アンは馬車の中で少女と向かい合って座っていた。
その少女は異形だった。
腕から手の甲にかけて覆われた白い鱗。
爬虫類状の鍵爪の生えた足。
腰から伸びる白い尻尾。
白い髪。
火傷跡に覆われた顔の左半分。
そんな異形の特徴を持っているが、火傷に覆われていない残った顔の右半分は雪のように白い肌の幻想的な美しさを持った少女だ。
この少女の名前はミラ。
アンと戦った白龍ミラその人である。
「どうして僕を殺さなかったの?」
人に姿を変えたミラはアンに対する敵意を滲ませながら問うた。
ミラが殺した人の数はまだ正確に判明していないが、滅ぼした村の数からすれば数百人、下手すれば千人を超えている可能性がある。
あまりにも多くの犠牲者を出した化け物であることを自覚しているミラが疑問を持つのは当然だった。
「私は貴方を友人だと思っている。ただ死んでほしくないだけだ」
「はっ? 友達? 僕はお前の事がずっと嫌いだったけど?」
ミラとアンはクロを通して交流があったのは確かだ。
アンは嫌がるミラと友人になろうと根気強く話しかけ続け、最後には根負けしたミラが心を開き始めていた。
それが自分の恋人を殺された事で再び嫌悪の対象となっていた。
アンは友人を失った事を自覚し、心を痛めつつミラに話しかける。
「ミラ……確かクロと……その……恋仲になったって言ってたな?」
「ええそうよ」
クロは気付いていなかったが、アンから見てミラは明らかにクロに恋慕を抱いていた。
アンがいなくなった後、ミラがクロと恋仲になったとしてもおかしくはない。
その事実に胸が痛くなりながらもアンは言葉を続ける。
「私もクロが好きだった……愛していた……」
「チッ」
ミラはアンの言葉に大きく舌打ちをした。
龍という人とは違う種族でありながら、幼馴染としてクロと共に育ったミラは、クロに片思いをしていた。
そこに突然あらわれ、クロの心をあっという間に奪っていったアンはミラの天敵である。
「私は……クロとは戦うことになってしまったが、かつて愛した男の大切な人を殺したくないんだ。それにもう一度言うが私は貴方を友人だと思っている」
「じゃあどうしてクロを殺したの?」
ただでさえ恋敵として憎いのに、クロを奪っただけには飽き足らず、クロを殺したというのだ。
そんな女の口から愛していたなどという言葉が出れば、ミラの神経を逆撫でする事になるのは当然のことであった。
「私も好きで殺したんじゃない……戦争だから仕方なくて……」
「仕方ない?! どうせ振られた腹いせで殺したんでしょ!」
アンの言葉にミラは目を見開き、席を立って拳を振り上げた。
だがミラの拳がアンにの目の前でピタリと止まった。
「僕の体にこんな小細工までして……」
「すまない……貴方は放っておくには危険すぎる。貴方を開放するには魔力を制限しないといけなかったし、治療するにも必要なことだった」
「制限なんて生易しいものじゃないでしょ」
アンは瀕死のミラの体に半精霊となったことで生み出すことが出来るようになった疑似精霊を埋め込むことで、ミラの魔力をコントロールできるようにしていた。
血肉だけでなく魔法により体を構成する魔法生物である龍の魔力は、普通の生物で言う筋肉のような物である。
筋肉と魔力の両方で体を動かす龍の魔力を、コントロールすることが出来れば簡単な動きを矯正することが出来るのだ。
勿論このような事は人間に出来るような簡単な事ではない。
人としての枠を超えたアンの力と、ミラが瀕死になり魔力抵抗力を失ったため出来た事である。
「龍の姿にはなれないが貴方なら人として生きていけるはずだ」
「人として……それじゃあこの顔の火傷はどうなってんの?」
ミラの顔の左半分に残った火傷跡、これは元々あった傷ではなくアンと戦って傷ついた体を治療した際に残ったものだ。
アンは蒸発した目玉さえ治して見せたにも関わらず、火傷跡が残っている。
