※この作品はR-18です。

TSゆりフタ令嬢侍女メイド!   作:min(みならい)R18

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7章 冬至の危難を終わらせよ! コノマーズ攻城戦
戦装束の王女殿下


◆♀◆ 1、コノマーズ侯爵、駆け回る ◆♀◆

 

「ツクノーさま・・・」

 と、私が呟くと。

 彼女は、こちらを振り向きました「おお、フターリア姫」

 

 赤く焼けた金髪。冷たく湿って額にくっついています。

 日焼けの色が残る肌は、いまは青白く・・・

 痩せこけた頬には、乾いた血のこすれた痕がありました。

 

 そんな姿の女侯爵。続けて何か言いかけたのですが・・・

「ツクノーさま! この馬をお使いください!」

 黒髪も美しいネムリタ王女が大きな声で呼びかけたため、侯爵は私から目をそらしました。

「殿下! おお、かたじけない」

 巨大な馬に軽々と舞い上がります。

 2人のコノマーズ戦士に「ついて参れ!」と命じ、騎馬のまま、食堂を横切ります。

 食堂といっても、ブレロッケ式。馬で乗り込める大ホールです。

 それでも、背の高い女侯爵が巨大な軍馬にまたがると、圧倒的に大きく見えました。

 貴族と使用人の頭の上を馬でゆく彼女は、まるで波の上を走る帆船のよう。

 コノマーズは、海の国にして騎馬の国。女侯爵は見事に手綱を操って、人混みを抜けました。

 最後に、ちょっとこちらを振り向いて・・・

「またの機会に!」

 ・・・一言叫んで、雪の市街に下りてゆかれました。

 

「いやー、ツクノーはすごいな!」

 ユリは御機嫌です。

 お嬢さまと私の部屋に遊びに来て、ぺらぺら話をしてくれました。

「王女殿下と一緒にさぁ、船1隻、丸ごと差し押さえたっていうんだぜ!」

「船・・・を、差し押さえ? ですか?」と、テニスお嬢さま。

「そう!」

 赤毛の女伯爵。「ふひゃひゃw」みたいな笑い声を上げました。

 素の笑いですな。

 勇者ロールプレイとか伯爵ロールプレイとかしてない時の笑い方です。

 ちなみに、チンピラっぽくはないです。チンピラっぽいのは怒ってる時で。

 素のユリは・・・クソガキって感じです。品はないけど、可愛さはある。

「港でさぁ、船商人や船長と掛け合ったらしいんだよ。『反乱側に協力するな』ってね」

「ええ」

「で、ツクノーが結構なカネを掴ませた。すると『出港間近のが1隻ある』って情報が出てきた」

「反乱側の食料調達ですか?」

「そうそう! その船を王女が差し押さえて、ツクノーがその場で買い上げたんだってさ!」

 ユリはテーブルをぽんぽんと叩きました。

「ふひゃひゃw 槍が使えるだけのお嬢ちゃんかと思ったら、うん、見直したよ」

「・・・ユリさまは、あの方をあまり評価してなかったのですか?」

「お坊っちゃんお嬢ちゃんは、殺し合いには、役に立たん」

 ユリはそう言ってから、立ち上がりました。

 私のところに近づいてきます。

「・・・で、こちらのお嬢ちゃんはどうしたのかな? ん?」

「・・・どうもしてねーよ」

 私は寝っ転がったまま答えました。

 ベッドに横になって、肘ついて、ユリにお尻を向けたまま、です。

 我が女主人の雇い主である女伯爵に対して、尻向けて返事しちゃった。

 クソガキ過ぎる・・・。

 反省。

 仰向けになって、ユリを見上げ、目をちゃんと合わせました。

「失礼いたしました。どうもしていませんわ、伯爵閣下」

「なに言い直してんだよw」

 ユリは、ニヤニヤしながら覆い被さってきました。

 斜めにクロスする感じで私に抱きついて、鼻先がくっつくぐらいの距離で、吐息を浴びせてきます。

 あー、酒呑んでるな、コイツ・・・。

 

