※この作品はR-18です。

TSゆりフタ令嬢侍女メイド!   作:min(みならい)R18

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地図 ブレロッケ王国 8章まで

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 描いてみました!


8章 フターリア惨敗!? ネムリタロッカの挑戦!
『希望の港』解放戦


◆♀◆ 1、春雨 ◆♀◆

 

 どざーーー・・・・・・・・・

 

 雨です。

 冷たい雨です。

 波のように道に迫る残雪と同じぐらい、冷たいです。

 

 我らアスカリア+ダンゼイズ軍70名余は、その場に木陰を作って、退避しました。

 ・・・木陰を、即席で作って、です。

 

「いやー、リアがいてくれると助かるなー」

 女勇者のユリが、楽しそうに言いました。

 ウロの中に、彼女の明るい声が響きます。

「ねえ? テニス」

 と、語りかけますと・・・

 フワフワ金髪(ちょっと濡れてる)のハーフエルフ。

 テニッサメイズお嬢さまが、礼儀正しく頭を下げました。

「私の・・・侍女を褒めて頂き、光栄ですわ」

「固い返事だなー」

 

 どざー・・・ポタポタポタポタ。

 冷たい雫が、私の枝を伝って根元に流れます。

 

 はい。樹ターリアです。

 『樹木の乙女』になって、街道脇の小さい小さい丘に突っ立ってます。

 根っこは残雪の中にもぐり・・・

 生い茂った樹冠は冷たい雨に打たれておりますが・・・

 

「寒くない?」

「全然」

 私は平気でした。

 カサカサした指で、もみあげ(クルクルねじれたツタに『変容』してる)を引っ張ります。

「分離してるときは、あんま母樹の感覚ないんだよね」

「へー」

 ユリは私を見上げて、頭のてっぺんの新芽をそーっと撫でました。

「くすぐった!」

「ここは感じるんだw ホントに冷たくはないの?」

「うむ。大丈夫」

 

 冷たい早春の雨。

 全身を伝わり、根っこに染み込むと・・・

 むしろ、なにかが満ちてくる感じで・・・

 

「美味い」

「『変容』の天才の感覚はわからんな」ユリが首をひねりました。

「自分でもよくはわからん」

 

 このフターリア。クール系美少女に転生して15年。

 樹になる日が来るとは思わなんだわ。

 とんだ変身物語だよ。

 

「異常ありません」

 モリーヌが帰ってきました。フード付きマントがびしょ濡れです。

「御苦労!」とユリ。「入って入って」

「いえ、私はボンクラどもと共に・・・」

「放っとけ! アイツら仕事してないんだから。ほら入った入った」

「・・・では、お言葉に甘えて」

 モリーヌ。

 母樹の枝の下でマントを脱いで、バサバサと雫を払います。

「ん」枝を伸ばしてやりました。

「いえそんな。お嬢さまをハンガー代わりにするなど!」

「いや、もう利用されてるし」

 

 私(の母樹)の両脇に、天幕がぶら下がってるんですわ。

 アスカリア戦士・人夫たちの天幕と。

 ダンゼイズ戦士の天幕のね。

 『おお、支柱を立てんでもええのか』『こりゃ便利な樹じゃ』と、戦士たち喜んでました。

 『樹じゃない! 姫じゃ!』と、戦士長にブン殴られてましたが。

 

「どいつもこいつも、お嬢さまを・・・すみませんホントに」

「はいはい」

 私の枝にマントを掛けて、モリーヌがウロに加わりました。

「はぁ・・・あったかい。外とは全然違いますね」

「だよなーw」

 ユリが転がりました。

 体育座りのまま仰向けになった感じ。で、足をウロに引っ掛けて。手枕して、くつろぐ。

 赤毛の頭が、お嬢さまのお腹の横あたりに落ち着きました。

 お嬢さまが何気なくその赤毛を撫でました。

 私は嫉妬しました。

 ・・・嫉妬の炎、というほどではありませんが。うむ。火はいかん。

 私が黙ってると、モリーヌが私の新芽(髪)を整えようとしてくれました。ピョコンとなって無理でしたが。

「こんなラクに雨の旅ができるなんてなぁ」

 と、ユリ。

「テニスとリアの主従には、ホント助けられてるよ」

「光栄ですわ」

 

 ・・・もしかして、仲直りさせようとしてくれてんのか。

 いやー、無理だと思うぞ?