人としてというならば若い女であるミラの顔に火傷跡というのはあまりにも酷な話だ。
普通の女であれば将来に絶望して命を絶つ者がいてもおかしくはない。
「貴方の体に私が作った疑似精霊を住まわせるには、私の魔力痕跡の残った場所が必要だったんだ。それが顔なのは申し訳ないが生きるために必要な器官を治していくと顔の火傷を残すしかなかった」
「どうだか」
嘘である。
アンはやろうと思えばミラの顔の火傷跡は治せたし、ミラもアンのいう事を信じていない。
二人の間に緊張した空気が流れる。
目的地まであともう少し。
アンは馬車に揺られながらこれまでの時間をずっとミラに対し謝罪の言葉をかけてきた。
それは王族として許されない姿勢であったが、アンはずっとミラの下手に出ていた。
だが目的地が近くなり、これまで柔らかだったアンの口調が鋭くなった。
「私もあなたに質問がある」
それまでのミラを思いやるような言動から一転する。
「クロをなぜ一人で戦場に送り出したんだ」
当然の疑問である。
ミラはあれだけの力を持った龍なのだ。
クロと共に戦場に出ることは難しい事ではない。
そもそもミラがその力を行使すれば徴兵を拒否する事さえできたかもしれない。
「……ついていきたかったけど……クロが僕に人殺しをして欲しくないって言ったから」
アンを睨みつけていたミラの目が初めて逸れた。
「戦争に行こうとするクロを止めなかったのか?」
「止めたけど……あいつあんたの国が何度も僕の所に兵隊おくってくるから何とかするにはこの機会しかないって聞かなくて」
ミラから出たのは子供が親に言い訳するような弱弱しい言葉だった。
アンはその様子を見てミラが後ろめたさを感じている事を悟り、攻勢に出る。
「それでクロを危険な戦場へと送り出したと……」
「クロは絶対生きて帰るからって約束してくれたし……」
「その結果クロは私と戦う事になり、死んだということか」
「っ!」
それはミラも気にしていた事だったのだろう。
アンのクロが死んだ原因はお前にあるという指摘を受け、ミラの目から急に涙があふれ出した。
「ミラ、貴方は知っていたはずだ。魔法の国には貴方と戦った私がいる事を」
「……僕がクロに力をあげたし……約束してくれたから……」
「約束したから危険な戦場へと信じて送り出したと? それは信用じゃなくて盲信だな」
「……」
ミラは正論を突き付けられ何も言えなくなる。
「自分のためにというのが嬉しかったのか? 力を与えたから大丈夫だと思ったのか? その楽観的思考はお前が人じゃないから思えるのか?」
ミラはうつむき、黙って膝の上で握られた拳の上に涙を落とす。
「ミラ、おまえは恋に浮かれて判断を誤ったんだ」
馬車が止まった。
着いたのはミラの住む村に近い国境沿いの森の傍だった。
「すまない……私もクロをこの手にかけた事を後悔していて八つ当たりしてしまった……」
龍ではなく、只の田舎の村娘としてすすり泣くミラに、アンはまた一転して優しく謝罪の言葉をかけた。
「クロの事は忘れて村へ帰って欲しい。そして難しいだろうが復讐は忘れて幸せになるんだ。クロだってそれを望んでいるはずだ」
ミラを馬車から降ろし、アンの乗った馬車は涙を流しながら立ち尽くすミラの元から去っていった。
ミラは魔力の自由を奪われ酷く重たくなった体を引きづりながら森へと入っていく。
森の中へ入り、アンの乗った馬車が見えなくなった所でミラの足と、涙がピタリと止まった。
「僕を殺さない理由……」
そしてミラは思案する。
殺さなかった理由は生かしたまま鱗や角を一生剥ぎ取り続けるため?
それなら人の姿に固定させないはずだ。
人の姿の手足から取れる鱗は龍の姿からすれば微々たるもの。
そもそも龍の体が目的なら村へ帰すなんてことはしない。
勿論ミラの龍としての力を危険視している可能性もある。
友達だから?
