カンスト勇者のやり直しハーレム無双~異世界帰りの俺、今度はアニメの推しヒロイン達を全員幸せにします~ 作:のびすけ。
七つの影に愛の光を
「ロシデレ」の世界で、〝完璧〟という名の鎧を纏っていた孤高のお姫様、アリサ・ミハイロヴナ・九条。
僕は彼女の弱さも、淫らな欲望も、その全てを愛することで、彼女を心からの安らぎと幸福で満たすことができた。
愛しい恋人、アーリャが僕の腕の中で幸せそうな寝息を立てるのを見届け、僕は満足感と共に意識を手放す。
次に目を開けた時、僕の目に映ったのは見慣れた自室の天井。
心地よい疲労感と、胸の奥にずっしりと残る確かな達成感。
どうやら、無事に帰還できたらしい。
僕のこの力は、物語を自分の欲望のために捻じ曲げるためのものではない。
原作では救われなかった、幸せになるべきヒロインたちを、最高の形で救い出すための、祝福(ギフト)なのだ。
僕は、エナジードリンクの残りを一気に飲み干すと、新たなターゲットを求め、ブラウザの検索窓に、ある作品名を入力した。
『陰の実力者になりたくて!』
画面に表示されたのは、漆黒のドレスに身を包んだ、美しく、そしてどこか影のある、七人の少女たちのイラスト。
アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ゼータ、そしてイータ。通称、「七陰」。
絶対的な実力と、類稀なる美貌を持ちながら、そのすべてを、一人の、とんでもない勘違い男に捧げてしまっている、悲劇のヒロインたち。
彼女たちの忠誠心は、本物だ。
だが、その愛は、あまりにも一方通行で、報われていない。
彼女たちこそ、本当の愛を知り、一人の女性としての幸せを手に入れるべき存在ではないのか。
「待っていろ、七陰。君たちの、本当の主人が、今、会いに行く」
僕はヘッドホンを装着し、意識を集中させる。
ユニークスキル『次元渡航』が、僕の意思に応えて、淡い光を放ち始める。
行き先は、ミドガル王国の王都。時間は、シャドウが学園で「ジミナ・セーネン」として暗躍し、七陰たちがディアボロス教団との戦いを本格化させている頃。
僕の身体が光の粒子となって分解されていく、いつもの不思議な感覚。
さあ、行こう。次なる戦場へ、最高のヒロインたちを救い出すために。
光が収束し、僕の意識と肉体が再構成される。
目を開けると、そこは活気あふれる中世ヨーロッパのような街並みが広がっていた。
ここが、ミドガル王国の王都か。スキルによる転移は完璧だ。
僕は、この世界では新進気鋭の冒険者「カイト」として活動を開始する。
カンストしたステータスと、あらゆる情報を見抜く『鑑定』スキルがあれば、教団の動きや七陰たちの状況を把握するのは容易い。
僕はシャドウガーデンがディアボロス教団と繰り広げる戦いの裏で、密かに暗躍を開始する。
僕の目的はただ一つ。
七陰たちがシャドウへの忠誠心ゆえに見失っている〝一人の女性としての幸せ〟を、彼女たち自身に気づかせてあげること。
彼女たちの努力を、苦悩を、そしてその美しさを、組織の駒としてではなく、一人の人間として、一人の男性として、心の底から肯定し、愛を注ぐ。
それが、この世界での僕の使命だ。
ーーーー
完璧なリーダー、アルファとの邂逅
最初の接触は、シャドウガーデンの実質的指導者、アルファだった。
『鑑定』スキルで彼女の動向を追っていた僕は、彼女が単独で教団の幹部と思しき相手を追跡していることを突き止めた。
王都の薄暗い路地裏。月明かりだけが、二つの影の激しい戦闘を照らし出していた。
金色の髪をなびかせ、漆黒の剣を振るうアルファの姿は、まるで戦女神のように気高く、美しい。
しかし、相手も相当の手練れ。
教団の中でも指折りの実力者なのだろう。次第にアルファの動きに焦りが見え始める。
「くっ…!」
完璧を求めるが故の、ほんの僅かな隙。
それを見逃す相手ではなかった。
敵の凶刃が、アルファのしなやかな肢体を切り裂かんと迫る。
僕が駆けつけなければ、致命傷は免れないだろう。
僕は、路地裏の屋根から音もなく飛び降りた。
「そこまでだ」
僕が放った剣圧だけで、教団幹部の体勢が大きく崩れる。
驚愕に目を見開く二人の間に、僕はゆっくりと割って入った。
「なっ…貴様、何者だ!」
「通りすがりの冒険者、とでも名乗っておこうか」
僕は漆黒の剣を構えるアルファに、安心させるように小さく微笑みかける。
