TSゆりフタ令嬢侍女メイド! 作:min(みならい)R18
◆♀◆ 22、コノマーズ攻城戦 ◆♀◆
攻城戦の前に、2日、時間が空きました。
1日は死者の収納のため。
2日は交渉のため。
・・・反逆者どもは、交渉に応じませんでした。
「軟弱なるツクノーに、黒ヒョウ軍旗の資格ナシ!」
城壁の上から、こう言い放ったそうです。
「真の黒ヒョウは、オーナさまじゃ!」
「畳み掛けたほうがよろしいのでは?」
ボンロウケさまは、攻撃を急ぐべきと仰いましたが・・・(これまでと逆ですね)
ツクノーさまは、首を振りました。「いや。攻撃は、明日からじゃ」
「なぜ、そう慎重になられる?」
「なんでといって、ウタールデントは堅城――と、このツクノーは知っておるからじゃ」
さて。この間に、味方には増援がありました。
ツクノーさまの下に、地元の戦士、侍、力自慢の農夫が、続々と集まって来ます。
見れば・・・
「ヨトンマリの戦士・何某! 姫のために馳せ参じた!」
高らかに名乗るのは、チェインメイルで戦馬にまたがる青年。
「北コノマーズの西の村にて侍をしておる何某以下3名! 伯爵のお触れにつき参戦いたす!」
青銅の兜にレザーアーマー、下半身はヨロイなしというおっさん。
「北コノマーズの西の村の南の農場主・何某とその次男三男!」
農耕馬にまたがる巨漢と、牛車を引く若者2人。
・・・こんな感じのが、300人ほど加わったようです。
ボンロウケさまの下には、遅れていた歩兵隊が到着しました。1部隊、72人。
ユリには、アスカリア歩兵30人。待機させられていた連中ですね。
「来たか」
「おいーッス」「ふわーあ・・・」
「シャキッとしろ。ブッ殺すぞ」ユリが低い声で脅しますが。
「徹夜で行軍してきたんスよ」「寝かせて下さいよ・・・」
「ガタガタ抜かすな。バリスタに特攻させんぞ」
「うへぇ」「来るんじゃなかった・・・」
フターリアにも。
「え、俺?」
「地元の戦士団選抜だってさ」
ユリに言われて、あわてて天幕に飛び込んで。
メイド服を脱いで、侍女のドレスに着替えて。
岬に立つ灯台へ走ってみますと。
チェインメイルの戦士が、30人。
「ウオーーー!」
「姫ぇーーー!!」
「フっターリア! フっターリア!」
「ダンゼイズの、ドラゴぉぉぉーーーン!!!」
大騒ぎです。
お互いの盾をぶつけ、足を踏み鳴らし――周囲がビックリするほどの、大音声!
私は、笑ってしまいました。
「我がふるさとの、殿方よ! はるばる異国まで、よく来てくれました!」
「ウォーーー!!!」
・・・えーと。これ、私が参戦願い出さんといかんのだよな?
などと、笑顔の下で考えておりますと。
パカ、ポコ、パカ。
背後に蹄が近付いて来て、
「これはこれは、ダンゼイズの皆様。お久しぶりですわ」
テニスお嬢さまの、晴れやかな声がしました。
「おお・・・!」戦士たちは、ため息です。
お嬢さま。
今日は、ベロ~ン君に乗っていらっしゃいます。
金髪のふわふわポニテが輝いてます。
可愛い・・・お日様の妖精みたい・・・。
ベロ~ン君もカッコつけてます。ベロ~ンしてない。
そこにモリーヌの青鹿毛がやってきました。ベロ~ン君、ビビってヨタヨタする。化けの皮剥がれた。
「先輩方、御機嫌よう」とモリーヌ。「参戦願いということで、よろしいですね?」
「むろんじゃ!」「戦じゃ!」「姫御の護衛じゃ! うおおおお」
「護衛はいらん。このモリーヌで十分」
モリーヌは言い返しました。
「先輩方は、存分に活躍なさいませ!」
「ウオーーー!!!」
「では、手続きはお任せ下さい、姫」
「・・・あ、はい! よろしく」
『フターリア戦士班』、30人増員です。
「装備が整っておって、まことによろしい!」
ユリは笑顔で応じました。
「・・・で、どの程度やれます?」
「なんでも」
ベテランの戦士長が答えました。
「走るのも殺すのも得意じゃ。そこらの川なら、このまま泳いで渡ってみせますぞ」
「では・・・?」
ユリは、山のほうを指しました。
尾根には、くっきりと、バリスタ塔の姿が見えます。
「お任せあれ。わしらは、山男じゃ!」
味方の増員を終えて。
コノマーズ攻城戦が、始まりました。
ツクノー・ボンロウケ両閣下が、130騎と1,000人あまりを率いて前進します。
ネムリタ王女は、40騎・260人に守られ、灯台に築いた陣地で待機。
ユリと私も、灯台陣地スタートです。
正面に、山脈とバリスタ塔。
左手に、進軍してゆくツクノーさまと、山脈の端っこ。
その山脈の端っこが邪魔で、ウタールデントは見えません。灯台に登れば見えるらしいですが。
ツクノー軍がそこまで到達すると・・・
「さて、出番だぞ!」
ユリが号令をかけました。
「ダンゼイズのドラゴン姫。行きますぞ。バリスタの攻略だ!」
◆♀◆ 23、ダンゼイズのドラゴン姫 ◆♀◆
「変容せよ、フターリア」
お嬢さまが、呪文をかけてくれます。
「幻のドラゴンの力もて、火を吐き空飛び賊徒を払え。──フタゴンに、な~れ!」
「がおーう!」
私の背が、伸びました。
どの戦士よりも高い背丈に、さらに、ねじれたツノが頭上に伸びます。
両手両足はゴツくなり、ナイフのごとき爪が生えます。
広げた翼は砂を巻き上げ・・・
尻尾を打てば地面が割れる!
「ウオオオ!!!」男どもが大騒ぎ。
フタゴン、『変容』完了です!
試しに一発、羽ばたけば!
ふんわり纏った白いトーガが(ショーシナー伯爵家の製品です。CMでした)・・・
白い太腿の付け根まで、フワッと眩くめくれ返る!
「・・・おおおお♥」男どもが大興奮。
モリーヌが彼らをギロッと睨んでから、
「フタゴンよ変容せよ。御身の肌は鉄のごとく、角と鱗は鋼のごとし。危害を弾き、ながらえる」
『鉄身』のBuffをくれました。
「フタゴン準備よーし!」
「寒くはない?」と、ユリ。
「あったかいでーす!」
南海の陽光は、すでに春の気配。
寒さに弱いフタゴンも、これなら問題ありません!
「よし。出発!」
ユリが、マラソン速度で走り始めました。
アスカリア歩兵・フターリア戦士班、各30人が続きます。
尾根のバリスタ塔まで、距離は、四半里。
手前は街道。その向こうが森で、山を登った先に目標です。
バリスタは当然、こちらの動きに気付きました。
見えている4基のうち、半分の2基が、こちらを向く。
ユリが『駿馬』の呪文で走り始めます。
敵は、撃ってきました。
バリスタの巨矢が・・・・・・・・・尾根の上からユリまで、一瞬!
まるでワープしたかのよう。
地面に突き刺さる ズドン!!! という音が、ものすごく大きく聞こえます。
「フタゴン!」森に駆け込むユリが、叫びました。
「おう!」
私は、地面を蹴って、翼を広げ・・・
海に向かって、飛び立ちました。
・・・逆方向じゃないかって?
はい。逆方向です。向かい風のほうが、離陸がラクなんで。
海風に乗って上昇。灯台の脇を抜け、断崖の先へ。
崖を吹き上がってくる風に乗って、一気に高度が上がります。
アホウドリになった気分。
ひと呼吸のうちに、灯台よりも高く!
王女殿下のお顔がチラッと見えました。展望台に登っておられるんですね。
階段を上がってくるテニスお嬢さまの姿も。
お二人に手を振ってから、加速しました。
風は、追い風に変わります。
・・・高度が落ちた。
まあ大丈夫。最悪地面に突っ込んでも、『鉄身』があるし。
ツクノーさまの黒ヒョウ軍旗ぐらいの高さを飛びます。
これより低いと、翼端が当たっちゃう。地面の凹凸や雑草にね。
ニョロニョロ飛びます。ヘビっぽく。お尻と尻尾をくねらせて!
バリスタが、私に狙いを変えました。
1本、右前方。無視。
2本目。前方。わざと近付き、蹴って加速。うまく行った。高度アップ。ありがとさん。
森の上空へ。梢スレスレ!
