TSゆりフタ令嬢侍女メイド! 作:min(みならい)R18
◆♀◆ 14、出陣 ◆♀◆
アイメンカ侯爵長男・ボンロウケさまは、引き延ばしを続けました。
「明日、騎兵隊が到着する。それまでお待ち頂きたい」
「今日は状況が悪い。悪天候だし、馬も疲れている」
「明日、歩兵隊が到着すると伝令があったので」
・・・と、3日に渡って。
コノマーズ女侯爵・ツクノーさまは、毎回非難をなさいました。
「これ以上は待てぬ」
「そちの目的は妨害か?」
「これで最後じゃ。明日は出陣じゃ!」
・・・と。
そして、4日目の朝。
「歩兵隊が、道を間違えまして。少々、遅れが出ておりますれば・・・」
ボンロウケさまが言い始めると。
ツクノーさまは、ヌーッ・・・と、立ち上がって。
ユリを見ました。
「アスカリア伯、先攻部隊の調子はいかがか?」
「はい。問題ありませんよ。いつでも出れます」
「・・・話の途中ですぞ」
ボンロウケさまが制止しますが、2人は止まりません。
「では、お頼み申す。予定通り、我がコノマーズの騎兵1隊をお付けしよう」
「ありがたい」ユリも立ち上がりました。「で、いつ出ます?」
ツクノーさまは、ニヤリと笑いました。「本日、ただいま出陣じゃ!」
「御二方!」
ボンロウケさまは呼び止めます。
しかし、2人は無視。
荷物をまとめ、背を向けます。
ユリは、テニスお嬢さまの肩をポンと叩いて、
「コノマーズ侯爵の許可が出た。出陣だ!」
お嬢さまも立ち上がりました。私とモリーヌも従います。
「はッ・・・話の途中ですぞ! 無礼ではないか!」
「言うたハズじゃぞ、」
ツクノーさまが振り向きました。
「――『明日は出陣じゃ』とな」
「殿下! この女たちは、殿下の御前を勝手に退いておりますぞ!?」
「・・・?」
水を向けられたネムリタ王女は・・・
立ち上がって、侍従から剣を受け取るところでした。
「出陣でしょう? 部屋を出るのは当然ですわ」
「・・・。」
ボンロウケさまの負け。
立ち上がり、苦々しい表情でツクノーさまに、
「後から着く歩兵隊について、入城の許しを頂いておかねばなりませぬ」
「うん? いや、今日は状況が悪い」
ツクノーさまは、
「――1か月ほど、お待ち頂きたいのじゃが?」
と、笑ったのでした。
◆♀◆ 15、手柄 ◆♀◆
パカ、ポコ、パカ。
そんなわけで、出陣しました。フターリアです。
「ブヒン」
いつもの相棒、茶色の馬のベロ~ン君が何か言っております。
いつも前に乗っているテニスお嬢さまは、いません。今朝は、ユリの鹿毛に同乗してます。
ズシャッ、ズシャッ・・・。
ユリの馬の足音すごいなー。まあ戦馬は重いし、鎧も着てるもんなー。
・・・1人だと、お腹が寒いなー。乳が冷えるわー。
「ブヒ?」
「いや何でもねえよ。調子はどうだい相棒?」
ベロ~ン。舌ベロ&ウインクしてくる相棒です。
「へへへw」
「お嬢さま。気を抜いてはいけません。常に警戒を」
モリーヌが、青鹿毛を寄せてきました。ベロ~ン君よりデカくてハンサムな牡馬ね。
「ブルル・・・」
相棒、動揺。耳を後ろに倒し、目だけで私を振り向いてきます。
自分より強そうな男に距離詰められてビビりよったな? まあ気持ちはわかるぜ。
「よしよし」
首を叩いてやった。ダメ。落ち着きません。
いつも手綱握ってるの、お嬢さまだしなぁ。
今日は、周囲に知らない馬がいっぱいいるし・・・騎兵隊が一緒だからね。
我ら先行部隊。以下のような構成です。
コノマーズ騎兵 1部隊 30騎
アスカリア騎兵 3騎(ベロ~ン君含む)
同 歩兵 5班 39人
この人数で前方の安全を確保し、王女とツクノーさまを迎え入れる。これが任務です。
少人数なので、敵と正面衝突すると危険なのですが・・・
目的地、ヨトンマリ伯爵領の、お城を。
女勇者ユリは、あっさり開城させたのです。
「我が名はユリ! アスカリアの勇者にして伯爵ユリ! ツクノーさまの代理で参った!」
・・・と、名乗りますと。
「なんと! 勇者さま。失礼をいたした。いますぐ、門を開けまする!」
・・・といって、城門が開いたのでした。
門の上には、バリスタが1基据え付けてあったのですが。
これも、わざわざ横に向けてくれるほど。
「ずいぶんな好待遇だな・・・」と、私が呟くと。
「ですね。種明かしに期待しましょう」モリーヌがクールに言いました。
城に入って。少し休んで。
ユリに呼び出されると、そこで、種明かしがありました。
「今日の事は、台本だ」
「台本」
「初めから決まってたんだ。ヨトンマリ伯爵が、私たちを受け入れるというコトはな」
