あれ?」

 

 ジューチャオは、ふと自分の下腹部に手を当てた。

 何もない。ぺたんこのお腹だ。

 昨夜、あんなに大量に注ぎ込まれたものも、物理的にはリセットされている。

 なのに。

 

「なんか……お腹、重いなぁ……」

 

 ずしり、とした感覚が消えない。

 そして、股の間に、微かな違和感がある。

 まるで、太い何かがずっと詰まっていたかのような、拡げられた感覚。

 

「変なの。……まあいっか! お腹空いたし、食堂行こっと!」

 

 彼女は首を振って、違和感を無視することにした。

 明るく振る舞う。それが彼女のアイデンティティだから。

 食堂へ向かう道中、村人たちとすれ違う。

 彼らはジューチャオを見ると、ニヤリと笑って挨拶をした。

 

「おはようございます、ジューチャオ様。昨日はよく眠れましたか?」

「うん! バッチリだよ! あたしは不死身のμだからね!」

 

 彼女は満面の笑みで答える。

 だが、すれ違いざま、一人の村人が彼女の臀部を軽く撫でた。

 

「ひっ!?」

 

 ジューチャオは過剰なほどに飛び上がった。

 全身の羽毛が逆立つような悪寒。

 心臓が早鐘を打ち、呼吸が浅くなる。

 

「ど、どうしたんですか?」

「あ……う、ううん。なんでもない、よ……虫がいたのかな? あはは……」

 

 彼女は乾いた笑いを浮かべ、逃げるように走り去った。

 

(怖い。なんで? みんな優しい村人さんなのに……あの手が触れた瞬間、体が熱くなって……奥が、疼いた)

 

 路地裏に入り込み、彼女は壁に背を預けて座り込んだ。

 ガタガタと震えが止まらない。

 記憶はない。

 なのに、視界の端に映る「棒状のもの」──物干し竿や、農具の柄──を見るだけで、吐き気がするほどの恐怖と、涎が出るほどの期待感が同時に襲ってくる。

 自分の身体の中で、何かが決定的に壊れている。

 自分のものではない「何か」が、着実に根を張り始めている。

 それが何なのかを知る術を、彼女は持たない。

「正しさの杖」がある限り、彼女は永遠に答えにたどり着けない。

 

「ジューチャオ様ー? どこですかー? また相談に乗って欲しいことがあるんですがー」

 

 遠くから、村人の呼ぶ声が聞こえる。

 その声を聞いた瞬間、ジューチャオの体は反射的に立ち上がった。

 思考は「怖い」と叫んでいるのに、足は勝手に声の主の方へと向かっていく。

 

「はーい! 今行くー!」

 

 口から出るのは、明るい返事。

 彼女は自分の意思とは無関係に、再び笑顔の仮面を被り、地獄への扉を自ら開け放った。

 空は今日も青い。

 しかし、その青さは彼女にとって、もはや自由の色ではなかった。逃げることのできない、巨大な鳥籠の色だった。

 

 

 

 南方の村に、ねっとりとした湿気を帯びた午後が訪れていた。

 ジューチャオは、村の公民館──と彼女が認識している建物──の奥まった一室にいた。ここは普段、長老たちが集まって村のこれからを話し合う場所だと聞かされている。

 

「ん……んんっ、長老さん? まだ終わらないのぉ?」

 

 ジューチャオは、部屋の中央にある診察台のような長机の上に仰向けに寝かされていた。

 彼女の鮮やかな赤色の装束は、胸元から下腹部にかけて大きく開かれ、白い肌が露わになっている。

 彼女の周囲を取り囲むのは、村の「医者役」を自称する男たちと、それを熱っぽい瞳で見つめる数人の若者たちだった。

 

「動いてはいけませんよ、ジューチャオ様。昨日の『飛翔』で、また体に負担がかかったようですからな。我々が念入りにメンテナンスをしなければ」

「そっかぁ……。なんか最近、すぐ体が熱くなったり、股のあたりが重くなったりするんだよねぇ。あたし、病気なのかな?」

 

 不安げに眉を下げるジューチャオ。その無垢な瞳は、目の前の男たちが医療器具ではなく、ローションの入った瓶や、太さの異なる木製の張り型を用意していることに気づいていない。あるいは、気づかないように「認識」が操作されている。

 

「ええ、これは『発情熱』という、五獣特有の症状かもしれません。すぐに治療が必要です」

「治療……? 注射は痛いからやだよ?」

「ふふふ、注射ではありませんよ。もっと……気持ちよくて、元気になる儀式です」

 

 長老が合図を送ると、若者の一人がジューチャオの足首を掴み、M字に大きく開脚させた。

 

「あっ、ちょっ、恥ずかしいよぉ!?」

「診察ですから。力を抜いて……そう、ここをよく見せてください」

 

