「アン……大事な話がある」
城を抜け出し、馬を走らせて恋人であるクロの元へたどり着いたアンにクロは言った。
クロの表情は真剣そのもので、アンはその真剣な表情に見惚れる。
二人が出会って一年、アンの恋心は芽生えてから長いとはまだ言えず、まだまだ燃え上がるばかりであった。
普段から人の上に立つものとして、大人として振舞わなければならないアンにとって、クロは唯一年相応の少女に戻れる相手だった。
そんなクロからの改まった話をされると聞けば、アンはついに結婚の誓いを言葉にしてくれるのかと期待に胸を膨らませてしまう。
「アンごめん……俺たちはやっぱり……恋人にはなれない別れよう」
「……え?」
だがアンに告げられた言葉は期待とは真逆、絶望に叩き落す言葉で、アンの理解を超える言葉だった。
「えっと……それはどういう意味だ?」
引きつった笑みを作り真意を問う。
その笑みは機嫌を損ねた相手に媚びへつらうような王族にあるまじき表情であった。
アンの心臓は胸を突き破りそうなほど強く脈打ち、汗が噴き出る。
アンにとってクロは初めて出来た恋人だ。
身分違いの恋であることはアンも理解しており、クロと添い遂げるためなら国を捨てる覚悟もあった。
アンの王位継承権は第二位。
もし王が崩御した場合、王位に興味がないアンは王位継承権第一位の兄に譲る気なのもその思いに拍車をかけていた。
自分がいれば跡目争いで国が揺れるのは目に見えている。
それなら自分が国を抜け出したほうが国にとってもいいことだと都合のいいように考えていた。
「アンは貴族様なんだろ?」
「え……あ……そう……だが……」
アンが貴族である事をクロに伝えていなかったがそれは暗黙の了解だった。
アンは決して身分を明かさなかったが、クロはアンが高貴な血筋であることは服装や所作から察していた。
アンもクロに感づかれていることが分かった上で受け入れてくれていると思っていた。
「俺は平民でアンは貴族。俺たちが恋をすることは許されない」
もしこれが男女逆であればそれほど問題にはされないであろう。
貴族が村娘をつまみ食いするなどよくある話だ。
むしろ玉の輿や口止め料を狙って積極的に抱かれに行くことすらある。
だが女の貴族に平民の男は駄目だ。
貴族の女の体はその家の資産だ。
女の貴族の処女を奪うことは貴族の家に盗みに入るに等しい行為である。
もしこのことがバレたら奴隷落ちならいい方で、下手すれば見せしめに処刑されるかもしれない。
ましてやクロは知らないことであるがアンは王族だ。
クロの命一つだけで済むとは限らない。
それほど平民と貴族の恋は許されないことであった。
「私……たちは……愛し……合っていた……だろ?」
アンの声が震える。
涙が零れる。
アンはこれが許されない恋であることは分かっていたが、それも乗り越えられるものだと思っていた。
アンは強い。
クロもこの時はまだ人の領域であったが優れた狩人だった。
共に村の近くに現れた魔獣を討伐したこともある。
アンは自分たち二人であれば例え国を挙げて追われても、駆け落ちすることは難しくないと楽観的に考えていた。
「ああ」
だからこそクロから帰ってきた愛を肯定する言葉に深い絶望を覚えた。
クロは駆け落ちする気がないことを察したからだ。
理由は分からない。
アンは考える。
身分を捨てさせたくないから?
今の生活を手放したくないから?
それとも強さを疑っているから?