「そうなの?」
ヨトンマリ伯爵領は、ツクノーさまの味方なんだとか。
今日、一緒に来た騎兵隊長がここの出身で、事前に連絡が付いてたんだと。
その隊長さんも、部屋にいらっしゃいます。左右に従者を1人ずつ従えて。
私たちの側は、4人。ユリ・お嬢さま・私・モリーヌです。
「私と隊長は、手柄をもらったのさ」
「無血開城っていう?」と私。
「そう。すると・・・」
「アイメンカが焦る?」
「そう。今頃、ネムリタ殿下が軽いパンチを入れて下さってるハズさ」
「ほう」
「『ユリさまはさすがですわ。・・・ボンロウケさまも、頑張ってくださいね』みたいなw」
「うわぁ・・・」
「たださー、想定外の問題があってさー」
あー・・・。
これ、私がなんかやらされるヤツですわ・・・。
「――ヨトンマリ伯が、敵に捕まったんだ」
「え?!」私はビックリしました。「城が無事だから、被害はないのかと」
「『崖の牢』に囚われておいでなのじゃ」と、騎兵隊長。
「がけのろう」
「はい。ウタールデント城の裏にある、崖に掘られた土牢ですじゃ」
「警護は厳しいので?」
「城壁の内側ですからな。まず、城に入らんことには」
「そうですか・・・」私はユリを見ました。「で、策がおありなのですか?」
「うむ。その、お城の裏庭だが、」
ユリが私を見ました。
「土牢のすぐそばまで、果樹園が広がってるっていうんだな」
あ、ハイ。樹ターリアですね?
◆♀◆ 16、果樹園に侵入せよ ◆♀◆
「変容せよ、フターリア。幹太く、根深き霊樹の芯に棲む樹木の乙女に――
しかるのちに、変容せよ、樹木の乙女。密かに優美に敏捷に──ネコの樹霊に、な~れ!」
お嬢さまが、呪文を唱えて。
ザワ・・・ザワ・・・。
私は、樹木になりました。
「アーマーは馴染んでるみたいね。痛くはない?」
「なぁ~い、でぇ~す」
今回。
レザーアーマーを着けてから『変容』してみました。
結果、ツヤ光るごっつい樹皮の堅木となりました。
「――よし」私の全身をチェックしたお嬢さまが、うなずきます。「私はいいわ」
「では・・・」モリーヌが私に触れました。
「我が主フターリアは変容する。御身は鉄のごとく、牙も刃もはねつける」
こちらは『鉄身』の呪文ですね。
私は、歩き回ったり枝をザワザワさせたりして、動きを確認しました。
3つの呪文が競合したりしてないか? OK。
「もぉ~んだぁ~い、な~し~!」
「じゃ、出てみて」
「はぁ~い。もぉ~と、ひぃ~かるぅ~・・・」
「黒光りしてんなぁ」
ユリが樹皮をこすりました。
こするな! そこ股間! 知っててやってんだろうけど!
「ふと~・・・あぁ~ん♥」
「ユリさま、時間の無駄ですから!」
「はーいw」
勇者、侯爵令嬢に怒られるの巻。
「本光る太き幹の中の花、
異国の樹霊なるあなた。
羽織る木皮を脱ぎ捨てて、
羽ばたき変われ、樹ニャーリア!」
合言葉を唱え終わった私(実際は超ノロいです。イライラするぐらい時間かかる)。
にょろ~~~ん。
木の幹から、ツタに足を支えられたネコ娘。
樹ネコ乙女・樹ニャーリアが出て参りました!
「変ニャなトコ触りやがって!」ネコパンチします。
「時間の無駄ですぞ?w 姫ェ」ブロックされました。
ユリが、私(の母樹)のウロの中へ。
「んじゃ行ってくるわ!」「ユリさま、お気を付けて」
「モリーヌ、よろしくね」「はい。テニスさまのことはお任せを」
私とユリは、たった2人、冬の夜に乗り出しました。
ヨトンマリ伯爵領の森を抜けて。
コノマーズ侯爵領に近付きます。
険しい地形です。小さな山が、海のすぐ近くまで腕を伸ばしております。
街道は、山脈を何度も越えないといけないという、かなりキツい道になってます。
その山脈に広がる深い森を、一直線に突っ切ってゆきます。
登る時は後ろに45度傾き、下る時は前に60度つんのめる・・・そんな難所だらけです。
ごすん! ・・・ユリがウロの中で転がって、頭をぶつけました。
「うへぇー」
「大丈夫かよ」
「居眠りしてた」
「油断しすぎでは?」
「ちょっとでも余分に寝とかないとな」
「あー・・・」
Mp回復みたいな意味ね?
ユリ、この前、大好きなバーシー王の御前で大ポカ噛ましたもんね。
「んじゃ着いたら起こすわ」
「行ったことあんの? ウタールデント」
「んニャ」
「場所わかる?」
「んニャ」
「ダメじゃんw」ユリは笑いました。で、寝るフリをしました。「着いたら起こしてね」
「自分でダメっつっといて!」私は樹を揺らしました。
「うへぇー」ごすん!