 ユリちゃん。アスカリアの勇者にして女伯爵。

 ツクノーさまの領地・コノマーズ侯爵領で反乱があったということで、緊急会議に参加。

 バーシー王やイクサー司厨長らと、改めて意見交換をしたようです。

 

 テニスお嬢さまも、ユリの補佐官として同席なさいました。

 本来その役目をするマレーナ姉さんが体調不良でダウンしてますからね。

 父君であるアイメンカ侯爵へのゴマすりもあるかも知れません。『重用してますよ』ってね。

 

 私は留守番でした。

 ま、伯爵の娘ごときの出る幕じゃないですわ。

 

「スネるなよ」ユリが、頬っぺたを撫でてくれました。「のけ者にしたんじゃないんだ」

「いや、スネてんじゃないんだ」

 私は説明しました。

 あんま言いたくないんだが・・・

「・・・侯爵って、やっぱ、格が違うんだなーって思っただけでさ」

「なんだいまさらw 侯爵家で育ったお嬢さまのクセに」

「オマエといると感覚が狂うんだよ」

「私のせいかよ!」

「いや。私のせいだよ」

「ふふふ♥」

 

 ユリは私と言い合って満足したようです。

 完全に体重をこっちに乗せて、フターリアのデカパイを押し潰しながら・・・

 愛情たっぷりに、唇を触れ合わせてきました。

 

 あー・・・ヤバい。興奮する。

 こいつホント上手い。キスとか腰振るのとか締め付けるのとか・・・

 思い出したらムラムラしてきた。

 

 ユリの胴体を抱き締めます。力いっぱい締め上げました。

「ふふんw」

 ユリは平気です。

 女っぽい丸みの下に鋼みたいな筋肉があって、フターリアのフニャフニャした腕では太刀打ちできない。

「ツクノーさまとイチャイチャしたかったんだろ?」

「そういうんじゃないけど・・・」

「身の程を知れ」

「ぬぐっ・・・!」

「ひひっw」

 ユリは立ち上がりました。

「ま、大丈夫だって。オマエにも出番は回ってくるからさ。ただし、」

 私を見下ろします。

 焦げ茶の瞳が、いまは真っ暗に見えました。

「――今回は、活躍したら、人を死なせることになるぜ?」

「・・・。」

 

「じゃーね。明日、朝イチで出るから、ちゃんと寝とくんだよ、2人とも」

 ユリはそう言って、無地のマントを翻して、出てゆきました。

 

「・・・あなたは残る?」

 お嬢さまが、そんなことを訊いてきました。

「へ?」

「私は司厨長補助だから、帰らないとまずいけど。あなたは、コンタクト係として残る手もあるでしょ?」

「・・・ああ」

 

 私は起き上がりました。

 お嬢さまに無作法な対応はできません。

 ピシッと背筋を伸ばします。習性です。メイドの意地です。

 

「いえ御心配なく。一緒に帰ります」

「そう?」

「ツクノーさまには、いろいろ気を遣って頂いたじゃないですか? それでね」

「ええ」

「今日こそ恩返しだ! って思ったら、空振りで。ガックリ来てただけですよ」

「なるほどね」

「もちろんご一緒しますよ。私の主人は、あなたですから」

「・・・そう」

 お嬢さまは頬を染めました。

 可愛い。もっと喜んでもらいたい。

「『出てけ』とか言われない限り、勝手に離れたりはしませんって! ハハハ!」

「ユリさまに誘われたらフラフラついてくわよね?」

「ぬぐっ・・・!」

「無断外泊したこともあったわ」

「か、身体は離れても、心はここに・・・」

「浮気者らしいセリフね!」

「ぬぐぐ」

「しっかり捕まえておくことにするわ」

 

 私はお嬢さまに抱き着かれて、そのまま一緒に眠ったのでした。

 

◆♀◆ 2、実験的旅行 ◆♀◆

 

「樹にゃーリア、出発進行~!」

「んニャ・・・」

 ユリに命じられて、私は動き始めました。

 