 お嬢さま、他人に操られんの大嫌いだし。

 

「今後とも、伯爵のお役に立ちたいと思いますわ」

 ホラかわされた。

 ユリもあきらめたのか、話を変えるようでした。

「──雨はさ、アスカリアじゃ、喜ばれるんだぜ」

「恵みの雨ですか?」

「いいや。吸血鬼が、水を嫌うからさ」

 ユリは手をヒラヒラしました。

「毎年、春のこの時期に吸血鬼狩りをやったモンだよ・・・」

 

「人影あり! 近づいてきます!」

 話していると、ダンゼイズ戦士の叫び声が上がりました。

 ユリが飛び起きて左手を剣の柄にやります。

 私も、ウロの入り口から浮かび上がりました。

 が。

「敵じゃねぇ! 雨宿りしてぇだけだ、満員ならあきらめるよ!」

「なんだ、伝の字じゃねぇか!」

 近付いてきた人影は、アスカリア歩兵の知り合いだったようです。

 というか。

「あ、ユリさま」

「なんだオマエか。伝令だな?」

「そうです。司厨長から伯爵へ、定期連絡・・・」

 なんのことはない、ユリへの伝令だったのです。

 

 「アスカリア本領、大過なし。

  北アスカリア領、やや不安定。文官の不服従。反乱の気配はなし。

  諜報、吸血鬼の活動は確認できず。

  ・・・以上です!」

 

「氷雨の中、御苦労! ほら」ユリは酒の小瓶を出しました。

「ありがてぇw」男は自分のカップを出して酒をついでもらい、仲間のとこへ行きます。

「畜生テメェ」「よこしやがれ」「誰がよこすか馬鹿野郎」早速ケンカです。

「やれやれ・・・」

 

 ゴロゴロゴロ。

 天が鳴り響きました。

 

「落ちそうですね」とモリーヌ。「お嬢さま、ここ、大丈夫ですか?」

「うん」と私。「根っこネットによれば」

 

 根っこを伸ばし、周囲の木々と交信する根っこネット。

『ここどうかな? 雷』と、問い合わせたら、

 『大丈夫ッスよ』『二ツ岩の杉野郎ンとこッスよ。落ちるとしたら』

 

「・・・ってコトだったから、ま、大丈夫なんだろう」

「わかりました。万が一の時は、お伴いたします」

「いやいや」

「いえいえ」

 

 雷が落ちました。

 

 目が眩み、耳が聞こえなくなります。

 ですが、根っこネットは健在です。

『すげーな。どこ?』

 『言った通りッスよ』『杉の若造、真っ二つですぜ』

 

 ニョロ~ンとツタを伸ばして、背後を見てみると。

 森の上に突き出した岩場。

 煙を上げる杉の残骸が2本──いや、1本ありました。

 雷に引き裂かれ、黒々と焦げてしまっております。

 

『うへぇ』

 『アイツ邪魔だったんスよね~』『メチャクチャ伸びやがって』『いい気味だぜ』

 木々の世界も、生存競争は熾烈なようです・・・。

 

「雷はすげーな」

「・・・うむ」

 うなずくユリは、なぜか固い表情でした。

 

◆♀◆ 2、ただいまー ◆♀◆

 

 雨が上がって。

 私たちの行く手に、春が広がりました。

 

 灰のような残雪は雨に流され・・・

 草花の彩りが、泡のように浮かび上がりました。

 雷も雨もウソだったかのように陽光が戻って、行く手はキラキラと輝いてます。

 

「うーん、最高!」

 私は伸び伸びとツタで浮かび上がって、日光を満喫しました。

 母樹はニョロニョロと這い歩きます。

 すると、陽光のシャワーを浴びる私の身体も大きく揺れました。

「・・・あまり高く上がらないほうがいいわよ」

「あ、そうですね」

 お嬢さまに忠告されて、私はツタを巻き取りました。『変容』が解けたら落っこちちゃうからね。

 お嬢さまの言葉は、それっきり。

 パカ、ポコ、パカ。

 黙ってベロ~ン君に乗ってます。

 『・・・? ・・・? ・・・???』

 ベロ~ン君は、しきりに耳を動かして私たちを気にしてました。

 

 で。

 アスカリア伯爵領に、到着しました。

 雨上がりの領地は、まるで風呂上りの赤ちゃんのよう。

 薄汚れた『冒険者の村』ですら、キラキラ光って見える!

 

「わー!」「伯爵ー!」「減税してー!」と、女ども。

「1銅貨すら取ってないぞ!w」と、女伯爵のユリ。

「ユリっぺー」「ウチ来いよー」「一晩でいいから結婚してくれー」と、男ども。

「うるせえ」蹴っ飛ばすユリ。馬が頭突きで追い討ち。主人の意を汲んだようです。

 

「うわー! ユリ姉だ!」「ユリ姉帰ってきた!」「土産が帰ってきたぞ!」

 クネクネ曲がる斜路を上がると、孤児院からガキンチョどもが飛び出して来ました。

 ユリは笑って飴玉を投げました。

 元気のいいクソガキはそれをキャッチ。その場で口に。

 それから、ユリは飴の袋をリーダー格の女の子に渡しました。

「ちゃんと分けてやれよ、クリッカ」

「おう!」

 クソガキのクリッカちゃん。袋を取ろうとする年少の子を張り倒して、

「じゃーな! 土産もくれるよな!?」

「あとでな」

「やったー!」

 