ちょっと枝にぶつかった!
『鉄身』でヘシ折りました。カキーン! って感じ。
ドラゴンの聴覚が、森を走る男たちの足音を捉えました。
ユリの足音も。ネコみたいで可愛い。
追い抜きました。
バリスタは慌てております。
私を狙って、砲口を動かすのですが・・・
私がアップダウン・蛇行するため、狙いが付けれんのです。
山肌を這うように飛びます。
海風が、冷たい上昇気流になって、ねっとりと私を押し上げてくれます。
4基のバリスタ塔のうち、左端に直進。
──フェイントです。
『左に膨らんでから、右を潰しに行け』って、あらかじめユリに言われてたんですわ。
実際やってみると・・・
ツクノーさまを見ていた左のバリスタ2基が、私に向き直りました。
右にカーブします。その2基の射程から外れました。バリスタ兵は「くそっ」とか罵ってます。
・・・なるほどねぇ。
右端のバリスタへ──っと、胸壁の陰から弓兵が出てきた!
1発喰らった。尻尾に! カキーン! 弾きました。
「グルルル!」
フタゴン、ちょっとキレました。
いったん頭を下げ、飛び込むみたいにして高度を下げます。
弓兵の狙いが外れました。
上昇気流を掴んで・・・
血の気が引くほど、急上昇!
で、翼をたたむ!
自由落下・・・・・・・・・
ドガアアアン!
バリスタ塔に着地(≒墜落)!
ヌウッ・・・と、頭を起こして・・・
「ひぃ!?」「ド、ドラゴン!」
「ガアーーー!」
・・・フタゴンは、火を吐きました。
バリスタが焦げる。
黒い接着剤(ピッチかな?)が、燃え上がる。
なんかすごい音がして、弓が反り返った。ゴン! と、引き金が落ちた。
破壊完了。
城壁の内側に飛び降ります。
その直後、バリスタの残骸がバリスタに撃ち抜かれました。
隣の塔から撃ってきたのです。
遅いわ。
ドシャア! 四つ足で着地した私は、そのまま走ります。
左足を踏ん張って左手を前に。右足踏ん張って右手を前に・・・尻尾をくねらせて、高速這い!
城壁の内側には、槍兵が何班か待機してました。
30人弱。
そいつらをハネ飛ばしながら、2番目のバリスタ塔へ。
弓兵は、撃てません。私が、槍兵の足元を駆け抜けてるからです。
『立つな』って、あらかじめユリに言われてたんですわ。
ケモノじゃねーんだけど! って思ってたけど・・・なるほどね。
四つん這いのまま、2番目の塔に突入!
悲鳴を上げる兵士をハネ飛ばしハネ飛ばし、屋上へ!
「あ」
振り向くバリスタ兵に、頭突き。角でレザーアーマーを引っ掛けて、ポーンと投げます。
城壁の外に落ちた兵、ゴロンゴロンと山を転がり落ちていきます。
ちょっとかわいそうだが・・・。
先日、アイメンカの騎兵を撃ったの、この尾根のヤツらだからな。おあいこじゃ!
撃ったヤツは別かも知らんが。連帯責任じゃ!
もう1人。ポーン。
最後の1人は自分で飛び降りました。賢いね。
「ガー!」
火を吐いて、バリスタを燃やして。
残る2基のバリスタを見ます。
こっちを向いてる。撃とうとしてる。
私は、ちょっと考えて・・・
城壁の外にクルリと乗り出して、四つん這いになりました。
壁走り!
80度ぐらいの壁にヘバリついて、四つ足でシャカシャカと、トカゲ走りです!
・・・ここの城壁、日本のお城の基部みたいな感じなんですよ。
石組みそのままなんですね。漆喰とか塗ってない。垂直でもないし。
これなら行けそうだなと思ってね。
行けましたわ。
大股開いてるんで、後ろから見たら痴女みたいになってますけどね。
城壁を這っていくと、角が来ました。
こっから先は、3番目のバリスタに背中を晒すような角度になってしまう。
ここまでですな。
壁を蹴って、森の上空へジャンプ!
・・・からの、翼を開いて上昇気流をキャッチ!
バリスタ塔の上空へ。
翼閉じる!
・・・・・・ドガアアアン! 着地!
口をポカンと開けているバリスタ兵。
「見」
「み?」
「見えた・・・」
ああ。
フタゴン、ノーパンだからね。
私はそいつを掴んで、城壁の外に投げました。
バリスタを・・・あれ? 矢が乗ってんな。
じゃあ撃ってみよっと。
えーと。
左右回転は、砲台を直接手で回すだけか。
上下は・・・まあ上下はいいや。適当で。当たっても寝覚め悪いし。
第四のバリスタに向けて、撃t──先に撃たれた。頭を下げて回避。──撃ちます。
手前の城壁に当たりました。
跳ね返った巨矢が、もんのすごい高さまで舞い上がってから、バリスタ兵にブチ当たりました。
うわあ・・・
・・・もう一発撃ってみっか。
足元の箱から、巨矢を掴m――落とした。
両手で抱いt――落とした。
クッソ! フタゴン、物を握るのがヘタクソすぎる!
牙で噛みついて、両前足で抱えました。これでなんとか。
よっこいしょ。装填。
さて、撃t──森からユリが飛び出して来ました。
あっぶね!!! 引き金引くとこだった!
「風よ変容せよ。渦巻け。私を巻き上げろ。――『つむじ風』!」
ユリが、舞い上がって・・・
足の長い水鳥みたいに、胸壁にストッと立って。
バリスタ兵を蹴り飛ばして。
城壁の内側にいる兵を睥睨して。
・・・言い放ちます。
「私は、ユリ! アスカリアの勇者にして伯爵!
『狂犬』ウォン・グル・ウォーンの、オオカミどもを、討伐いたす!
オオカミは、前に出よ! このユリが斬ってやる!」
で、ユリは、私を手招きしました。
・・・私?
なんだろ?
まあ行くけど。装填した矢は、捨てといて・・・っと。
ヒョイとひとっ飛び。
手前の城壁に着地。
ズシャ、ズシャ、ズシャ。ユリんトコまで歩いて。
翼をたたんで。
お辞儀。メイド風に。
「伯爵閣下・・・」
「うむ」
ユリは私の頭を撫でました。
そして、兵どもにダメ押しの一言です。
「『狂犬』でない者は、武器を捨てよ!
コノマーズ侯爵、ツクノーさまは、『罪を許す』と仰せだ!」
「がおー!」
私も、火を吐いて、演出してやりました。
「ひええ」「お許しを」「捨てます、捨てます」
兵は、みーんな、逃げ散りました。
「勝ったな」
「うむ」
ここで、山を登ってきたダンゼイズ戦士が合流しました。
「出遅れた!」「わしらの手柄が!」
「ウチのヤツらは?」とユリ。
「息切れしよったんで、置いてきましたぞ」と、ダンゼイズ戦士長。
「・・・。」
ユリは不機嫌になりました。誰が見てもわかるぐらいに。
それを頑張って抑え込んでます。可愛いw
「フターリア姫」
「はっ!」
「私は、ウチのへっぽこどもに、指示を出さねばならん。『造船門』、開けて頂けるか?」
「お任せ下さい!」
私は戦士班を取りまとめ、城壁を南西へ。
壁は、山肌に沿って、急激に下ってゆきます。
目も眩むほどの急斜面の先に・・・
コノマーズの都・ウタールデントが、広がっていました。
◆♀◆ 24、造船門を沈黙させよ ◆♀◆
ウタールデントの都は、銀色のミニチュアのようでした。
緑の扇の上に広げたミニチュア・・・
2本の尾根に挟まれた扇状地に、何千という建物と。
モクモク煙を噴き上げる工房と(たぶん、鍛冶工房ですね)。
カマボコ型の大きな施設と。
お城と滝と果樹園と。
帆船の停泊する港が、詰め込まれているのです!