 根っこを伸ばして・・・引き寄せる。

 後ろの根っこは・・・引っこ抜く。

 

 樹木が、動き始めました。

 ウロの中に、女3人と、仔ネコ娘の私を乗せて。

 

「おお!」

 ウロから身を乗り出したユリが、歓声を上げます。

「なめらかだね! しかも、ホントに速いな。伝令より速いぐらいじゃないか?」

「トータルでは、早馬にも勝てると思うわ・・・」

 マレーナ姉さんが、ぐるぐる巻きのマフラーの下から応えました。

「・・・森を、突っ切れるから、・・・ゲホッ」

「すごいね!」

 お尻をユラユラしながら外を眺めるユリ。

 私は、前足でそのお尻を押さえました。

「なんだよ?」

「?」首ひねる私。

「なにお尻押さえてんの?」

「ネコの習性だと思いますわ」と、テニスお嬢さま。

「習性?」

「動くものを追いかけ・・・ゲホッ」と、マレーナ姉さん。「ごめんなさい」

「そうですわ。仔ネコなので、本能が出やすいのかと。――司厨長、お休みになられた方が」

「そうね・・・そうするわ」

「マリ、寒いか? ウロ、閉めてもらおうか」

「大丈夫。空気が新鮮なほうが、ラクだし・・・寒くなったら、言いますから」

「ん」

 

 ニョロニョロニョロ。

 樹にゃーリアです。

 雪の森林を這破します!

 

 目的地は、我らが本拠地・アスカリア伯爵領です。

 王都は『コノマーズの乱』で大騒ぎですが・・・

 私たちは、サッサと引き揚げることにしたのです。

 

「・・・残りたかった?」とユリ。

「んニャ」私は首を振りました。「ニャい丈夫。ニ゛ッ験するの、嫌いニャニャいし」

「そっか」

 

 今日は、純粋な『樹木の乙女』ではありません。

 合成モードの、実験中なのです!

 

 樹木の乙女・樹ターリア。寒さに強いが火には弱い。森林活動が得意。

 仔ネコ娘・仔にゃーリア。寒さに弱く眠気に弱く戦闘にも弱い。ついでに舌も回らない。

 

 同時に『変容』できるか?(できました。)

 何時間、変身してられるか?(いま始めたとこ。)

 

 ・・・という実験ってワケです。

 

「疲れはどう?」

「ニャいです」

「どこか痛いとか、かゆいとかは?」

「ニャいです」

 

 お嬢さまが私の体調などをチェックしますが、問題はありません。

 強いて言えば・・・

 

「ちょっと、ニェむいニェすニェど・・・」

「眠いの? ダメじゃない!?」

「え? もう『変容』切れ?」

 お嬢さまとユリがあわてました。

「大変だわ。司厨長が」

「街道に戻れ、街道に!」

「いニャ、そんニャニャマ゛いのニャニャくて」

「なんて?」

「とにかく街道に出ろ。見られてもいいから」

「そうニャニャくニェ。ニェむいのはニェむいけど、ニャマ゛くはニャくニェ」

 

 仔にゃーリア。

 舌っ足らず。

 『ヤバくはない』って言おうとしてるんだけど、伝わらねぇ。

 

 眠い = 魔力切れ。

 

 これ、魔術師の常識ですからね。

 お嬢さまとユリがあわてるのは当然なんですわ。

 

 しばし混乱。

 

「・・・仔ネコだからってコト?」

 わかってくれたのは、マレーナ姉さんでした。

「いつでもどこでも眠たくなっt・・・ゲホゲホ」

「そニェ!」

「あー、そういう意味か」

 ユリがうなずきます。

「単純に眠いだけで、『変容』切れじゃないんだ」

「なんだ・・・」お嬢さまも息をついて、マレーナ姉さんの背中をさすります。

「ふふw よしよし。アスカリアまで頑張ってくれよな」

 ユリは、私の頭を撫でました。

 

 撫で撫で・・・

 気持ちいい・・・

 

「ふニャ・・・」

「寝るなってば」

 