「アレが尾根のバリスタ塔だ。見える?」
「目ェいいなユリ・・・」
尾根で停止した私。
森にひそんで・・・
ユリを後ろから抱きしめて、梢の上へ、伸び上がって・・・(ツタでにょろ~んとね)
2人で、前方を偵察中です。
頭だけ森のてっぺんに出してね。水面に目だけ出してるワニみたいな感じですわ。
私たちのいる尾根が、ずーっと伸びて、別の尾根に突き当たってます。
尾根同士がT字路みたいになってる。
そこに、塔が、少なくとも3基ありました。
どの塔も屋上にバリスタを備え、また、他の塔と城壁でつながってます。
左手には、海岸線も見えました。
「海を狙う感じ?」
「海にも届くらしいが、主に街道だな。あのあたりで、海と山が極端に近づいてるのさ」
チョークポイントってヤツですか。
「見える範囲だと・・・4つかな? バリスタ」
「26だってさ」とユリ。「ウタールデント全体で、だけどね」
「うッへぇ」
「アレ喰らったら私は死ぬから、手前から侵入しよう」
森を突っ切って、尾根を越えます。
バリスタは尾根の陰に隠れて見えなくなりました。
ただ、山脈のこっち側は、荒れてます。あちこちに崖崩れの痕がある。
「落ちるなよ」
「気を付けてる」
「どんな風に?」
「根っこネットワークで問い合わせてる」
「なんだそれ・・・」
根っこのSNSみたいなモンですわ。
周囲の木々に、『このへんどう?』とか訊くと。
『突然崩れるんスよ』『次は俺ッスかねぇ』
などと、動けない木々の淡々とした報告がもらえるのです。
『夜まで一緒だったんスけどね。朝見たら、崖の下で。ポッキリ折れてて。もう枯れ木ッスわ』
うへぇー。
「滝の音だ。ここだな」
私たちは、侵入ポイントにたどり着きました。
森が途切れ、目の前に河原が横たわってます。
月光が細い川で踊ってる。
ドーーーッ・・・という地響きが、左=下流から伝わってきます。
近付きます。
滝でした。
覗き込みます。
滝壺が見えました。高さは、10尋以上ありそうです。崖は完全に垂直で、濡れ光ってます。
木々に遮られて、果樹園があるという下界の様子はよく見えません。
枝葉の間に、お城と港町の夜景がちょっと見えました。
「降りれる?」
「たぶんな。ユリは待っててくれる?」
「ん」
私は、恐怖を感じつつ、崖に乗り出しました。
ほとんど垂直な崖。だけど、ヒョロヒョロと木は生えてますな。
これなら『アスカリアの逆落とし』で降りて(≒落ちて)ゆくことはできる。
けど、濡れた岩は掴みづらい!
樹ターリアは重いので、変に反動が付いたりするとスッポ抜けて転落しそうです。
慎重に、ジリジリと、降下を続けて・・・
中腹に着地しました。
ちょうど中間ぐらいの高さのとこで、踊り場みたいに崖が突き出してるんですわ。
いったん、根を下ろしました。
『どーも』『初めまして』『どちらさんで?』周囲の木が根っこネットであいさつしてきます。
『どーも。樹ターリアです』
下を見ると、巡回している見張りが見えました。
前を見ると、ウタールデントの、お城がありました。
月光に浮かぶ、銀色の城。
ボディは無愛想な四角い箱で、飾り気はありません。
見張り塔が1基、高々と突き出しています。最上部に窓もありました。が、この窓には、見張りの姿はありませんでした。ラッキー。
屋上には、やはりバリスタが。バリスタ好きやなー・・・。
お城の向こうには、港の街並みが見えます。
桟橋で静かに揺れる帆船のマストが。
夜の海が。
岬で船を導く、灯台の明かりも。
・・・っと、眺めてる場合じゃねえ。
ツタを伸ばして、フにゃーリア部分だけ、崖の上に戻りました。
これは楽しかった。ツタで浮きつつ、前足で木に捕まって、グイッ! ってね。
「お待たせ」
「ハラハラしたよ」
「俺もだよ」
ユリを抱き締めます。
「行くよ」
「イッていいよ♥」耳元でバカ勇者が囁きます。
「笑かすなw 落っことしちゃうぞ」
「ひゃー!」
楽しそうなユリと一緒に降ります。
ツタを、途中に生えてる木を縫うように絡めてきたんで、さっきよりは安全。
けど、2人分の体重をツタで支えるのは、結構キツかった!
踊り場に到達。
ユリの心臓のドキドキが温かい。それが離れていくのが、残念。
「あの・・・いや、何でもない」
ユリは私の顔をじーっと見て、「お嬢さまのコトなら、戻ったら話してやるよ」
「うん。ありがと。ごめん。いまじゃねえよな」
ここからは、2人ともウロに入って、一緒に逆落としです。
滝のしぶきが漂う、サイコーーーに気持ちイイ(根を下ろしたくなる)空間を降りていって。
果樹園に着地しました。
おや?