「コレが造船所じゃな」
足元のカマボコを指して、戦士長。
カマボコ型の施設。3棟あって、どれも川に面してます。
見れば、1棟ごとに桟橋が設けられており、木材を運び込む艀が、もやってありました。
「建物ン中で船造って、進水させるんじゃろ」
「屋根付きドックか・・・!」
私は感動しました。
この世界、でっかい構造物を見る機会が少ないからねぇ・・・。
「すげーな・・・」
「うむ。で、そこの水門が『造船門』じゃな」
造船所から下ったところで、川と城壁が交差してました。
両岸にバリスタ塔。バリスタが2基ずつ。
で、その塔と塔のあいだが水門です。
水門は現在、全閉。完全に遮断されてます。
「アレを開けろと」
「そういうコトじゃな」
さらに下流を見ると、はね上げ橋がありました。
まさにいま、ツクノー・ボンロウケ両閣下の軍が、そこに迫るところ。
敵兵が逃げていくのが見えました。抵抗はしない模様。
・・・ですが、『造船門』左右のバリスタ4基が、巨矢の装填を始めていました。
「このまま眺めておったら、」
「ツナちゃんが撃たれるわな」
「・・・ツナちゃん!?」戦士長がのけ反りました。「こ・・・侯爵閣下を、愛称で」
「秘密だぞ?」
私は、『フターリア戦士班』を振り返りました。
「『造船門』を攻め落とし、水門を開ける! いくぞ!」
「ウオオオオ!」
急斜面に飛び込むように、城壁を蹴る!
足元は、もう何もありません。落ちたら生命はないでしょう!
・・・だんだん絶壁に飛び込むのが快感になってきたw
30人の『フターリア戦士班』も、城壁を駆け下ります。
これね。ホントにすごい城壁なんですよ。
傾斜が45度超えてるようなとこがある。
そこは階段になってるんですが、急傾斜すぎて、ハシゴより恐ぇーよ! っていう。
チェインメイルに盾持って、そこを駆け下りてゆくワケですから・・・
「さすが山男」
ダンゼイズ、ずいぶん質の高い人材を送ってくれたな・・・って感じましたわ。
で。
造船門の上まで滑空して、翼を閉じて。
・・・・・・・・・ズッシャアアアン!!
屋上を踏み砕きながら着地。落ちるのは得意なフタゴンです。
兵を蹴散らし、バリスタをこんがり焼き上げて、手前の2基を潰す。
向こう岸のバリスタが向きを変えてきます。
撃たせん。
フワッと飛んで、上空からブレス。
兵が逃げ、バリスタは無傷で手に入りました。これは壊さずに置いておく。
ダンゼイズ戦士が駆け下りてきて、このバリスタ2基を確保しました。
はね上げ戸から反撃の機会を窺う敵兵を、モグラ叩きにブチのめす。
「塔を調べろ! 入り口を封鎖!」
戦士長が指示を出します。
「封鎖できたら水門を開けろ。終わったら、盾になるモンを探して持ってこい!」
もちろん、敵も奪還を試みます。
槍兵と弓兵が、正門から送り込まれて来ました。
しかし、槍兵はレザーアーマーで、弓兵は布アーマー・・・
「ウオオオ!!!」
「手柄じゃあああ!!!」
「母ちゃん待っとれ! コノマーズの菓子持って帰るぞ!」
・・・チェイン装備のダンゼイズ戦士に蹂躙され、逃げ惑うのみでした。
造船門の制圧を確認して、私は正門に飛びました。
正門は造船門の3倍ほど大きく、ちょっとした要塞になってる。
バリスタも櫓で守られてます。外から見えるのは砲口だけ。
ふつうに攻略したら、とんでもない被害が出そうですが・・・
「ガアーーー!!!」
・・・フタゴンなら、窓から火吹き込めばいいんですよね。
まず軽く吹いて、兵士を逃がします。
それから強めに吹いて、バリスタを燃やしておきました。
結構バリスタ潰したな・・・。
ツクノーさまに恨まれんかな?
『フタゴンはヤバい。暗殺しとこ』とか思われたらヤだな。
ま、これで攻略が格段にラクになったハズです。
弓兵は、フタゴンじゃどうしようもないけどね。
◆♀◆ 25、矢の嵐 ◆♀◆
にしても、ウンザリするぐらいのバリスタ城です。
バリスタ塔を攻略しようとすると、別の塔がリンクしてくるんですよね。
バリスタAの射程内にB・Cがあり、Bの射程内にDとEが・・・っていう。
正門は、港を守る突堤のバリスタ塔と、商業地区にドーンとそびえる出城がリンクしてます。
突堤の方は何もしてこない。
出城は・・・
出城は、商業地区にそびえたつ、5階建てぐらいの高さの砦です。
屋上に4基のバリスタを備え、胸壁だけでなく、先端を尖らせた木の柵が張り巡らされてます。
当然、守備兵の姿も見えました。
「アレは手に負えんなぁ・・・」
ピロピロ。
私は、舌を出して空気を読みました。
・・・帰るべし。
そろそろ、疲れたし。
造船門に引き揚げるべし!
「飛んでる最中に『変容』解けたら、墜落するし!」
手を離し、壁を蹴って、正門を離れました。
私にしては、上出来の判断だったと思います。
ちょうどこのタイミングで、出城が動いてたんですわ。
屋上に、髑髏の首飾りを着けた魔術師が出てきて・・・
弓兵に「天に向かって放て!」と命じて・・・
「風よ変容せよ。我らの鉄矢を持ち上げて、ドラゴン女を狙い撃て。──『誘導』!」
弓兵が一斉射撃した矢を。
呪文の風で、かっさらって。
見えなくなるほど高く、天の彼方に巻き上げて・・・
ホーミングミサイルにして、私に落としてきたのです!
ドッザアアアア!!!
いま、私が蹴ったばかりの正門櫓に、叩きつけるような矢の群れ!
矢の嵐!
「ピギャーーー!!!」
私は恐怖に火を吐きながら、大慌てで『造船門』に戻りました。
あとちょっと離陸(壁から手を放す)のが遅かったら、アレが私の全身に・・・!
造船門に戻りました。
バチバチバチバチ! 矢が追いかけてきます!
翼に、背中に、2・3発・・・(カキンカキーン!)
戦士2人が、鉄製の長櫃のフタをかざして、私を守ってくれました。
私は、半分腰を抜かして、トカゲみたいになって、はね上げ戸に這い込みました!
戦士2人も私に続いて飛び込みます。
ガガガガガ!!! はね上げ戸から矢が流れ込んできた!
まるで、滝! 戸を閉めることもできん!
「姫! 突っ込みすぎじゃ!」
戦士長に怒鳴られました。
「こんなモン喰ろうたら、一瞬で『鉄身』が剥がれますぞ!!!」
「わ、わ、わかってる!」
「くそっ」「飛び道具ばかり使いおって」「軟弱コノマーズめが!」
おっさんども、罵る。
壁にへたり込んだ私は、竜の前足で汗を拭いました。
「いやー、手強いわー・・・!」
「敵を舐めとるからじゃ! 姫でなかったら、ブン殴っとるトコじゃ!」戦士長はキレっ放しです。
「・・・うん。まあな」
ピロピロ。私は舌を出しました。
「しかしな? 戦士長」
「なんじゃ」
「私が敵を引き付けたから、水門が開けれたわけじゃろ?」
どどどど・・・ごぽごぽごぽ・・・。
足元で、音がしております。
開かれた水門を、水が逆流してゆく音です。
いま、川よりも海のほうが水位が高いみたいですね。
水門を開けたので、逆流が始まったようです。
「姫の言う通りじゃ」戦士の1人がうなずきました。「こっちは、ラクチンでしたわい」
「馬鹿モンが!」戦士長はそいつを殴りました。
「ぐわあー! な、なにをなさる」
「姫を囮にする戦士があるか!」
「じゃが戦士長、姫のが強いし・・・」
「馬鹿モンが!」
「ぐわあー! 痛い!」
さて。
こうして私たちが造船門のバリスタ塔に籠もっておりますと。
どおーん、どおーん・・・と、太鼓の音が響いてきました。
覗き窓(監視用の穴ですね)から、見てみると・・・
太鼓を叩いてるのは、ツクノーさまの部隊員でした。
「姫。あの太鼓は、なんの合図じゃ?」
「知らん・・・」
◆♀◆ 26、ガレー艦隊、登場 ◆♀◆
「ガレーへの合図さ!」
太鼓の音に、私たちが首をひねっておりますと・・・
ユリが、はね上げ戸から飛び込んで来て、教えてくれました。
ガガガガガ!!!
はね上げ戸から、また矢が流れ込んできました。しつこい敵やな・・・。
「沖に、ガレー艦隊が来てるんだ。ヨトンマリ伯のな」
「えっ? 伯来てんの?」
「満ち潮に乗って来るってさ!」
ユリは楽しそうです。
「新月が近いからな。潮は高いぞー」
「大潮か・・・!」
確か、満月・新月のちょい後が大潮なんだよね。
だから、かなり前から計画は立てれるんだ。
「・・・もしかして、ツクノーさま、新月を待ってた?」
「かもな」
ユリは、うなずきました。
「ウォン・グル・ウォーンさまは、月光が好きで、新月は嫌い──って伝説があってな」
「聞いたことがありますぞ」と戦士長。「祈りが届かなくなるとか」
「そう。それで、低級の信者は『変容』できなくなるんだってさ」
「へぇ・・・」
海に、7隻の船が現れました。
ガレー艦。
舷側にズラリとオールを生やした、手漕ぎ軍艦です。
長さは約半町。波に乗り上げると、船首に衝角があるのが見えます。
かっこいい・・・
沖合いでは帆を立てていましたが、ウタールデントに入る前に帆柱を倒しました。
オールの力のみで、海面を滑走して来ます。
港に突入。上げ潮に乗って、川へ!
