もし、ヒロイン達が『最後の一線♡』を超えたなら 〜キスシーンで終わり? 朝チュンでごまかす? …「お約束」で守られた純潔なんて、もう、いらない♡〜 作:のびすけ。
ひたぎエンゲージ
(これは、阿良々木くんとわたしが、本当の意味で重さを分かち合う、そんな夜の、ほんの序章の物語)
学習机の椅子に腰かけた阿良々木くんの膝の上に、わたしは後ろ向きに座っている。
彼の体温が、薄いワンピース越しにじんわりと伝わってきて、なんだか悪いことをしている気分になるわ。
もちろん、これからするのは、とびきりいけないことなのだけれど。
「ねぇ、阿良々木くん」
わたしは首だけをゆっくりと彼の方へ向ける。
近い。
吐息がかかる距離で、彼の瞳が揺れているのがわかる。
「わ、わたしを…その、なんだ…全部、受け止める覚悟はできたかしら?」
(…なんて、古典的な言い回しだったかしら。まるで昭和の恋愛ドラマね)
(でも、今のわたしには、これくらいの言葉しか出てこない)
(だって、心臓がうるさくて、指先が痺れて、期待と不安で蕩けてしまいそうなんだもの)
阿良々木くんは、わたしの言葉に少しだけ目を見開いて、それから蕩けるように優しい顔で微笑んだ。
「覚悟なんて、とっくにできてる。戦場ヶ原が、俺に全部くれるっていうなら…俺は、全部もらうよ」
彼はわたしの腰に回していた手を、そっと頬に添えてくる。
ごつごつしているけれど、あたたかくて、大きな手。
わたしの全てを暴いて、そして全てを許してくれる、優しい手。
そのまま、吸い寄せられるように、唇が重なった。
最初は、触れるだけのやさしいキス。
まるで壊れ物を扱うみたいに、そっと。
かわいい、お子様みたいなキス。
(…ふふっ、かわいいのは、阿良々木くんのほうよ)
(そんなに緊張しなくても、わたしはどこにも逃げたりしないのに)
わたしは彼の首に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。
もっと、阿良々木くんを感じたい。
彼の匂い、彼の心臓の音、彼の熱…わたしの全てを、彼の情報で満たしてしまいたい。
「ん…♡」
応えるように、彼の舌がわたしの唇をこじ開けて入ってきた。
さっきとは違う、深くて、濃密なキス。
角度を変えるたびに、くちゅ、と微かな水音が響く。
脳が痺れて、思考が真っ白に塗りつぶされていく。
(だめ…こんなキスだけで、腰が抜けちゃいそう…♡)
唇が離れたときには、どちらのものか分からない唾液の糸が、きらりと光って垂れていた。
はぁ、はぁ、と彼の荒い息遣いが耳をくすぐる。
「戦場ヶ原…」
掠れた声でわたしの名前を呼んで、今度は耳たぶに唇を寄せた。
「ひゃぅっ…♡」
ちゅ、と吸われて、思わず猫みたいな声が出た。
ぞくぞくと背筋を駆け上がっていく、甘い疼き。
全身の力が抜けて、彼の腕に体を預けるしかできなくなる。
(…ああ、もう、だめ)
(わたしの知らないわたしが、どんどん暴かれていく)
(阿良々木くんが触れるたびに、わたしの身体が、わたしのものではなくなっていくみたい…♡)
彼の顔が、わたしの首筋を、鎖骨を、ゆっくりと下っていく。
その唇が次にどこへたどり着くのか、わたしはもう、予感していた。
心臓が、破裂しそうなほどに、高鳴っていた。
阿良々木くんの唇が、わたしの身体をゆっくりと旅していく。
その軌跡が、まるで新しい星座を描くみたいに、熱の痕を残していく。
わたしは、彼の首に腕を回したまま、されるがままに、そのすべてを受け入れていた。
(違う…これは、わたしが望んだこと)
(この人に、阿良々木くんに、わたしのすべてを暴いてほしかった)
(過去の汚れた記憶なんて、この人の熱で、ぐちゃぐちゃに溶かして、上書きしてほしかったの)
ワンピースの薄い生地の上から、彼の手がおっぱいを優しく揉む。
「んっ…♡」