 トンテンカン。

 伯爵邸の屋根からは、トンカチの音がします。

「なんかあったのかー?」とユリ。

「お~、伯爵」トンカチのおっさんが返事しました。「屋根が飛んじまってよ~」

「怪我人はいるかー?」

「いねぇよ~」

 

 私たちは、館に入りました。

 オンボロの伯爵邸ではありますが。暖炉は暖かく燃え、スープも湯気を立てており・・・

 

「お帰りなさい。お疲れさまでした」

 ダークグレイの髪の美女。マリエレジーナ姉さんが、出迎えてくれました。

「ただいま、マリ」

 ユリは、マリエレジーナ姉さんを抱き寄せて、キスをしました。

 

 私たちのところには、茶色の肌をしたエルフの美女がやってきます。

 ダークエルフのメイダーリン姉ちゃん。表向きは、ユリの奴隷。実際は、恋人にして懐刀。

 フターリアよりちょい背が高く、同等のデカパイ姉ちゃんです。

「大変やったみたいですねぇ」

 しゃべりは優しい感じです。マントを脱がせてくれました。

「ありがと。いやー、ホンマ、大変でしたわ」

「ふふふw」

「ダンゼイズの殿方は迎賓館に。アスカリアの連中は、ここで軽く酒でも呑ませてやろう」

「はい」

「お手伝いしますわ、マレーナさま」

「いいえ。あなたは休みなさい、テニス。この子も手伝ってくれるから」

「イエーイ!」飛び出すクリッカ。

「神出鬼没だな。ちゃんと配ったか?」とユリ。

「ババアに預けた!」

 

 ダンゼイズ戦士たちは、ずいぶん恐縮してました。

 『こんな立派な館に』『こっちが本邸かと』『本邸はずいぶんボロっち──ぐわー!』

 余計なことを口走って戦士長に殴られたりしてました。

 

 アスカリア歩兵は、ユリに酒と肉を振る舞われて、御機嫌で帰っていきました。

「何の手柄もないボンクラどもですが・・・」とモリーヌ。

「命令には従ったからな」ユリは笑ってました。

 

 孤児院への土産は、コノマーズのお菓子と人形。

 甘いお菓子としょっぱいお菓子、布で作られたガレー艦と船乗りの人形です。

 クリッカはガレー艦に夢中になって、何回も話をねだってきました。俺もよく知らんのだが・・・。

 

 ま、そんな感じで、みな落ち着いたわけですが。

 私たちには、寝る前にもう一仕事、ユリから命令が下りました。

「さて! 疲れてるとこ悪いが、ちょっと会議だ!」

 

 1階の食堂へ移動。

 お茶の代わりにスープを呑みながら、手短かに会議です。

 

「伝令した通り、北領の文官の態度に難があります」

 マレーナ姉さんが報告します。

 

 北領。飛び地の北アスカリア領のコトです。

 旧モターズ伯爵領ね。死霊使いにズタボロにされて、農地も人口も激減してる。

 ユリが資金投入して復興しているのですが・・・

 

「輸送物資や文書の『紛失』だけでなく、命令にない税を『誤って』徴収する一件がありました」

「クソが」とユリ。

「勝手に徴税て」私は飛び上がりました。「重罪じゃん」

「ええ。証拠があればね」

「命令書は?」

「紛失」

「隠蔽工作では?」

「ええ。私もそう思うわ」

「人が足らんのだよな。要するに」とユリ。

「そうね。監査に回す人手があれば・・・」

「よし」

 ユリはうなずき、ぽん、とテーブルを叩いて、こう言いました。

 

「やるか! 吸血鬼討伐!」

 

◆♀◆ 3、私を抱くな ◆♀◆

 

「・・・人が足らんのに、戦争すんのか?」

 

 会議は終わり。食堂を出て2階に行こうぜ! となったのですが。

 私は、ちょっと疑問だったので、ユリに質問しました。

 

「歩兵を休ませても、文官に変容はせん」

 と、前をゆくユリのお尻が答えました。

「だが、カネがあれば、文官は生やせる」

「そうか?」

「よその貴族の子弟を雇えばね」とマレーナ姉さん。「北アスカリアは、今もそうよ」

「なるほど・・・」

 だから汚職もするワケね?

「吸血鬼はカネ持ってんだ」

「知らん」

「え?」

「一時の金に用はない。目標は、港だ」

 ユリの結論はこうでした。

「『希望の港』を解放する。吸血鬼に支配された、ダークエルフの港をな・・・」

 

 私たちは、ベッドに移動しました。

 主の──ユリとマレーナ姉さんの寝室のベッドです。

 

 ユリ。赤いガウン。帯をしておらず、胸元とおへそが見えてます。

 マレーナ姉さん。ユリとお揃いのガウン。こちらはちゃんとしてて、首筋もダークグレイの髪で隠してる。

 ダーリン姉ちゃんは装備を解かず、入り口に立ってくれてます。私が目をやると、『ええんよ』という感じで笑ってくれました。

 テニスお嬢さま。薄い青色の長~いワンピース。ネグリジェというほど薄くなく、ローブというほど厚くない。何て言うんだこれ。

 