ミラは舌を突き出し、躊躇なく舌を噛み切ろうとした。
だが歯が舌に触れた瞬間、ピタリと顎が意志に反して止まる。
「自殺も封じられている……」
顔に残された火傷跡をそっとなぞる。
「顔の火傷……」
『ミラ、おまえは恋に浮かれて判断を誤ったんだ』
ミラにとってアンは憎い恋敵であるが、人を傷つけるような言動をする人物ではなかった。
ミラの知るアンは情に厚く、母性が溢れ、思いやりのある人物だ。
アンがあのような醜い言葉を吐くというのはミラの中で違和感を感じる。
「あの僕を責める言葉……」
全て憶測である。
だがミラの中では確信に近い。
それは魔法生物としてというより、一人の女のとしての勘である。
同じ男を愛し、同じように奪われた経験があるからこそわかるのだ。
「そうか……あの女が……また僕から……」
ミラは獰猛な笑みを浮かべた。
魔力は練れず、龍の姿になることもできない。
今のミラはただ手足に白い鱗と尻尾が生えただけの小娘である。
それでもミラのその笑みは上位種、白龍ミラそのものであった。
「クロは生きてるんだな」
白龍ミラはまだ生きている。
◇
ミラを村の近くへ送り届けた数日後、アンは屋敷に帰ってきた。
「おかりなさいませアンリエット様」
「ああ、ただいま」
「怪我はありませんか?」
「問題ない」
「すぐに湯あみをする」
「承知いたしました」
アンが足早に向かうのは風呂場だった。
今すぐにクロのもとに駆け付けたいアンだったが、流石に旅の汚れを落とす前に会うわけにはいかない。
アンのような女傑とはいえ、ミラとの遭遇で心が不安定になっていたとしても臭いとだけは思われたくない乙女心を持っていた。
「クロ! 帰ったぞ!」
シャワーを済ませたアンは裸のまま屋敷の中を駆けてクロの部屋に飛び込んだ。
勢いよく開いた扉に驚いたクロはベッドの上で体を起こしたが、すぐに飛びつくいてきたアンにベッドに押し戻された。
まだ水分が含んだ甘い香りを纏ったアンの赤い髪がクロの顔を覆う。
「会いたかった……」
二週間ぶりの再会である。
会えなかった時間を埋めるかのようにクロを抱擁するアンの手に力が籠る。
(少し髪色が変わったような……)
顔にかかった女性らしい柔らかい長髪と、胸や太ももといったアンの肉感的な体の感触を味わいながらクロは違和感を感じた。
事実、アンの髪は少し明るくなっていた。
元々彼女の得意とする火を連想させるような綺麗な赤髪であったが、今はその赤さに加えて光が当たるとキラキラとした光を反射するようになっていた。
そんなクロが感じた小さな違和感もすぐに霧散することになる。
アンはクロの首筋に埋めた顔を上げてキスをした。
お互いの唇が完全に潰れるほど強い唇が溶け合うようなキスだ。
唇の奥の歯の存在を感じるほどの圧力だったが、ぽってりとしたアンの唇はクロの唇を通して快楽の熱を与えた。
アンは口を開いてクロの唇を上下から覆うように挟みこみ、ペロペロとここを開けろと言わんばかりに唇を舐める。
アンの情熱的なキスに対し、クロはとろけそうな甘い熱を唇に催すが口を開かず、アンの気がすむまでじっと耐える。
(いきなりかよ)
部屋に入るなりすぐに行われた情熱的なキスにクロは戸惑った。
クロは食べて寝てセックスするだけの日々を過ごしているため日にちの感覚がよくわからなくなっているが、二週間離れていて久しぶりに行われたキスが明らかにセックスのための濃厚なものだったからだ。
勿論基本的に犯されてばかりのクロはセックスになることは予想していたが、その前にどこに行っていたとか話があるものだと思っていたのだ。
それもクロが言葉を出せないからなのであるが、よくそういった話を聞かせてくれていた間柄として少し寂しいものをクロは感じた。
「気持ちいいな? クロ」
対するアンの心は不安で一杯だった。
ついに手に入れたと思ったクロがミラの物だと知ってしまったからだ。
元々、自分の体を抱いて欲しいにも関わらずクロの手足を落としたのも、愛を囁いて欲しいのに声を奪ったのも、クロの気持ちがアンから離れているのを恐れたからだ。
もしクロが逃げ出そうとすればアンから離れたがっている事が分かってしまう。
もしクロがアンに愛していないと言えば、もうクロの心が手に入らないことが確定してしまう。
アンは臆病だったのだ。
一度拒絶されたのは身分の差のせいでまだクロは自分のことを好きでいてくれているはずだ。