そして、目の前の敵に向き直った。
「これほどの美しさと気高さを兼ね備えた女性が、こんな薄汚い路地裏で散るべきではない。見るに堪えない」
僕の言葉に、アルファの肩がぴくりと震えたのがわかった。
彼女の『鑑定』情報に、微かな動揺の文字が浮かぶ。
「戯言を…!」
教団幹部が、怒りと共に斬りかかってくる。
だが、カンストした僕の敵ではない。
僕はその大振りの一撃を鞘で受け止めると、そのまま流れるような動きで相手の懐に潜り込み、柄で鳩尾を軽く突いた。
たったそれだけで、敵は白目を剥いて地面に崩れ落ちる。
あまりにもあっけない幕切れに、アルファは言葉を失っていた。
「…あなた、一体何者なの」
警戒心を滲ませた、鈴の鳴るような声。
僕はゆっくりと振り返り、彼女の瞳をまっすぐに見つめた。
「僕はカイト。しがない冒険者さ。それより、怪我はないかい?あなたのその美しい金色の髪が、血で汚れてしまうところだった」
僕は、彼女を組織のリーダーとしてではなく、一人の〝気高い女性〟として扱う。僕の『魅力』スキルが、穏やかなオーラとなって彼女の警戒心を少しずつ解かしていく。
「…助けてもらった礼はするわ。私は…」
「名前はいい。それよりも、もし礼をしてくれるというなら、今度、君のおすすめの店で食事でもご馳走してくれないか。君のような美しい人と話せるなら、どんな報酬よりも価値がある」
僕は、彼女が連絡先を交換せざるを得ない状況を作り出す。
アルファは少しの間逡巡したが、やがて小さく頷き、僕にだけわかる連絡用の魔道具の周波数を教えてくれた。
「…わかったわ。必ず、連絡する」
そう言い残し、彼女は闇の中へと消えていった。
残された僕は、彼女が去った方向を見つめながら、小さく笑みを浮かべた。
これで、最初の楔は打ち込まれた。
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物語の記録者、ベータとの出会い
次に行動を起こしたのは、王立図書館だった。
ベータが作家「夏目」として、情報収集と自身の創作活動のために頻繁にここを訪れていることを、僕は突き止めていた。
広大な図書館の、最も奥まった書庫。
そこに、銀髪を揺らし、真剣な表情で難解な古文書と睨めっこしている彼女の姿はあった。
シャドウの常人には理解不能な行動を、どうすれば英雄譚として昇華させられるのか。
そして、自身の創作意欲と、記録係としての役割との間で、彼女は一人、葛藤していた。
僕は、偶然を装って彼女の隣の席に座り、同じく古文書を手に取った。
「…ふむ、この古代文字の解釈は難しいな」
僕が独り言のように呟くと、ベータがびくっと肩を震わせ、こちらを警戒するように窺っている。
「…あなたも、古代史の研究を?」
「ああ、趣味でね。特に、この時代の英雄譚には目がないんだ。もっとも、ここに記されているのは、事実の断片に過ぎない。これを一つの物語として紡ぎ上げるには、相当な文才と想像力が必要だろう」
僕の言葉に、ベータの目が、興味深そうに細められた。
彼女が今、まさに悩んでいる核心を突いたからだ。
「…もし、よろしければ、あなたの解釈を聞かせていただけませんか?」
「もちろん。例えば、この一節。多くの歴史家は、ただの儀式だと解釈しているが、僕は違うと思う。前後の文脈、そしてこの時代の文化的背景を考慮すれば、これは王位継承にまつわる、禁断の恋の物語だと読み解くこともできる」
僕は『鑑定』スキルで得た情報と、異世界で培った膨大な知識を元に、彼女が行き詰っていた箇所の、全く新しい、しかし、それでいて説得力のある解釈を披露してみせる。
僕の言葉を聞くうちに、ベータの瞳は、みるみるうちに輝きを増していった。
「すごい…!その視点は、ありませんでした…!あなたの解釈なら、このバラバラだった記録が、一つの壮大な物語として…!」
興奮気味に身を乗り出す彼女を見て、僕はにこりと微笑んだ。
「君も、素晴らしい才能を持っているようだね。そのノートに綴られている文章、少し見えてしまったが、情景描写も、比喩表現も、そこらの作家が束になっても敵わないほど見事だ。君はきっと、歴史に名を残す偉大な作家になる」
僕は、シャドウの武勇伝を記すための技術ではなく、彼女自身の〝才能〟を、手放しで絶賛する。
初めて、記録係としてではない、一人の創作者として認められた喜び。
それは、ベータの心に、今まで感じたことのない温かい光を灯した。