はね上げ橋から見守るツクノーさまの御前を走り抜け・・・
私たちのいる造船門に近付いてきます。
先頭の艦の詳細が見えました。
漕ぎ手は、片側だけで、歩兵1部隊(定員72人)ぐらい。
漕いでないのも、同じぐらいいる。
「多いな・・・! 3部隊、200人ぐらい?」
「正解!」
200人が、7艦。
「1,400人か!」
「すごいよな、船は」
艦首には、バリスタが1基。
そのかたわらに、ヨトンマリ伯爵。
覗き窓の私たちに気付いて、黄金の職杖を振りかざして下さいました。
そのまま、私たちの足元へ!
――すごい迫力です!
川幅ギリギリの巨大艦が、ユリの『駿馬』並の速度で!
オールの先端が、群生している葦をなぎ倒す!
巻き上がった風が、小さな覗き窓から流れ込んで、ユリと私の髪を煽りました!
200人を乗せた7艦は、あっという間に、造船所の方向へ走ってゆきました。
被害は、ゼロです。
「・・・弓、来なかったな」
「地元の貴族は撃たんのだろ」
「俺は撃たれたのに!」
「よそ者だからさw」
◆♀◆ 27、優勢ですわ ◆♀◆
さて、このころ。
後方の灯台陣地。灯台の、展望室では。
「味方は、優勢のようですわ!」
ハーフエルフの美少女が、喜びの声を上げていた。
侯爵令嬢・テニッサメイズである。
隣にいる少女の腕を、ポンポンと叩く。
この動作に、背後に控える侍女たちは、眉を寄せたが・・・
叩かれた少女は、嬉しそうにした。
「ホントに。テニスの侍女は、すごいわね・・・!」
「こうして軍がまとまったのは、殿下のお力ですわ」
「いえ、私など」
黒髪も美しい少女は、謙遜した。
ネムリタロッカ王女である。
白銀のチェインメイルをきっちり着込んで。
腰には、少女の手には重すぎるように見える長剣を差して。
王女殿下は、腕を組んだ。
「・・・ですが、気になりますわ」
「何がです?」
「狂狼人(クロウジン)です。なぜ、出て来ないのでしょう?」
「新月には『変容』できなくなると聞きますわ」
「低級の信者は、ね」と王女。「ですが、敵には──」
反逆者オーナは、『狂犬』ウォン・グル・ウォーンの司祭である。
──ヨトンマリ伯爵がもたらした情報であった。
「・・・司祭の元に集まって、反撃の機会を窺っている?」と、テニス。
「そうです。それが、私の言いたいことです」
ネムリタ王女は、白い指を、小さな顎に当てた。
「我が師匠、ツクノーさまを陥れるほどの女。無策でいるは思えません」
「確かに・・・」
王女は、パッと腕をほどいた。「降りましょう!」
「下に?」
「ええ。ここで襲われたら、選択肢がない。馬のそばにいるべきです」
「ごもっとも!」
王女と侯爵令嬢は、螺旋階段を降りるのであった。
「橋を下ろせ!」
ツクノー・コノマーズ侯爵は、はね上げ橋を下ろさせた。
ガレー艦隊は、すでに通過した。
橋を渡る時である。
ガラガラガラガラ・・・!
ウインチの鎖が鳴り響く。
しばし、時間がかかる。
ツクノーは、自分の供を見回した。
そして、侍女の1人が青褪めているのに気付いた。
「なんじゃ? どうした」
「恐れながら・・・化粧用具を、忘れて来てしまいまして」
「化粧用具など、」
いらぬ。いまは。
だが勝った後は、できるだけ早くコノマーズの民に演説をして、動揺を抑えたい。
そして・・・
化粧用具は貴重品。満足なセットを持っているのは、王女、ツクノー、テニッサメイズぐらい。
そして・・・
13歳の2人のセットでは、26歳のツクノーには、ちと、足りぬ。
「ふむ・・・」
ツクノーは後方を見た。
この時には、王女のおわす灯台まで、敵の姿は一切なかった。
「・・・よかろう。急げよ?」
「はい!」
はね上げ橋が、繋がった。
「前進!」
コノマーズ・アイメンカ合同軍は、ウタールデント正門に向かって、橋を渡った。
──敵の反撃が始まったのは、ここからであった。
◆♀◆ 28、ヨトンマリ伯爵の苦戦 ◆♀◆
まずは、ヨトンマリ伯爵。
造船所に突入した伯爵は、3棟の造船ドックを、同時に制圧した。
第一・二ドックは、簡単であった。
敵兵の姿はなく、船大工たちは即座に膝をついて降服したからだ。
「お許しを! 脅されて、作業させられていただけでございます」
「許そう。ツクノーさまのお触れじゃからな」
だが。
「第三ドックで戦闘、劣勢!」
急を告げられ、駆けつけて見れば。
血まみれになった味方が倒れており・・・
「兄者。快進撃はここまでですぞ」
コノマーズ貴族の男が、不吉な笑いを浴びせてきたのである。
「タクラムート! 我が弟よ!」
ヨトンマリ伯は叫んだ。
「やはり、裏切ったのじゃな。『侯爵が首を取られた』などと、恐ろしい嘘をついて!」
「兄者こそ、50にもなって、あんな小娘に惑わされおって」
タクラムート卿は、黒いヒゲをこすって、嘲笑った。
宮廷の文官服を纏ったタクラムート卿。
彼は、武器のひとつも持っておらぬが・・・左右には、剣を抜いた戦士がいた。
ただ、不思議なことがある。
戦士がいずれも、上半身裸、ということである。
なぜ、裸?
ヨトンマリ伯には、その答えが、薄々わかっておった。
「まさか。おまえ、まさか・・・!」
「偉大だぞ、兄者! ウォン・グル・ウォーンさまの恩寵は!」
「おお・・・!!」
ヨトンマリ伯は、打ち嘆いた。
「もはや、その穢れた口は開くでない。いますぐ、首から切り離してやろうほどに」
「やってみるがよい。我が群れを打ち破れるというのなら!」
タクラムート卿が、そう言うと・・・
なんとしたことか!
ドックの入り口から。作業所の片隅から。
未完成の船の中から。下から。
カシャカシャ、カシャカシャと・・・
白骨化したオオカミ男──髑髏狼人(ドックロウジン)が、数十体も、現れたではないか!
「これは、アヤツリアさまの置き土産」
タクラムート卿は・・・
「──そしてこれが、『狂犬』の力じゃ!」
「『狂犬』よ、変容せよ! 刃も通さぬ針金の、無敵のケモノの力よここに!」
呪文を唱えて・・・
護衛の戦士もろとも、一斉に、オオカミ男に『変容』した!
身体は、筋肉で膨れ上がり・・・
顔は、針金のような毛に覆われ・・・
指はくっついて・・・
上半身が、丸ごと、恐ろしいオオカミとなったのだ!
「これはしたり。やはり、鎧を脱いだは『変容』のためか!」
ヨトンマリ伯は剣を構え、戦士たちに命令した。
「股間を狙えぃ!」
「・・・なんと?」
「金的を狙えと申しておる!」
「oh・・・」
第三ドックでは、まことに無惨な戦いが始まるのであった・・・。
◆♀◆ 29、テニッサメイズの危難! ◆♀◆
同じタイミングで、灯台陣地でも。
「ゥゥゥオーーーン!」
叫ぶ声が聞こえたかと思うと。
オオカミ男――狂狼人が。
白骨のオオカミ男――髑髏狼人が。
さらには、巨大なオオカミ――呑馬狼(ドンマロウ)が。
陣地に、押し寄せてきた!
「やはり、来ましたか・・・!」
葦毛の馬に飛び乗りながら、ネムリタ王女が震える声でそう言った。
「狙いは、私の首か。それとも人質か? そうは、させませんわ・・・!」
「殿下」
「策はありますか?」
「ここは簡易陣地ですが、2段の構えがございます。迎撃し、敵を減らすべきです」
「よろしい。迎え撃ちなさい!」
「はっ!」
灯台陣地。
設営時間は、2日しかなかったが。
王女親衛隊は、できる限りの防備をしていた。
1段目は、堀である。
海水を流し込んだ、2尋ほどの幅の堀──を飛び越えた先に、落とし穴!