「でも無理なんだ」
そして考えている内に続いた否定の言葉。
アンは膝から崩れ落ち、地面にへたり込んだ。
クロはアンの元へ駆け寄りそうになるも、感情を抑えてその場に立ち続けることを選ぶ。
クロの言葉に対し、アンがここで口にするべきなのは自分は貴族ではないと嘘をつくことか、王族とは言わずとも高貴な身分だと正直にあかし、その上で貴族の位を捨てるつもりだという事だ。
今必要なのは理性による交渉である。
「嫌だ」
だが真っ先にアンの口から出たのはただの感情だった。
それにクロは何も答えない。
「嫌だ!!」
腰が抜けて立ち上がることができないアンは手で這いずってクロに近づき足に縋り付く。
「ごめん」
クロは縋り付くアンを振り払わずただ謝罪を口にする。
「謝らなくていい! 私が貴族なんて関係ない!」
アンにとって謝罪は暴力に等しかった。
「私はクロを愛している! 国を捨ててもいい! お金ならある!」
交渉の余地などないと言われているに等しいからだ。
「申し訳ありません。アンリエット様」
それを察したアンはただ感情に訴えかけるしかない。
泣くことを許されず、帝王学を叩き込まれ厳しく育ったアンは泣き叫び、クロはただ謝り続けた。
こうしてクロとアンは元恋人になった。
アン15歳、クロ18歳、現代から三年前の出来事である。
◇
「んあ゛っ♡」
アンは自分の股から生まれた多幸感の大きさにたまらず声を上げた。
膣をかき分け、子宮を押し潰されるという初めての感覚。
自慰すらしたことのない生娘であれば痛みにのたうち回るはずの行為だ。
例に漏れずアンも痛みは感じていたが、それを上書きするほどの初挿入の感動に打ち震えていた。
求めて止まなかった男が手の内どころか腹の中にいるのである。
アンは興奮で頭が可笑しくなりそうで、湧き上がる欲望を抑えるために腰を持ち上げた。
「あ…ぁぁぁ」
アンはただ引き抜いただけで感じた痛みと快楽の大きさに足が震え絶句した。
処女を失ったばかりのアンの膣肉はとても狭く、かつクロを逃がしたくないとペニスに絡みつく。
抵抗の大きさは刺激の強さだ。
アンは快感は当然気持ちいいものとして受け取っているが、痛みすらも幸せだと感じてしまうのは興奮で脳がアドレナリンを出しているためだろうか。
快楽も痛みもクロを受け入れた故に得られたもの。
アンは今、幸せの絶頂を迎えていた。
「なんっだこれ……は」
体を支える足の力を抜いてペニスを再び迎え入れた。
どちゅりと溢れる愛液が弾けるほど激しく膣がペニスに押し付けられる。
アンが体内ではっきりと感じた二度目の子宮を潰す感覚。
それは一度目より明確に気持ちよかった。
「う゛う゛っ♡」
アンはもう一度尻を持ち上げた。
膣肉がカリ首にひっかかり、一瞬外へめくれて直ぐに元に戻る。
パンッ!
そしてまたアンが尻を振り下ろすと痛みが薄れ快楽があふれる。
「気持ちいい……」
アンは精霊に愛されている。
アンが力を欲すれば人知を超えた力で手を貸し、傷つけば必死に治そうとする。
最初に感じた痛みすらも幸せだと感じたのはアンの体質や性格によるものだが、ペニスを入れれば入れるほど痛みが引き快楽だけを得るようになったのは精霊の力である。
精霊が裂けた肉をペニスを引き抜いたわずかな時間で治したのだ。
どちらにせよアンが幸せなことには変わりないが、痛みが薄れれば薄れるほどアンの行為に力がこもる。
パンッ! パンッ! パンッ!
「クロ! クロ!」
クロの名と存在を刻むように繰り返しペニスを突き入れるアン。
アンは姫であると同時に軍人である。
馬を乗りこなすだけでなく、自分の足で駆け回るため足腰は鍛えられており、それによってアンの尻は大きく美しいものになっていた。
そのただの脂肪だけでは再現できない、非常に柔らかくも中身の詰まった芸術品のような尻がクロに打ち付けられる。
クロのペニスにズシリと感じる肉の塊が、クロの腰の奥まで貫くような深い快楽を与える。
アンが尻を振り下ろすとクロの腰がベッドに沈み、ベッドのスプリングがクロの腰を跳ね返すとアンは一緒に跳ねるように尻を持ち上げる。
アンはベッドのスプリングを利用した杭打ち騎乗位の肌と肌のぶつかる音に興奮し、より大きな音が鳴る様に激しく叩きつける。
ばちんばちんと肌がぶつかる。
アンは激しい運動で息を切らせながらクロの顔を見る。
歯を食いしばり、与えられる快楽に耐える様子が愛おしい。
そして快楽に耐えながらも、クロの視線は上下に弾むアンの巨乳と言って差し支えない大きな胸に向けられている。
目の前にはクロの肩を抑えるために、女のアンから見ても美しいシズネの顔がある。
そのシズネの顔を差し置いてアンのことを見ているという事実にアンの自己肯定感が満たされる。
アンはセックスの仕方を知らなかったとはいえ、男の欲望の目がどんなものかは知っている。
男は皆アンの顔や尻、胸を湿度の宿った目で見ずにはいられない。
それと同じ目をクロはしているのだ。
(触ってほしい!)