 私。メイド服。

 

「なんでメイド服なんだよ」ユリにツッコミ喰らいました。

「いや、これ、新品でね?」私は説明しました。「ツクノーさまがくれたんだけど。コノマーズが輸入してる麻の割合が高めで。ちょっとコワい麻だから、着心地が気になってたんだけど、ウチの戦士の前でコレ着るとうるさいじゃん? 『またメイドをやらされとる!』って、お嬢さまの評判が落ちたらね? そんで帰ったら着ようと思ってて、どうせならみんないるとこで着ようt──」

「わかった」ユリに止められました。「わかった。よしよし。脱がされるまでそれ着てろ」

 

 止められたので、もうやめときますがね・・・

 

 このメイド服はですね、ツヤがあってパリッとしてるんですよ。これは原料の特性ですね。

 ちょっとコスプレ感は否めないですがね? 「おまえ汚れ仕事してないだろ」っていう。

 けど、仕立てがいいんで、着心地はとてもいいんですわ。

 自然と背筋が伸びる。なのに、屈んでも窮屈じゃない。フターリアの体型(主に乳)でこれは有難い。文字通りにね。

 そしてですね。

 色が、黒っぽいんですわ。

 私のメイド服(アイメンカ製)はダークブルーなんですけどね?

 これは黒い糸が巧みに織り交ぜてあって。

 明るいとこでは、光沢のあるダークブルーなのに・・・

 ちょっと暗いトコだと、吸い込まれるような黒になるんですよ!

 青みのある黒。

 夏の夜みたいな! 深海のような!

 鏡で見ると、この深い色合いと、フターリアの鋭い美貌が合わさって・・・

 カッコいいんですよ!

 

「おい。聞いてんのかリア。こらっ」爪先で突つかれました。

「いてっ。なんだよ」

「無視しといて『なんだよ』があるか」突つかれました。

「いてーな! ・・・いや、すまん。自分に見惚れてた」

「こいつ・・・w」

 ユリはワインを呑みました。

「あ、失礼しました」私は急いで立ち上がりました。

 モリーヌが苦笑して、ボトルを譲ってくれました。

 マレーナ姉さんのグラスが空ですな。まずは、彼女にお酌っと。

「領主代行、お疲れさまでした」

「ありがとう。あなたも、ユリを守ってくれて」

「私じゃないぜ? テニスさ」とユリ。「コイツ、必死で飛んでってさー」

「いやぁ・・・ユリは万全だったもんな。今回」

「ンだよ偉そうにw」

 で、次は。

 お嬢さまのグラスが空ですな。

 私は、お茶のポットに手をやったのですが。

「薄めて呑むわ」答えはいつもと違いました。

「呑まれるのですか?」

「ええ。ちょびっとだけ」

「かしこまりました」

 

 ちょびっと。

 どういう意味でしょうかね?

 

 お嬢さまは、酒は呑みません。

 ブレロッケには、酒を禁止する法律はないんですけどね。

 実際、お嬢さまも私も、酒を呑む訓練はしたことあるし。味や酔い方を知っておく訓練ね。

 それで嫌いになったみたいです。実は、私もそうです。

 

 なのに呑みたいということは。

 ・・・ふむ。

 

「なに? なんか思いついた?」とユリ。

「うん。あの、司厨長」

「なあに?」とマレーナ姉さん。

「卵3つ、ハチミツ6さじ、頂いてもよろしいでしょうか?」

「いまから!?」

 

 鶏小屋にはダーリン姉ちゃんが走ってくれました。すまん。

 私はキッチンで手鍋を拝借。ハチミツとワインを入れて1階の大広間へ。

 寒い。

 暖炉の火を掻き起こして、鍋の中身を溶かします。

 沸騰したら、ダーリン姉ちゃんに割ってもらった卵を入れてよーく混ぜる。

 ブレロッケの生卵はガチで危険なので、しっかり熱を通して。

 味見。

 

 ・・・なんだこれ。ワインの風味が邪魔すぎる。

 

 私が眉を寄せていると、ダーリン姉ちゃんが小首を傾げました。

 ちょっと味見してもらったら、「ええんちゃいます?」とのこと。

 出してみるか。

 

「どうぞ。卵酒です」

「卵酒?」ユリが真っ先に手を出しました。「・・・ふむ」

「ハチミツで?」とモリーヌ。「ふむ」

「・・・ダメ?」

「どうだろう」

 ユリが飲み残しをマレーナ姉さんに味見させました。

「ふむ」

 

 なにこの反応!

 

「私にもちょうだい」

「はい。濃い目なので・・・」さじですくって、ひと口ぶんだけ。

 お嬢さまはペロッと舐めて、

「ふむ」

 お代わりして、お茶で割って、グイッと呑みました。

「ふぅ・・・」ベッドにもたれます。「味は雑だけど、可能性を感じるわ」

「なんで突然?」とユリ。

「いや、ホラ、寒いのにずーっと旅行してきたじゃん」

 私は説明しました。

 

 お嬢さまがお酒を呑みたいってのは、冷えが原因では?

