TSゆりフタ令嬢侍女メイド! 作:min(みならい)R18
◆♀◆ 7、ユリちゃん無双 ◆♀◆
月のない夜。
春の冷たい風の中。
下水溝に、ギラギラ光る目をした男が、立ち上がった。
「おのれ勇者め。我らの港を、よくも、よくも・・・!」
その男。
白い肌に、血の気はなく・・・
目は、内側から光を放ち・・・
唇には、鋭い牙が輝いておる!
そんな男が、足元をチョロチョロ這い回るドブネズミに向かって、命令した。
「とっとと『変容』を解け! 反攻の時間だ」
すると。
ドブネズミが、見る見るうちに大きくなり──
土のような肌をしたダークエルフに。
レンガのような肌をした小鬼に、なった。
種族は、先の男とは違うが。
血の気のない肌。光る目。鋭い牙は、同じ。
同じ存在に、なったのだ。
──吸血鬼に。
「ゆくぞ」
吸血鬼どもの主が命じる。
しかし、下僕どもは顔を見合わせ、動かない。
「どうした」
「・・・御主人様」ダークエルフの吸血鬼が、進言した。「いましばらく、様子を見ては?」
「なに?」
「勇者めが、この港を出るまでは・・・潜伏すべきではありませんか?」
「馬鹿め。あの船が見えんのか」
吸血鬼の主は、指差した。
下水溝の先。
夜の港に浮かぶ、ガレー艦を。
「あの船が運んできた、山のような物資。おまえたちも見たであろう」
「・・・はい」
「勇者は、この『希望の港』に、根を下ろすつもりだ。時が経てば不利になる。今しかないのだ!」
吸血鬼はそう言って、歩き始めた。
下僕どもは渋い顔でついてゆく。
ポチャン・・・!
下水の中で、魚だかエビだか、何かがハネた。
「ヒィ!」小鬼が飛び上がった。「・・・主よ。やめるべきじゃ。水がわしに当たった。不吉じゃ」
「ええい、黙れ!」
下水の曲がり角で、主人は振り向いた。
「勇者の寝床は、すぐそこだ。ここからは一言も発するでないぞ。よいな」
この言葉を最後にして。
吸血鬼はもう、一言も発することはなかった。
ひらめいた白刃に、首を飛ばされたからである。
「えっ」「何が」「ヒィ! 勇者」
3人の下僕は、それぞれ一言だけ発する時間があった。
それから、主人と同じように一太刀で斬り倒されて、灰になった。
「・・・。」
女勇者・ユリが、吸血鬼どもの破滅を確かめ、剣を血振りする。
その血も、地面につく前に灰になった。
「よし。次」
「強ぇー・・・」「おっそろしい女だな」「馬鹿。昔よりゃだいぶマシだぞ?」
アスカリアの男どもが、ブツブツ言いながらついてゆく。
ネコ耳を生やしたメイドも、ついてった。
はい。
フにゃーリアです。
ユリの夜回りに同行してます。
ネコ娘になってね。
夜目と、聴覚・嗅覚に期待されての同行でしたが。
「ハハハハ! 雑魚め!」
ユリちゃん無双。
なんもするヒマねぇ。
一度も出番のないまま、領主の館に戻って参りました。
「お帰りなさい。お風呂、沸いてますよ」
ダークエルフのダーリン姉ちゃんが待っててくれました。
「寝てていいって言ったろ?」
「そんなん・・・愛しの御主人様が出陣しとんのにw」
ダーリンは色っぽく笑って、
「ツクノーさまが、『御一緒していいか?』って言うてはりますが?」
「なんか話があるんだろうな。『リアと3人で良ければ』って伝えてくれ」
「わかりました」
くるぅと向きを変えるダーリン姉ちゃんに、私は訊きました。「ウチのお嬢さまは?」
「王女殿下と御歓談中ですわ」
「そっか」
「伝言しましょか?」
「あ、いや、いい。ええんです。呼び止めてごめんなさい、指揮官閣下」
「ふふふ♥」
◆♀◆ 8、ネムリタ王女の決断 ◆♀◆
メイダーリンは丈の短いマントをなびかせて賓客の部屋に向かった。
おや?
部屋の前の護衛が、いつもより多い。
女侯爵の護衛2人に加えて、王女の親衛隊が3人立っている。
「夜分に恐れ入ります。メイダーリンです」
「これは、指揮官閣下」ツクノーの護衛隊長が応じた。「御用を伺っても?」
「先ほど侯爵閣下よりお問い合わせ頂いた件で──」
と、そこまで言ったとき。
部屋の中から、少し大きな声が聞こえてきた。
「いいえ先生!
ファリアさまにも問題がありますわ!