 男たちは、彼女の秘所をペンライトのような明かりで照らし出し、至近距離から観察した。

 昨晩のリセットで傷は癒えているはずだが、度重なる酷使により、彼女の性器は以前よりも少しふっくらと充血し、色素もわずかに濃くなっているように見えた。それは「処女」という設定を維持しながらも、肉体が確実に「牝」として開発されている証拠だった。

 

「素晴らしい……。リセットを繰り返すたびに、子宮口が開発されやすくなっている」

「無意識の学習機能か。脳は忘れても、肉穴は悦びを記憶しているな」

 

 ボソボソと交わされる会話は、ジューチャオの耳には届かない。

 男の一人が、ぬるりとしたオイルをたっぷりと指につけ、彼女の秘裂に這わせた。

 

「ひゃうっ!? つ、つめたっ……!」

「おや、もうこんなに濡れている。やはり病気の進行が早いようだ」

「ち、ちがうよぉ……! なんか、勝手に……汁が出ちゃって……」

 

 ジューチャオは顔を真っ赤にして否定するが、条件反射は残酷だ。

「診療」という言葉と、男たちの視線、そして微かな男臭さを感じ取った瞬間、彼女の体はパブロフの犬のように愛液を溢れさせていたのだ。

 

「では、お薬を中に入れますよ。少し大きいですが、我慢してくださいね」

「お薬……? ん、あっ、それ……大きい、よ……?」

 提示されたのは、薬などではない。彼女の前腕ほどもある、ごつごつとした木製の張り型だった。

 その形状を見た瞬間、ジューチャオの脳裏に白いノイズが走った。

 

(太い……棒……。入ってくる……めりめりって……裂ける……)

「っ!! や、やだ……! それ、怖いっ! 入れちゃだめぇっ!」

 

 恐怖で体を強張らせ、逃げようとするジューチャオ。

 しかし、彼女の手足はいつの間にか革のベルトで机に固定されていた。

 

「暴れてはいけません。これは貴女のためなのですから」

「ジューチャオ様、信民の厚意を無にするおつもりですか?」

「うぅ……だ、だってぇ……怖いんだもん……」

「大丈夫、すぐに気持ちよくなります。……『正しさの杖』の加護がありますから」

 

 部屋の隅に置かれていた杖が、ボゥン……と鈍い光を放つ。

 その波動を浴びた瞬間、ジューチャオの瞳から理性の光が消え、とろんとした陶酔の色が浮かんだ。

 

「あ……ふぇ……? なんか……あたま、ふわふわするぅ……」

「さあ、治療開始だ」

 

 ズプゥッ。

 

 大量のオイルと共に、巨根を模した張り型が無慈悲にねじ込まれた。

 

「んぎぃいいいいいいっ!!??」

 

 声にならない絶叫。

 リセットされた狭い膣道が、強引に拡張される激痛。

 しかし、杖の力が脳内の痛覚信号を快楽信号へと強制的に変換していく。

 

「あ、あがっ、いたい、のにっ……おなか、きもちい、いのぉ……!?」

「そうです、もっと奥まで……子宮の入り口まで薬を届けましょうね」

 

 グズッ、グチュッ。

 

 男たちは交代で張り型を操作し、彼女の中をかき回した。

 ピストン運動が加速するたびに、ジューチャオの口からは「治療」とは程遠い、甘く切ない喘ぎ声が漏れ出す。

 

「はぁっ、あぁっ! おくっ、あたるっ! んんっ、そこっ、だめぇっ! あたしの、なか、おかしくなっちゃうぅっ!」

「いい声だ。さあ、皆も『手当て』を手伝って差し上げろ」

 

 それを見守っていた他の男たちも、ズボンを下ろし、我慢の限界を迎えた肉棒を取り出した。

 口元に、胸に、腋に、手に。

 ジューチャオの全身にある「穴」や「窪み」という全てに、村人たちの欲望が押し付けられる。

 

「んんっ! んぐっ、じゅるっ……!?」

 

 口いっぱいに頬張らされた肉の味。

 本来なら吐き気を催すはずのその味を、彼女の舌は無意識に絡め取り、奉仕し始めていた。

「治療」という名目で刷り込まれた、「村人を喜ばせることが正義」という歪んだ奉仕精神。

 彼女は涙を流しながら、それでも懸命に、自分を犯す男たちを受け入れ続けた。

 

 

 

 数時間後。

 事切れたようにぐったりと横たわるジューチャオの周りには、白濁した液体が水たまりのように広がっていた。

 お腹は張り型と大量の射精によって膨れ上がり、呼吸をするたびに苦しそうに上下している。

 

「よく頑張りましたね、ジューチャオ様」

 

 長老が、彼女の乱れた髪を優しく撫でた。

 その手つきは、愛玩動物を愛でるそれと同じだった。

 

「ぅ……あ……はい……あたし、がんばった……?」

「ええ、とても良い子でした。これはご褒美のクッキーですよ」

 