 と、私は推測したワケです。

 

「ただのお酒より、卵酒がいいんじゃないか・・・とね」

「甘いから何かと思ったよ」ユリが笑いました。

 

 ブレロッケにも卵酒はあります。

 ビールに卵と薬草を入れて煮込む。メッチャ苦いのが。

 そのイメージだったので、「ふむ」ってなったみたいです。

 

「なるほどな」ユリは手酌でお代わりしました。「・・・いいかも」

「私も」マレーナ姉さんも。「うん、うん」

「牛乳で割ってみたいわ」とお嬢さま。 

「そうなんですよ。朝ならそうしたのになと思って」

「じゃ、朝やりましょ」

「朝から酒はいけませんよ」

「あなたが出したんでしょ?」

「いまは夜じゃないですか」

「夜ならいいっていうの!?」

「・・・酔ってます?」

「ファリアのばか」お嬢さまは私を叩いてきました。

「はい。はい」

 私はお嬢さまを抱き起こしました。

 軽い身体を抱き締めて、左右に揺らして・・・

 お嬢さまはフターリアのデカパイに顔を埋めて、こすりつけて、耳をパタパタしました。

 ユリたちに黙礼して、部屋から連れ出します。

 モリーヌが扉を開けてくれました。

 

 ・・・私たちの3人部屋へ。ベッドに寝かせる。

 お嬢さまは、私を押しのけました。

 ・・・拒否?

 モリーヌを見ると『脱げ!』とジェスチャーしてます。『そのメイド服を脱げ!』

 ・・・ああ、ツクノーさまのプレゼントで私を抱くなってか。

 

 クッソめんどくせえ!!

 ただの布だろ! 服なんて!!!

 

 ・・・まあでも、さっき自慢しちゃったしな。

 

 私は急いで新品のメイド服を脱ぎました。

 下は、いつもの絹のシャツに、タイツです。

 シャツとタイツも脱ぎました。ブラジャーも外します。

 フターリアの白い白い乳房がぷるーんとしました。

 モリーヌが、ダークブルーのガウンを着せてくれました。

 

 ・・・そう言や、お嬢さま、青い服着てるのか。

 

「ニーズ?」

「・・・。」

 お嬢さまは、涙目でこっちを見上げてきました。

 お酒の効果で潤んだ瞳はとても綺麗でした。

 ・・・すまん。

「えーと、」

 私は少し考えて、彼女に覆いかぶさりました。

 モリーヌが私の背中に毛布をかけてくれます。

 ニーズは、手を伸ばしてフターリアの乳首をいじり始めました。

「くすぐったw」

「・・・。」

 ニーズは、足を広げて、私の腰に絡めてきました。

 私は彼女の柔らかい胸を撫でながら、頬をすり合わせ、エルフ耳にキスをしました。

 彼女の体温が急激に上昇します。女の匂いがしてきました。

 私は、彼女のワンピースをめくり上げ、裸の胸にフターリアの乳房を乗せました。

 可愛らしい少女の乳首と、フターリアの乳首が弾き合います。

 そして、

 

「Zzz・・・」

 お嬢さまは、寝落ちしてしまいました。

 

「ふむ」

 

 ちなみに、卵酒は好評でした。

 ユリんトコは、身体が温まって盛り上がったらしい。

 伯爵家のメニューに加わりました。・・・ワインじゃなく、ビールにされたけどな。

 

◆♀◆ 4、吸血鬼討伐 ◆♀◆

 

 というワケで、吸血鬼討伐。

 目当ては、カネです!

 

「『希望の港』はねぇ、イマック侯爵家やコノマーズ侯爵家と、貿易しとったらしいですわ」

 ダーリン姉ちゃんが説明してくれました。

「コノマーズと貿易か・・・」

「美味そうだろ?」とユリ。

「だな!」

「だろ!」

 

 晴れと雨を交互にくり返す、春天の下・・・

 アスカリア軍は、樹ターリアなども利用して、恙なく進んで参りました。

 

 今回、歩兵は100人規模になりました。

 農作業が忙しくなる時期ではあるのですが。

 前回の戦で1人の死者も出なかったので、いっちょ行ってみっか!

 ・・・というバカが増えたのだろうと、ユリが分析していました。

 

「大丈夫か。こんなんで」

「大丈夫です」とモリーヌ。「大丈夫でないヤツは死にますので」

「ダメじゃん」

「死人に口なしです」

 

 今回のアスカリア軍。ちょっと、新鮮な感じでして・・・

 

 先頭は、指揮官・メイダーリン班。

 ダーリン姉ちゃん、なんと、指揮官です!