安心して、テニス。私がズバッと言ってやりますから!」
「──『フターリア姫と3人になりますが、それでよろしければ、どうぞ』と。侯爵閣下に」
メイダーリンは何も聞こえなかったことにして伝言。
引き返す。
「どないしよ」
指揮官室に戻るか。
風呂に行って、いま盗み聞きした内容を伝えるか。ちょっと考える。
そこに諜報の男がやって来た。
「巡回、および、アスカリア戦士の内偵、結果報告」
「ん。聞くわ」
メイダーリンは指揮官室に向かった。「・・・ま、大丈夫やろ」
◆♀◆ 9、お風呂で交渉 ◆♀◆
ぽちゃーん。お風呂です。
いささか古い造りで換気がいまいち。天井からポタポタ雫が落ちてきます。
ユリと私は急いで風呂に入って、身体を流しました。
「取れた?」
ユリが腕を出してきます。
フンフン。鼻を鳴らして匂いを嗅ぎます。
「いや、まだ」
「下水の臭いする?」
「してる」
「クソ」
高価な(メチャクチャ高価です)石けんでゴシゴシ洗ってるんですが・・・
臭いが、なかなか落とし切れない。
「元にも~どれ! してもらいたかったんだけど」
「あー」
ネコ娘は、手がね。あんま器用じゃないんだよね。
洗う部位も増えるし。尻尾とか。ネコ耳は水入るとギニャー!? ってなるし。
「しょうがないさ。王女の前から呼び出すワケに行かんし」
「だよなー」
結局、間に合いませんでした。
「失礼するぞ」
背の高い女侯爵が、入って来てしまいました。
豊かなヌードを、タオルでちょびっとだけ隠して。
「やあ、お美しい侯爵よ」
ユリが言いました。
「申し訳ない。我ら、下水の見回りから戻ったところでして、臭うでしょう」
「無理を言うてすまぬ。じゃが、長くは滞在できんのでな」
でしょうな。
コノマーズ侯爵領、反乱があったばかりだしね。なんで来たの!? ってレベルですが・・・
「そなたが『希望の港』を取ると聞いてな。無理をして、出て来たのじゃ」
・・・ってコトですね。ユリの方針を確認しに来たと。
ツクノーさま。
丸いお尻を木の椅子に乗せて、身体を流し始めました。
白いお尻。
なまめかしく白い。
日焼けしたところは荒れやすく、そうでないとこはクリームみたいな肌してる。
肌のタイプが、ユリと似てる。
髪も、濡れたときの縮れ方はそっくりです。ユリは赤毛で、ツクノーさまは赤く焼けた金髪って感じですが。
ツクノーさまが髪を結い上げるのを、私は残念な気持ちでチラチラ見ました。
ネコでなければ・・・下水の臭いが残ってなければ・・・お手伝いできたのに!
好機を逃がした・・・メイドとして・・・!
ツクノーさまは私を見て、無言でほほえみました。
で。
「アスカリア伯よ。コノマーズの子になってくれ」
重要な会話が始まりました。
「浮気者にはなりたくありませんな」
ユリは、左腕をゴシゴシこすりながら、拒否しました。
「浮気とな」
「私は、バーシー王に取り立てられたのでね」
「恩があるから、統治をゆだねると?」
「いいえ。私の自由な判断で、王国の平和のために、バーシー王に尽くすのです」
「ほう・・・」
平和って。この港、侵略したばっかじゃん。
とか考えてたら、ツクノーさまに表情を読まれました。迂闊!
「・・・では、せめて、『アイメンカに近付かぬ』と確約できんか?」
「それこそ『統治をゆだねる』では?」
「これも蹴るか。ならば、我らの友好関係はおしまいじゃ」
「本気ですか?」
「コノマーズの総意でな。アイメンカを利することはできぬ」
ユリとツクノーさまは、しばらく、互いの顔色を窺いました。
「困ったな」とユリ。「私は、バーシー王の熱烈な支持者です。これでは足りませんか?」
「バーシーの派閥に入っとらんじゃろうが」
「ええ」
「入るならとっとと入れ。そなたのような要人にフラフラされては、迷惑じゃ」
「すみませんねぇw」
ユリは苦笑しました。
「バーシーから誘いが来ないのは、つまり、私に払うカネがないからでしょう?」
「・・・。」
「貯まるまで待ってあげますよ」
「愛しとるなら、尽くしてやったらどうじゃ?」
「私1人の腕なら貸しますがね」
ユリが、私に腕を出しました。
フンフン。ネコの嗅覚には、まだかすかに下水の名残りが感じられますが・・・
「大丈夫かと」
「やっとか。侯爵、湯船、いかがですか?」
ユリが立ち上がって、キュッと締まったお尻を見せて、侯爵を誘いました。
ツクノーさまも、なめらかな尻を揺らしてついてゆきます。
「・・・あれ? リアは?」
「私はまだちょっと、尻尾が」
「なんだよ。言えよ。侯爵はどうぞ」ユリが戻ってきました。「ほら寄越せ!」
「ニャめろ! あニャ!?」
尻尾を掴まれました。
ユリは、右手で私の尻尾の真ん中らへんを優しく持ち上げて・・・
左手をお腹にあてがって、逃げれないように私の下半身を支配して・・・
「綺麗にしてやるから♥」
と、ネコ耳に息を吹き込んできました。