「あ、あの…!」
僕が席を立とうとすると、彼女は慌てて僕の袖を掴んだ。
「また、お会いできますか…?あなたと、もっと物語について、お話がしたいです…!」
潤んだ瞳で、そう懇願してくる。
その姿は、シャドウガーデンの幹部ではなく、ただの文学少女だった。
「ああ、もちろん。僕も、君のような才能豊かな作家と話せるのは、何よりの喜びだ」
僕たちは、次に会う約束を取り付けた。
彼女の中で、僕という存在が、ただの協力者ではない、特別な誰かへと変わり始めているのを、僕は確かに感じていた。
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最強の獣人、デルタとの遭遇
デルタとの出会いは、王都から少し離れた、広大な森の中だった。
彼女が、強力な魔獣を狩ることで、日々の鬱憤と有り余る承認欲求を満たしていることを知っていたからだ。
森の奥深く、巨大なグリフォンが咆哮を上げている。
その巨体に、小柄な影が、弾丸のような速さで何度も何度も食らいついていた。
デルタだ。彼女の強靭な爪と牙が、グリフォンの硬い鱗を容赦なく引き裂いていく。
僕もまた、偶然を装って、そのグリフォンを狙っていた。
そして、デルタが、そして僕が、同時に、グリフォンの心臓目掛けて、最後の一撃を放った。
巨大な魔獣が、断末魔と共に倒れ伏す。
その首筋には、デルタの爪痕と、僕の剣が、寸分違わぬ深さで突き刺さっていた。
「あ"?お前、誰だ!こいつはデルタが仕留めたんだ!」
案の定、デルタは牙を剥き出しにして、僕を威嚇してくる。
彼女の思考はシンプルだ。獲物は、強い者のもの。
「ああ、そうだな。君の一撃が、俺よりも少しだけ早かったようだ。見事な狩りだった」
僕は、あっさりと剣を引き抜き、獲物の所有権を彼女に譲った。
そして、懐から取り出した、特製の干し肉を一枚、彼女に差し出す。
「これは、俺が作ったものだ。よかったら、食べてみてくれ。君のような強い戦士への、敬意の印だ」
デルタは、訝しげに干し肉の匂いを嗅いだが、その芳醇な香りに、獣人としての本能が抗えなかったようだ。
大きな口でパクリと食べると、その目を、これでもかというくらい大きく見開いた。
「なっ…!う、うまい!なんだこれ!こんなうまい肉、初めて食った!」
「はは、気に入ってくれて何よりだ」
僕は、彼女の、子供のように純粋な反応に、心からの笑みを向けた。
そして、彼女の頭を、優しく、わしゃわしゃと撫でてやる。
「君は、本当に強いんだな。その力強い爪も、鋭い牙も、何より、獲物を追い詰めるその狩人の瞳も、最高に美しい。君は、この森で一番、強くて美しいハンターだ」
シャドウとは違う。
ただ「よくやった」と褒めるだけじゃない。
彼女の存在そのものを、その強さを、美しさを、僕は心の底から肯定する。
デルタは、呆気に取られたように、僕の手の中で固まっていた。
今まで、こんな風に扱われたことなど、一度もなかったからだ。
力でねじ伏せられるか、犬のように扱われるか。
そのどちらかだった彼女にとって、僕の行動は、未知との遭遇だった。
「お、お前…」
デルタの頬が、ほんのりと赤く染まっている。
「お前、名前はなんて言うんだ!」
「カイトだ」
「カイト!デルタ、お前のこと気に入った!また、一緒に狩りに行くぞ!この干し肉も、もっと食わせろ!」
一方的で、乱暴で、でも、どこまでも素直な彼女の要求。
僕は「ああ、いつでも歓迎するよ」と、快くそれを受け入れた。
彼女の中で、僕はもう「獲物をくれた、うまい肉を持つ男」から、「私を撫でて、褒めてくれる、強くて優しいオス」へと、その認識を上書きされたに違いない。
ーーーーー
こうして、僕は七陰のうち、特に個性の強い三人との、印象的な出会いを果たした。
・アルファの独白
アジトに戻り、自室の鏡の前に立った私は、そこに映る自分の顔から視線を逸らした。
頬が、微かに熱を持っている。
あの男…カイトと名乗った冒険者の、真っ直ぐな瞳が脳裏に焼き付いて離れない。
『これほどの美しさと気高さを兼ね備えた女性が…』
『君のような美しい人と話せるなら、どんな報酬よりも価値がある』
あの男は、私をシャドウガーデンのアルファとしてではなく、ただ一人の〝女〟として見た。
組織の頭脳でも、シャドウ様の右腕でもない。