樹ニャーリアとよく似た果樹が並んでおりますな?
◆♀◆ 17、端っこよろしいですか? ◆♀◆
『よォ、姉ちゃん』『どっから来たの?』『いま崖から落ちて来なかった?』
ザワザワザワ・・・あいさつが飛んできました。
私は『こんばんは。端っこよろしいですか?』と言って、入れてもらいました。
『どーぞどーぞ』『姐さんなら、端っこと言わず』『真ん中までどーぞどーぞ』
なんか姐御扱いされたんですが・・・。
『よく見たら、樹霊様じゃないッスか』『お見逸れしました』
『はぁ』
「じゃ、行ってくる。動くなよ? ここで待ってろ」
「了解」
ユリが出て行きました。
待ってるあいだ、果樹たちと情報交換します。
『いや~、びっくりッス』『樹霊さまとか、初めて見たッス』『コツとかあるんスか?』
『私は、エルフの魔術師の導きで・・・』
『へぇ~』
しゃべること、四半刻(月が動くのがメッチャ遅く感じました・・・)。
ユリの消えた方向から、騒ぎが起こった。
ポッ、ポッ、ポッ・・・と、赤い光が、闇の中に湧き起こりました。
「火ッ・・・」
『火ィー!』『木ャー!』『これだから冬は!』
果樹が悲鳴を上げています。
樹にゃーリアも、幹が浮きました。
ツタを巻き取って逃げ出しそうになっちゃった。
ダメだって! ユリ置いてってどうすんだよ!? とは、思うのですが。
根っこが勝手に動こうとするんですよね。
止まれって!
「・・・樹リア?」
ユリが逃げてきました。素っ裸の男に肩を貸してます。右手に剣。血に濡れてます。
「・・・こっち!」
私は、にょろ~んと飛び出して、裸のオッサンを受け取り、ウロに入れました。
オッサン、ウロの中で倒れた。・・・大丈夫。眠っただけっぽい。
・・・あれ? ユリが来ないぞ。
あわてて引き返すと、同じ位置で立ってました。こっちに腕伸ばしてきます。
「なに甘えてんの?」
「バカ。足跡だよ、足跡」
抱き上げてウロに入れました。
ウロを細く絞ります。リスの巣穴ぐらいにした。そこからユリと2人で外を見ます。
「逃げる?」
「ダメだ。ジッとしてろ。やり過ごす」
「了解」
「こっちだ! 足跡があったぞ!」
震動が伝わってきました。
戦士の走ってくる震動が。
まずい。
「ジッとしてろって!」
「う・・・・・・・・・うん・・・!」
「足跡が消えとる」「踏み戻りか?」「ヨトンマリ伯に、そんな体力はないハズじゃ」
「では・・・呪文か!」
「近いぞ。探せ!」
まずいまずいまずい。
近付いてきます。
松明の、火が!
「火ィ・・・!!!」
「樹リア」ユリに頬っぺたギュッと掴まれました。「大丈夫。侯爵家の果樹を焼いたりしない。静かにしてろ」
「火ィィ・・・!」
ぶちゅ。
ユリの唇に、樹木の乙女の唇(ちょっと堅い)が、ふさがれました。
「んふー・・・♥」悲鳴がユリの唇に吸われてゆきます。
「隊長。足跡を見失いました」
「ダメか。よし、範囲を広げる。おまえの班は川沿いに下れ。おまえは滝!」
「はっ!」「はっ!」
「敵は手練れだ。無理はするな。伝令!」
「はっ!」
「オーナさまを起こして伝えよ。『ヨトンマリ伯、脱獄。追跡中』だ」
「・・・はい」
「ここは終わりだ。ゆくぞ!」
火が、離れてゆきました・・・。
「まだ動くな。止まってるヤツがいるか、わかる?」
「止まってるヤツ?」
「ダーリンみたいなヤツ。私なら、1人だけ隠していく」
「あー・・・!」
『まだヒトいる?』と、訊いてみたら。
『居りまっせ~』『ウチの足元に』
『いるの!? なんで言ってくんないの?』
『火ィ持ってないし・・・』『どうでもいいかなって・・・』
『よくねーよ!』
『なにがダメなんスか姐御ォ~』『わかんね~』
『私の勇者さまが狙われてんだよ! いなくなったら、教えてね』
『はぁ~い』
「・・・いるって」
「だろうと思ったよ」
ユリは、転がっている男を見ました。
男は、良くない状態です。腕に噛み傷があり、背中には鞭の痕がありました。
「早く帰りたいが・・・もう少し辛抱しよう」
さらに四半刻。
隠れていた1人が、立ち上がって出て行った――と、根っこネットに書き込み(?)が。
『ありがと。じゃーね』
『行っちゃうんスか~?』『姐御ォ~』『巡りが良くなってきたトコなのに・・・』
別れのあいさつしたら、変な情報がもらえました。
『巡り?』
『姐御の側にいると、巡りが良くなるんスよ~』『リフレッシュ』『内外ともに・・・』
よくわからん情報でしたが。
惜しまれつつ、私は果樹園を離れたのでした。
さて。
あとは崖を登るだけです!