フにゃーリアの腰が砕けました。
コケて、横座りになる。
ユリが石けんを押し当ててきました。
尾てい骨のあたりを、石けんでグリグリ揉み始めました。
「うルルル♥」
フにゃーリアの喉からヘンな声が出ました。もうダメだ・・・。
「またファリアを辱めて!」ツクノーさまが戻ってきました。「いきなり性感帯を撫でるヤツが居るか。のう?」
背中から抱きついて、フターリアのデカパイを持ち上げてきました。
「ああああ♥」
ユリの手が、お腹と尻尾の付け根を・・・
ツクノーさまの手が、乳房に、乳首に・・・
ネコ耳に吐息を吹き込まれ・・・
人間のほうの耳は甘噛みされて・・・
「ひぅ・・・ッ♥」フターリアは、イッてしまいました。
「ほらほら、そんなに尻尾ビンビンにしたら洗えないだろw」
「すごい勢いじゃな。元気のええネコちゃんじゃ」
「ふああ♥」
「なんにもしてないのにまたイッてるよ」
「してるッ・・・ニャろッ・・・♥」
「いや、するってのはこういうコトだろ?」
ユリの指がお腹から股間に下りてきました。それだけでフにゃーリアは1回イッてしまいました。
そのまま指先がクリトリスをこする。こすり下ろして鞘を揉んでこすり上げる。
立て続けに2・3回イッてしまいました。
「わかった?」
「はニャ・・・♥」
「わかっとらんようじゃ。次は私がやってやろう」
「あッツニャちゃ♥♥♥」
ツナちゃんの指がクリトリスに下りて来ました。
この女色貴族どもめ! もう降参です! とか心の中で叫びながらイッてしまいました。
女伯爵と女侯爵に全身撫で回されて、フにゃーリアはグニャグニャになって。
念入りに綺麗にされてしまいました・・・。
◆♀◆ 10、くれ vs カエレ ◆♀◆
「で、ものは相談じゃがな、」
「はい。なんです?」
3人で湯船に入ってから・・・
「ファリアが欲しい。くれ」
「帰っていいですよ!」
ツクノーさまが、また一発ブチ込んできました。
『くれ』ってなんだ。ペットじゃねーぞ。
ツクノーさまが、私の左に。ユリが右にいます。
左腕はツクノーさまの腕に抱かれ、乳房をやんわりとこすりつけられてます。
右腕はユリに。さらに右足もユリの足に絡まれて、引っ張られてます。
それに気付いたツクノーさまも足を絡めてきたので、M字開脚みたいなポーズにされてしまった。
恥辱・・・♥
「縁談は決まっておるのか? ファリア。ウワサでは白紙だそうじゃが」
「え・・・ええと、まだ、何も決まってませんね」と私。
ユリの足がわずかに緊張しました。
あ、まずい。怒ったか?
『第三夫人にしたい』って言われたコトあるもんな。
冬至の前。樹ターリアの実験中だったんで、返事せずにそのままにしちゃったけど。
「それはいかん。そなたのような娘が白紙などあり得ぬ。──おいで♥」
「カエレ」ユリの対応が雑になってきた。
「真面目な話じゃが、ファリア」
「はい」
「私の夫になる気はないか?」
「夫・・・」
「その気があるなら、呪文の面でも、協力できるかも知れぬ」
ツクノーさまは、私を見つめてそう言いました。
「侯爵、お待ち下さい。リアは、私の第三夫人候補なのです」
さすがにユリが打ち明けました。
「申し遅れたこと、お詫びします。冗談かと思ったもので」
「本人は『白紙』と言うたぞ?」
ツクノーさまは、私の鎖骨をなぞりました。
ユリが私の右腕をギュッと掴みました。痛いって!
「いやだって、未定じゃん」私はあわてました。「あの話も、あれっきりだし・・・」
「オマエが返事しないからだろ!」
「それはほら、ええとその、お嬢さまが13歳だから」
「だからなんだよ」
「お嬢さまより先に片付いたら、まずいだろ」
「ならとっとと片付けろよ」
「ニャんちゅう言い方するんニャ」
「ターラ・・・私とのコトは、ただの遊びじゃったのか・・・?」ツクノーさまに囁かれました。
「いや、決してそんな・・・」
「ボクが遊びってコトかよ?」
「いやいや、そんなそんな・・・」
左右から美女に抱きつかれ、『私を選ぶんでしょ?』みたいに迫られる。
しかも、みんな裸。
すべすべして、あったかい。
天国か・・・
私が鼻の下伸ばしてヘラヘラしてると、2人は真顔に戻りました。
飽きたのか、怒ったのか、時間がないからか。
交渉モードに戻ってしまいました。
「補償と言っては何ですが、」とユリ。「そのうち、アスカリア北領へいらっしゃいませんか?」
「旧モターズ領か。『眠りの城』のことでか?」
「ええ。森の女神に感謝の儀式をする予定です。殿下と侯爵には、ぜひ、主賓として」
「それは、お受けしたいところじゃな」
「よかった。後は、港開き・・・この港の再開式ですね。『相談役』で、いかがでしょう?」
「ふむふむ」
ツクノーさまの機嫌が少し良くなりました。
「して、イマック領はどうする?」
「第三者のままでいてほしいですね・・・私の敵は、吸血鬼です」
「そうか!」
