TSゆりフタ令嬢侍女メイド! 作:min(みならい)R18
修行回
◆♀◆ 1、お嬢さまの、よい知らせ ◆♀◆
ドロゴンを撃破して、『曲がり川の郷』に戻った、その翌朝のことでした。
「『変容からの帰還』だけど、どうやら習得できたようだわ」
「おお!」
ハーフエルフの侯爵令嬢・テニッサメイズさまが、嬉しい話をしてくれました。
フワッフワ金髪のお嬢さまが、特別に美人に見えました。
ま、もともと可愛いんですがね!
私を見上げてくる灰緑の瞳とか。
主人ぶろうとして、胸を反らしてまっすぐこっち向くとことか。
当のお嬢さまも、得意げな表情です。
エルフ耳も └(・v・)┘ こんな感じ。
「ついに『変容からの帰還』を習得なさいましたか・・・!」
「ドロゴンのおかげね。いい実験になったわ」
「さすがですな」
敵で呪文の実験をする──言うほど簡単なこっちゃありません。
走って敵に近付き、慣れない呪文を大急ぎで唱えて、走って逃げるワケですから。
それを当たり前みたいに言うとは・・・
・・・やっぱこの子、マッドサイエンティストの気があるよね。
「その目やめてくれる?」お嬢さまが ─(-_・)┘ こうなりました。
「はて? どの目でござるかな」
「ファリアの御国言葉で私をバカにしてそうな目」
「そんなこと! 個性的なご主人さま、可愛いなあ、などと考えてはおりましたが」
「たまにメイド服着せると調子に乗るんだから」
お嬢さまは、私のメイド服に手を伸ばしてきました。
むぎゅ。おっぱい掴んできました。
「・・・真面目なカオして何しとんじゃ」
「今日も硬いわね。このブラジャー」
「揉んでも柔らかくはなりませんぜ?」
むっぎゅむっぎゅ。白い手が、ダークブルーのメイド服にめり込みます。
メイド服の下は絹のシャツ。
シャツの下が、鯨骨入りのブラジャーです。一流の職人による、本物のオーダーメイド下着。
ホントに着け心地がいいんですよねぇ。初めての時は複雑だったけど。
職人には敬意しかない。
なので乱暴に揉まれるとイラッときます。
お嬢さまはそういうライン見極めるのはうまいんだよな・・・
「侯爵家にお仕えして良かったと思う点のひとつですね。このブラは」
「ひとつめがそれ?」 ─(-_・)┘
「ひとつめは、あなたと出会えたことですよ。ニーズ」
「ふぅ~ん」 └(・v・)┘
よし、機嫌直った。話変えるか。
「いやぁ、やっぱっ、メイドっ服はっ、落ち着きっ、ますねっ」
ユッサユッサと乳を揉まれてるので、声も途切れがちになります。
「やっ、ってやろう、って気にっ、なりまっすわっ」
「いやらしいわね」
「なんっでじゃっ」
はい。フターリアです。今日はメイド服です!
久しぶりに制服を着た気分。自分が何者かを思い出した気分です。
「はぁ」お嬢さまは揉むのをやめて、手をヒラヒラしました。「硬すぎよ」
「揉まれるための下着じゃないんですよ」
「そうね。でも、運動もしないと」
「パンでもこねてろ」
「たわけた侍女ね。主人にパンをこねろとは」お嬢さまは机に戻りました。「仕事するわ」
「お茶、淹れておきますか?」
「冷めるからいいわ。ナータが戻ったらお願い」
「かしこまりました。では、私はユリさまのところに」
「行ってらっしゃい五ツ股メイド」
「心外な」
五ツ股て。
テニスお嬢さまだろ? ユリだろ? モリーヌに、ツナちゃん。
・・・4人だよね?