その目を受けてアンが抱いたのは手足を失い、女に簡単に抑えこまれるクロが相手では決して実現できない欲望だった。
性欲で思考が働かないながらも、それをわかっているためアンは欲望を口に出さない。
アンは代わりに膣をしめてクロの存在を深く刻み込むことにする。
クロの肩を抑えているメイドのシズネは、目の前で行われる激しい行為に気圧され、喉を鳴らした。
アンはすっかり気持ちよさの虜になり、食いしばった歯の隙間からフッフッと動きに合わせて短い呼吸を吐き出している。
目の前にいるはずのシズネの事が見えなくなるほど夢中になるなんてどれだけすごい快楽なのか。
シズネはアンとクロのニチャニチャと音を立てる接合部を見て、自分がセックスする所を妄想する。
(私の顔もこんなになってしまうのでしょうか)
快楽に夢中になった自分の顔を想像してシズネは下腹部を濡らす。
今すぐパンツの中に手を突っ込んで穴に指を入れ、クリトリスをいじりたくなるが今はクロを抑える役目がある。
シズネはせめて股をこすり合わせて得られる、物足りない快感で我慢するしかなかった。
やがてクロの射精が近づいているのか、ぐぐっとペニスが反りあがりアンの腹をえぐった。
アンは絶頂しそうになるが歯を食いしばって快楽の波に耐え、ラストスパートをかけるため打ち付ける尻の速度を上げていく。
クロは容赦ないアンの杭打ち騎乗位へのせめてもの抵抗に、再び体を転がしてアンの膣内から逃れようとした。
だが上半身はシズネに肩を抑えられ、下半身はペニスを膣穴に捕らえられることで大きく動かすことができず、まごついているうちにアンの尻が降ってきてベッドに押しつけられてしまう。
クロはアンの中から逃れるどころか、腰を動かしたことでペニスでアンの膣内をえぐることになり、絶頂を我慢するアンにとどめを刺してしまった。
「うぁあああ♡」
アンはクロに覆いかぶさり、唇をぶつけるようキスをした。
ガチっと歯がぶつかる下手糞なキスだった。
二人の唇が裂け、血が舌を鉄の味にするがアンは構わずキスを続ける。
これはアンにとって初めてのキスだ。
血の味だろうが無理やりだろうが、好きな人と出来たキスを永遠に忘れないためにしっかりと味わう。
アンに舌を入れるという発想はないため、強く押し付けるだけのキス。
箱入り娘のアンにとってそれだけのキスでも十分すぎるほど気持ちよく、絶頂中なのも相まって強烈なファーストキス体験となった。
絶頂したアンの膣内はそこが別の生き物のように脈動し、それに合わせてクロが我慢の限界を迎え射精した。
クロが抵抗することでアンが絶頂し、その絶頂時特有の高まる膣圧によりクロは射精してしまったのだ。
とはいえクロが無抵抗であったとしてもアンの騎乗位を耐えられるはずがなく、射精までに要する時間が数十秒ほど変わっただけのことだった。
アンの腕はクロの後頭部に回されキスを強制、密着する体は射精される精液を一滴も逃さないといわんばかりに膣を締め付け、性器をグリグリと押し付けてくる。
アンがクロに覆いかぶさったことによりクロの拘束の役目が必要なくなったシズネは、スカートをたくし上げて下着越しに指で割れ目を一心不乱に擦っている。
クロの精液は一滴残らずアンに注ぎ込まれた。
一騎当千の英雄と言われた男は、たった2人の女に為す術もなく組み敷かれるしかなかった。
アンはお互いが初めての相手だと思い込んでいるがクロは童貞ではない。
もしアンがこのことを知れば嫉妬に身を焦がしただろうが、幸か不幸かクロにそれを伝える手段はなく、アンは幸せだった。
アンは元恋人なのである。