◆♀◆ 3、お風呂にて ◆♀◆

 

「お嬢さま! お帰りなさいませ!!」

 アスカリア領に着くと、モリーヌが飛び出して来ました。

 

「モにぃーにゅ」

「お・・・嬢さま・・・?」

「ええ。樹仔にゃーリアよ」お嬢さまが説明(?)しました。

「お・・・おお・・・!」

 

 モリーヌ。黒髪の美女。

 元護衛。現在は侍女(まあ、剣は差してますが)。

 アスカリア領の戦士の訓練も引き受けておりまして、いまだに力強いです。

 小っちゃな仔ネコ娘の私を、両腕で抱き締めてくれました。

 

「離宮が燃えた、というウワサだけ伝わってきて・・・心配しておりました!」

「私はニャい丈夫。みゃリニェえニャんニ゛ャ、ナ邪引いて」

「・・・・・・・・・。」

 ニャンニャンしゃべる私を、モリーヌはしばらく凝視して・・・

「♥♥♥」頬ずりしてきました。

「むニャ」

「あ、そうだ、お風呂。伯爵、迎賓館のほうに、お風呂を沸かしてございますので」

「ありがとw 私はマリを寝かせてから行くから、先に入れてあげてよ」

「よろしいので?」

「リアは、ずっと走ってくれたからね。あっためてやりな」

「ありがとうございます!」

 モリーヌは私を抱き締めて、伯爵邸(オンボロ)の隣に建つ迎賓館(新築)に向かいます。

 びーん! 私の足が引っ張られ、モリーヌの腕から半分スッポ抜けました。

「いニ゛ャ!」

「なんですこれ?」

「ツタよ」と、テニスお嬢さま。「樹に繋がってるのよ」

「ああ、そう言えばそうでした。お嬢さま、大丈夫ですか?」

「んニャ・・・」

 

 ニョロニョロニョロ・・・

 石畳の街道を避ける形で、樹ターリアの母樹が進みます。

 

「のろくない?」

「ミョりのニャかニャニャいから」

「なんて?」とお嬢さま。

「なるほど」とモリーヌ。「森の中じゃないから、速度が出ないのですね」

「ニャ」

「なんでわかるの?」

「もっと小さな頃からお側に居りましたので、うふふふ♥」

 

 モリーヌは、頬を火照らせて、私をお風呂に連れ込みました。

 (母樹を風呂の裏に停めて、ツタを窓から通しました・・・。)

 

 私をハダカにして・・・

 彼女自身もハダカになって・・・

 お風呂場に私を立たせて、上機嫌でお湯をかけ、手で洗い流してくれます。

 ずっとハミングしてます。超ご機嫌です。

 

 ・・・あれ? コイツもしかしてロリコン女?

 

 と思ったけど、ちがった。

 ネコ娘には匂いでわかる。モリーヌ、お母ちゃんモードになってました。

 

 モリーヌ・・・!

 絶対、オマエに子供をやるからな・・・!

 ただし、男にはやらん。私が孕ませる・・・!

 

 などと考えている私を、モリーヌはお風呂に入れました。

 先に湯船に入っていたお嬢さまのところに持っていきます。

「どうぞ・・・」

「ありがと」

 モノ扱いかよ。

「すべすべね!」

「ファリアさまは、肌の綺麗な御方ですから」

 2人で撫で回してきます。

 

 ・・・あ、コイツら発情してきた。

 ネコ娘には匂いでわかる。

 逃げないと。

 

 にょろ~~~ん・・・。

 私はツタの力で空中に逃げました。

 

「あ!」

「お嬢さま、どこに!?」

「・・・。」

 そのまま風呂の外に・・・出ようとしたのですが。

 急激な眠気が、私を襲いました。

 ダメだこれ。

 あわてて床に着地。

 しかし、直前でツタが消えてしまいました。

 

 『変容』の時間切れです!

 

 すてーん!

