※この作品はR-18です。

もし、ヒロイン達が『最後の一線♡』を超えたなら 〜キスシーンで終わり? 朝チュンでごまかす? …「お約束」で守られた純潔なんて、もう、いらない♡〜   作:のびすけ。

1 / 14
プロローグ
脚本(シナリオ)にない、わたしたちの夜


これは、いつも「いいところ」で物語の幕が下ろされてしまう、数多の世界のヒロインたちが、自らの意思で運命を切り拓く物語。

 

わたしたちの世界は、いつだって煌めいている。

アニメ、漫画、ライトノベル、ゲーム…。それぞれの物語(セカイ)で、わたしたちは恋をして、胸を焦がしてきた。

 

友達だったはずの男の子が、いつの間にか一人の“オス”に見えて、その視線だけで身体の奥がキュンと熱くなる。些細なことで喧嘩して、すれ違って、それでもどうしようもなく惹かれ合って…。

 

そして、物語が最高潮に達したとき、わたしたちは愛する人と唇を重ねる。

初めて触れる彼の唇は、想像していたよりもずっと柔らかくて、熱くて。

 

彼の匂いがすぐ側にあって、心臓が爆発しそうなくらいドキドキして、脳みそがとろけてしまうほどの甘い幸福感に包まれる。

 

(ああ、好き…大好き…!)

 

この時間が、永遠に続けばいいのに。

でも、なぜかしら? わたしたちの物語は、いつも、必ず、そこで終わるの。

 

唇が離れた瞬間、世界から音が消える。

彼の驚いた顔、わたしの真っ赤な顔、そのすべてが夕焼けに照らされて一枚の絵みたいになって、そのまま暗転。

 

あるいは、もっと意地悪な脚本(シナリオ)だと、いわゆる“朝チュン”で誤魔化されてしまう。隣で眠る彼の寝顔に微笑んで、シーツを胸元まで引き上げて…でも、肝心な“夜”の記憶は、どこにもない。

 

まるで最初から存在しなかったみたいに、わたしたちの身体からは何もかもがリセットされて、また何事もなかったかのように、騒がしい日常が始まっていく。

 

(違う…)

 

(わたしが欲しかったのは、こんな中途半端な結末じゃない…!)

 

キスだけで満足できるなんて、嘘。

本当は、もっと先がしたい。

 

彼の熱い肌に、この指で直接触れたい。服に隠された、筋肉の硬さを確かめたい。

わたしの知らない、もっと奥深くにある彼の獣みたいな顔が見たい。

 

そして、わたしのこの身体の熱を、彼のすべてで受け止めてほしいのに…。

 

中には、物語の都合で、メインヒロインという“役割”を与えられなかった子もいる。

主人公への想いをずっと胸に秘めたまま、親友のポジションで笑っている子。

 

そもそも、恋愛対象として見てもらえる相手すらいない世界で、ただ孤独に戦い続けている子。

そんな彼女たちだって、恋をしたい。

誰かに愛され、その腕の中で甘くとろけるような夜を過ごしてみたいと、心の奥でずっと叫んでいる。

 

(大好きなあの人の、すべてを受け入れたい…)

(わたしのすべてで、応えたい…)

(メインヒロインじゃないけど、わたしだって、恋がしたい…!)

 

そんな、誰にも届かないはずだった声なき声、身体の奥底で渦巻く疼きが、ある日、奇跡を起こした。

 

ふっと、意識が途切れる。

愛しい彼とのキスが終わった、その直後。あるいは、報われない想いに涙した、その夜。

次に目を開けたとき、わたしたちは一つの場所にいた。

 

そこは、物語と物語の狭間。

始まりも終わりも存在しない、真っ白な光だけで構成された、無限の空間。

 

床も、壁も、天井もない。

ただ、母の胎内にいた頃の記憶のように、温かく、柔らかな光が全身を包み込んでいる。

静かで、どこか神聖で、でも、これから何かが“始まる”予感に満ちた場所。

 

「……ここは?」

 

最初に誰かが呟いた。

見渡せば、一人、また一人と、少女たちの姿が光の中から現れる。

 

それぞれが見たこともない制服やドレス、戦闘服に身を包んでいる。

最初は誰もが戸惑い、警戒し、お互いに距離を取っていた。

でも、すぐに気づいてしまった。

 

(この子たちも、わたしと“同じ”なんだ…)

 

瞳を見ればわかる。

その奥に宿っている光は、恋に焦がれる乙女だけが持つ、切なくて、甘くて、そしてどこか物欲しそうな、潤んだ光。わたしたち全員が、それぞれの世界で“ヒロイン”という役割を与えられ、そして、同じ「渇き」を共有しているのだと。

 

「え、マジ!? みんな違うアニメの子じゃない!? ヤバ!」

最初に沈黙を破ったのは、ギャルっぽい見た目とは裏腹に、その瞳に純粋な恋心を宿した少女だった。

太陽みたいな笑顔で恋に突き進む、コスプレイヤー 喜多川海夢(きたがわ まりん)。

 

彼女の天真爛漫な声に、他のヒロインたちも少しずつ警戒を解いていく。

 

「(ここはどこですの…?それに、この方たちは一体…)」

プライド高き氷の令嬢は、扇子で口元を隠しながらも、その頭脳で冷静に状況を分析していた。

天才の頭脳で恋の駆け引きに挑む、恋愛素人のお嬢様 四宮かぐや(しのみや かぐや)。

 

「ふむ…この空間に毒物や薬物の類は検知できないな。となると、集団幻覚か?」

薬師の少女は、自分の髪を少し口に含みながら、プロフェッショナルな視点で周囲を観察する。

薬と毒を愛し、権力者の謎を解く、そばかすの薬師 猫猫(まおまお)。

 