そんな悲痛な願いと、クロの体を欲しがる周りの状況が合わさり、アンはクロに対して非情な手段をとってしまったのだ。
アンは罪悪感を塗りつぶすためにクロの口をこじ開け、舌を吸い出し、フェラをするようにちゅぱちゅぱと唇で愛撫しながらクロの胸板に豊満な胸が押し当てた。
女性特有のきめ細やかな肌に覆われた柔肉がクロの胸板に吸い付く。
(柔らかい……)
時間が空いたという事もあり、クロはシズネにはない大きな胸の感触が新鮮に感じていた。
女体の感触自体はシズネで毎日味わっていたが、女性としての柔らかさは圧倒的にアンのほうが上だ。
シズネやミラにはない胸の重さと、胸の重さに潰される乳首の感触がクロの性欲を掻き立てる。
ミラには申し訳ないと思っているが、性癖としてはクロは大きな胸が好きだった。
「溜まっているだろう? すまない長い間ほったらかしにして」
クロの半勃ちになったペニスがアンに握られる。
柔らかいペニスの中の硬さを持ち始めた芯を狙い、根元の方を指でぐりぐりと弄ぶ。
するとクロのペニスはアンの手の中でみるみる大きくなり、亀頭が覆いかぶさっていたアンの手のひらを押し返した。
ペニスに手の平を押され根元から離れた指はそのまま亀頭を覆いかぶさるように置かれ、手首を回してグリグリと手の平で亀頭を刺激する。
浮かび上がった我慢汁が手の平で広げられニチャニチャという粘着質な音を響かせるようになる。
アンはクロが完全に勃起したことを手の感触で確認し執拗に刺激を加え続けることなく手を離した。
乳首でもイケるし、口淫でも絶頂の気配を感じるほど開発の進んでいるアンの体だが、やはりもっとも満たされるのは一つになれるセックスだ。
アンは寂しさを埋めるためにも前戯は早々に切り上げ、セックスに移ることにする。
アンは手とペニスの間に粘液の糸がかかるのを満足気に確認し、血管を浮かび上がらせて完全に勃起したペニスの上にまたがり、あっという間にアンの中に飲み込んだ。
「んんっ!」
股座から脳まで突き刺さる快楽がアンの感じていたストレスを一瞬で溶かしていく。
馬車の中で屋敷が見えた時からぐずぐずに濡れていた膣穴は、クロのペニスをいきなり入れても全く傷つくことはなかった。
「クロ! クロ!」
そのためアンは最初から激しくクロを犯す。
クロを呼ぶ声にはいつも以上に重い想いが込められている。
性欲、愛情、恐怖、執着、嫉妬、あらゆる感情がクロのペニスに打ち付けられる。
硬いペニスと柔らかいアンの子宮ではペニスが子宮を叩くという表現が正しいように思えるが、込められた思いが子宮でペニスを叩いていると表現させてしまう。
大きな胸を上下にはずませ、乳首の先から飛び散った汗がクロの体を濡らす。
初めての時とは違い動きは滑らかになったが、暴力的なぶつけるような騎乗位。
クロの体が自由に聞かない関係上、知識の少ないアンはどうしても同じようなセックスしかできないが、その分ありとあらゆる感情と性欲をクロにぶつけた。
肉厚で筋肉があり粒々のある名器が重すぎる愛でクロのペニスをきつく締め付ける。
「っ!!」
「うううっ!」
たった数分で二人は同時に絶頂した。
精液がアンの子宮に送り込まれ、膣がもっと精液をよこせと収縮する。
半精霊となったアンの膣穴は高ぶった感情により無意識に魔力が籠った愛液を吐き出し、その愛液はクロのペニスを通る神経にも作用して愛撫し、精液を搾り取る。
アンの膣穴に覆われているのはクロのペニスだけだが、魔力を通じて玉袋まで熱い感触で包み、それどころかクロの下半身全体がアンの膣穴に入れられたかのような感触を与える。
アンの中に下半身が溶けていくような今までにない射精の快楽にクロは枯れた喉で叫んだ。
そして絶頂の波が去り、余韻を味わいながらアンはクロの胸の中で小さく声をかけた。
「なあ……クロ……あの時……一緒にあの小屋で住んでいた時……私を愛していたか?」
クロは頷く。
「よかった……」
アンの腰が動き始め、接合部からニチャニチャと音が鳴る。
「じゃあ……今も愛しているか?」
クロは首を振る。
「……っ!」
アンの胸が切り開かれたかのような痛みに襲われる。
アンはわかっていた。
腰の動きを前後のグラインドから上下の動きへと変える。
「……他に……好きな人がいるのか?」
またクロは頷いた。
予想通りのしてほしくない反応にアンのクロを抱きしめる手に力が入る。
(ミラに会ったと言うか?)