――だったのですが。
「ゥゥゥオーーーン・・・!」
果樹園に、獣の遠吠えが響き渡り・・・
「オオカミだな」と、ユリが言いました。
◆♀◆ 18、オオカミの果樹園 ◆♀◆
「どうする?」
「そのまま上がれ」
「見つかっちゃうぜ?」
「オオカミだ。もうバレてる」ユリは自分の鼻を指しました。「登れ!」
崖を、登り始めたとき。
恐ろしい群れが、私に追いつきました。
狼の上半身――頭。前足。尻尾。
太い針金のような剛毛が顔と背中、胸を覆っています。
――そして、人間の足。
「狂狼人だ!」ユリが言いました。
「くろーじん・・・!?」
「ウォン・グル・ウォーンさまの信徒、オオカミ男だ! 場所変われ、リア」
「う、うん」
入れ替わった、その直後。
「グァルルッ!」
ウロのすぐ外で、ヨダレの絡んだ声がして。
ゴヅン! ・・・と、刃が骨を断つ音がして。
地面に水袋が落ちるような音がして。
「1人」と、ユリが言いました。
吼え狂う声。
土と石を蹴る音・・・鋭い爪が、私の母樹を引っ掻くショック!
「2人。3人。――リアの肌を傷付けたな? オマエはラクには死なせんぞ」
「ギャッ・・・!!」
私はザワザワ震えながら崖を登りました。
踊り場についても、まだザワザワが止まりませんでした。
オオカミ男が、こんなシンプルに恐いモンだとは知らんかった・・・。
「・・・お見事じゃ。さすがは、勇者さま」
ハダカの男が、目を覚ましました。
弱々しい声で、私たちに話しかけてきます。
「刃の通らぬ『狂犬』を、あっさり斬り伏せるとは」
「刃が通らんのは、狼の部分だけですからな」ユリは笑いました。「股を斬ってやればいいんですよ」
「oh・・・」
ハダカのオッサンは股を押さえました。私も股を押さえました。
なんとか崖を登り切って。
滝の上に出ました。
「ふー・・・。申し遅れました。ダンゼイズ伯爵の娘、フターリアです」
「おお、フターリア姫。生命の恩人よ」
男は私に頭を下げて、こう名乗りました。
「わしは、ヨトンマリ伯爵のキズクートじゃ」
そして、伯爵はユリを見ました。
「侯爵閣下は、御無事かのう?」
「ええ。ツクノーさまは、お元気です。奪還に戻って来られましたよ」
「そうか、よかった・・・」
キズクートさまは、ウロの中に倒れてしまいました。
「・・・すまぬ。ホッとしたら、血の気が引いてしもうた」
「どうぞ、寝ててください」
「いや。人の心のあるうちに、話しておかねばならぬ」
ヨトンマリ伯は、仰向けに転がりながら、こう言いました。
「わしは、土牢で、改宗を迫られた。
オーナさまに・・・
ツクノーさまの叔母にして、反逆の首謀者・・・
そしていまや、ウォン・グル・ウォーンの司祭と堕した、あの女に!
わしは、断った。
するとオーナはオオカミ男を呼んで、わしの腕を噛ませたのじゃ」
伯爵は、私たちに傷口を見せました。
「もう、長くはあるまい。せっかく助けて頂いた生命じゃが・・・下ろしてくだされ」
「どうするのです?」とユリ。
「自決いたす」
「いや、そうはしません」ユリは却下しました。
「『狂犬』に噛まれた者は、自分を失い、狂狼人になってしまうのじゃ! どうか!」
「いや、そうはしません」
ユリは伯爵の肩に手を置きました。
「お忘れではないか? コノマーズには、優秀な解毒師がいらっしゃるでしょう?」
「・・・いや、しかし、ヨトンマリに戻るだけでも、馬の足で半日。発症に間に合わんのじゃ!」
「間に合いますとも。――な、リア?」
ユリに、撫でられました。
尻を。
「何してんニャ・・・」
「呪文だよ。行くぜ?」
「私の愛する樹木の乙女、フターリアよ、変容せよ。
駿馬のごとく、駆け抜けよ!」
伯爵が、人の姿を失う前に。
私たちは、無事、帰還を果たしたのでした。
◆♀◆ 19、帰還しました ◆♀◆
「陽の火よ、熱よ、輝きよ。忠臣キズクートを変容せしめよ。癒し、祓い、清めたまえ!」
ツクノーさまが、ベッドに縛り付けられた伯爵に、治癒の呪文を唱えました・・・。
「・・・間に合ったかな?」
「・・・大丈夫さ」
ユリと私は、病室前で待機です。
ここで、先ほど約束した話を、ユリがしてくれました。
「オマエのお嬢さまだけどね?」
「あ、うん」
「私からも謝って、訊いたんだけど、」
「ユリのせいだもんな」
「ちがうもん」
ユリはふくれました。私はつつきました。「で?」
「戦の前だから、仲違いだけはしたくない。でも、顔見ると腹が立つから、」
「・・・うん」
「顔を合わせないようにしますわ。――だってさ」
「・・・。」私はしおれました。
「え? そんなショックなの?!」
「・・・いや。うん。ちょっと。えっと、・・・この話はやめよう」
「・・・うん」
「うまく行った話をしようぜ」
「よし来た!」ユリは即座に切り替えました。「速かったね、リア。『駿馬』」
「ああ」アレね。「ホントびっくりしたわ」
「自分の足だろw」
「いや、だって、いきなり速くなるからさー・・・」
ユリの『駿馬』なんですけどね。
足が速くなる。
――だけの呪文なんですね!