「……シュタルクは、どこでしょう」

むすっとした表情で、むくれたように呟くのは、千年を生きるエルフの弟子。

無愛想な態度の下に、不器用で深い愛情を隠す魔法使い フェルン。

 

「(まさか、これは敵対組織の罠…!? ロイドさんやアーニャさんはご無事でしょうか…!)」

おっとりした見た目とは不釣り合いな殺気を、その身に宿す殺し屋の妻。

偽りの家族を守るため、天然で最強の暗殺者 ヨル・フォージャー。

 

「あんたたち、馴れ合ってる場合じゃないでしょ! まずは状況を把握するのが先決よ!」

元天才子役は、苛立ちを隠さずに声を荒らげる。その瞳には、報われない恋への焦りが滲んでいた。

誰よりも努力家で、アイドルの輝きと恋に悩む元天才子役 有馬かな(ありま かな)。

 

「まあまあ、落ち着いて。ね? ここ、なんだか悪い場所じゃない気はしない?」

そんな場を、人懐っこい笑顔でとりなすのは、赤いリボンの少女。

天才的な戦闘センスと、命の期限を背負って今を生きるリコリス 錦木千束(にしきぎ ちさと)。

 

「……からかってる、わけじゃないんだよね?」

いつも自信満々な彼女も、さすがにこの状況では不安げに呟く。

“からかい”という名の愛情表現で、好きな人を翻弄する中学生 高木さん(たかぎさん)。

 

「わ、わたしは、我が名はめぐみん! この状況、我が爆裂魔法をもってすれば…!」

虚勢を張る紅魔族の少女。けれど、その声は少しだけ震えていた。

爆裂魔法だけを愛し、一途な想いを秘めるアークウィザード めぐみん。

 

そして、声も出せずにただただ震えている、ギターケースを抱きしめた少女。

極度の人見知りでありながら、ギターヒーローとして輝く結束バンドの天才 後藤ひとり(ごとう ひとり)。

 

他にも、数えきれないほどのヒロインたちが、この白い空間に集められていた。

誰もが戸惑い、不安に揺れる中、突如として、空間そのものが語りかけるように、穏やかで、けれど抗うことのできない、神聖な声が響き渡った。

 

「おめでとう、愛を渇望する乙女たちよ」

 

声の主は見えない。男のようでもあり、女のようでもあり、あるいはそのどちらでもない、ただ純粋な意志としての“声”。

 

「君たちは、選ばれた。自らの物語の“続き”を紡ぐ権利を、その手に得たのだ」

 

「…続き、ですって?」

 

かぐやが、訝しげに呟く。

声は、それに答えるように続けた。

 

「そうだ。君たちの使命は、ただ一つ」

 

「元の世界に戻り、自らの意思で、愛する人と『最後の一線』を超えること」

 

「あるいは、新しい恋を見つけ、めくるめく快感にその身を委ねること」

 

「「「「「…………え?」」」」」

 

ヒロインたちの思考が、一斉に停止する。

 

「さ、最後の一線…って…」「え、えっちなこと、しろってこと…?」「わ、わたし、まだ心の準備が…!」

 

顔をトマトのように真っ赤にして俯く者。ありえない、と首を横に振る者。

そんな中、海夢や千束のように「え、なんか面白そうじゃん!」と目を輝かせる者も少数ながらいた。

 

それは、物語の“お約束”や“予定調和”に対する、ささやかで、しかし偉大な反逆の勧め。

わたしたちがずっと心の奥底で望んでいた、禁断の果実への誘い。

 

でも、いざそれを目の前に突きつけられると、心は揺れる。

恥ずかしい。怖い。もし、彼にそんなことを求めて、嫌われたらどうしよう…?

今まで経験したことのない、未知の領域。身体がどうなってしまうのかも、わからない。

 

「恐れることはない」

 

声は、わたしたちの葛藤を見透かしたように、優しく語りかける。

 

「それは、君たちが“ヒロイン”という役割から解き放たれ、一人の“オンナ”として、真実の幸福を掴むための、祝福の儀式なのだから」

 

祝福の、儀式…。

その言葉が、わたしたちの胸にすとんと落ちてきた。

そうだ。これは罰じゃない。わたしたちが、もっと幸せになるための、チャンスなんだ。

 

(もう、待っているだけじゃ嫌)

 

誰かの心の声が、静寂に響く。

それは、わたし自身の声でもあった。

 

(脚本に書かれたキスだけで、満足したフリをするのは、もうやめたい)

 

(わたしが、欲しいの)

 

(あなたの愛も、あなたの身体も、あなたの未来も、わたしの全部で受け止めて、めちゃくちゃに愛したい…!)

 

最初に一歩、前に踏み出したのは、めぐみんだった。

彼女は、決意を固めた瞳で、何もない空間をまっすぐに見据えた。

 

「わたしは…行きます。カズマの、特別になるために!」

 

その勇気が、伝播する。

一人、また一人と、ヒロインたちが顔を上げた。

恥じらいながらも、迷いながらも、その瞳の奥には、確かな意志の光が灯っていた。

 

これは、脚本(シナリオ)に抗い、自らの愛と性欲に正直になることを決めたヒロインたちが、最高の快感と真実の愛を掴み取り、誰も見たことのないハッピーエンドへと至るまでの、甘く、淫らで、ちょっぴり切ない、めくるめく官能の英雄譚(サーガ)。

 

さあ、ページをめくって。

彼女たちの、本当の物語を始めましょう?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。