 ふだんから、諜報のリーダー役はやってたようですが。

「無理やわー・・・」と、ユリのいないとこで弱音吐いてました。

 

 続いて、アスカリアの歩兵(寄せ集め)が100人ほど。

 荷物持ちの人夫と馬車。50人前後。

 太陽の女神の司祭補助と、護衛が2人。冬至の日に来てくれた、あの方ですね。

 そして、私たち。

 ベロ~ン君。騎乗者なし。

 ユリの鹿毛。お嬢さま1人。

 モリーヌの青鹿毛。これはいつも通り。完熟した動き。

 私は樹ターリア。ユリとマレーナ姉さんがウロの中にいる。

 

 ・・・このようになっております。

 

 なお、ダンゼイズ戦士は帰郷しました。

 戦士長は参加したかったようですが、奥さん持ちの若い戦士を抑え切れんかった模様。

 

 ユリとマレーナ姉さんも、新婚夫婦みたいにイチャイチャしてます。

 なので、私は少し離れてます。

 ま、ベロ~ンを母樹に近付けると、彼のウンコが根っこにかかるからね!

 そんな私に、歩兵を叱咤したモリーヌが寄ってきて、あれこれ話すワケです。

「隊列乱れまくりだね」

「ええ。ここまでダラケた軍は見たことありません」

「でも脱走はしないんだよな」

「ええ。勝てると思い込んでるんでしょう」

「まずいよな?」

「ええ。どこかでシメないとダメですね」

 

 お嬢さまと話す時間が取れねぇ・・・

 

 そして。

 私たちは『希望の港』を見下ろす山の上に到着しました。

 ここまで戦闘なし。脱落者もなしです。

 そこで雨が降ってきて、野営をすることになりました。

 

「ここは吸血鬼の領域や! いつ襲われてもおかしない。火ィは絶やすな! 闇に巻かれたら終わりやぞ」

 ダーリン姉ちゃんが指示を飛ばします。

 ユリが腕組んで見守り、隣でマレーナ姉さんが記録を取り、お嬢さまが補佐をします。

 私は、枝に天幕を広げて、3人を雨から守ってます。傘ーリアってか。

 モリーヌは馬上から全体を見てます。

 ここで。

「ンで奴隷が指示してんだよ・・・」

 アスカリアのチンピラ歩兵が、文句を口にしました。

「おい!」モリーヌが馬を寄せました。「貴様、いま何と言った!」

「別にィ・・・? 奴隷を奴隷って言っただけだよ」

「ダーリン」ユリが言いました。「その馬鹿と、組み打ちで勝負してやれ」

「はい」

「え・・・?」

「脳ミソの足らん新兵だ。どっちが上か、叩き込んでやれ」

「はっ!」

「構え。──始め!」

 

 チンピラはボコボコにされ、泥水の中にうつ伏せに引きずり倒されました。

 

「ウチの実力、認めてもらえたかなぁ?」

「ぶくぶくぶく」泥水の中でチンピラが答えました。

 そいつの脇腹を蹴飛ばして仰向けにして・・・

 ダーリン姉ちゃんは、指示を再開しました。

「見世物は終わりや。火ィ焚け火ィ!」

 

 火ィ・・・!

 私は思わず後じさり、マレーナ姉さんの手元を濡らして、「こら」と怒られました。

 

◆♀◆ 5、『希望の港』解放戦 ◆♀◆

 

 夜中。偵察と思われる吸血鬼と、小戦闘が発生しました。

 死者はなし。噛まれた者もなし。私たちの出番もなし。敵は逃亡。

 

 朝。

 黒い雲の下に、『希望の港』の姿が見えてきました。

 生気のない港です。港に船はなく、通りに人はなく、煙突に煙はありません。

 ただ、正門には人影が見えました。ごく少数ですが・・・フードをしっかりかぶった、人間(?)の姿が。

 

「やはり、警戒されてるわね」とマレーナ姉さん。

「そらァ、そうなるわね」とダーリン姉ちゃん。

「どうするの?」

「やるに決まってるやん」

 雨が続き、ゴロゴロと雷鳴が聞こえる悪天を見上げて・・・

「ちょうどええ天気やし!」

 ・・・ダーリン姉ちゃんは、笑いました。

「船太鼓、叩け! 歩兵は突撃準備! 落雷のあと、一気に落とすで!」

 

 どおーん、どおーん・・・太鼓が打ち鳴らされます。

 

「おや? このリズム、ウタールデントで」

 私が言うと、ユリがうなずきました。

「同じ合図さw ほら、西に」

 

 木々を透かして見れば。

 西の海に、ガレー艦が2隻、浮かんでおりました。

 軍旗を振ってます。『了解』の合図でしょうか?