 素っ裸のフターリア。足をすべらせて、スッ転びました。

 

「お嬢さま!」「ファリア。大丈夫!?」

 2人が飛びかかってきます。

「・・・大丈夫。眠気が・・・どこも打ってないから・・・ふわぁ」

「ホントに大丈夫なの?」お嬢さまが、おっぱいを両手で揉み始めました。

「ちゃんと確認しませんと」モリーヌが内腿を撫で回し、押し広げてきました。

「ちょ・・・眠いって言ってるだろ・・・!」

「寝てていいわよ!」

「そうです。ココは私にお任せを!」

 

 おっぱいを揉み回され、内腿と股間を半端に撫で回されて、フターリアは速攻で出来上がりました。

 お尻から力が抜け、眠気が、興奮に侵蝕されてゆきます。

 

 もうこのフターリアはホンマ・・・感じ始めたらブレーキ壊れるから・・・

 

「あ、あ♥ そこダメだって、こらっ、モリーヌ、指入れんな、ふああっ♥」

 私が喘ぎ始めたところで、

 

「入るよー?」

 ガラガラガラ。ユリが入ってきました。

 

「あ、ユリさま」おっぱい吸ってたお嬢さまが顔を上げました。

「これは、失礼いたしました」股間からモリーヌが人差し指を抜きました。

「うへへ♥ いいよ、続けて。私も身体洗ったら混ざるから」

「かしこまりました」「御意」

「おまえらぁぁぁ・・・!」

 

 お風呂場の床に押し倒された私は、3人がかりでレズ責めにされて。

 その日は、夢も見ずに眠ることができました・・・(失神してね・・・。)

 

 なお、樹仔にゃーリアの『変容』時間は、おおよそ日の出から日没まで、でした!

 

◆♀◆ 4、へっぽこ領主軍、出陣! ◆♀◆

 

 時は来て。

 私たちは、出陣しました。

 

 30人の『アスカリア戦士』ども。

 真新しい鎧に身を包んで、なかなか見栄えがします。

 中身は『脱税しようぜ』とか言ってたおっさん連中ですが!

 行進の足並みも全然揃ってませんが! 前の人間のかかと蹴っ飛ばしてますが!

 挙句に「痛ェな!」「アア?!」とかケンカ始めてユリにブン殴られましたが!

 ・・・ま、歩兵の質がバラバラなのはウチに限った話じゃないんで。

 

 歩兵の後ろからは、荷馬車が3台。ロバ3頭と人夫9人で、ついてきてます。

 

 ユリは、今回は、馬で出ました。

 鹿毛の堂々たる戦馬。

 バーシー王から賜ったヤツですね。

 もともとは、コノマーズの馬なんだそうです。

 ツクノーさまの遠戚が経営する牧場が、王都近郊にあってね。そこが献上した馬なんだってさ。

 

 お嬢さまと私は、おなじみベロ~ン君。

 この子は、焦げ茶~茶のまだらな感じの毛色をしてます。いままで言ってなかったけど。

 ユリの鹿毛より暗い感じの色合いですね。性格は明るいですが。

「ブヒン?」

 はい、今日もベロ~ンしてくれました。

 

 モリーヌも、今回は騎兵として同行します。

 なんと、歩兵隊長を仰せつかりました。

 ・・・私の侍女なんだが?

 ま、アスカリア伯爵軍は騎兵0のヘッポコ軍団ですからね。しょうがない。

 馬は、ダンゼイズの青鹿毛です。

 彼女の実家が贈ってくれたんだと。

 艶のある真っ黒な毛並みで、カッコいいです。見惚れてたら、ベロ~ン君に襟首噛まれて引きずり戻されました。

 

 マレーナ姉さんは、お留守番。

 司厨長の仕事が山積みで、どんよりしてました。かわいそう。

 ユリも『連れて行きたいんだが』と悩んでた。呪文の火力、すごいもんね。

 文武両道の姉さんですが・・・身体は、ひとつしかないんだよね。

 

 ダークエルフのダーリン姉ちゃんも留守番です。

「行ってらっしゃいませ。お土産期待してます~」だと。

 ユリも『放っといたほうが調子上がるタイプだから』とか言ってましたけども。

 マレーナさんが心配なんで、ダーリンに頼んだ、ってのが本音だと思います。

 