反射神経は、ちっとも良くならないんですわ!
「崖から飛び出しそうになってさー」
「・・・え?」
足が速すぎて、根っこネットの検索が追いつかなくてね。
そうなると目に頼るしかないじゃん?
けど、上り坂の先って、見えないじゃん?
勢いよく登り切ったら、右手が崖!? ・・・っていうね。
「根っこの右半分が、空中に出ちゃってさー」
「oh・・・」
「ユリはさー」
「ンだよ」
「一般人の運動神経の鈍さ、わかってねーだろ?」
「は? わかってるよ」
「ウソつけ」
「ウソじゃないもん」
「ユリは天才だからなぁ」
「リアが天才なんだよ!」
と、ここで。
ツクノーさまが、病室から出て来ました。
「ヨトンマリ伯は、もう大丈夫じゃ」
私たちを抱き締めて、
「ようやってくれた! そなたらは、予定より遥かに大きな成果を上げてくれたぞ!」
「ま、勇者ですからな」ユリもニッコリです。
「おニャくに立てて幸いです」
「伯爵は、造船と海運の専門家なのじゃ。貴重な人材でのう」
「そも、なんで捕まったので?」とユリ。
「身共の首を見せてやる、と言われたそうじゃ」
「ツクノーさまの・・・?」と私。
「そうじゃ。それでカッとなって、誘い出されたと」
「馬鹿な。単純過ぎませんか?」とユリ。
「ま、色々あってな・・・」
ツクノーさまは、説明を打ち切りました。
ま、アレだ。『私の口からは言えぬ』ってヤツだ。
身内の裏切りとか、不祥事とか。たぶんね。
で、私に目を移します。
「・・・にしても、大した『変容』っぷりじゃな? ファリアよ」
ツクノーさまは、私の足に絡みついてるツタを撫でました。
ツタをたどって・・・
窓の外に立っている、母樹を見て。
「これが秘密の『変容』か」
「そんニャトコです」
「これ・・・」
「ニャんです?」
「『変容』が解けた時、窓に挟まったりはせんのか?」
「あ、それは大丈夫です。高く浮いたりしなければ・・・」
と言って、私が浮いてみせようとしたその瞬間。
『変容』が終わって。
私は、落っこちました。
ツクノーさまの胸の中に。
「うわ! すみません」
「ふふふ♥ こやつめ」
「コレだからなぁ!」ユリがあきれます。「で、夜が明けたらどうします?」
「うむ、」
南海の女侯爵は、私の髪を撫でながら・・・
「今日は、身共の番じゃ! そなたらは、休んでくれい」
◆♀◆ 20、コノマーズ突撃 ◆♀◆
ヨトンマリ伯爵領の南に、ツクノーさま率いる合同軍が展開しました。
前衛は、ツクノーさまのコノマーズ軍。
後衛に、ボンロウケさまのアイメンカ軍です。
「ボンロウケさま、出陣したんだ」
私が口にすると、隣のモリーヌがうなずきました。
「そうですね。手柄は欲しいでしょうから」
「実家の指示で引き延ばしてたけど、本音では出陣したかったワケか」
「引き延ばしも本音では? ツクノーさまは、強いライバルですし」
「あー・・・」
そんな会話を交わす私たちは、なんと、王女殿下の陣地に入れてもらっています。
前線を見下ろす丘の上。
ネムリタ王女は、頂上におわします。
その側に、護衛のユリと、話し相手のテニスお嬢さま。
周囲を親衛の騎兵隊がガッチリ固め、少し下ったところに歩兵が杭を打って陣を引く。
そんな感じの野戦陣に、私たちも入れてもらっているのです。
ちなみに、アスカリアのおっさん連中は、ヨトンマリ城で『待機』です。
「あんなケダモノの群れ、殿下の御前に出せますか!」とモリーヌ。
「きびしー・・・」
敵も、迎撃に出てきました。数は結構いる。こっちより多い。
どのぐらいの数かって?
そうですね。私たちのいる丘から順番に挙げていくと・・・
ネムリタ王女親衛騎兵・・・40騎
同 歩兵・・・200人
アイメンカ騎兵・・・40騎
コノマーズ騎兵・・・40騎
同 歩兵・・・600人
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反乱軍歩兵・・・1,000人
同 騎兵・・・100騎
同 バリスタ・・・4基
・・・こんな感じです。
数だけで言えば、敵・反乱軍のほうが優勢ですが。
「コノマーズの戦士よ! 身共の顔を忘れたとは言わせぬぞ!」
ツクノーさまが、面頬を上げて、美貌を晒して。
巨大な軍旗と共に、前進して。
「――武器を捨てよ! 投降せよ! "コノマーズの黒"に帰参せよ!!!」
黒い槍を、高々と掲げると・・・
見る見るうちに、敵が崩れました。
武器を捨てる者、逃げ出す者が、続出!