 差し出されたのは、村特製の焼き菓子だ。

 ジューチャオは虚ろな目でそれを見つめ、震える手で受け取った。

 

「クッキー……ありがとう……」

 

 サクッ、サクッ。

 彼女は機械的にクッキーを口に運ぶ。

 そのクッキーには、微量の媚薬と、精神を弛緩させるハーブが練り込まれていることを、彼女は知らない。

 ただ、「酷いことをされた後に甘い物がもらえる」というサイクルが、彼女の深層心理に「苦痛=報酬の前触れ」という最悪の回路を形成していた。

 

「おいしい……えへへ……」

 

 精液と涙にまみれた顔で、彼女はふにゃりと笑った。

 その笑顔は、かつて空を飛び回っていた頃の天真爛漫なものではなく、飼い主に媚びるペットのそれだった。

 

「そうだ、ジューチャオ様。明日は『豊穣の祭り』を行います」

「ほうじょう……?」

「ええ。貴女が主役です。村中の男たちが、貴女に感謝を捧げる日です」

「わぁ……主役! あたし、楽しみっ!」

 

 彼女は手を叩いて喜んだ。

 その「感謝」が何を意味するのか。

 自分の体がどう扱われるのか。

 学習能力を奪われた彼女は、無邪気に地獄の釜の蓋を自ら開ける約束をしてしまった。

 

 

 

 翌日。

 ジューチャオは早朝から、奇妙な違和感に襲われていた。

 

「あれっ? おっかしいなぁ……うまく飛べないや」

 

 いつものように空の散歩に出かけようとしたが、翼が鉛のように重いのだ。

 物理的な重さではない。精神的な枷だ。

 地面を離れようとすると、昨日の「治療」の記憶──内臓を突き上げられる感覚──がフラッシュバックし、足がすくんでしまうのだ。

 

「どうして……? あたし、南方の守護獣なのに……μなのに……」

 

 彼女は村外れの丘の上で、へたりと座り込んだ。

 空はこんなに青いのに、自分だけが地面に縫い付けられているような疎外感。

 その時、草むらをかき分ける音がした。

 

「おや、ジューチャオ様。こんなところにお一人で?」

 

 現れたのは、数人の屈強な村人たちだった。手には農具ではなく、縄や猿轡を持っている。

 

「あ、みんな……。あのね、あたし、飛べなくなっちゃって……」

「それは大変だ。きっと、まだ『愛』が足りないのでしょう」

「愛……?」

「ええ。我々信民の愛をたっぷりと注げば、また元気になれますよ」

 

 男たちは、ニタニタと笑いながらジューチャオを取り囲んだ。

 場所は人目のつかない草むら。

 逃げ場はない。

 

「ここで……? でも、服が汚れちゃうよ?」

「構いませんよ。どうせ、すぐに脱ぐのですから」

 

 一人がジューチャオの背後に回り込み、羽交い締めにする。

 もう一人が、彼女の服を強引に引き剥がした。

「きゃあっ!? や、やめてっ! 今日は、お祭りなんでしょ? こんなところで……!」

「祭りの前の『前夜祭』ですよ。さあ、貴女のその美しいお尻を見せてください」

「いやっ、やだぁっ! おしり、見ないでぇっ!」

 

 ジューチャオは必死に足を閉じて抵抗する。

 しかし、男たちは慣れた手付きで彼女の膝裏に腕を回し、強引にM字開脚の体勢へと持ち込んだ。

 白日の下に晒される、無防備な秘裂。

 そこは、昨日の「治療」の余韻で、まだ僅かに開きっぱなしになっていた。

 

「ほら見ろ、こんなにガバガバだ。誘ってるのと同じだぞ」

「ちがっ、ちがうぅっ! 閉じてるもんっ、あたし、ちゃんとしてるもんっ!」

「口答えするな!」

 

 パァン!

 

 乾いた音が響く。男の一人が、ジューチャオの柔らかい臀部を平手で叩いたのだ。

 

「あ……っ!」

 

 痛みと、屈辱。

 しかし、それ以上に彼女を襲ったのは、叩かれた衝撃で子宮がキュンと疼いたという事実だった。

 

「いい音だ。この尻は、叩かれるためにあるようなもんだな」

「うぅ……ひどい……叩くなんて、ひどいよぉ……」

「ひどい? 感謝しているんだぞ。さあ、感謝の印を受け取れ!」

 

 ズチュッ!