私の内にある〝エルフのアルファ〟という個の価値を、いとも容易く見抜き、そして、心の底から賞賛した。
シャドウ様から与えられる評価とは、全く違う。
あれは、もっと個人的で、甘く、心を直接揺さぶるような響きがあった。
今まで感じたことのない感覚。リーダーとしての重責を忘れさせるような、ただの女としての自分が、胸の奥で疼き出す。
おかしいわ、私としたことが。
あの男は危険だ。シャドウ様という絶対的な光を持つ私たちが、他の男に心を乱されるなど、あってはならない。
…でも、思い出してしまう。
私を庇うように立ち、圧倒的な力で敵を無力化した、あの頼もしい背中を。
私に向けられた、蕩けるように優しい眼差しを。
…次に会う時、私は、どんな顔をして彼と話せばいいのかしら。
シャドウガーデンのアルファとして?それとも…。
ふと、彼の言った言葉が蘇る。
『君のおすすめの店で食事でも』社交辞令かもしれない。
でも、もし、もしも本気なのだとしたら…。
いけない。何を考えているの、私は。
それでも、胸の高鳴りは、どうしても収まってはくれなかった。
・ベータの述懐
図書館から戻り、ペンを握っても、一文字も書き進めることができない。
私の頭の中は、今日出会ったカイトという男性のことでいっぱいだった。
『君は素晴らしい文才を持っているんだね』
『君はきっと、歴史に名を残す偉大な作家になる』
彼は、私のこの文章を、シャドウ様の武勇伝を記すための〝記録〟としてではなく、私自身の魂から生まれた〝物語〟として評価してくれた。
シャドウサーガを執筆する喜びとは違う。
私の内側から湧き上がる、純粋な創作意欲そのものを、彼は見抜き、そして肯定してくれたのだ。
嬉しかった。誰かに、こんな風に認められたのは初めてだったから。
いつもアルファの完璧な影に隠れ、記録係という役割の中でしか自分の価値を見出せずにいた私にとって、彼の言葉は、乾いた心に染み渡る甘い蜜のようだった。
シャドウ様は、私の神様。私のすべてを捧げるべき、絶対的な存在。
その気持ちに、一片の曇りもない。
でも、カイトさんと話している時の、この胸のときめきは、何なのだろう。
まるで、私が描く恋愛小説のヒロインになったみたいに、心臓が甘く締め付けられる。
…また、会える。私たちは、次に会う約束をした。
次に会う時、私は彼に、どんな物語を語ればいいのだろう。
シャドウ様の偉大さ?それとも…私が、本当に描きたいと願っている、まだ誰にも見せたことのない、私だけの物語…?
考えているだけで、指先が熱くなる。早く、彼に会いたい。
そして、私の物語の、最初の読者になってほしい。
そんな、今まで知らなかった感情が、私の中で確かに芽吹いていた。
・デルタの記憶
森からアジトに帰って、もらった干し肉を大事に食べてる。
うまい。すっごくうまい!でも、それよりもっと、デルタの頭の中はいっぱいいっぱいだった。
カイト。あいつ、すっごく強かった。
デルタと同じくらい。でも、デルタを力で押さえつけたりしなかった。
『君は、本当に強いんだね』
『最高に美しいハンターだ』
あいつは、デルタの頭を、優しく、わしゃわしゃって撫でた。
シャドウ様が撫でてくれるのとは、違う。
もっと、なんか、心がぽかぽかする撫で方だった。
それに、すっごくいい匂いがした。
ボスは、シャドウ様だけ。それは、絶対。でも、カイトは…。
あいつは、デルタを犬みたいに扱わない。
一人の強い戦士として見て、褒めてくれた。
それが、すっごく、すっごく嬉しかった。
胸のところが、きゅーってなって、変な感じ。
もっと撫でてほしい。もっと、うまい肉が欲しい。
そして、もっと、あいつの隣で、狩りがしたい。
あいつと一緒なら、もっと強いやつを倒せる気がする。
そしたら、あいつは、またデルタのこと、いっぱい褒めてくれるかな。
「デルタはすごいな」って、あの優しい目で、また頭を撫でてくれるかな。
次に会えるのが、すっごく楽しみ。待ちきれない。
早く、早く、カイトに会いたい!
***
そして、数日が過ぎた、ある夜のことだった。
僕が冒険者ギルドで依頼の報告を終えると、預けていた魔道具が、静かに振動した。
表示されたのは、アルファからの通信だった。
『カイト、私よ。この前の、礼がしたい。明日の夜、時間は作れるかしら』
その文面は、シャドウガーデンのリーダーとしての上から目線のものではなく、どこか緊張を滲ませた、一人の女性からの、控えめな誘いだった。