びく、と身体が震えた。
初めて触れられる、女の子の場所。
手袋越しの愛撫とは違う、直に伝わる彼の体温が、恥ずかしくて、でも、たまらなく気持ちいい。
「戦場ヶ原…意外と、大きいんだな…」
「…当たり前でしょう?阿良々木くんのために、今日まで大事に育ててきたのだから♡」
強がりを言ってみせるけど、声が震えているのが自分でもわかる。
彼の手が、乳輪をなぞり、内側へ、内側へと近づいてくる。
頂点に触れるか触れないかの距離で、くるくると円を描く意地悪な指。
(あ…だめ…そんな、やらしい触り方…♡)
「んぅ…っ、あ、ぁ…♡」
じらされた末に、きゅっと乳首がつままれる。
同時に、彼の唇がもう片方を覆って、ちゅ、と吸い上げた。
「ひゃぅううっ!?♡♡」
脳天まで突き抜けるような、強い、強い快感。
全身の力が抜けて、阿良々木くんの膝の上で、ぐにゃりと身体が蕩けていく。
脇腹を撫でられ、お尻をわしづかみに揉まれて、もうどこがどうなっているのか分からない。
ただ、彼の触れる場所すべてが、信じられないくらい、気持ちいい。
「戦場ヶ原…脱がしても、いいか…?」
「…今更、なにを言っているのかしら。好きにして、阿良々木くん。わたしは、全部、あなたのものよ…♡」
彼の指が、ワンピースの背中のジッパーにかけられる。
その瞬間を、わたしは固唾をのんで見守った。
過去のトラウマが、亡霊のように脳裏をよぎる。
――大丈夫。この人は、違う。わたしを傷つけたりしない。
ジッパーが下りて、ワンピースがはらりと床に落ちる。
彼の息を呑む音が、静かな部屋に響いた。
「…きれいだ…」
その一言で、わたしの心は救われた。
わたしは、彼の手を取って、自分のパンツの上へと導く。
もう、びしょびしょだった。愛液で重くなったレースの生地が、糸を引いて彼の指に絡みつく。
「…すごい、濡れてる…」
「…誰のせいだと、思っているの…?♡」
彼が、おずおずと指でヴァギナのあたりを撫でる。
布一枚を隔てただけの刺激が、もどかしくて、甘酸っぱい。
わたしは彼の肩に顔をうずめて、その愛撫をねだるように腰を揺らした。
「んっ…んちゅ…♡ もっと、さわって…♡」
パンツがゆっくりと脱がされていく。
そして、わたしのすべてが、彼の眼前に晒された。
「…阿良々木くん…お願い…なめて、ほしいの…♡」
わたしの、生まれて初めての、欲望。
彼が少しだけ躊躇したのがわかった。童貞の彼には、少しだけ刺激が強すぎたのかもしれない。
でも、すぐに覚悟を決めたように、わたしの足の間に顔をうずめた。
「んんっ…!♡」
温かくて、柔らかい舌が、大陰唇のまわりをぺろりと舐め上げた。
びくん、と腰が跳ねる。
そのまま、ヴァギナの入り口を、舌先でなぞっていく。
(あ、あ、あ…♡ なに、これぇ…♡)
知らない感覚に、頭がぐちゃぐちゃになる。
そして、彼の舌が、一番感じるところ――クリトリスに、触れた。
「ひっ…!あ、ぁあああっ!!♡♡」
皮の上からなのに、ごり、ごり、と硬い芯を擦られる感覚。
今まで感じたことのない種類の快感が、背骨を駆け上がっていく。
わたしは彼の頭を抱きしめて、喘いだ。
「だめっ、そこ、いちばん、だめぇっ…♡」
懇願は、催促に聞こえたのかもしれない。
彼が、指でそっと皮を剥いて、隠されていたそれを、直接舌で舐め上げた。
「ああああああああーーーーーっっ!!!!♡♡♡」
コリコリ、コリコリコリ…!
ダイレクトな刺激に、もう声も出ない。
ビクンビクンと痙攣するわたしの腰を押さえつけて、彼は舌で膣内をねぶるように抉ってくる。
じゅる、じゅる、と生々しい音が響き渡る。
「いくっ、いっちゃううううっ!!♡♡」
クリトリスを舌先でとんとんと突かれて、もう我慢の限界だった。
膣の奥から、熱いものがこみ上げてくる。
「あ、あ、あ、あくめぇええっ!!!」
ビュッッ!!