 

 容赦のない挿入。

 草むらの不安定な足場、立ったままの体勢、そして背後からの不意打ち。

 全ての要素がジューチャオの余裕を奪う。

 

「あぎィッ!!!??」

「飛べないなら、地面で這いつくばって鳴くのがお似合いだ!」

「そうだ、鳥じゃなくて、ただの雌豚として鳴いてみろ!」

「ぶ、ぶたじゃ、ないっ……! あたしは……ああっ、んぐっ、おくっ、ついてるぅっ!」

 

 男たちの激しいピストンは、彼女の薄い腹の皮膚を通して形がわかるほどに強烈だった。

 内臓が位置を変えられ、腸が圧迫される不快感と快感が入り混じる。

 

「はぁっ、はぁっ、くるしっ、おなか、こわれちゃうっ!」

「壊れねえよ! お前は頑丈だけが取り柄のアホだからな!」

「アホじゃ、ないっ……んあぁっ! ぁぁぁぁっ!」

 

 否定の言葉は、喘ぎ声にかき消される。

 次々と交代する男たち。

 草の匂いと、男たちの汗の匂い、そして精液の栗の花のような匂いが混ざり合い、ジューチャオの鼻腔を満たす。

 彼女は涙を流しながら、空を見上げた。

 青い空。かつて自分の庭だった場所。

 今はもう、あんなに遠い。

 

(だれか……たすけて……)

(にんげんさん……どこにいるのぉ……?)

 

 助けを求める思考さえも、強烈な絶頂によって白く塗りつぶされていく。

 彼女の瞳から光が失われ、濁った色が濃くなっていく。

 

 

 

 夜。村の広場は、松明の明かりで赤々と照らし出されていた。

 

「豊穣の祭り」。

 その実態は、村人全員によるジューチャオの公開陵辱ショーだった。

 広場の中央には、特設の台座が設けられている。

 そこに、ジューチャオは四つん這いの姿勢で固定されていた。

 首には革の首輪。そこから伸びた鎖は、太い柱に繋がれている。

 彼女の姿は、もはや神獣ではない。完全に、村の共有財産である「家畜」のそれだった。

 

「皆の者! 我らが守護獣、ジューチャオ様のおかげで、今年の収穫も間違いなしだ!」

「ジューチャオ様万歳!」

「万歳! そして、種付けだ!」

 

 村人たちの熱狂的な歓声。

 ジューチャオは、朦朧とした意識の中でそれを聞いていた。

「正しさの杖」が台座の横に設置され、常時彼女の精神に干渉し続けているため、彼女は逃げるという発想すら持てなくなっていた。

 

「あ……えへへ……みんな、楽しそう……よかったぁ……」

 

 彼女は涎を垂らしながら笑った。

 その尻には、既に数人の男たちが群がっている。

 

「さあ、ジューチャオ様。今夜は特別に、村一番の巨根自慢たちが相手ですよ」

「えっ……きょこん……? う、うん、あたし、がんばる……」

 

 彼女は自分に言い聞かせるように呟く。

 頑張る。何を? 

 犯されることを。精液を受け入れることを。

 それが自分の「お仕事」だと、完全に洗脳されていた。

 次々と繰り広げられる行為は、筆舌に尽くしがたいものだった。

 前の穴、後ろの穴、口。

 三つの穴は常に塞がれ、休む暇を与えられない。

 腹部は妊娠したかのようにパンパンに膨れ上がり、それでも男たちは止まらない。

 

「おらっ、もっといい声で鳴け!」

「五獣のプライドはどうした! ほら、イカせてくださいって頼んでみろ!」

「ああっ、んぁっ! おねがいっ、しますっ! あたしに、たね、くださいっ!」

「もっとだ! 自分は誰のモノだ?」

「あたしはっ、みんなのっ、おべんじょですっ! んぎぃっ、あぁぁぁっ!」

 

 言わされているのではない。

 言わなければ終わらない苦痛と、言えば与えられる快楽の飴と鞭によって、彼女は自らその言葉を選んで叫んでいた。

 その姿を見て、村人たちは腹を抱えて笑い、さらに激しく腰を打ち付けた。

 

「んぅぅぅうぅ! おかしくなっちゃうぅううう!! イックうううううぅっっぅう!!!!」

 

 

 

 祭りの喧騒が終わり、深夜。

 ジューチャオは広場に放置されていた。

 ボロ雑巾のように扱われ、全身精液まみれで、冷たい石畳の上に転がっている。

 村人たちは満足して家に帰った。

 長老が一人、彼女のもとに近づき、杖をかざした。

 

「さて、今夜もリセットの時間だ。……だが、少し趣向を変えようか」

 

 長老は杖の設定をいじり、いつもとは違う波長を放った。

 

「肉体の傷は治すが、子宮内の精液はそのまま残す。そして……『犯された記憶』を、完全に消さずに、夢として残るようにしよう」

「ククク……明日の朝、彼女がどんな顔をするか楽しみだ」

 

 光がジューチャオを包む。

 彼女の傷ついた粘膜は修復され、体力も回復していく。

 しかし、お腹の中にたっぷりと溜まった「種」だけは、そのまま温存された。

 そして、記憶の蓋も、わざと緩く閉められた。

 

 翌朝。

 小鳥のさえずりで目が覚めたジューチャオ。

 

「んぅ……」

 

 体を起こそうとして、彼女は激しい吐き気に襲われた。

 

「おぇっ……!?」

 

 胃が裏返るような不快感。

 そして、頭の中に残る、生々しい映像。

 

(なに、これ……? 夢……?)