「いま投降し、帰参するならば、その罪は問わぬ。さあ、道を開けよ!」
ツクノーさまは、敵陣が崩れるだけの時間をやってから、
「コノマぁーーーズ・・・」
馬をグルッっと巡らせて・・・
「・・・突撃ぃーーー!!!」
先頭を切って、突撃しました。
「先頭!?」私はビックリしましたが、
「よく御覧なさい、お嬢さま」モリーヌに指摘されました。
よく御覧なさいますと。
先頭を走っていたハズのツクノーさまが、いつの間にか、集団の中心になってますね。
女侯爵の突撃を見て、慌てて走り出したコノマーズ騎兵・歩兵が、ツクノーさまの周囲を固めてる。
そして、弾丸のようにまとまって、敵陣に突っ込んでいるではないですか。
「あの葦毛、老馬でしょう。賢い。そして、少し足が遅い・・・」
「へぇ・・・!」
ツクノーさまの馬は、連銭葦毛。
その肌が朝日に照らされ、銀色に見えます。
私は、昨夜見たウタールデント城の銀色を連想しました。
周囲の騎兵は黒・焦げ茶が多く、ツクノーさまは輝いて見えました。
尾根のバリスタからも、彼女の位置はわかりやすかったハズです。
激突。
敵陣は、あっさりヘシ折れました。
真っ二つになって、瓦解。粉微塵に打ち砕かれました。
黒ヒョウの軍旗は、悠然と海岸へ転回。乱戦でばらけてしまった歩兵を集めながら(ちゃっかり鞍替えして、後ろについてゆく敵戦士の姿も見えました・・・)、隊列を整えます。
尾根で、バリスタが動くのが見えました。
発射!
しかし、矢は戦場を大きく飛び越して、海に沈みました。
「反乱側、士気低いね」
「昨日までの主君を討てと言われたら、ああもなりましょう。暗君でもないし、」
「美人だしね」
「・・・ま、それもありましょう」
ボンロウケさまは、どうしていたかというと。
ここまでは、部隊を止めたままでした。
アイメンカの馬たちは、ツクノーさまに釣られて走りかけていたのですが。
それを御自身の馬体で止めて、「下がれ」と、おしとどめていたのです。
「なんで行かないんだろ?」
「時間差で突撃するのでしょう。同時に行ったら、同時に馬が疲労しますから」
モリーヌの予想通りでした。
黒ヒョウの軍旗が、海岸で停止。横に広がって陣形を整えると・・・
それを見たボンロウケさまが、
「アイメンカ! 魔物に打ち勝つ騎馬武者よ、このボンロウケに続くがよい!」
と叫んで、突撃に移りました。
山脈に近い位置、森に入る手前あたりを、ヘビみたいにくねりながら進んでゆきます。
「バリスタを警戒してる?」
「ええ。アイメンカには撃ち込んでくる可能性がありますから・・・あ、来ました!」
4基のバリスタが、一斉に。
限界まで首を下げて、撃ってきました。
飛び越してハズレ。
手前の森の木にぶつかってハズレ。
馬と馬のあいだに突き刺さってハズレ。
命中。
かわいそうな馬の胴体に大穴が開いて、地面に潰れます。
乗り手が宙を舞いました。鎧を着た大の男が、人形のようにコロンコロンと転がって・・・
馬も人も、それっきり、動きませんでした。
「クソ!」
「全弾外れでは、反逆者に処分されるのでしょうね。しかし、まずい、これは」
アイメンカの騎兵は、激怒。
逃げるコノマーズ歩兵を追いかけ回して、殺し始めました。
バリスタも、ムキになってアイメンカ騎兵を殺しにくる。
双方、完全にキレてしもうた。捨てていた武器を拾う敵まで出てきた。
「ダメだこりゃ。突撃しないほうが良かったんでは?」
「戦士が納得しません。戦功ナシでは食っていけませんので」
「クソすぎる」
「そんな言葉を口にしてはいけません。ですが、はい、戦はクソですね」
・・・敵は、退却しました。
バラバラになってウタールデントの城門に逃げ込み・・・
あるいは降参してツクノーさまの足元にひれ伏し・・・
あるいは森の中へ逃げ込んで、姿をくらましました。
ツクノーさまの軍団は、半円形の陣を組みました。
岬に、灯台があるんですけどね。その灯台を守るみたいな半円形です。
そして、こちらに合図を送ってきました。手旗信号ですな。
「ツクノーさまの陣まで、前進します!」
ネムリタ王女の声が聞こえました。
私たちの眼前で、歩兵が柵を解いて、道を開けます。
キビキビした動作。我らがアスカリア歩兵との差は瞭然です。
親衛騎兵が丘を降りて来ました。私たちは(下馬はしませんが)頭を垂れて見送ります。
ユリとお嬢さまの青鹿毛が通りすぎました。
ネムリタ王女の葦毛が。