ツクノーさまは笑顔になりました。
「ところで、侯爵」とユリ。
「ん?」
「ファリアを夫に、とは、本気で?」
「・・・ふざけては、おらぬ」ツクノーさまは目を逸らしました。
「そう」
ユリは私を見ました。
「どうする?」
「・・・。」
私は、ツクノーさまを見ました。
最高に近い候補だと思います。
男と結婚するかツクノーさまか選べ、と言われたら、俺はツクノーさまを選ぶ。
けど。
「・・・ツナちゃん、好きだ。力になりたい。けど、テニスお嬢さまを捨てては行けない」
「・・・。」
彼女が私を見ました。
美しい瞳です。
アイメンカ侯爵(お嬢さまの父上ね)の、暗い目とくらべると・・・
ツナちゃんの目の綺麗さには、ビックリする。
可愛い。綺麗。抱きしめたい。
私は彼女の頬に手をやりました。撫でる。
けど、私も彼女も、それ以上動くことはできませんでした。
「1対1でなければダメですか?」
ユリが言いました。
「なんじゃと?」
「御言葉ですが、26歳は、あなたの身分にしては、遅すぎます」
「まことに御言葉じゃな」
「ええ。ですがここは率直に行きましょう」
ユリは侯爵を見ました。
「『マーミクリーテに子を授かった』──とするなら、認めてもいいですよ」
ぽちゃん。雫が落ちてきました。
「ファリアの子をそのように称し、私は結婚せずに1人で母になる──と?」
「話が早い。その通りです」
「で、生まれた子は、アスカリアとコノマーズ、両方の統治権を要求するワケじゃな?」
「いいえ。それをさせないように、『魔術の神の子』にするんですよ」
「不遜じゃろ。マーミクリーテさまに対して」
「じゃあ適当にでっち上げましょう。『黒ヒョウの神』とか。好きでしょ黒ヒョウ」
「バカにしとるのか?」
「いいじゃないですか、リアはネコみたいなモンだし」
「馬鹿ニャこと言うニャ」
「不義じゃと言うておる。父を偽るなど。子に顔向けができんじゃろうが」
「お堅い人だ!」
ユリは舌打ちしました。
「そんなだから婚期を逃すんですぞ」
「ちょ! ユリ!」私が怒りました。「てめえ」
「友達だと思って言ってんだよ」
「そんニャだから友達いないんだぞオマエ」
「なッ・・・!? ま、マリもダーリンもいるし!!!」
「まあまあ」ツクノーさまが、私たちをなだめました。「確かに暴言じゃが、いまはよい。事実じゃし」
「ツニャちゃん・・・ガマンしすぎですって・・・!」
「ちぇっ」
ユリは腕を頭の後ろで組んで、古びた天井を見上げました。
白いおっぱいがツンと上を向きました。
「リアはやれないですよ。戦略的にも。・・・ホントに好きだし」
「やはり、そういう仲であったか・・・」
ツクノーさまも上を向きました。
「リアが、分裂できたら良かったんですがね」
「まったくじゃ。『変容』の天才なんじゃから、分裂ぐらいせよ」
「ムチャ言うニャ」
「・・・試してみますか」
「・・・そうじゃな」
2人は私の腕を取って、左右に引っ張り始めました。
「ギニャー! やめニャ!?」
いやー、モテるってのも大変だなーwww
◆♀◆ 11、ネムリタ王女、御訪問 ◆♀◆
お風呂から上がって。
『変容』も解けて。
私は、部屋に戻りました。テニスお嬢さまと私のね。
・・・おや?
部屋の前に、見張りが立ってる。
モリーヌはいいとして、王女殿下の親衛隊が3人。
夜遅いんで、黙礼して目だけで訊ねると、
「殿下が、御友人のテニッサメイズお嬢さまを御訪問中です」
訪問って・・・真夜中やぞ?
「侍女のフターリアさまですね。どうぞ」
ということなので、部屋に入ってみますと。
ネムリタロッカ王女が眠っておられました。
お嬢さまと、抱き合って。
同衾・・・!!?
ってかそこ私のベッド・・・!!!
入ってすぐは、従者の部屋なんですわ。
ベッドも質が低くて、木の箱にクッション敷いただけ、みたいな感じ。
寝心地悪いのに・・・なんで2人してこっちで寝てんの?
どうしよう・・・。
なんか、2人とも寒そうに縮こまってるし・・・。
そー・・・っと動いて、隣室から薄い薄い絹の掛け布団を持ってきました。
お二人の上に掛けて。
そーっとドアを開けて。
親衛隊に中を確認してもらって(疑われたらイヤなんで・・・)。
私は、立ち去りました。
モリーヌの部屋の鍵を借りて、そっちで寝ることにした。
で、朝です。
モリーヌに起こされました。なんか複雑な表情してますね。
「・・・なに?」
「テニスお嬢さまが、なぜファリアは戻って来なかったのか? と・・・」
「ええ?」
「説明はしたのですが」
「ンだよまったく・・・」
私は急いでメイド服に着替えようとしました。
「あ、いけません。王女殿下の御前ですから、メイド服は」
「クソ。ドレス着んの、時間かかんのに」
ダークブルーの侍女ドレスに着替えます。
目に隈作ったモリーヌが、あくびを噛み殺して手伝ってくれました。
装備完了!