深さ1尺ほどの小さな落とし穴に、尖らせた杭が植えてある!
「ギャン!」
無造作に着地した巨大オオカミ・呑馬狼は、前足を貫かれる。
10頭ほどが脱落した。
だが、のたうち回る仲間を踏みつけて、次から次へと登ってくる。
2段目は、馬防柵である。
丸太を組んだだけのスカスカの柵だが・・・
呑馬狼は通過できないのに対し、槍は突き出せるという利点があった。
「突け、突け! 3人1組で突き殺せ!」
「馬車をもて! 馬車で柵を支えるのだ!」
柵で足止めした呑馬狼を、親衛歩兵が必死になって突き殺す。
だが呑馬狼は、突き殺された仲間を盾にして、ついに馬防柵を押し破った。
「殿下。陣が破れました! 前進し、コノマーズ侯爵と合流することを提案いたします」
「わかりました。移動しましょう。テニス。・・・テニスはどこです!」
葦毛を制御しながら、王女が見回すと、
「こ・・・ここに!」
右に左にウロウロする黄色の馬に乗って、テニッサメイズがやってきた。
愛馬・ベロ~ン君が恐慌しつつあり、制御に苦労しているのだ。
「誰か、ベロ~ン君の手綱を取ってやりなさい」
まことに適切な王女の指示であったが・・・
わずかに、遅かった。
「ネムリタ殿下の退路を開くぞ! 騎兵、突撃ぃーーー!!!」
騎兵が突撃。
歩兵が続き、呑馬狼を。狂狼人を、そして白骨の髑髏狼人を、斬ったのだが。
斬り飛ばされた髑髏狼人のガイコツが、ポーンと飛んで・・・
ベロ~ン君の尻に、当たったんである。
「ブッッッヒ!!?」
ベロ~ン君は、絶叫した。そして、一目散に逃げ出してしまった。
「キャーーー!!!」
「テニスさま!」
モリーヌが追いかける。だが、ベロ~ン君は止まらない。
むしろ後ろから青鹿毛が突進して来るのを見て、
『あの青鹿毛のダンナが、こっちに逃げてくる!?』
と、誤解をし、
『やはり後ろには危険があるのだ!』
と、逃げ足を速めてしまったのである!
「キャーーー!!!」
ベロ~ン君は、突っ走る。
灯台陣地を駆け下りて。
体重の軽いハーフエルフの少女だけを荷物に。
チェインメイルを着たモリーヌの青鹿毛を、完全に振り切って。
追いかけてくる呑馬狼に、いっそう恐怖を煽られて。
泡を吹いて、突っ走る。
はね上げ橋に突っ込み、味方歩兵をハネ飛ばして(ボチャーン!)。
ダカダカダカダカッ! と、橋を渡って。
ウタールデントの正門に、一番槍で、突進する!
「テニッサメイズ!?」
ボンロウケは、仰天した。
今日は彼が先陣を切る予定で、いまにも攻撃に移るところであったのだ。
そこを、義妹の馬が駆け抜けていった。
「何をしておる! 止まれ、弓の魔術師にやられるぞ!」
「キャーーー・・・!」
テニスの悲鳴は遠ざかってゆく。
出城に、動きがあった。
弓兵を従えた魔術師が立ち上がり、弓兵どもに指示を出している。
バリスタも動き始めた。
「なんたること!」
ボンロウケは、すぐさま決断した。
「アイメンカ、突撃! 突撃!! 突撃!!! テニッサメイズを救い出せ!」
◆♀◆ 30、フターリア、被弾! ◆♀◆
「えっ、ニーズ!?」
こちらフタゴン。
ドラゴンの目が、正門に突撃(?)するベロ~ン君と金髪ポニテちゃんの姿を捉えました。
「フアーリアおねえちゃーーーん・・・!」
「クッソ! ベロ~ン、てめぇ!」
私は、はね上げ戸から飛び出しました。
周囲を見回すよりも先に、屋上を蹴って飛び上がります。
出城へ!!!
ニーズに近付いてもしょうがない。いや、逆に危険である。
俺がタゲを取らないと!
魔術師がこちらに気付いた。野郎、ニーズを狙ってやがった。
俺が突っ込むと、こっちに狙いを変えた。よし。
バリスタ発射! 回避。
矢の雨! 避けれん。翼と背中に、矢が連続で当たる感触。
通ってはいない・・・と、思う。
まだ翼は動く。
「ンガーーー!!!」
俺は火を吐きつつ、出城の屋上へ。
木の柵を飛び越えて、待ち受ける弓兵のド真ん中に、落下する。
敵は、ちょうど魔術の矢嵐を放ったばかり。
立ちすくむ魔術師を、前足でブッ叩いた。魔術師は死んだ。
弓兵に向かって、火を吐いた。
矢の嵐が、落ちてきた。
弓兵を巻き添えにして、俺も、被弾した。
尻に刺さった!
痛みは・・・大したことない。
が、左足が動かない。
これはダメだ。戻らないと。
魔術師は倒したし。もう大丈夫なハズ──
その魔術師の死体が、モゾモゾと動いて。
血だまりの中から、白骨だけが起き上がった。
首に、髑髏の首飾りをブラ下げて・・・
「アヤツリア様ノ仇、フターリアヨ、変容セヨ。肌身モ骨モ、石トナレ──石化!」
「髑髏老魔(ドクロウマ)かっ・・・!?」
すでに背中を向けていた私。
左足が動かんので、機敏には動けない。
前足で柵に掴まって、尻尾をムチに。髑髏老魔の首をヘシ折った。
3本足で、柵を乗り越え、胸壁から飛び出す。
『石化』の影響か。手足の動きが鈍い。
転落。
壁を前足で押して、離れた。
翼を広げる。
ダメ。左足が動かんので、バランスが取れん!
左に急激にカーブして、造船門のほうに落ちてゆく。
クソ・・・ニーズ・・・ニーズを助けに行かないと!
右の翼をたたむ。落下速度は上がるが、しょうがない。
正門へ・・・正門を越え・・・られない! 内側に墜落。
ゴロゴロ転がって、櫓の中に飛び込み、中にいた兵士をハネ飛ばした。
いてぇ・・・
目を開けると、そこは制御室。目の前にウインチが。
門を開くウインチか!
「ガアア!」
迫る敵兵をブレスで追い払い、ロックを外して、ウインチを回す。
ここの門は、観音扉だ。
・・・開いた! 馬1頭分。
ヨタヨタと近付いて、覗く。
門のそばに、ベロ~ン君がいた。お嬢さまは、まだ鞍にしがみついてる。
ボンロウケさまが突撃してくる。
目が合った。
俺は・・・
ウインチに戻って、気絶するまでウインチを回し続けた。
門が開く。馬3頭分。5頭分。半開き。
アイメンカ騎兵が、雪崩れ込んできた・・・
◆♀◆ 31、ひととときの休息 ◆♀◆
「陽の火よ、熱よ、輝きよ。フターリアを変容せしめよ。――この傷を、癒し、祓い、清めたまえ!」
「ギャオーーー!!!」
私は目を覚ましました。
「やめい!」ツクノーさまの声がしました。「ファリア、火を吹くな。治療ができぬ」
「こうするんだよ!」ユリの声がしました。
私は気絶しました。
ユリの野郎・・・重傷の俺を殴りやがった・・・
もう一度目を覚ますと。
ツクノーさまが、バッと回避しました。
「・・・ごめんなさい」
「落ち着いたか。よしよし」
ツクノーさまは戻ってきて、私の頭を撫でてくれました。
「傷は治した。ユリが殴った分もな。『石化』も、不完全じゃったから、もう解けたぞ」
「不完全?」
「そなたが『妨害』したんじゃろ?」
「そっか・・・」
俺、『妨害』の才能あったのか。
「ニーズは?」
「無事じゃ。そなたが火を吐くので、あちらに寝かせたがな」
ツクノーさまが頭を持ち上げてくれました。
私は、天幕の中にいました。
傷ついた戦士たちが寝てます。貴族用の天幕かな?