自分でも信じられないくらいの量の潮が、彼の顔めがけて噴き出した。
びちゃびちゃ、と音がして、彼の髪や顔を濡らす。
「はぁっ、はぁっ、ごめんなさい…」
「…ううん。すごく、きれいだよ、戦場ヶ原…」
愛液で濡れた顔のまま、彼は優しく微笑んだ。
その顔を見て、わたしは、もう、どうしようもなく、彼のおちんちんが欲しくなった。
「阿良々木くん…もう、いれて…♡ わたしの中に、阿良々木くんの、おっきいおちんちん、いれてください…♡」
彼が服を脱いで、その逞しいおちんちんを露わにする。
亀頭を赤黒く濡らして、びくびくと脈打っている。
わたしは足を大きく開いて、それを受け入れる準備をした。
彼のおちんちんの先が、濡れたヴァギナの入り口に押し当てられる。
ぬるり、とした感触。
「んぅう…♡」
クリトリスを擦られて、また変な声が出た。
彼は、すぐには入れてくれない。
亀頭の先だけを入り口に埋めたまま、焦らすように、わたしの乳首を吸う。
「や…♡ はやく、いれてぇ…♡ おねが、い…♡」
わたしの懇願を聞いて、彼が、ゆっくりと腰を沈めてきた。
「…いっ…!」
皮膚が裂けるような、鋭い痛み。
でも、それ以上に、彼と繋がれた喜びが、わたしの全身を支配する。
半分ほど入ったところで、彼は一度動きを止めた。
「…痛いか…?」
「…大丈夫。…うれしい、だけよ…♡ だから、全部、奥まで、いれて…?」
わたしの言葉に頷いて、彼が、最後の一線を越えてくる。
ずぶり。
鈍い音を立てて、彼のおちんちんが、わたしのすべてを貫いた。
「…は、ぁ…♡ はいってる…阿良々木くんが、わたしの中に、ぜんぶ…♡」
膣内が、彼の形で満たされる。隙間なく、みちりと。
慣れるのを待ってくれていた彼が、そろりと腰を動かし始めた。
ぬぷ…、ぬちゅ…
「んっ…♡ あ、ふ…♡ きもち、いぃ…♡」
ゆっくりとした動きが、だんだんと早くなっていく。
わたしの喘ぎ声に合わせて、彼の腰つきも、激しさを増していく。
ぐちゅ、ぐちゅ、ずぷんっ!
「あ、あああっ!♡♡ そこっ、そこ、きもちいいのおおおっ♡♡」
子宮の入り口を、ごり、ごりと彼の固いおちんちんで抉られる。
もう、めちゃくちゃだった。
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
肉と肉がぶつかり合う、いやらしい音。
ぐじゅ、ぐじゅ、とヴァギナが鳴る音。
「ひたぎっ…!!」
「あららぎ、くぅん…!♡ もっと、もっと激しく、ついてぇえええ!!♡♡」
お互いの名前を呼び合って、獣みたいに腰をぶつけ合う。
彼のペニスが、膣の奥で、びくん、びくん、と脈打つのがわかった。
「いくっ…!ひたぎ、だすっ、中に、だすから…!!」
「いいっ…♡ 全部、わたしのなかに、全部だしてぇええっ!!♡♡」
彼が、わたしの奥の奥で、熱いものを解き放つ。
びゅくっ、びゅくっ、と子宮に精子が注ぎ込まれる感覚。
「ああああああああああーーーーーーーっっっ!!!!♡♡♡♡」
彼が射精するのと、わたしがアクメに達するのは、まったく同時だった。
痙攣するわたしを、彼は優しく抱きしめて、何度も、何度も、キスをしてくれた。
これが、わたしの、初めてのセックス。
わたしの身体も、心も、すべてが、この人のもので満たされた、記念すべき夜。
ーーーーー
空っぽになったはずの身体の奥で、新しい熱が、再びじんわりと灯り始める。
阿良々木くんの腕の中で、わたしは彼の心臓の音を聞いていた。
とくん、とくん、と力強くて、優しいリズム。
わたしのために、こんなにも激しく動いてくれた、愛おしい音。
「…阿良々木くん、のど、渇かない?」