ただ、ちょっと未練があったので、メイド服のブローチを着けた。
丸い女の子の顔に、エルフ耳がついたブローチね。
「・・・服に合ってませんが」
「いや、なんか着けた方がいい気がして」
広間に向かいます。
『希望の港』領主館、1階ホール。
ブレロッケ式(騎乗して入れる)ホールは、まだ汚れてます。吸血鬼が掃除サボってたみたいなんですよね。隅っこには、持ち込まれた食料が積み上がってるし。
それでも、ともかく主賓の席だけは綺麗になってます。
春の花も飾られてて。昨日マレーナ姉さんがあわてて集めてた。
その主賓の席に。
白い長衣のネムリタ王女。
黒い武官服に純白のチョッキのツクノーさま。
そして、黄色い長衣のテニスお嬢さまが。
ニコニコと御歓談中・・・でしたが、私を見た途端、13歳の2人から笑顔が消えました。
出たよ。女の表情攻撃。
『仲間じゃないのが来た』みたいな敵意を露骨に顔に出すヤツ。
私は『別にそっちには行きませんが?』の表情で反撃しつつ、深々と黙礼。
主賓の右手の、ユリたちが座ってる席に行きました。
ユリ、マレーナ姉さん、ダーリン姉ちゃん。
奴隷のダーリンが席に着いてるのは珍しいです。指揮官だからかな?
ユリが4つ目の席を指してきたので、そこに着席。
・・・あれ? これ第三夫人の席では?
ちらっと、お嬢さまを見ると。
可愛らしいハーフエルフの美少女は、ギロリと私を睨んでました。
いや、ちがうよ!? 進んで座ったんじゃないから。ユリが指したから。
ホラ見て、他に座るトコないでしょ!!?
お嬢さまは私の顔を読んで、ブローチに目を留めて、静かに目を逸らしました。
朝食。
貴人の集まりにしては、短く簡潔な歓談。
解散。
私は・・・
この朝食で、体重が落ちたような気がするぞ・・・。
部屋に戻ります。
モリーヌが心配して付いてこようとしましたが、「寝ろ」と言って返しました。
「今日は休みを頂いてますので大丈夫です・・・!」
「いいから寝ろ」
これ、失敗だったかも知れん。
付いててもらったほうがよかったかも。
というのはですね。
お嬢さまを待ってたらですね。
「ファリアさま! ひどいではありませんか!」
王女殿下が、怒鳴り込んで来たんですわ。
◆♀◆ 12、王女の一言 ◆♀◆
「殿下!?」
「そのままで結構!」
姫に手で制されて、私は、従者用のベッドに座り直しました。
昨日、2人が仲睦まじく寝てたベッドに、尻をつけて。
ネムリタ王女の顔が険しくなった気がします。
「あの、椅子は主の部屋にありまして」
ユリが遊びに来るだろうと思って、椅子は全部主の部屋に集めちゃったんですよ。
それでベッドに座ってたんだが・・・参ったな。
「いりません。長居はしませんので」
「はい」
「ですが、これだけは、言わせて頂きます」
「なんでしょう・・・?」
「あなたは!」
ネムリタ王女は怒鳴りかけて・・・
ひと呼吸置いて、声のトーンを落としました。
ドアの外にいる親衛隊に聞こえない程度に、静かな声になりました。
「・・・あなたは、貞操とか浮気とかについて、どうお考えなのです?」
「浮気」私はギクリとしました。
「そうです」
ネムリタ王女は続けます。
「あなたは、おわかりではないのですか?
テニスがどれほどあなたを大切に思い、慕っているか。
あなたが浮気を楽しんでいるあいだ、彼女が・・・
どんな気持ちで、1人でいるか、考えたことがないのですか?」
王女は、落ち着いた暗色の瞳で、じーっとこちらを見つめました。
そして。
「これでは、テニスの父上と同じではありませんか」
幼くも鋭い言葉で、私を突き刺したのでした。
◆♀◆ 13、ファリア、一敗 ◆♀◆
「──おい。リア!」
「え? なに」
ユリが目の前にいました。
「いつ入ってきたの?」
「おいおい。ノックしただろ。返事はするのに出て来ないから、何かあったのかと・・・」
「そう? ごめん。無意識に返事しちゃったっぽいな」
私は立ち上がりました。
左肩から、エプロンがズリ落ちました。
「・・・あれ? メイド服だ」
「は?」
「いや、服」
私は自分を見下ろしました。
「俺、侍女のドレス着てたよね?」
私はユリに引っ張られて、領主の部屋に連れ込まれました。
マレーナ姉さんが聞いたことのない呪文を唱えて私を検査。
ツクノーさまも走って来て、呪いや穢れを検査。
最後に、太陽の女神の司祭補助さんが診察して、
「これといった異常は見られませぬ」
と結論。
「精神的なものかと。休養をお勧めします。では・・・」
「・・・。」ユリが私のベッドにへたり込みました。
「ごめん。心配かけて」
「いやいい。無事ならいい」
「テニスはどうしたのじゃ?」
「私にできることはない、と仰って・・・」
「ダーリンは私が補助します。あなたは、リアについててあげて」
「すまん。頼む」
なんか周囲で忙しく会話が進んでます。
そりゃそうだよ。『希望の港』、制圧した直後だもん。
王女と侯爵の接待もしなきゃなんないし。