「しっかし寒いな」

「寒いわね」

「ブヒヒン」

 吹きつける寒風に3人で不満を言いつつ、西に向かいます。

 樹ターリアは、しばらく封印です。

 実験はうまく行ったし、ユリが『奥の手にしたい』って言うんでね。

 馬がビビるんで面倒になる、って理由もあったりします。騎馬だけじゃなく、荷車もいるしね。

 

 さて。

 

 こうして、我々ヘッポコ領主軍は、コノマーズに向かったわけですが。

 この旅路には、問題がひとつありました。

 

 イマック侯爵領に入らねばならない、という問題です。

 

 陸路でコノマーズに向かうには、イマックの支配地を通らざるを得んのです。

 取り潰しの内定してるイマック侯爵家。

 通って大丈夫か・・・? と、心配したのですが。

 

「おお! アスカリア伯爵。ようこそ我が都へ。お待ちしておりました!」

 初めに立ち寄った、デナイ伯爵領。ビックリするほど、友好的でした。

 

 領主は、コモリロという、40間近の痩せたおっさん。

 不細工ではないが、目が落ち着きなく動く人でした。

 ただ、一晩泊めてもらった限りでは、悪人ではありませんでしたね。

 むしろ、異常なほどユリに気を遣ってました。

 

「生き延びるのに必死・・・ってコトでしょうか?」

 と、私が口にすると

「でしょうね」モリーヌがうなずきました。「アスカリア伯に何かあれば、陛下の怒りを買いますから」

「ご飯がおいしかったから、文句はないわ!」とお嬢さま。

「ブッフン」ベロ~ン君も同意しました。

 

 次に立ち寄ったのは、イマック侯爵の本領。

 ここも、問題は起こりませんでした。

 

「アスカリア伯爵閣下。代官として一時統治を命じられました、リッチナイブンです」

 

 なんと。

 マレーナさんの父上、リッチナイブン卿が、代官になっていたのです。

 おかげで私たちはリラックスして休めましたが・・・

 

「・・・大変でしょう?」と、ユリが囁くと。

「・・・はい。正直に申せば、綱渡りです」と、父上は皺が増えた表情でした。

 

「文官って、貴重ですよね・・・」

 と、私が口にすると、

「そりゃーな」ユリが寄って来ました。「戦に強くても、剣で帳簿は付けれんからな」

「頑張りますわ!」とお嬢さま。

 ベロ~ン君は、ベロ~ンと舌を出しました。どういう意味だよw

 

 イマック侯爵領では、ガイコツに何回か遭遇はしました。

 髑髏狼人(ドックロウジン)タイプにね。

 遭遇したんですが。

 モリーヌが「ちょうどいい。やってみろ!」と命じて、歩兵が突撃。

 戦闘終了。勝利。ケガ人なし。

「アヤツリアの遺産か?」と、ユリ。

「はい。作り置きのようですわ」と、お嬢さま。

「ならいいか。一応、リッチナイブン卿に報告は出すように」

「かしこまりました」

 って感じで。

 ユリや私たちは、馬上から見ているだけでしたわ。

 

 かくして。

 へっぽこアスカリア軍は、無事、コノマーズ領に入ることができたのです。

 

◆♀◆ 5、戦装束の王女殿下 ◆♀◆

 

 雪はやみ、道は乾いていました。

 風も温かくなったようです。

 南東から吹いてくる、その風に・・・

 私は、胸がふくらむのを覚えました。

 

 ・・・いや、デカパイって話じゃなくてね?

