※この作品はR-18です。

ミルキー☆モーテル   作:沼の人

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第1話 『リターン☆ハイウェイ』

 列車暴走事件から釈放数日後

 

『惑星間交通情報をお知らせいたします。下り方面、防衛システムエラーによる小型隕石衝突の影響により交通整理を実施しております。なお現在システムは復旧しておりますので、安心してドライブをお楽しみください。続きましてLV426方面の……』

 カーラジオから流れる交通情報の音声を、「ふわぁ~」というチハルの欠伸(あくび)が遮(さえぎ)った。

「ねぇコレあとどのくらいで着く感じぃ?」

「んー」

 運転をするマキナは距離計算ソフトを起動させて顔面モニターに砂時計を表示し、計算が終わると顔の表示が元に戻った。

「あと4時間くらい」

「はっ⁉ まだそんなかかるの?」

「これでも飛ばしてるんだから時短してるほうだよ。もちろん法定速度は守ってるけど」

「え~~~、でもでも時間かかりすぎー」

「だからしょうがないべ、惑星またぐってなったらそんくらいかかるって。かといってもうギアぶっ飛ばすのはゴメンだかんね。まーた警察に捕まるじゃん」

「まぁそうだけどさー……えー、でもでもでも退屈ーーー」

 駄々っ子モードに入ったチハルは首を横にフリフリした。

「……そんな言うんだったら、ミルキーサブウェイで行けば良かったじゃん。チィの好きな液弁(えきべん)もあるし」

「はぁっ⁉ やだやだやだ絶っっっっっっっっっっ対やだ!」

「〝っ〟が多いわw うるさいなぁもう」

「あんな目に遭っといてよく言えるよねそんなこと。チハル絶対マキナが運転する車しか乗らないもん」

「いや免許取れよ」

「知ってるじゃん教習所のこと。車ぶつけまくって教官にゲロ怒られたの」

「あー……確かにアレは酷かった。ていうか教官ゲロ吐いてたべ」

「うん吐いてた。おえおえーって泣きながら。で、怒られた」

「ゲロ臭い泣いてるおっさんに怒られたら、そら嫌だわw まぁ運転スキル皆無なチハルもチハルだけど」

「いいのぉチハルは。マキナがいるもん」

 チハルはトンとマキナの肩に頭を載せた。

 マキナは横目で見遣りながら、口元に少し笑みを浮かべた。

「あーしはお抱え運転手かよ」

「ていうか彼氏、的な?」

「はっ⁉」

 今度はマキナが驚く番で、その弾みでハンドルを不意に変な方向へ回してしまい車体が揺れた。

「ちょっと、安全運転!」

「あーメンゴ……ってそもそもチィが変なこと言うからじゃんよ!」

「何がー? チハルとはヤなの?」

「い、いやそんなこと一言も言ってないし! ヤじゃねーよ!」

「じゃあ何でそんなアタフタしてるの?」

「してねーし!」

「してるよ。ほっぺ赤いし」

「こ、これはエラー! エラーだから!」

「へー、そうなんだー、ふーんw」

 チハルはニヤニヤしながらマキナの左腕に抱きついた。

「ちょ、危ねぇって運転中なんだから」

「新しい身体(からだ)さぁ、皮膚みたいに弾力あっていいよね」

「え? ああ、まぁ。そこは新調したし」

「指もさぁ、爪のオプション付いて良かったね。ネイルめっちゃ可愛いし」

「あ、ありがと……」

 マキナの指にはピンクのマニキュアが塗られ、そこに星をモチーフにしたデコレーションがなされていた。

「めっちゃミナミちゃん仕様じゃん」

「うん。ずっとしたかったんだ、こういうネイル。これでいつかミナミちゃんのライブに行く」

「次のライブっていつ?」

「13月32日。抽選チケット、絶対取るわ」

「何枚?」

「もちろん二枚っしょ。チィの分も」

 それを聞いたチハルは「フフ♪」と上機嫌になり、より強くマキナの腕を抱き締めた。

「だから危ねぇって……あ、アカネちゃんの分も取っといた方がいいかな」

「あーいいじゃん。三人で応援団結成しよーよ。団扇とか作ってさぁ」

「いいね。こうなったら何が何でもチケット当てなきゃだわ」

「……ていうかさっきの話だけどさぁ、ミルキーサブウェイって廃止になるんだよね?」

「んぁ? ああ、まぁあんなことがあったし、オータムちゃん暴走しまくってたこと露見したからね。鉄道会社の株かなり落ち込んだっぽいよ」

「へぇー。まぁチハル株とかよく分かんないけど、マキナの実家もヤバいんじゃない? オータムちゃんもだけど、電車造ってたのもタイタンなんでしょ?」

「あー……それはまぁ、その、なんつーか」

「なに?」

「……いわゆる〝袖の下〟ってやつでマスコミとか役所とか諸々黙らせたっぽい」

「うーわ、やっぱそういうことするんだ大きな会社って。やらしー」

「あーしもそう思うよ。だから早く縁切りたいわ親とは。パパはあーしに会社継がせようとしてるけど、絶対ヤダし」

「お母さんも相変わらずな感じ?」

「さぁ、会ってねーし。ていうか会いたくねーし。どうせ会ったところであーだこーだ文句言ってくるの分かってるから」

「そういえばさー、カプセルに入った状態でどうやって会話すんの?」

「んー、なんつーか体は眠ってるけど、脳は起きてるって感じ? で、音声デバイスで話してくる」

「へー。老けたくないってのは分からなくもないけど、いつまでそんなことしてるんだろーね」

「知らね。てゆーかあーしがママに頭きてんのは、強化人間差別してるところだよ。何が醜いだよざっけんなって話じゃん。アレ絶対僻(ひが)みだわ。強化人間の方が長生き出来るからってさぁ、あのクソバ……」

 侮蔑語を言おうとしたマキナの口元を、チハルは片手をのばしてストップをかけた。

「悪口はダーメ。いくらなんでも親なんだから、言い過ぎはダメだよ?」

「……ごめん」

「てゆーかもうドライブ飽きたぁ!」

「いやいやいやドライブ行きたがってたのチィじゃんよw 身体復活したてのあーしにすぐ「よし、じゃあドライブ行こ♪」ってブリっ子かまして誘ってきたのどこの誰よw」

「ねぇーどっかで休憩しよー」

「どっかってどこよ。こっから2時間はサービスエリアもないし」

「もうどこでもいいからさー、休みたいー休みたいーーー」

「そんなこと言ったって無いもんは無い……あ」

「ん?」

「いや……アレ」

 マキナは顎(あご)をクイっと動かして、車の進行方向に見えてきた看板を指した。

 そこには電飾がパチパチと点滅しつつ、「ここに在りますよ」と存在感を示す建物があった。

 看板には筆記体の英語で『Milky☆Motel』とあった。




次回 『ミルキーモーテルへようこそ』
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