「ごめん。もう大丈夫だから。ユリ、忙しいでしょ」
私は立ち上がろうとしました。
ユリが飛びついてきました。
「大丈夫じゃないだろ! 着替えたの覚えてないとか・・・いいから、寝てろ」
「いやホント大丈夫だって。メイド服どこ? あ、そこか」
脱がされたメイド服は、壁に掛かってました。
「モリーヌ取って。ブローチどこだっけ?」
「リア!」
「騒ぎすぎだってwww」
私はケラケラと笑いました。
「大丈夫。ちゃんと。メイドするから。他に取り柄ないし俺。お嬢さま怒らせたら、」
「リア・・・」
「ユリ、雇ってくれる? ダメかな。じゃあツクノーさまでもいいです! いかがですか?」
「・・・。」
ツクノーさまは、私をじーっと見てから、
「下女はいらぬ。間に合っておる」
マントをひるがえして、私に背を向けました。
「取り乱したそなたは見とうない。またな」
「あはは! 1社落ちたわ、はははは」
「寝ろって」「寝てください」
ユリとモリーヌに押さえ込まれて、私はベッドに戻されました。
「眠くないんだって」
「興奮してるからだよ」ユリはほほえみました。「おまえは寝不足だ。寝ろ」
「興奮してんのかな」
「そうだよ。私も、初陣の後はオマエみたいになったぜ」
「ユリも・・・?」
「そうだよ」
ユリが、手で視界をふさいでくれました。
「おやすみ」
何も見えなくなり、目元が温かくなると、急に眠気が襲ってきました。
◆♀◆ 14、卵酒フターリア風 ◆♀◆
目が覚めると、モリーヌが椅子でうつらうつらしてました。
斜めになってて、落ちそう。
「モリーヌ」
「はっ!? ああいけない。なんでしょう?」
「おまえにも寝て欲しいんだけど、」
「いえ! 一日や二日」
「しょうがねえヤツだな・・・ここは、ユリの部屋だっけ?」
「はい。そうです」
「移動しよっか。伝言お願い」
「かしこまりました」
「あ、待って」
「はい?」
「話したいことがあるから、お時間頂けませんか? って頼んどいて」
モリーヌの部屋に移動。
「伝言ついでに作ってもらいました。卵酒フターリア風」
「お、気が利くね」
『卵酒フターリア風』。ハチミツとビールの卵酒です。
「私の名前がついてしまった」
「いいじゃないですか。料理に名が残るなんて」
「材料まで違うのに・・・美味いんだよな。腹立つわw さすがプロ」
パンもかじった。
私がしっかり食べたので、モリーヌは安心してヘロヘロになりました。
すまんな。お詫びに、彼女の口にパン突っ込んであげました。はい、あ~ん♥
「幸せな気分です♥」
「じゃ、寝よっか」
「どうぞ。私は床で「バカ言え」きゃっ♥」
床に寝ようとする彼女を引きずり込んで、一緒に寝ました。
熟睡したモリーヌが腕を伸ばしてきて、ちょっと寝にくかったけどw
卵酒フターリア風が利いたのか、眠ってから朝までは、グッスリでした。
朝です。
「腹減ったー!」
「またそういう言葉使いを・・・何をお召し上がりになります?」
「水だけ。飯は、話し終わってにする」
私は、侍女のドレスを着ました。
髪はやや高めのポニーテイルに。油を使ってしっかり固めました。
帯には、短剣。
剣というか、守り刀ですが。
約束の部屋に入って、直立して待つ。
私の右斜め後ろに、モリーヌが一緒に立ってくれました。
入ってきたユリが、私を見て眉を上げました。
けど無言。私の正面の席に座る。マレーナ姉さんが隣に。
2人と一緒に・・・たぶん、2人に誘われて、テニスお嬢さまも入室。私の左手側の席に。
「お時間頂き、ありがとうございます。早速始めさせて頂きます」
3人に頭を下げて。
私は、床に正座しました。
「初めに、これまでの不行跡をお詫びします。昨日の失態、主人への不義理、伯爵への暴言を」
「おおげさだな」とユリ。「私は何も咎めてないぞ」
「・・・。」テニスお嬢さまは黙ってます。
「ただ、」
私は続けました。
「すでに関係を持った方々と、別れるつもりはありません。
1人1人、真面目に相手をして、結ばれた相手だから。
みんな素晴らしい女だし、力になりたいと思ってる」
「私と結婚するって意味だな?」とユリ。
「全員と結婚したいと思ってる」
「バカか?」
「うん。でも本心だから。ダメなら、捨ててくれ。文句はない」
「・・・。」ユリはモリーヌを見ました。「・・・少なくとも、2人はOKのようだぜ」
「ありがとう、ユリ。モリーヌ」
私は、いったん呼吸を整えました。
「で、話はここからね。──俺さ、自分は、男だったと思ってるんだ」
◆♀◆ 15、男だったと思ってる ◆♀◆
「男だった?」とユリ。
「フターリアになる前に、男だったことがあると、自分では思ってる」
「『変容』したってコト?」
「いや。男で15年、フターリアになって15年生きた」
「・・・なにか、証拠はありますか?」とマレーナ姉さん。「あるいはそういう呪文が」
「ない。なんにも」
「どうしたもんかな」
ユリは、テニスお嬢さまを見ました。・・・心配してる?