「え…? あ、ああ…」
わたしは彼の腕からそっと抜け出し、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。
まず、わたしが一口、水を含んだ。
そして、ベッドに戻り、まだ少し呆然としている彼の唇に、自分の唇を重ねる。
「ん…っ!?」
こくり、と喉を鳴らして、彼がわたしからの口移しを受け入れた。
冷たい水が、熱い舌と舌の間を通り抜けていく。
なんて、いけない遊びだろう。
「…ふふっ。これで、元気、出たかしら?♡」
「…戦場ヶ原は、俺を殺す気か…」
潤んだ瞳でわたしを見る阿良々木くんを、わたしはベッドの上に押し倒した。
そして、彼の上に跨る。
「殺しはしないわ。ただ…もっと、阿良々木くんをめちゃくちゃにしてあげたいだけ♡」
対面座位。
彼の顔が、すぐそこにある。
わたしは、彼のおちんちんを自分の手で掴み、ゆっくりと、愛液で濡れたヴァギナに導いた。
ずぶ、ずぶ、ずぶ…
「んぅうう…♡♡」
今度は、痛みなんてない。
ただ、彼のすべてを受け入れる、とろけるような快感だけ。
根元まで完全に飲み込むと、わたしは彼の肩に手を置いて、そっと腰を上下させ始めた。
「…ひたぎ…」
「なぁに…? あららぎ、くん…♡」
きしり、とベッドが軋む音。
ぬちゅ、じゅく…と、いやらしい水音。
自分の体の中で、彼のおちんちんが動いているのが、全部見える。
恥ずかしくて、でも、興奮でどうにかなりそうだった。
「…自分で動かすのって…こんなに、きもち、いいのね…♡」
「っ…!ひたぎ、あんま、かわい、こと言うな…!」
わたしは彼の言葉を無視して、彼の瞳を見つめたまま、キスをした。
深い、深いキスをしながら、腰を揺らす。
彼の好きな場所、Gスポットを、自分のおちんちんの角度で、ぐり、ぐりと押し付ける。
「あ、あ、あああっ♡♡ そこ、だめぇっ、すきぃっ♡♡」
「ひたぎっ…!俺、もう…!」
彼の腰が、びくん、と大きく跳ねた。
もう、限界が近いのがわかる。
「まだ、だめよ♡ わたしと、一緒じゃなきゃ…♡」
わたしは動きをさらに激しくする。
上下だけでなく、ぐるり、と腰を回して、膣内を隅々まで彼のおちんちんで掻き回す。
「ああああああんっ♡♡ おかしくなっちゃうううううっ♡♡」
じゅくじゅくと、愛液が溢れて、太ももを伝っていく。
彼もわたしも、汗と愛液でぐっしょりと濡れていた。
そして。
「ひたぎぃいいいっ!!」
「いっしょに、いくううううううっ!!♡♡」
彼が二度目の精子をわたしの中に注ぎ込むのと、わたしの膣が痙攣して彼を締め上げるのは、同時だった。
愛情たっぷりの、とろけるように甘い、二度目のアクメ。
ーーーーー
二度目の絶頂の余韻で、わたしは彼の胸に顔をうずめて、ぐったりとしていた。
もう、指一本動かせないくらい、満足していた。
…はずだった。
「…ねぇ、阿良々木くん」
「…なんだ?」
「…わたし、まだ、足りないみたい」
彼の腕の中で、わたしはくるりと身体の向きを変えて、四つん這いになる。
大きく突き出したお尻を、これみよがしに、左右にふりふり、と振ってみせた。
「…犬みたいに、めちゃくちゃに、犯してほしいの…♡」
それは、わたしの中に残っていた、最後の毒。
過去のトラウマへの、わたしなりの決着の付け方。
阿良々木くんは一瞬だけ息を呑んだけど、すぐに、わたしの意図を理解してくれた。
「…わかった。ひたぎが、めちゃくちゃになりたいって言うなら」
背後から、三度、彼のおちんちんがわたしを貫く。
今までの優しさが嘘のような、激しい、突き上げるようなピストン。
ぐっぷ、ずどんっ!ぐちゅ、ぐちゅぐちゅっ!