 

 夢の中で、彼女は鎖に繋がれ、大勢の男たちに笑われながら犯されていた。

「お便所」と叫んでいた自分の声。

 男たちの熱い息。

 体中を這い回る手。

 

「やだ……悪い夢……。あんなの、あたしじゃない……」

 

 彼女はブルブルと首を振る。

 しかし、現実は夢よりも残酷だった。

 ふと布団をめくると、下腹部がポッコリと膨らんでいるのが見えた。

 

「え……?」

 

 手で触れる。硬い。そして、重い。

 中には、タプタプとした液体の感触がある。

 

「うそ……なんで……? あたし、なにも食べてないのに……」

 

 パニックになり、股間を確認する。

 そこからは、白濁した液体がトロトロと垂れ続けていた。

 シーツに広がる大きな染み。

 そして、部屋中に充満する、あの栗の花の匂い。

 

「あ……あぁ……」

 

 記憶(夢)と、現実の証拠が一致する。

 リセットが不完全だったせいで、彼女は「自分が何をされたか」を、あやふやながらも認識してしまった。

 

「うそだ……うそだうそだうそだ!!」

 

 彼女は悲鳴を上げた。

 信じていた村人たち。優しかったおじいちゃんやお兄さんたち。

 彼らが、夢の中で自分を獣のように貪っていた。

 そして、自分もそれを喜んで受け入れていた。

 

「いやあああああああああっ!!!!」

 

 ジューチャオは部屋を飛び出した。

 逃げなければ。ここから離れなければ。

 彼女は裸足のまま、村の通りを走った。

 

「おや、ジューチャオ様。おはようございます」

「今日は随分と慌てて……お腹、重そうですねぇ?」

 

 すれ違う村人たちが、ニヤニヤと笑いかけてくる。

 その笑顔が、昨夜の悪夢の中の顔と重なる。

 

「ひっ……来ないでっ! 近寄らないでぇっ!」

 彼女は泣き叫びながら、村の出口へと走る。

 しかし、出口には見えない壁があった。

「正しさの杖」が張った結界だ。

 

「はぁっ、はぁっ……あかないっ、どうしてっ!?」

 

 バンバンと結界を叩くジューチャオ。

 その背後に、ゆっくりと村人たちが集まってくる。

 

「ジューチャオ様、どうされたのですか?」

「そんなに興奮して……胎教に悪いですよ?」

「たいきょう……?」

 

 振り返ると、そこには数十人の村人が立っていた。

 手には、昨日と同じ縄や、杖を持っている。

 

「逃げられると思いましたか? 貴女はもう、我々の『母体』なのですよ」

「思い出してください。昨日の夜、あんなに幸せそうに鳴いていたではありませんか」

「ちがうっ! あたしじゃないっ! あたしは……あたしは五獣の……!」

 

 言い返そうとした言葉が、喉で詰まる。

 杖が光ったからだ。

 条件付けされた脳が、光を見た瞬間に「服従」の信号を発信してしまった。

 

「あ……ぅ……」

 

 膝から力が抜ける。

 地面に崩れ落ちる彼女の股間から、さらに大量の精液が溢れ出した。

 

「ほら、体が欲しがっている」

「口では嫌がっても、下の口は正直ですねぇ」

 

 村人たちが彼女を取り囲む。

 ジューチャオの瞳から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

 逃げ場はない。味方もいない。

 そして、自分の体さえも、もう自分のものではなかった。

 

「……たすけて……」

 

 消え入るような声。

 しかし、それに答えるのは、欲望に満ちた男たちの嘲笑だけだった。

 

「さあ、今日も『相談』に乗りましょうか、ジューチャオ様」

「貴女のその、だらしない体について……たっぷりとね」

 

 男の手が伸びてくる。

 ジューチャオの視界が暗転する直前、彼女は見た。

 

 村の入り口にある看板に、「ようこそ、心優しき信民の村へ」と書かれているのを。

 そして、彼女の意識は、底なしの沼へと再び沈んでいった。

「人間さん」がこの地獄を知る由もないまま、赫き鳥の堕落は、果てしなく続いていく。

 捕らえられたジューチャオが連れ戻されたのは、村の地下にある古い貯蔵庫だった。

 かつては野菜や穀物を保存していたその場所は、今や湿った熱気と、ツンと鼻をつく栗の花の匂い──男たちの欲望の残り香──が充満する、おぞましい「飼育小屋」へと変貌していた。

 

「いやっ……! 放してっ、お願いっ! あたし、帰るの! みんなのところへ帰るのぉ!」

 