そして騎兵の後列が。
「御二方、騎兵に続いてどうぞ」と、歩兵隊長が促してきました。
「ありがとう」
私とモリーヌも、馬を動かします。
ネムリタ王女に従って、ツクノーさまの陣地まで・・・。
右手から、血まみれのアイメンカ騎兵もやって来ます。
「荒れなきゃいいけど・・・」
「荒れるに決まってます」
ですよね・・・。
◆♀◆ 21、こうてん ◆♀◆
その夜の会議は、大荒れだったそうです――
「コノマーズは礼儀を知らんのか! 人間にバリスタを撃ち込むとは!」
と、アイメンカの戦士が怒る。
「アイメンカこそ、武器を捨てて投降したコノマーズ人を殺したじゃろ!」
と、コノマーズの戦士が怒る。
一触即発。
ツクノーとボンロウケが、ケンカ(の演技)を引っ込めて説得に回ったほど。
それでも、戦士どもは収まらぬ。歯ぎしりをし、睨み合い、あっちこっちで罵倒を口にする。
ここで。
「皆さんの仰る通り・・・恐ろしい戦いでした」
ネムリタ王女が、口を開いた。
「このような戦いを、長く続けてはいけませんわ。私たちの力で、速やかに終結させましょう」
ツクノーとボンロウケが、「御意」と頭を垂れる。
ネムリタ王女は、重ねて「頼りにしています」と2人を激励する。
これで、場が鎮まった。
侯爵と侯爵の長男は、互いに補償の約束をし、握手をして別れた・・・。
ボンロウケは、この展開に満足したらしい。
以後、引き延ばしを口にすることはなくなった。
まあ当然だろう。
コノマーズ侯爵と対等に話した。王女に頼られた・・・これらは、次代アイメンカ侯爵にとって、戦功よりも貴重な手柄だったのだ。
「――ってな感じだったぜ」
私の寝袋に潜り込みながら、ユリちゃんが教えてくれました。
「ユリちゃん?」
「ンだよ」
「なんで潜り込んでくんの?」
「当然だろ。寒いんだから」
「なにが当然だよ」
「お嬢を待ってたのかよ」
「いやそうじゃなく。いや来たら喜んで入れるけど。来ないでしょ・・・」
「オマエがお嬢とケンカするからだろ」
「オマエが私を脱がしたんだろ!」
私は、寝袋の中でユリと揉み合いました。
いやらしい意味じゃないですよ。
初めのうちは。
いやホント。そんなつもりは。
・・・けどね?
ユリが私の乳を揉むから。
お返しにユリの股間をギュッと掴んだら、
「あっ・・・♥」
とか言って、可愛い声出すから。
ハァハァ言いながら、私の胸に顔埋めてくるから。
「おい、出てけよ」って言いながら、股をグイグイいじめてやったら、
「やッ♥ ばか、い、いじわる・・・♥」
とか言って、女の子みたいに鳴くから。
レズっちゃったんですよ。
ユリの下半身を、寝袋(わりとデカい)の中で素っパダカにしてやってね。
「勇者のクセに」とか「淫乱w」とか、あと「声出すなバカ」とか、意地悪言いながら。
ちょっと、こう、指でね?
ユリちゃんの中身を弄んでみたんですよ。
ユリ、めっちゃイキまくってました。
この子、イクとき入り口が締まるんで、バレバレなんですわ。
「ふー・・・♥ ひっさしぶりにイジメられたぁ・・・♥」
「・・・待て。寝るな。出ろ」
「・・・えぇ? もうイジメなくていいってw」
「いやマジで。これじゃ、お嬢さまとガチで別れる羽目になるから。出ろ出ろ」
「ええー!? オマエ・・・さすがの私もキレるぞ?」
「さすがも何もしょっちゅうキレてんじゃねーか」
「・・・。」
「あ、ハイ。わかりました。あの、腕枕いかがですか? 私の勇者さま」
で、翌朝ですわ。
馬の様子を見に行ったら、お嬢さまとバッタリ出くわしたんですわ。
「お、おはよう・・・ございま「昨日ユリさまと何してたの?」
私は、素直に説明しました。
「――というワケでして。
決して私が望んで浮気したんではなく。
ハッキリ『出てけ』とも、言ってやりましたので!
セーフかアウトかで言えば「アウトよ!」」
「・・・!?」
「『予想外の判定』みたいな顔してんじゃないわよもー!」
お嬢さまは、鼻から火のような息を吹きました。
で、そこから自分を制御なさいました。
「・・・ま、いいわ。いまはやめときましょ。戦じゃ、何があるかわからないんだもの」
「・・・はい」
私は頭を下げました。
お嬢さまは自分の指を見つめました。
「主人に忍耐を強いるメイドですみません」
「侍女よ。ホントよ! まったくもうッ!」
お嬢さまは、グルンと回転して。
ポニテの先っちょで私の鼻面をしばいて「いてぇ!」、去っていきました。