 えーと・・・船に乗った黒ヒョウ? 月が浮かんでる? そんな軍旗ですね。

 

「ヨトンマリの軍旗ですわね」

「さすがテニス。その通り」

「2隻だけ?」

「それで十分さ」

 しゃべっている間にも、攻撃が展開されます。

 マレーナ姉さんが前に出て、杖を天に掲げて・・・

 

「天に満ちる炎の霊気よ、変容せよ。立ち昇り、駆け下れ。焼き溶かせ! ──『雷』」

 破滅の呪文を唱えました。

 

 空が輝き、光が走り、真っ黒な雲が明るくなって・・・

 

 ・・・雷が落ちました。

 

 『希望の港』の、正門の左側。城壁がやや薄くなっている部分があったのですが。

 そこに目を眩ます稲光が柱となって立ち昇り、城壁を構成する岩も丸太も土も、吹き飛ばしてしまいました。

 城壁が崩れ、穴が開きます。

 正門の上に人影が現れました。

 

「もう一発行きます」

 とマレーナ姉さん。

「連発できるの・・・!?」私はゾッとしました。

「すごいだろw」ユリが自慢しました。

 

「──雷」

 

 前よりも、さらに大きな音が轟きました。

 3本の光の柱が、正門を這い回ります。

 

 1発目の後にあわてて防衛準備を始めていた人影が、消し飛びました。

 

「・・・どうやって防ぐんだ、こんなの」

「・・・建物の中に逃げ込む。外だと、まあ、『妨害』するしか」

「耐えれんの?」

「自信ないね」

「うへぇ」

 

 私が、畏怖の目で見ていると。

 まるで視線を察知したかのように、マレーナ姉さんが振り向きました。

 

「雷って、恐いッスね・・・!」

「そうね」笑って、こちらに戻って来ました。

 

「突撃! 突撃ィ! 戦功上げたヤツには、港で一生エエ思いさせたんでぇ~!」

 ダーリン姉ちゃんが叫んで、走り始めました。

 彼女直属の偵察兵が一緒に走ります。

 私はユリを見ました。「俺らは?」

 ユリはマレーナさんに腕を回しました。「マリの護衛。テニス、頼む」

「はい。ファリア」おいでおいで。

「え? なんです?」

「樹ターリアにするから」

「あ、はいはい」私、喜んで近付く。

 

「変容せよ、フターリア。その肌は堅く、髪は緑鮮やかに。巡る霊気の主となれ。――樹木の乙女に、な~れ!」

 

 樹木となった私。合言葉を唱えます。

「もぉ~と、ひぃ~かるぅ~・・・」

 4行の合言葉です。

 だるい。

 これもうちょっと短くならんのですかね?

「・・・羽ぁ~ばたぁ~き、変ぁ~わるぅ~、樹ぅ~ター~リア~!」

 やっと終わった。

 ニョロ~ン。ウロから出でし、樹霊の乙女。

 新芽の髪も初々しく、戦場に降臨です!

「どーぞ」

 マレーナ姉さんが、そしてお嬢さまが、ウロの中に入ってきます。

 ユリは外です。鹿毛に乗ってる。

 モリーヌも青鹿毛で外。

 そして、太陽の司祭補助さまも。

 

「いやはや。噂には聞いておりましたが・・・まったく、英雄の一団ですな!」

 と言いながら、司祭補助さんも、私たちと一緒に前進しました。

 

◆♀◆ 6、綺麗な水夫 ◆♀◆

 

 戦いは、驚くほど簡単に終わりました。

 

 勝因は、陽光です。

 マレーナ姉さんの『雷』のあと、雲が晴れて、日光が差してきたのです。

「・・・計算通り?」

「いえ。でも、期待はしていたわ」

 

 歩兵が突入していきます。

 ヨトンマリ伯爵のガレーも、港に突入しました。

 吸血鬼は、陽の輝きを恐れて、建物を出ることができません。扉を破られると悲鳴を上げて逃げ惑うありさま。

 建物の奥では戦闘もあって、負傷者も出ましたが・・・

 

「僭主の首、討ち取ったりィ~!」

 ダーリン姉ちゃんが、中身の空っぽになった貴族服を掲げると(灰がこびりついていました)・・・

 

 ・・・吸血鬼どもは、風に吹かれた霧のように、跡形もなくなったのです。

 

「勝った・・・のか?」

「地下に潜ったのでしょう」と、太陽の司祭補助さん。

「地下に?」

「この港には、下水道があると聞きますゆえ」

「下水道・・・」

「吸血鬼は、勝ち目ナシとなりますと、ネズミとなって闇の底へ逃げてしまいます」

 司祭補助さんは、ため息をつきました。

「ゆえに、低級の1匹であっても、都に根深く残るトゲとなるのです」

「どうすんの?」私は、ユリに訊きました。

「これまでと同じさ」

 ユリは落ち着いて答えました。

「前線が動いただけ。野外で押し合ってたのが、下水道口になっただけだ」

「つっても、家の下に吸血鬼がいるワケじゃん・・・」

「いいや?」ユリはワイルドな笑みを浮かべました。「家なんか残さないぜ?」

「下水道口は、私が更地にして、」とマレーナ姉さん。「檻をかぶせて、出入りを監視します」

「うへぇ」

 

 ダンジョン入り口を封鎖、みたいな感じかな?