「・・・私は、いま、ここで、聞きたいですわ」
お嬢さまは、ここで初めて口を開きました。
「大丈夫か?」とユリ。
「ええ。どうせこの子、ポロポロこぼしますもの」お嬢さま、肩をすくめる。
「は?」
「男とヤッたコトないのに、男性器に詳しかったりとか、」
お嬢さま。
指折り数え始めました。
「男に戻れたらなぁ、とか、
15歳でまた死ぬんだ、とか。
アイメンカで私と一緒に育ったのに──
私の知らないパン、私の知らない海を知ってるとか、とか」
「あー・・・、はい。そうですね」
そうだよ。
この子、メッチャ記憶力いいんだ。
忘れてたわ。俺は記憶力よくないからね!
「すげー気合入れて『打ち明け話するぞ』って思ってたのに・・・」
「お見通しよ」
「マジで・・・」私は打ちひしがれました。
「私があなた並みに鈍感だと思ってたの?」追い討ちです。
「ひどい・・・」
「なるほどなぁw」とユリ。
「笑うな・・・」
「だってさぁwww」
「では、ファリア。私たちの質問に答えてください」
マレーナ姉さんが決めました。
「質問していないことは、しゃべらないようにしてください」
「?」
「ベラベラしゃべって催眠にかける、って魔術もあるのさ」とユリ。「私には利かんがな!」
「余計なことを言わない」
「いてっ」ユリは足をつねられたようです。
「なるほどなぁw」
1人目、マレーナさん。
名前は? 生年月日は? 経歴は?
・・・尋問みたいな質問が始まりました。
父・母・祖父・祖母の名。故郷の名。領主の名。
このあたりで、世界観に大きな隔たりがあることがわかり、質問が変化。
その世界の魔術について。
魔術がない!?
では自然現象について。大きな災害をもたらすものを、3つ挙げてください。
それぞれ、防ぐ方法を。
防ぐ方法がない!?
それでどうやって繁栄したのです?
わからない!? たぶん科学!? 科学とはなんです?
「マリ。マリw」ユリが笑いました。「研究になってるよ」
「あっ」
マレーナさんは真っ赤になって、質問を終えました。
2人目。お嬢さま。
「帰れる呪文があるって言ったら、どうする?」
「・・・。」
私は唇を舐めました。お嬢さまを見て、ユリを見て、後ろのモリーヌを見ました。
「わかんねぇ・・・!」
「テニス。残酷よ」とマレーナ姉さん。「ファリア。そんな呪文は、ありません」
「ないの?」
「呪文は、理解している事柄で構成しなければなりません」
魔術師マリエレジーナさま、説明です。
「呪文の作者、『発動』者、『変容』者──このうち、最低1人は理解していないと、奇跡は起きない」
「俺・・・日本のことは、知ってるつもりだけど」
「ここから見て、どの方向ですか?」
「・・・わかんねぇ」
「でしょうね。それでは移動は不可能です」
マレーナさんは、ちょっと下を向きました。
「それと、時間を越える呪文がないので・・・」
「そうなんだ」
「人間は『時』を理解できない。私たちは、そう考えてます」
「そっか」
「・・・大丈夫?」とユリ。
「うん」私は、ほほえみました。「むしろ、スッキリしたよ」
「そっか」
3人目はモリーヌ。私の右斜め後ろから。
「・・・心に決めた御方はいらっしゃいましたか?」
「えっと」
「奥様、婚約者」
「いない」
「恋人」
「いた。一応」
「どこまでのお付き合いで?」
「学校で知り合って、家に呼ばれて、もしかして今日は・・・ってトコまで」
「ええと、それはつまり・・・」
「ヤッたのか?」とユリ。
「わからん。記憶がない」
2人がジトーッと見つめてきたので、私は強調しました。「いやマジで」
「初体験の直前で、人生が終わったのですか?」
「人生が終わったかどうかもわからんのよ」
「つまり・・・男としても女としても、私たち・・・テニスお嬢さまが、初体験ですか?」
「うん」
「そうですか! それでえーと、あの、」
「・・・なに?」
「御身は、合わせて30歳・・・ですよね?」
「!!?」
合わせて30歳。
いやそうだけど。
この質問が一番ショックだわ。
「は・・・はい。そ・・・そうです・・・ね」
「そうですか!!!」
「なに喜んでんだよ」
「こらリア。質問されてないことしゃべんなw」ニヤニヤしながらユリ。
モリーヌの番、終わり。
ルンルン♪ みたいなオーラが伝わってくる。しょうがないヤツだな。好きだぜ。
「じゃあ私だ!」とユリ。
「・・・。」
「オマエさぁ、」
「・・・。」
「訊いてんの?」
「はい」
「返事ぐらいしろよ」
「・・・。」私はそっぽ向きました。
「質問しないと答えないんだと思いますわ」とテニスお嬢さま。
「クソ。・・・リア、オマエ、自分が正常だと思ってる?」
「わかんない」
「なんでわかんないんだよ?」
「いや、だって・・・前世があるとか信じ込んでたら、狂人じゃん?」
「信じ込んでんの?」