 ジューチャオは叫び、暴れた。

 しかし、その抵抗はあまりにも無力だった。四肢は太い鎖で壁に繋がれ、自慢の赤い翼は無惨にも折り畳まれて拘束衣のような器具で固定されている。

 逃げようとした罰として、彼女は「反省」を強いられていた。

 

「ジューチャオ様、往生際が悪いですよ。貴女が帰る場所はここでしょう?」

「我々を捨てて逃げようとするなんて……悪い子には『教育』が必要です」

 

 村人たちは、まるで聞き分けのない子供を諭すような、粘着質な優しさを含んだ声で語りかける。その手には、鞭や蝋燭、そして異様に脈動する「正しさの杖」が握られていた。

 

「ちがうっ……! 信民は、こんなことしないっ! あんたたち、おかしいよ!」

「おかしい? 傷つきますねぇ。我々はこんなにも貴女を愛しているのに」

 

 長老が進み出る。杖の先端を、ジューチャオの膨らんだ腹部に押し当てた。

 前回の「不完全なリセット」により、彼女の子宮内には村人たちの種が大量に残されたままだ。杖の力が接触した瞬間、腹の中で何かがドロリと蠢いた。

 

「ひぁっ!?」

「鳥頭の貴女でもわかるように教えてあげましょう。貴女はもう、空を飛ぶ鳥ではない。地面を這い、腹を痛めて子を産む『雌(メス)』なのです」

「やだ……やめて……! そんなこと言わないでぇ……ッ!」

「教育開始だ。彼女が自分から『私は雌です』と認めるまで、徹底的に可愛がってやれ」

 

 合図と共に、地獄が再開された。

 それは単なる暴行ではない。彼女のアイデンティティを削り取る作業だった。

 痛めつけられるたびに「ありがとう」と言わされる。

 犯されるたびに「気持ちいい」と叫ばされる。

 拒絶の言葉を吐けば、杖の力で神経を過敏にされ、わずかな刺激で絶頂に達するように肉体を改造される。

 

「あひぃッ!? んぎぃッ!! ゆるしてっ、ごめんなさいっ! あたしが、あたしが悪い子だからぁッ!」

 

 数時間が経過する頃には、ジューチャオの言葉は崩壊していた。

 痛みと快楽の過剰摂取により、脳が現実逃避を始め、目の前の捕食者たちを「躾をしてくれるご主人様」だと誤認し始めていたのだ。

 

「いい子ですね、ジューチャオ様。では復唱してください。貴女は何ですか?」

 

 薄暗い地下室で、ジューチャオは白濁液にまみれた体で正座させられていた。

 目は虚ろで、焦点は定まっていない。口元からは涎が垂れ、時折ビクンと体が痙攣する。

 

「あたしは……あたしは、みんなの……便所……オナホ、です……」

「違いますね。もっと崇高な存在ですよ」

 

 長老が優しく彼女の頭を撫でる。

 その愛撫に、ジューチャオはウットリと目を細めた。完全に飼い慣らされたペットの反応だ。

 

「貴女は『豊穣の母』。村の男たちの種をすべて受け入れ、育て、排出する……聖なる袋です」

「せいなる……ふくろ……」

「そうです。空を飛ぶ必要などない。貴女の翼は、男を抱きしめるためにあるのです」

「……つばさは……だきしめる、ため……」

 

 ジューチャオは、背中の拘束を解かれた翼を、恐る恐る動かした。

 かつて大空を駆けた真紅の翼。

 しかし今、彼女はその翼で、目の前の醜悪な男の背中を包み込んだ。

 

「そう、いい子だ。愛しているよ、ジューチャオ」

「……えへへ……愛してる……あたしも、愛してる……」

 

 彼女は男に抱きつき、自ら唇を求めた。

「正しさの杖」による記憶改変と、連日の陵辱による精神崩壊が融合し、彼女の中に新たな人格が形成されていた。

 過去の「アホの子」としての明るさはそのままに、そのベクトルが「村人への奉仕」へと180度転換された、歪な聖女。

 彼女にとって、レイプは「愛の交歓」となり、暴力は「情熱的なスキンシップ」へと書き換えられたのだ。

 

「もう逃げようなんて思いませんね?」

「うん! だって、ここにはご飯もいっぱいあるし、みんな優しいし、毎日エッチで気持ちいいもん!」

 

 満面の笑みで答えるジューチャオ。

 その笑顔は、かつて、人間さんに向けられていたものと同じくらい輝いていた。

 だからこそ、絶望的に残酷だった。

 彼女の純粋さは、今や村人たちの欲望を肯定するためだけの装置となっていた。

 

 

 

 季節が巡ったのか、それとも杖の力で時間が歪められたのか。

 ジューチャオの体型は劇的に変化していた。

 小柄な体躯に不釣り合いなほど、腹部が大きくせり出している。臨月、あるいはそれを超えるほどの大きさだ。

 

「うぅ……重いよぉ……お腹、はちきれちゃいそう……」

 

