秋の夕暮れ、夕焼けが窓辺を染める頃、千里は台所で夕食の支度に勤しんでいた。32歳の彼女は、家庭的で優しい良妻賢母そのもの。夫と息子に囲まれた穏やかな日々を送っていた。
しかし、その平穏は、ある日突然、崩れ去ることになる。
「良夫君のお母さん、ちょっと話があるんです。」
息子の友達、隆司が突然訪ねてきた。まだ少年らしい面影を残す彼は、しかし、その瞳に不思議な光を宿していた。千里は、息子の友達ということもあり、警戒心を抱かずに応対した。
「どうしたの、隆司くん?何かあったの?」
「実は……僕、千里さんが好きなんです。付き合ってください!」
突然の告白に、千里は面食らった。息子の友達からこんな言葉をかけられるとは、夢にも思わなかった。彼女は思わず笑ってしまったが、隆司の目は真剣そのものだった。
「隆司くん、そんなこと言っても……私はもうおばさんだし、あなたはまだ子供でしょ?」
しかし、隆司は引かなかった。彼は千里の手を掴み、真剣な表情で言った。
「僕は本気です。千里さんが好きでたまらないんです。」
その瞬間、隆司は千里の胸に手を伸ばした。突然の行動に、彼女は驚いて彼を押し返し、
平手打ちを食らわせた。
「何するの!隆司くん、もう帰って!」
千里は隆司をドアの向こうに押し返して、バタンと閉じた。
ドアの向こうで隆司の足音が去ってゆくのがわかった。。
「ふー、なんなのあの子…突然、こんな私に…でも、本気?、あの眼差し…」
ドアの内側で、千里の胸は高鳴っていた。
その鼓動は、まるで誰かに見透かされているかのように、激しく、甘く、そして危うい。
少年の初々しい憧れなどではなく、もっと深く、もっと危険な何かが、彼女の心を捉えている。
それは、大人の女が感じる、禁断の誘惑の香りだった。
彼女の指先が、無意識に襟元に触れる。そこから伝わる自分の鼓動に、思わず息が詰まる。
あの子の言葉、あの子の視線、あの子の存在そのものが、彼女の日常を揺るがしていた。
でも、今は…。
「ただいまー!」
息子の明るい声が、千里の官能的な思考を断ち切った。
彼女は深呼吸をし、母としての顔に戻る。夕食の支度、宿題の確認、お風呂の準備……日常のルーティンが、彼女の心を穏やかに整えていく。
あの子のことは、まるで夢だったかのように、その日のうちに忘れ去られていった。
夕暮れの光が部屋を包み、千里は窓の外に目をやりながら、ふとつぶやく。
「ま、おばさんの私にそんなことないか」
彼女の胸の高鳴りは、日常の喧騒に溶け込み、彼女の記憶の奥底に静かに沈んでいった。
少なくとも、その日は。
でも、話はそれで終わりはではなかった。