向こうのほうに、フワフワ金髪が見えました。
私は、安心しました・・・
ツクノーさまの背後に、護衛のコノマーズ戦士が立ってます。
彼の盾、黒ヒョウ紋章は、黒焦げでした・・・。
「ユリは? ダンゼイズのヤツらは」
「無事じゃ!」
ツクノーさまは、戦況を手短に報告してくれました。
「ボンロウケ殿が、正門を破った。
出城は、投降してきたそうじゃ。そなたが指揮官の魔術師を倒したからじゃろうな。
造船所も、ヨトンマリ伯が制圧した。
本城はまだじゃが・・・もはや、勝ちは揺るがぬ。寝ておれ!」
「そうですか・・・」
私は、やっと冷静になりました。
ツクノーさまの邪魔しちゃいかん! と、気付く余裕が戻ってきた。
「侯爵閣下。お手を取らせました。休ませて頂きます」
「約束じゃぞ?」
「はい」
「よし」
ツクノーさまは私の頬にキスをして、出てゆかれました。
『変容』が解けるまで、おとなしくしよう・・・
というか、おそらく時間切れが近いのでしょう、眠くてたまらん。
ウトウトしていると・・・
その歌声が、聞こえてきました。
♪TITTY MAIDEN, TITTY MAIDEN・・・
◆♀◆ 32、♪TITTY MAIDEN ◆♀◆
「・・・いま乳メイドっつった?」
私は、眠たいまぶたを開けました。
歌声は、天幕の入り口のほうから聞こえてきます。
綺麗で可愛らしい声でした。まるで小鳥の鳴き声のような・・・
見れば、入り口の外に木があって。
枝に、小鳥がとまっていて。
歌っているのは、その小鳥でした!
♪TITTY MAIDEN, TITTY MAIDEN
BITCHY MAIDEN, BE CAREFUL!
PITCHY PANZER APPROACHIN'!
KILL HER! KILL HER! KILL HER -- OR?
「なんて?」 (※答は後ほど)
「PITCHY PANZER. KILL HER! OR?」
小鳥は私を見ています。
「誰だおめぇ・・・ペッペッ」
私は、血を吐き出しました。
ウトウトしてるあいだに、フタゴンの血が口に入ったらしい。
「うー」
枕元に置いてあったカップの水を飲みます。
口の中が綺麗になった・・・。
「ピーチュー、チュクチュク!」
小鳥の声が聞こえました。
「ピーチュクピーチュクピーチッチ、ビーッ!」
・・・あれ?
水飲んだ途端に、わからなくなったような・・・?
このとき、天幕の入り口を、コノマーズの女が通り過ぎました。
ツクノーさまの侍女か? 重そうなバッグ持ってたけど。
・・・。
私は、自分の血を舐めてみました。
♪PITCHY PANZER ACROSSIN'!
KILL HER! KILL HER! KILL HER, NOW!
なんかメッチャ切迫した歌です。
『寝てんじゃねえよ!』って圧力を感じる。
私は、入り口まで這って出ました。
「あ、ちょっと! いけません、フターリアさま」
看護婦が注意をしてくれましたが・・・
「いや、なんかそんな状況じゃなくて」
「戻ってください」
天幕から首を出すと。
侍女(?)の背中と、ツクノーさまの背中が見えました。
ピロピロ。舌を出して空気を読みます。
・・・変な味がする。錆っぽいっつーか、ケミカルな?
侍女(?)が、荷物の口を開けて何かを出そうとします。
変な味が、強くなりました。
「ツナッ! ──ゲホゲホッ」
私は叫んで、侍女(?)を指しました。
しかし。そこで血が喉にからんで、咳き込んでしまって。
次の言葉は、間に合いませんでした・・・
◆♀◆ 33、黒を纏う女 ◆♀◆
ツクノーは、フタゴンの声で振り向いた。
天幕の入り口で咳き込んでいる。看護婦が困った顔をしていた。
「あいつめ」
ツクノーは首を振った。
が、まあ、看護婦がついている。問題はなかろう。
それより近付いてくる女の相手をすべきだと、ツクノーは判断した。
「遅かったではないか? 私 が 頼 ん だ 荷物は、無事か?」
「はい。こちらに」
侍女は、何かを取り出そうとした。
ツクノーは、斬った!
腰の小剣を右手で引き抜くと同時に、左手で鞘を弾き、剣を走らせ半身になる。
──いわゆる居合の抜付のごとくして、侍女(?)の手首を、斬った!
「・・・!」
そいつは飛びのいた。
ひとっ飛びで、5尋ほど。
手首には、浅い傷を負っただけ。
だが、モノは落とした──黒い薬の塗られたナイフは。
「であえ、であえぃ! 曲者じゃあ!!!」
ツクノーは怒鳴った。
護衛がすぐさま左右と背後を固め、剣を抜いた。
「おケガは!」
「ない。そやつ、暗殺者じゃ! 天幕も──フターリア姫も守れ!」
速やかに護衛が展開した。
取り囲まれた女は・・・
『変容』しつつあった。
・・・いや。『変容』を、解きつつあった。
黒かった髪は、赤みを帯びた金髪に。
日焼けしていた肌は、青白く血色の悪い、老けた女の肌に。
そして、伏し目がちの目は、ギラギラと輝く黄色の目に。
「あと一歩であったものを・・・!」
女は、牙を剥いた。
老けた女である。
ツクノーは、この女が44歳であることを知っている。
・・・だが、年よりもずっと、老けて見えた。
「オーナ。我が叔母よ」
ツクノーは呼びかけた。
「ウタールデントの門は開き、暗殺もこうして失敗した。負けを認めるがよい」
「どうかな?」
老けた女。
ツクノーの叔母──反逆者オーナは、両手を広げて、こう祈った。
「ウォン・グル・ウォーンよ、御身の信徒に『変容』を!
脆弱愚鈍な人の身を──あるべき姿、四つ足の、ケモノの姿に変えたまえ!」
すると。
近くの木に座って休んでおった、北コノマーズの西の村の侍が・・・
レザーアーマーを脱ぎ捨てて、オオカミ男に『変容』した。
牛車に仰向けになっておった、北コノマーズの西の村の南の農場主の息子の1人が・・・
毛皮のチョッキを投げ捨てて、オオカミ男に『変容』した。
あちらの歩兵が、こちらの下男が、オオカミ男に『変容』して・・・
グルルル・・・と、唸りながら・・・
ツクノーの周囲を、取り囲んだ。
「フン。それで?」
従者から"コノマーズの黒"を受け取りながら、ツクノー。
「私は、おまえが憎かった・・・」
オーナは、黄色い瞳でツクノーを睨んで、語った。
「ナゴローシン。あの、若く美しい、神のごとき若者は・・・
私に勝利を捧げてくれた。
トーナメントの日。1人ぼっちで座る私を哀れんで。
私は、身も心も、彼にくれてやった・・・。
あの神のごときナゴローシンが、
11歳のそなたの婚約者になると告げられた日。
私は29歳で、独り身であった。
私の絶望が、おまえにわかるか?
ツクノー・・・私はおまえを許さぬ。
ナゴローシンの目に、美しいおまえが映ることも許さぬ。
おまえを引き裂き、永遠に、彼の目に映らぬようにしてやる・・・!」
「・・・オーナ。哀れな叔母よ」ツクノーは言った。「ナゴローシンは、死んだのじゃ」
「ハッハッハ!」
オーナは笑った。
「騙されんぞ。私は知っておる。アヤツリアさまに聞いたのじゃ!」
「なにをじゃ?」
「ナゴローシンは生きておると。人間よりも遥かに優れた種族になったと!」
「吸血将軍なら、この冬至の夜に討伐されたぞ」
「・・・・・・・・・嘘じゃ」
オーナは呆然とした。
「嘘じゃ。誰が? 誰が一体、私の可愛いナゴローシンを?」
「・・・。」
「俺たちですわ」
◆♀◆ 34、私はここで ◆♀◆
フターリアです。
ツクノーさまは、沈黙してくれたのですが。
私は、黙ってはいられませんでした。
「やったのは、俺たちですわ。アスカリア伯とその部下です」
「立つなと言うたじゃろ・・・」
「ごめん。けど、知らずに死ぬのは、あんまりだし」
オーナは、しばらくして、こう言いました。
「本当か・・・? ほんとうに、ナゴローシンは・・・」
「うん」と私。「焼き討ち、斬った。吸血鬼は、灰になったよ。もう、どこにもいない」
「そうか」
オーナは、肩を落としました。
・・・それから、ケタケタケタと笑いました。
「では、私もここで死ぬことにする──貴様らを、ズタズタに引き裂いてからな!!!」
「我が身よ、永遠に変容せよ!
ウォーン・グル・ウォーン!!