「あっ、あっ、あっ、あああああああっ!!♡♡♡」
子宮の奥を、えぐるように、何度も何度も突かれる。
さっきイったばかりなのに、もう、身体の奥が、ずくん、ずくん、と疼き始める。
「や、だめっ、はや、いぃいいっ!!♡♡」
イキながら、イカされる。
一度目のアクメの波が来た瞬間、彼はさらに奥を抉って、二度目の波を無理やり呼び起こす。
「あああああっ!こわれ、るっ、ひぎっ、うぐっ…!」
快感が、許容量を、超える。
頭が真っ白になって、口からは意味をなさない声が漏れるだけ。
さらに、彼はわたしのクリトリスを指で激しくこすりあげた。
「あああああああああああああ!!!!!!!」
三度目の、特大のアクメ。
もう、失神寸前だった。
喘ぎ声も上げられなくなって、わたしはただ、ぐったりとベッドに突っ伏す。
それでも、阿良々木くんのピストンは、止まらない。
意識が遠のく中で、わたしの身体は、彼の欲望のままに、ただ揺さぶられ続けていた。
ーーーーー
どれくらいの時間が経ったのかしら。
気づけば、わたしは阿良々木くんの腕の中で、優しく抱きしめられていた。
激しいセックスの後、痙攣していた身体を、彼がずっと撫でてくれていたらしい。
「…ごめん…なさい。…めちゃくちゃ、だったわ…」
「ううん。全部、受け止めるって言っただろ」
彼の声が、優しくて、涙が出そうになる。
わたしは、もう一度だけ、彼にキスをねだった。
最後は、甘い、デザートがほしい、と。
三度目は、正常位で、ゆっくりと。
まるで、壊れ物を確かめるように、一回一回、丁寧に、深く。
激しい快感じゃない。
じんわりと、身体の芯から温かさが広がっていくような、甘いアクメ。
彼が、わたしの膣の中に、三度目の精子を注ぎ込む。
わたしたちは、本当の意味で、一つになった。
ーーーーー
「…阿良々木くん」
「ん?」
「…わたしね、ずっと、空っぽだったの」
彼の腕枕で、天井を眺めながら、わたしはぽつり、ぽつりと話し始めた。
「蟹に体重を持っていかれてから、わたしの中には、何もなかった。思い出も、感情も、全部。だから、虚勢を張って、毒舌を吐いて、自分を守るしかなかったの」
「…」
「でも、阿良々木くんが、わたしを見つけてくれた。わたしの失くしたものを、一緒に取り戻してくれた。…そして、今日、わたしの空っぽだった場所に、阿良々木くんの愛を、たくさん、たくさん、注いでくれた…♡」
わたしは、彼の胸に顔をうずめて、声を殺して泣いた。
「もう、わたしは、空っぽじゃないわ。阿良々木くんの愛で、思い出で、重たいくらいに、満たされてる。…ありがとう。わたしを、ただの女の子にしてくれて、ありがとう…」
彼は、何も言わずに、ただ、強く、強く、わたしを抱きしめてくれた。
その温もりが、なによりの答えだった。
ーーーーー
翌日、学校の教室の扉を開けると、待ち構えていたかのように、委員長――羽川翼が立っていた。
「おはよう、戦場ヶ原さん」
「…ええ、おはよう、羽川さん」
彼女はわたしの顔をじっと見て、ふわりと微笑んだ。
「何か、吹っ切れたような、いい顔をしているじゃないか。まるで、失くしていたものを取り戻したみたいだね」
「…!」
「何でもは知らないけれど、知っていることは知っているよ」
彼女の言葉に、わたしは、もう毒舌で返す気力もなかった。
ただ、心の底から、幸せな気持ちがこみ上げてきて、わたしは、彼女にだけわかるような、小さな笑みを返した。
「…ええ、そうね。昨日、わたしは…世界一の宝物を、手に入れたのよ」
それは、誰にも奪われることのない、わたしだけの、重たくて、愛おしい、宝物の物語。
ハッピーエンドなんて言葉じゃ、到底足りないくらいの、幸福な物語の、始まり。