(言った後、彼女は死んだって嘘をつくか?)
(何も言えない……)
アンはクロの頭を抱えて再び溶け合うようなキスをした。
ただし腰だけは好きだと伝えるために激しく動かす。
少し前まで生娘だったにもかかわらず、毎日しているその動きはとても滑らかだった。
上半身をクロに押し付けながら唾液を交換し、下半身だけ艶めかしく、かつ激しく動く。
どれだけ動いても腰から臀部にかけての曲線は美しさを保ったまま、音だけは下品な乾いた音を響き渡らせていた。
激しい腰振りはクロの心を無視し、生理的現象として精液を搾り取る。
中で出したためアンは気づかなかったが、クロから吐き出された精液は暫く溜めていた量としては明らかに少なかった。
アンの膣穴は名器である。
ただクロを満足させるにはアンは快楽に弱すぎ、感じやすすぎた。
アンが上になって犯しているにも関わらず、クロが射精するまでの間何度も軽く絶頂を繰り返してしまう。
何度も繰り返される軽イキはアンの性欲を満足させるどころか、寸止めのようにアンの快感を蓄積させていき、後半になるほど感度が上がっていくのだ。
そこに最後に行われる射精。
子宮に注がれる精液はアンの軽イキで溜めていた快感を一気に解放させ、アンの思考を快楽の波で塗りつぶしてしまう。
脳の奥まで電流のように走る快楽に耐えるため、全身が強張る防御反応が起こり、アンの体力を一気に消耗させてしまう。
日々のストレスが解消され、強度の緊張と解放を味わったアンは、それほど数をこなさず、すやすやと寝息を立て始めてしまう。
そして扉に耳を当てて聞き耳を立てていたシズネは、アンの媚声を聞いて胸を締め付けられる感覚に襲われていた。
シズネがクロに手を出したのはただの性欲のはけ口を求めてのはずだった。
クロとアンがセックスする所は何度も目撃しており、ただ顔が好みの男がエロい事をしているだけで嫉妬の感情は湧かなかった。
アンの命令次第で知らない男に抱かれることになるかもしれない貞操。
シズネはせめてその貞操を好みの男で捨て、持て余した性欲の解消に使ったに過ぎない。
だがシズネが今抱いている感情はただの理不尽、横恋慕のクソ女としかいいようがないものだった。
(なんでクロ様は私の物じゃないんでしょう……)
シズネはアンの絶頂の後、静かになったクロの部屋へと入る。
そこには勃起したままのクロを放置し、ずっぽりと勃起したままのペニスを咥えこみながらクロの胸に頭を預けてすやすやと眠るアン。
それを見たシズネの胸にまたチクリとした痛みが刺ささる。
だが同時にシズネの胸に得もいえぬ感情が湧いてくる。
シズネはベッドに重なる二人の元に歩み寄ると、アンの中からゴポリと零れてペニスを伝う精液を指で掬い取り、パクリと口に含んだ。
(私は満足させましたよ)
それはシズネがアンに対して初めて覚えた優越感だった。
遅くなりました。
年末年始は忙しいです。