我が狂気が、御身の鼻に適うなら──
ツクノーを殺す力を、黒を纏う獣に授けたまえ!」
そして、みずから服を引き裂きました。
その裸体は、すでに、人ではありませんでした。
足が・・・
真っ黒な毛に覆われた、ネコ科の足だったのです。
そして、いまや、上半身も。
見る見るうちに『変容』し・・・
天鵞絨のごとく輝く、真っ黒な毛に包まれて・・・
黒ヒョウの肉体に、成り果てました。
「グゥガァ!!!」
最初のターゲットは、私でした。
うん、予想してた。ってか、わざとタゲ取ったからね。
私はツタを巻き上げて、ギュイーンと空中を後退しました。
「グルッ・・・!?」
「樹ターリア+フタゴン。名付けて『樹タゴン』モードでございます」
宙に浮かんだドラゴン娘の私は、お辞儀をしました。
「延焼に気をつけてね?」
天幕から顔を出して、お嬢さまが言いました。
「顔出さないで! 危ないから!」
「はいはい」引っ込んだお嬢さま。また出てきました。「魔力切れは?」
「大丈夫だから!」
「はいはい」
ツクノーさまが会話してる間に、お嬢さまが呪文かけてくれたんですわ。
いま、樹ターリアの母樹は、天幕の陰に生えております。
おりますんですがね?
なんか・・・回復してるんですよ。
吸い取ってるんですわ。栄養を。地面から。
リジェネですな。
樹ターリアの母樹には、リジェネ機能があるっぽい。
『そりゃ吸いますって』『地面から吸わないでドコから吸うんスか?』
根っこネットで、周囲の木々が教えてくれました。
『今日はお日さんも出てますし、吸収いいッスわー!』
『そうなんだ・・・』
ま、そういうワケですわ。
「では、さようなら」
私は握っていたものを投げつけました。
粘土玉です。
オーナが『なにしてんだ?』という顔で避ける。
・・・何も起きません。
そこにもう一つ、別の方向から粘土玉。
・・・何も起きません。
オーナは、黒ヒョウの額にシワを寄せて、急激に振り向いてツクノーさまを狙いました。
ここで。
「我は変容す!」
赤毛の女剣士が駆け込んできました。最後は地面を滑るようにして、
「雷切り裂く剣聖の、神通力よ我にあれ!」
黒ヒョウ女は、身体をねじってかわそうとしましたが・・・
ユリの剣は軌跡を変えて、追いかけました。
左後ろ足をカット! 足首から下を、スパリと斬り飛ばしました。
3本足になったオーナ。ユリに反撃をしようと──
「焼き討て!」
──したところでユリの呪文!
爆発!
オーナとユリが、もろともに火に包まれました。
さっきの粘土玉です。私が投げた方が、いま、ユリの呪文で爆発したのです。
オーナは泣き叫んで飛びのきました。地面を転がり、毛を焼く魔術の火を消そうとします。
ユリは『妨害』。自分の呪文を打ち消し、無事です。
そして追い討ち。
「焼き討て!」
私が投げたのではない方──ユリが投げた粘土玉が、爆発しました。
オーナが吹っ飛びました。
地面に叩き付けられ、バウンド。
オーナは・・・起き上がろうとしますが、後ろ足が動かせず・・・
前足だけで、ツクノーさまに飛びかかりました!
「変容せよ、“コノマーズの黒”」
ツクノーさまは、静かに唱えて。
「穢れを祓い、狂気を貫け。──我が叔母オーナを、眠らせたまえ」
黒ヒョウの首を、貫きました。
オーナが倒れると。
周囲に沸いていたオオカミ男どもは、『脆弱愚鈍な人の身』に戻りました。
「皆様、お見事でした・・・」
ネムリタ王女が、徒歩でいらっしゃいました。
御無事のようですが、白銀の鎧には血が飛び散っています。
少し後ろから、ボンロウケさまもやって来ます。
ここで。
道の脇に倒れていた、オオカミ男の死体。
オーナが死ぬ前に、股間を斬られて死んでいた狂狼人の死体ですが・・・
それが、モゾモゾ動いたかと思うと。
毛皮の下から、白骨の髑髏狼人が飛び出してきました!
その髑髏狼人がネムリタ王女に・・・
「きぃえええええええああああ!!!」
・・・頭蓋骨を粉砕されて、バラバラになりました。
「ハッ、ハッ」
肩で息をする、ネムリタ王女。
その手には、少女が使うには重すぎる剣がありました。
大上段から腰の高さまで打ち下ろした体勢です。
彼女以外に、斬った姿勢の者は居りませんでした。
ボンロウケさまは腰の剣を抜きかけでしたし・・・
ユリですら、「あ」という顔をしてました。しっかりしろや。Mp切れか?
・・・え、私?
私はその・・・
テニスお嬢さまの陰に隠れてます。ハイ。
「火ィ・・・!」
「もう消えたってば」
「ハッ、ハッ・・・どうですか、先生!?」
ネムリタ王女が訊きますと。
「見事じゃ!」
ツクノーさまは笑顔になって、若い王女を抱き締めたのでした。
◆♀◆ (小鳥の歌) ◆♀◆
♪TITTY MAIDEN, TITTY MAIDEN
BITCHY MAIDEN, BE CAREFUL!
PITCHY PANZER APPROACHIN'!
KILL HER! KILL HER! KILL HER -- OR?
♪乳ぃ嬢ちゃん、乳ぃ嬢ちゃん
ビッチぃ嬢ちゃん 気をつけな!
真っ黒ヨロイが やってくる!
斬れ! 斬れ! 斬れよ──さもないと?
◆♀◆ 35、結果が出たので ◆♀◆
女侯爵は、ウタールデントに復位なさいました。
反逆者オーナの死を知った反乱軍は、瓦解。
ほとんどは降服して、ツクノーさまに許されました。
甘い気もしますが・・・
「罪の軽重もございますし、全員処刑しては統治不能になる、との御判断もありまして」
と説明してくれたのは、ツクノーさまの文官。女文官です。
私は、この女をよーく知っています。
「よく生きていましたね」
「・・・と仰いますと?」
「あなたが私を尋問したとき、隣にいたのが、司厨長でしょう?」
「・・・。」
そう。この女は、アイツです。
日差さぬ森で彷徨った私を、徹夜のまんま質問攻めにしたクソ文官です。
そして、隣に座っていた男。
ツクノーさまとの面会を『認められぬ』とか言って、勝手に却下した男ね。
アイツが、今回オーナと組んで反乱を起こした、司厨長だったのです。
「反逆者とはどのような御関係で?」
「北方への遠征で事務作業を担当しましたが、それ以前・以後の関係はございません。また 元 司厨長ハンギラーシンは寝室で服毒自殺しているのが発見されましたが、動機は目下調査中でして、反逆者オーナとの関わりも同様に調査中でございまして、私の管轄外でもありますので、お答えできることはございません」
「早口やなw」
「・・・オホン。ところで、バリスタの被害について、よろしければお話を?」
「よろしくありませんわ」
「お食事など御一緒しながら」
「固くお断りいたしますわ。さようなら」
「そうですか。どうぞ、お気を付けてお帰りください」
「帰らんわ! ──ツクノーさまのお部屋は、こちらでよろしい?」
「こちらは客室でございます」
「・・・私が呼び出された部屋はどちら?」
「こちらの客室でございます」
「この野郎」
クソみたいな性格して、ちゃっかり生き延びやがって。よかったね。
「失礼いたします。ダンゼイズのフターリアです。侯爵閣下のお招きに預かり、参りました」
ノックして、侍女級のメイド風に名乗りますと・・・
「おお! いま開ける!」
と、弾んだ声がしました。
駆け寄ってくるブーツの足音がして、鍵が開いて。
「ファリア・・・♥」
赤いドレスを着たツクノーさまが、手を広げて、私を迎えて下さいました。
「ツクノーさま・・・!」
「ツクノー? さま?」睨まれました。
「・・・入ってからね。入ってから!」
私は廊下を指しました。
いるんですわ。さっきの女文官。
『おっと、靴がズレてしまった』みたいなフリして、聞き耳立てとるんですわ。
「ならば早う入れ!」
「はい」
中に入って。
バターンとツクノーさまにドアを閉められて。
「・・・。」睨まれました。
「綺麗だよ、ツーナ♥」
「ターラ・・・♥」
ツナちゃんは、柔らかい女体を、完全にこちらに預けてきました。
「結果が出てからというもの、そなたと会うのが、待ち切れず・・・!」
結果ってのは、私の精液の検査結果ね。
魔術で調べたらしい。『子種なし』『危険もなし』だそうです。
なんか・・・『毒にも薬にもならん』って言われた気分だけど。
ツナちゃんとヤれるならいいかなってw
「ツナ。こんな柔らかいカラダしてたのか」
撫で回してると、ツナちゃんは私の侍女ドレスに掴みかかってきました。
「早く。早く。早く!」
乱暴にリボンを解き始めます。
「うわw こ、これイイな。なんか興奮する」
「この変態めが♥」
「言ったな?」
私は、赤いドレスのお尻に、いきなり掴みかかりました。
両手で、女侯爵のお尻の肉を鷲掴みにします。
「うううう♥」
「オマエだって!」
「ううう、侯爵の私に『オマエ』などと抜かす。そなたのそういう、傲慢なところがたまらぬ♥」
「やり過ぎた時は怒ってねw」
「とっくにやり過ぎておる!」
「え・・・?」
私はツクノーさまに抱き締められて(ほとんど持ち上げられて)、ベッドにブン投げられました。
仰向けに倒れた私に、ツクノーさまが飛びかかって来ます。
アンタはネコか。
まあネコだな。目がギラギラしてるし。
「ああ♥」
お腹を私(の勃起)にこすりつけて、ドレスをめくり上げます。
「ちょ、ちょっと待った。シワになるとまずいから。替え持ってきてないから!」
「替えならある。モリーヌに聞いて、サイズの合うのを用意してある。プレゼントするゆえ、着て帰れ」
「手回しすご!」
「着て帰れよ?」
「は、はい」
私はツナちゃんの頬を両手で挟んで、見つめました。
「ありがとう。ツナ。どんなドレスか、楽しみにしてる」
「うむ。お楽しみの後じゃぞ?」
「もちろん」
私はツナの美しい顔を引き寄せて、キスしました。
舌が入ってくる。両腕が私の首に絡みつき、蠢きながら服を脱がせてきます。
両手の指の動きと舌の動きがシンクロしてる・・・!