「・・・うん。否定しちゃうと、彼女も、父ちゃんも母ちゃんも、消えちゃう気がして」
私は、うつむきました。
「自分が信じてるだけなら・・・黙ってれば、害はないだろって。そんな感じ」
「そっか」
ユリもうつむきました。
「けど、今日は、しゃべったんだな」
「うん」
「なんで?」
「なんでって・・・隠し事はやめよっかなって」
「なんで?」
「ええ?」
「説明してみて?」
「えーと・・・」
私は顔を上げました。
「俺さ。ずっと、女なんかイヤだって思ってた。
男に戻りてぇ。前の人生に戻りてぇって。
そう思ってると思ってた。
けどさ。
お嬢さまのおかげで、いろんなモンになれて。
ユリのおかげで、いろんな人に会えて。
あっちの15年より、こっちの15年のほうが・・・いや、くらべたら悪いか。
つまりさ。
俺、もう、フターリアやめたくねぇ。
ここで、オマエたちと生きていきたいんだ。
それで・・・隠してんのが、イヤんなっちゃって」
「そうか。わかったよ」
質問は終わりました。
「で、リア。なにか言いたいことある?」
「うん」
私は。
置いていた守り刀の鞘を持って、正座している両膝の前に、トンと立てました。
目の前の相手(いないけど)にお返しする感じで、床に寝かせます。
「お嬢さま。引き続き、侍女を勤めさせてください。伯爵、俺を、あなたの侍にしてください」
◆♀◆ 16、主従の礼 ◆♀◆
ユリは、お嬢さまを見ました。
黙って手のひらを向けます。
──『オマエに任す』。
「・・・侍女は、わかるけど」とお嬢さま。「侍ってどういうこと?」
「俺、『変容』前提で、常備軍向きじゃないでしょ? それに、文官が足りないって言うし」
ブレロッケの侍は、平時は文官、戦時は武官、って身分です。
文官なみの教養を持ち、魔物が来たら戦って死んでくれる。そんな人材。
「ラクじゃないわよ?」マレーナさんの目がキラーンと光りました。
「はい」
「 ボ ク の 侍だからな?」ユリが釘を刺しました。
「・・・しょうがないわね」マレーナさんは渋々認めました。
「・・・。」
お嬢さまが席を立ちました。
スカートをたたんで、私の前に膝をつきます。
「これは・・・あなたの世界の礼儀なの? 私は、どうすればいいの?」
「よくわかんねぇ。まぜこぜ」
「はぁ?」
正座だけ、日本風。
刀の扱いは、ブレロッケの作法のマネですわ。
「9年も学校に通ってて、刀礼も習ってないの?」
「なかったですね。そういう授業は」
「そ」
お嬢さまは肩をすくめました。
「じゃ、折衷式でやるわね」
お嬢さまは、守り刀を取り上げました。
途中まで、抜く。
刃を見て、納める。
トン、と私の前に。
──『そなたが真剣であることは理解した。だが、この剣は返そう』
私がその鞘に右手を添えて、一緒に持つ。
お嬢さまが手を放し、私が守り刀を帯に戻すのを待つ。
──『なぜなら、私たちは主従だからである』
お嬢さまが立ち上がったので、私も立ち上がりました。
私が深くお辞儀。
お嬢さまがうなずく。
完了。
頭を上げた時の、お嬢さまのカッコ良かったこと。
一生忘れないね。
「・・・いいな。これ、ウチの主従の礼にしようぜ」
「はい。記録しておきます」
ユリとマレーナ姉さんが話してるところに、私は頭を下げました。
「改めて、よろしくお願いします」
「うむ!」
ユリがふんぞり返りました。マレーナさんは羽ペンに手をやりました。
「ま、ひとつだけ苦言するけどさァ? オマエのほうが友達少な──クシュン!」
「あら失礼」と、ユリの鼻に羽ペン突っ込んだ姉さん。
「・・・行こっか」
「行ってらっしゃい」
部屋を出ようとしたら、お嬢さまにバイバイされました。
「え?」
「なによ。全部許されたと思った?」睨まれました。「・・・百年早いのよ♥」
◆♀◆ 17、ネムリタ王女の決断はつづく ◆♀◆
その日の、昼食の席。
テニス・フターリア・モリーヌが並んで着席するのを見て・・・
「よしよし! うまく行ったようじゃな!」
ツクノーは、にっこりした。
しかし。
主賓席のネムリタ王女は、険しい表情。
「ファリアさまには、まだ、言わねばならないことがありますわ」
「・・・ネムリタ。あまり、ファリアを責めるでない」
「先生はずいぶん親身ですのね」
「いや私は、ファリアのことはじゃな、将来有望な女子と思うてじゃな」
「へぇ」
ネムリタ王女は、ツクノーの顔を穴が開くほど見つめた。
それから、パクッと煮魚を口に入れる。
「なんにせよ、ふしだらなのはいけませんわ。そうでしょう?」
「そうじゃな」
「王家を支えて下さる御方でも、醜聞になるようでは、共倒れ」
「・・・うむ」
「身分の高い者ほど、慎みを持たなくては。そうでしょう? 先生」
「う・・・む・・・!」
冷や汗をかくツクノーを横目に、昼食をパクつく王女であった。