 彼女は村の広場に設けられた、クッション敷きの豪勢な寝台に横たわっていた。

 もはや自分で起き上がることも困難なほどの巨腹。

 その中には、村人たちの種が混ざり合い、異形の生命として脈動している。

 

「大丈夫ですよ、ジューチャオ様。順調に育っています」

「ほら、赤ちゃんがお腹を蹴ってますよ」

 

 村人たちが彼女の腹に群がり、愛おしそうに撫で回す。

 ジューチャオは、母性本能を強制的に刺激され、甘美な表情を浮かべた。

 

「んぁっ……動いてる……。あたしの赤ちゃん……みんなの赤ちゃん……」

 

 彼女は卵生ではない。人間と同じように、へその緒を通じて栄養を送り、胎児を育てる。

 だが、神獣である彼女の母体としてのキャパシティは異常だった。

 普通なら一人か二人しか宿せない子宮に、杖の魔力で空間拡張が施され、限界まで詰め込まれている。

 

「おっぱいも、また張ってきましたね」

「搾って差し上げましょう」

 

 彼女の胸は、妊娠に伴い大きく膨らみ、血管が浮き出るほどに張り詰めていた。

 男たちが乱暴に乳首を吸い上げ、あるいは手で搾り上げると、濃厚な母乳が噴水のように飛び出した。

 

「ひゃうッ!? んっ、ちゅぅっ……! 出るっ、いっぱい出ちゃうっ!」

「ああ、なんて濃いミルクだ。神獣の滋養がつまっている」

「村の若返りの薬になるぞ。一滴も残さず搾り取れ」

 

 母乳は桶に溜められ、村人たちに振る舞われる。

 ジューチャオは自分の体液が男たちの喉を潤す音を聞きながら、恍惚の表情で震えていた。

 

「おいしい? あたしのミルク、おいしい?」

「ああ、最高だ。お前は本当にいい雌牛……いや、女神様だな」

「えへへ……よかったぁ。もっと飲んで? もっといじめて?」

 

 彼女は完全に「母体」としての役割に快楽を見出していた。

 自分の栄養が吸い取られ、胎児に奪われ、肉体が消耗していく感覚。

 それが彼女にとっての「生きている実感」になってしまっていた。

 かつて「なんでも熱々が一番」だと言っていた彼女は、今や「出したて」の母乳や愛液を提供することに情熱を注いでいる。

 言葉の意味は同じでも、その中身はあまりにも汚濁にまみれていた。

 そして、出産の時が訪れた。

 陣痛は突然、雷に打たれたような激痛と共にやってきた。

 

「ああああああッ!!!! いたいっ! おなか、痛いぃいいいッ!!!」

 

 寝台の上でのたうち回るジューチャオ。

 村人たちは慌てることなく、手際よく彼女の足を開き、分娩の態勢を整える。

 

「いきみなさい、ジューチャオ様! 貴女の役目を果たすのです!」

「出してしまえば楽になりますよ! そしてまた、気持ちよくなれます!」

「うぐっ、ぐぅぅぅッ!! ん──ーッ!!!」

 

 彼女は獣のような唸り声を上げ、いきんだ。

 神獣の生命力と、杖の補助により、出産は壮絶ながらもスムーズに進んだ。

 ぬるり、と何かが産道を通る感覚。

 熱い塊が、彼女の股間から滑り落ちる。

 

「オギャア! オギャア!」

 

 元気な産声。

 しかし、産み落とされた赤子を、ジューチャオが抱くことはなかった。

 へその緒が切られると同時に、赤子はすぐに村人によって連れ去られたからだ。

 

「あ……赤ちゃん……? あたしの、赤ちゃん……?」

 

 手を伸ばそうとするジューチャオ。

 だが、その視界に映ったのは、赤子ではなく、再び勃起した肉棒を構える男たちの姿だった。

 

「ご苦労さまでした。ですが、まだお腹の中に残っていますよ?」

「え……? まだ……?」

「いえ、そうではありません。空になったなら、すぐに埋めなければならない。それが『豊穣の母』の掟です」

「え……? うそ……だって、今、産んだばっかり……」

「産道が開いている今こそ、最も妊娠しやすいのです。さあ、次世代の種を受け入れなさい」

 

 休む間もなく、拡張しきった膣口に、男たちの楔が打ち込まれる。

 

「ぎゃあああああああッ!!!!」

 

 出産直後の、最も敏感で傷ついた肉体への性行。

 それは拷問以外の何物でもなかった。

 しかし、「正しさの杖」が再び強く輝く。

 

<痛みは愛。充填は幸福。妊娠は使命>

 

 脳内に直接響く命令が、彼女の悲鳴を喘ぎ声へと変質させる。

 

「あ、がッ、あぁッ!? 熱いっ、また、入ってきてるぅッ!?」

「産んですぐに種付けされる気分はどうだ!?」

「お、おかしくなるっ! あたし、こわれちゃうっ! んあぁぁぁッ、しあわせぇッ!!」

 