この子、花嫁修行のしすぎでは・・・?
私もがんばりました。
ツナちゃんの綺麗な顔や、髪、長い手足や引き締まった胴体を撫で回し、柔らかい乳房や、お尻にもキスをしてから・・・
ワインレッドの、超高級なブラジャーとパンティを、時間をかけて脱がせてから・・・
フターリア砲で、女侯爵を貫きました。
「ああああ♥」
ツナちゃんは喉を反らして歓喜の呻きを上げました。
「ああイイ・・・ターラ、そなたのこの・・・うあああ、奥まで、もっとしっかり・・・!」
「ちょ待・・・そんな動かれると・・・!」
フターリアは射精しました。
ツナちゃんの熱々の果肉に、あっけなく出してしまいました。
「奥まで!」
「いまイッて・・・ひぃぃ?!」
イッてるとこだから待って、と言おうとしたら、メスネコと化した侯爵の足が、私のお尻にグイッと抱きついてきました。そのまま引き寄せられます。
「おおッ・・・お・・・!?」
「ふぅッ・・・♥」
フターリア砲は吸い込まれるように彼女の体内に呑み込まれて、柔らかい奥底に押し戻されました。すでに射精して粘液まみれの先端に、彼女の粘液まみれの壷天がくっついて・・・
「ツナっ・・・ツナ、わあああ」
「ターラ、ターラ」
フターリアは射精しました。
なんとか彼女を組み敷いて、私が上になったのは、3発も搾り取られてからでした。
ツクノーさま・・・
ふだんは優しい人なのに、ベッドではユリ以上の猛獣・・・!
私も切り替えました。
高貴な女侯爵を相手にするのではなく、ユリみたいな淫獣を相手にするつもりでいきます。
・・・まあ、相手も私のことを淫獣と思ってそうですが。
ユリ相手に覚えた、ギリギリ寸止めで痛い思いをさせない、それでいて私の下腹部とツナちゃんの股間やお尻はビタンビタン激しめにぶつかるピストンで楽しませてあげます。
「うあッ♥ あ、うッ、ふぁッ♥」
楽しんでくれているようです。
私の腕を掴みながら、「イク・・・」と、メッチャ可愛い声で言ってくれました。
ツナちゃん最高!!!
フターリアは射精しました。しまくりました。
抜かずに突きまくって、ツナちゃんの花びらにグチョグチョに泡が垂れるほどでした。
で、ヒィヒィ泣いてる彼女の腕の中で、私のほうが先にブッ倒れてしまいましたw
うーむ。まあ射精は体力使うとはいえ。
早漏を絶倫でカバーしてるフターリアとしては、これは手痛い敗北でしたね・・・。
まあ、しかし、
「♥」
起きたら、ツクノーさまがハミングしながら髪を梳かしてたので。
よしとしておきます。
十分にやり切った! たぶん!
「・・・おはよー」
髪を梳かし終わったのを見届けて、声をかけました。
スケスケの絹のネグリジェを着たツクノーさまは、笑みを浮かべて近付いてきて・・・
「おはよう♥」
私に覆い被さって、キスをしてきました。
綺麗になった髪をそーっと撫でます。その間に、彼女は私に馬乗りになりました。
・・・え? まだヤルの?
「次の機会には、女同士でもええぞw」
「あ、そっちもイケるんでしたっけ」
「どっちかというと、そっちのが好きじゃ。ただ、物足らんのでな・・・」
ツクノーさまは、しなだれかかってきました。
「そなたは最高じゃ♥」
「やったー♥」
私たちはキスしました。
フターリア砲は、もう消えてます。こすりつけられるツクノーさまの恥丘は、フターリアのクリトリスをこすってくれました。
2・3回、身体が軽く痙攣する程度にイカされてしまいました。
「ッふ・・・♥ ツ、ツナ、うまいね・・・ッ♥」
「余裕ぶって。男のモノも女のモノも感じやすいクセに」
「う、うるせ――ッ♥」
さらに2・3回イカされてから。
やっと、私は起き上がることを許されました。
ツクノーさまに半分抱き上げられる感じで、室内備え付けのお風呂へ。
このお風呂、暖炉の裏側にあるんですが。熱が回るようになってるみたいで。
いちいち下女を呼ばなくても、熱いお湯と湯気が楽しめるんですよ。
リッチなお風呂ですなー。
2人で乳繰り合いながら裸体を洗いっこして、浅い湯船に並んで入りました。
「・・・まだ嫉妬しておるか?」
「・・・え? あ、いや、もう全然」
「そうか」
ツクノーさまは、ニヤッと笑いました。
「こうして風呂に入るのも、そなたが初めてではないがのう?」
「・・・。」
「ふふふ♥」
「意地悪だなぁ!」
私は彼女の上になって、唇にキス――するフリをしてスカし(意地悪のお返しです)、頬っぺたや首筋にチュッチュ、チュッチュとキスをしました。
あ、チュッチュで思い出した。
「──あの小鳥の歌、なんだったんだろ」
「ドラゴンの血を呑むと、鳥の声がわかるようになる、という言い伝えはあるのう」
「へぇ!」
「じゃが、それに従うと破滅するとも言うのう」
「ええ・・・?」
タチ悪ィ・・・
「ま、いいや。よくわかんなかったし」
私たちは見つめ合いました。
「ツナが無事で、よかった」
「そなたもじゃ」
贈られたドレスは、純白の、真珠をたっぷりあしらった・・・
なんかその・・・
花嫁みたいなドレスだったんですが・・・
「こ・・・これを・・・着て帰れと・・・?」
「私は、抱いた娘には、白いドレスをプレゼントすることにしておってな?」
ツクノーさまは、ニヤニヤしながら、こう言いました。
「『手を出すな』という意味でな?w」
「おっ・・・オマエな・・・!」
それって、『ツクノーさまに抱かれました』って叫びながら帰るようなモンじゃん!
「着て帰れよ?」
「・・・。」
真っ赤になったフターリアの股間に、ツクノーさまは手を入れてきました。
「答えは『はい』のようじゃな♥」
「・・・♥」
◆♀◆ 36、かえるぞ! ◆♀◆
そして、数日後。
「やはり! 三角城に、攻城兵器を持ち込んだのですね! ボンロウケさま!!」
「補償の削減とは、一体いかなる了見か! 聞かせて頂きたい! ツクノーさま!」
「イマック領に王家の管理人を入れたとは聞いておらぬぞ、ネムリタよ! 私に一言もナシとは!」
合同軍の幹部は、ふたたびケンカを始めておりました。
「よし! 帰るぞ。付き合いきれん!」
ユリの言葉に、私たちは深くうなずいたのでした。
このページの修正記録
2026/04/13
「23、ダンゼイズのドラゴン姫」
フターリアが最初のバリスタ潰した後、描写が間違っていたのを修正。
× 左右の塔から撃ってきたのです。
○ 隣の塔から~