 

「海の匂いだ・・・!」

「なに?」

「潮風ですよこれ」

「このヘンな匂いがそうなの?」

 

 海の匂い。磯の香り。海草とか貝とかカニとかの匂いです。

 

「うおお・・・!」

 自分がこんなことで興奮するとは思ってなかった。

 しかし、15年ぶりの海の匂い、それを自分が覚えてた(?)ことに、私は興奮しました。

 そのせいで、お嬢さまの質問に素直に答えてしまいました。

「・・・海の匂い、知ってるのね?」

「ええ!」

「ふぅん・・・?」

 お嬢さまはモリーヌを見ます。モリーヌは黙って首を振りました。

 

 コノマーズ領の、北端に入ります。

 泊まるのは、ハクアミの港。

 豪華な港町です。

 白い大理石の建物が、冬の日差しに眩しい。

 城壁も、丘の上に並ぶ高級市街地も、見事に白く輝いていました。

 

「これがハクアミ・・・」お嬢さま、ため息です。「ファリアがもらい損ねた領地、というワケね」

「はい?」

「ここ、ツクノーさまがもらった土地でしょ?」

「ええ」

 

 ネムリタ王女を救出した褒美ですね。

 ハクアミの港を、おまえにやろう! って感じでしたわね。

 

「ってコトは、あなたがもらうチャンスもあったワケでしょ?」

「・・・。」

 

 私は、近付いてゆく先の、見上げるほど高い守備塔の上の、バリスタを眺めました。

 巨大な定置弩。その脇から、バリスタ兵がこちらを見下ろしてきました。

 私は目をそらしました。

 

「・・・いや、無理ッス」

「これだから!」お嬢さまはため息をつきました。「野心ってものがないのよね」

「客観的に見て無理ッス。それこそ文官が足りないッス」

「それはそうだけど!」

 

 さて。

 ハクアミの港に入った我々は。

 

「よう来てくれた。王女救出の友よ!」

 ツクノーさま直々の出迎えを受けると同時に・・・

 

「こうしてお会いすると、格別に頼もしいですわ。アスカリアの勇者さま」

 ・・・ネムリタ王女の御姿に、びっくり仰天する羽目になりました。

 

 王女殿下。

 ここまで遠征している・・・というだけで、ビックリなのですが。

 

 鎧を着ていらっしゃったのです!

 

 白銀に輝く鎖帷子。白い陣羽織を、綺麗に締めて。

 王家の紋の入った兜をつけ、腰には長い剣を差していらっしゃる!

 儀礼的な鎧ではありますが・・・13歳の王女には、重すぎる装備のハズです。

 

「な・・・なぜ、戦装束を?」ユリもビックリしてます。

「戦地に入るのですから、当然ですわ」と、王女。

「御自ら決意なさり、父君を説き伏せて、出陣なさったのじゃ」

 ツクノーさま。

 気のせいか・・・目が、虚ろですね。

「なんと・・・!」

「戦士として、自分が足手まといでしかないということは、承知しております。ですが・・・」

 ネムリタ王女は、言いました・・・

 

 「ですが、私は考えたのです。

  正当なるコノマーズ侯爵を、この身を以って、支援せねばならないと。

  私も王位を継ぐ者なれば。

  ツクノーさまは、我が師なれば。

  フターリアさまと共に、生命の恩人でもありますれば。

  この御方を、見捨てたなら・・・

  ネムリタロッカの代に、恃む臣下は居らなくなる。

  ――そう、考えたのです」

 

「ごもっとも!」

 

 ユリはうなずき、王女に歩み寄って、ひざまずきました。

 

「どうか、御身の守護は、このユリにお命じ下さい」

「それはまさに私が頼みたいことです」

 黒髪も美しいネムリタ王女は、花びらが開くようにほほえみました。

「アスカリアの勇者にして伯爵さま。我が身、我が志を、あなたの剣でお守り下さい」

「はい!」

 

 王女の差し出した手を取ったユリは、立ち上がって、歩き始めました。

 

「・・・。」

「・・・どうしたらいいのかしらね?」

「ブヒン・・・」

 私たちが、困惑しておりますと。

 背の高い女侯爵が、ニッコリ笑って、近付いてきて・・・

「ファリア?」

 私の肩を、抱いて。

 

「そなたらは、身共が案内しよう。この前は、ゆっくり話す時間もなかったからのう!」

 

 ・・・私の髪を、優しく、撫でてくれたのでした。

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