 産み落とした子の顔を見ることもなく、彼女は再び精液の海に溺れた。

 長老が杖を振るう。

 その光は、彼女の子宮の状態を「妊娠初期」へとリセットし、同時に「出産した記憶」だけを朧げなものへと改変した。

 

 数分後。

 事切れたように横たわるジューチャオの腹は、男たちの中出しによって、出産前と変わらないほどに膨らんでいた。

 彼女は自分の腹を撫で、うっとりと呟いた。

 

「あれ……? あたし、まだ産んでないのかな……?」

「ええ、そうですよ。これから産むのです。元気な赤ちゃんをね」

「そっかぁ……。えへへ、楽しみだなぁ。早く会いたいなぁ……」

 

 彼女は「産んだこと」を忘れさせられ、永遠に訪れない「初めての出産」を夢見ながら、無限の妊娠地獄を彷徨い続けることになった。

 彼女の記憶にあるのは、常に「お腹が大きい自分」と「優しくしてくれる村人たち」だけ。

 失われた子供たちがどこへ行ったのか、彼女が疑問に思うことは二度となかった。

 

 

 

 それから、どれほどの月日が流れただろうか。

 南方の村は、以前にも増して繁栄していた。

 作物は実り、村人たちは健康で、精力に満ち溢れている。

 その中心には、常に「彼女」がいた。

 村の広場の中央に建てられた、立派な御堂。

 その奥の座敷牢に、ジューチャオは鎮座していた。

 その姿は、かつての面影を残している。

 編み込まれた赤い髪、愛らしい顔立ち。

 しかし、その瞳は完全に光を失い、濁った泥のような色をしていた。

 そして何より異様なのは、その下半身だ。

 度重なる妊娠と出産、そして杖による肉体改造の果てに、彼女の腹部は常に臨月状態で固定され、自力で歩くことすらできなくなっていた。

 

「ジューチャオ様、ご飯の時間ですよ」

 

 若い男が、盆に乗せた食事を持って入ってくる。

 食事といっても、固形物ではない。精力増強剤と媚薬を混ぜた、ドロドロの流動食だ。

 

「わぁい! ご飯! あーん!」

 

 彼女は口を大きく開ける。

 男はスプーンを使わず、自らの口に流動食を含み、口移しで彼女に与えた。

 ジューチャオはそれを当然のように受け入れ、舌を絡ませて貪る。

 

「んむっ、ちゅぅ……ごっくん。えへへ、おいしい! ごちそうさま!」

「お利口ですね。では、デザートに『種』もあげましょう」

「やったー! 種だいすき! 熱いのちょーだい!」

 

 彼女は自ら太ももを開き、男を誘う。

 そこには羞恥心も、拒絶も、人権もない。

 あるのは、ただの「機能」としての反応だけだった。

 事後、男が出ていった後、ジューチャオはふと窓の外を見た。

 鉄格子越しに見える、四角く切り取られた空。

 真っ青で、どこまでも高い空。

 かつて、自分があそこを飛んでいたことを、彼女は覚えているだろうか。 風を切る感触を、雲を突き抜ける爽快感を。

 

「……きれいな青色だなぁ」

 

 彼女はポツリと呟いた。

 

「おいしそう。……あの青いのも、食べられるのかな?」

 

 彼女にとって、世界はもう「食欲」と「性欲」でしか構成されていなかった。

 空は飛ぶ場所ではなく、ただの背景。

 翼は羽ばたくためのものではなく、男を抱き留めるための布団。

「μ」という名は、ただの屋号。

 

「ま、いっか! お腹いっぱいだし」

 

 彼女はゴロリと横になり、膨らんだ腹を愛おしそうに抱きしめた。

 その腹の中には、また新たな命が──あるいは命の形をした欲望が──宿っている。

 

「おやすみなさい、世界。おやすみなさい、赤ちゃん」

「おやすみなさい……だれかさん」

 

 彼女は目を閉じた。

 その脳裏に、一瞬だけ、誰かの笑顔が浮かびかけた。

 優しくて、温かくて、自分が「人間さん」と呼ぶ誰か。

 しかし、その映像はすぐにノイズに埋もれ、村人の下卑た笑顔へと上書きされた。

 

「えへへ……みんな、大好き……」

 

 彼女は幸せそうに微笑み、深い眠りへと落ちていった。

 正しさの杖が枕元で静かに明滅し、彼女の夢すらも管理し続ける。

 南方の村には、今日も平和な時間が流れている。

 生贄となった一羽の小鳥の尊厳と引き換えに手に入れた、歪で残酷な楽園。

 その檻の中で、赫き鳥は二度と目覚めることのない悪夢を見続けている。

 永遠に。




μって妊娠したらどうなるんですかね。
よく分かんないので人間と同じにしました。
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