 なんか・・・この港町だけ、RPGっぽくなりそうだね。

 

 私たちは、桟橋に向かいました。

 這い寄る私(の母樹)を見て、船乗りはギョッとしてましたが・・・

 

「やあ! 我が生命の恩人、アスカリア伯爵! そして、後ろに控えておられる樹木の乙女よ」

 ヨトンマリ伯爵は、ニッコリ笑って手を振ってくれました。

「約束通り、食料・水・矢・槍、それに、檻に使う鉄棒ですか? 運んで参りましたぞ」

「ありがたい! 伯爵。まさに十二分な対価を頂きましたよ」

 

 2隻で十分、というユリの言葉は、正確でした。

 アスカリア軍がモタモタ乱戦やってるあいだに、港の倉庫を次々にクリアする実力もすごいですが。

 なによりも、運搬力! これが、ものすごいんですわ。

 

「物資の運搬! これこそ、私たちが攻め切れずにいた原因ですよ!」

 ユリも笑顔です。両手を打ち合わせて、艦隊の男たちを褒めちぎりました。

「あなたがた海の男が、私たちに最後のカギを下さったのだ」

「褒めすぎですぞ。代価を釣り上げたくなりますわい」

「もちろん、儲け話も持っていきますとも」

「そう来なくてはのう。港を手に入れなすったんじゃから・・・?」

「ええ。交易品も、造船の注文もね!」

「ぬっはっは」

「ふっふっふ」

 

 と、このように明るい港方面でしたが。

 負傷者が後送されてくると、笑ってもいられなくなりました。

 

「軽傷者は外! 生命の危険のある者だけ、倉庫の中へ!」

 太陽の司祭補助さんが駆け回ります。

 治癒の呪文を休みなく唱えて、重傷者の生命を救ってゆきます。

 樹ターリアも、救急車をやりました。わりと役に立つんですよ。馬車より揺れが少ないからね。

 しかし。

「これは・・・いけない!」

 司祭補助さん、冷や汗。

「吸血鬼に噛まれておる! 私ごときでは・・・どたなか、穢れ・呪いを祓える御方は!?」

「・・・。」

 私たちは、顔を見合わせました。

 思い当たる御方は、いるのですが・・・

「あの御方が・・・」と、私。

「いるワケないよなー・・・」と、ユリ。

 すると。

 

「出番じゃな?」

 ヒョコッ! と、水夫が舷側に顔を出しました。

 

 妙に綺麗な顔をした水夫ですね・・・

 日焼けはしているのですが、化粧したみたいになめらかな肌をしており・・・

 茶色の目は、女のように大きく・・・

 頭巾に包んだ赤毛も、ずいぶん長く・・・

 

「いたわ」「うへぇ」ユリと私は仰天しました。

「一刻を争うのであろう? あいさつは後じゃ。──診せてみよ!」

 ツクノーさま。

 舷側をヒラリと飛び越えて、司祭補助のところに駆けつけました。

「この御方は?!」

「心得のある御方だ。私が保証する」とユリ。

「しからば、この患者を!」

「承知した。陽の火よ、熱よ、輝きよ。勇敢な戦士を変容せしめよ。癒し、祓い、清めたまえ」

 

 ツクノーさま、大活躍。

 お蔭で、アスカリアは死者を出さずに済みました。

 

「・・・これ、どんだけ報酬出せばいいんだ?」

「・・・わかりません。父に問い合わせなくては」

 ユリとマレーナ姉さんは、青褪めてましたけどね。

 

 当の御本人は『いい仕事をした』という風で、私のところにやってきました。

「ターラ。久しぶりじゃな」母樹を撫でさすります。

「お久しぶりです。ツクノーさま」

「・・・。」睨まれました。「いきなり引き揚げてしまうとは、淡白じゃのう?」

「人手が少ないもので・・・お引き留め頂いて、本当に嬉しかったのですが」

「そうか♥」

 

 いけませんよ侯爵。いけません。ハートマーク出てますよ!

 人目があるんですから!

 

「ええと・・・興味がおありなら、乗ってみます? 中。暖かいですよ」

「ほう? ターラの中は暖かいのか」

 言い方!

 

 嬉しそうにウロに入って、ナデナデと内側を撫で回すツクノーさまを見て・・・

 

 お嬢さまは -(´~`)ヽ こんな表情になってました。

 味のある顔するようになりましたね。

 

 ユリはウロに近付いてきて、

「・・・まさかとは思いますが」

「なんじゃ?」

「殿下まで連れて来てないでしょうな?」

 すると。

 

「私のことを話しておいでですね?」

 ヒョコッ! と、水夫が舷側に顔を出しました。

 

 妙に綺麗な顔をした水夫(ry

 小さくてふっくらした顔は愛くるしく・・・

 暗色の瞳は瑞々しく潤み・・・

 頭巾に包んだ髪は、フターリアも敵わないほど、黒々として・・・

 

「いたわ」「うへぇ」ユリと私は、仰天しました。

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