◆♀◆ 2、ユリの、お誘い ◆♀◆
「フターリアです。お館さま、御在室でしょうか」
「ああ。入っていいよ」
ノックして入室。
左手には銀盆。お茶セットが載ってます。右手でドアを開け、閉めます。
閉める私のお尻をニヤニヤして眺める視線を感じました。
伯爵──赤毛の美人勇者・ユリの視線です。
「だらしねぇ顔すんなや」私は座ってる伯爵を見下ろしました。
「おまえこそ、その言葉づかいやめろ」
「一言、諫言したまでですわ」
「ネコかぶんな」
「ダメ出し多過ぎでござる」
銀盆をユリの茶卓に置きました。
暖炉にかかってる黒い鍋を、鉤のついた鉄棒で取ります。鍋掴みで掴んで、ポットにお湯を入れる。水瓶から水を補充した鍋は暖炉に戻します。
ポットでしばらく休ませたお湯で、お茶を淹れる・・・と。
茶卓がちょっと低いので、腰曲げて淹れる感じになります。
ユリが音もなく忍び寄ってきて、スカートのお尻を撫で始めました。
「・・・なんで尻から来んの?」
「リアの尻エロいんだもん」耳元に囁かれます。「おっぱいより控え目で、可愛くてさぁ・・・」
「やめっw くすぐったwww」
「感じてんだろ・・・?」
このセクハラ女め。感じてるよクソ。
「リアは私と相性いいもんね」
「か・・・カラダはな?」
「カラダだけぇ?」
ユリはバックからフターリアのお尻に密着して、両手を前に回してきました。
左右の手をそれぞれになめらかに動かして、フターリアの、15歳の女体を、下から上へと撫で上げます。
なんというかこう・・・ありがちな映画のエロシーンって感じ。
女体のラインを撮るための見せ愛撫。『このオンナはこんなカラダしてます』っていう。
フターリアの口の中に、甘酸っぱい刺激がせり上がってきました。
「カラダだけ?」
「す・・・好きだよ。ユリ。可愛い勇者さま」
「可愛いとか♥ 可愛いのはオマエだよ」
ユリの愛撫が粘っこくなってきました。
手に力が入ります。胴を抱き締めてフターリアを喘がせ、くの字に折れた女体の中心に手を突っ込み、フターリアの女体を支配下にしました。
「く・・・!」
「リアちゃん? 主人への返事は?」
「うぅ・・・♥ あ、ありがとう・・・ございます・・・♥」
「よしよしw」
ユリの手はフターリアのお腹を撫でます。
俺、男とヤルのは絶対にイヤだし、レズセックスで女役するのもイヤだけど・・・
ユリが男だったら、ヤバかったな・・・
とか考えながら、茶卓にグニャッと伸びたところで。
「このへんにしとくか。お茶の時間だしな!」ユリの野郎、サッと離れやがった。
「く、くそ・・・!」フターリアはくの字に伏せたまま、茶卓で拳を震わせました。
「ヒヒヒw」
ユリはニヤニヤしながらお茶を呑みます。
「今後の予定だけど」
「は・・・ハイ・・・」
「曲がり川の村の応急処置が済んだら、モターズ城に上がることにした」
「はい・・・」
俺は首のリボンをゆるめて、シャツの第一ボタンを外しました。
ハンカチで汗を拭います。
ユリは満足そうに見ています。性悪だなホント。覚えとけよ。絶対やり返しt──
「リア」
「はいっ!?」
「キスされたい?」
「・・・。」
指を軽~く握られて、引っ張られました。
それだけで、俺はユリの前に膝立ちになってました。
座ってるユリの前に、ペットの犬みたいに膝で立ってんの。
頬を抱かれて、撫でられて・・・笑ってるユリの唇が迫ってきて・・・
お茶の香りのする舌で、口の中を愛でられました。
「・・・♥」
「うむ。やっぱりメイドのリアはイジメ甲斐があるな!」
唇を拭う俺を、ユリは本当に満足したという顔で見下ろしました。
メッチャ見下ろしてきました。
床にぺたんこ座りになってしまった俺を・・・
屈辱すぎる・・・!
けどフターリアの身体が言うことをきかねぇ・・・
これユリに何されても抵抗できねぇぞ・・・
「リア」
「はい・・・」
「今日、午後、ちょっと時間があるんだ」
「・・・♥」
「少し鍛えてやるから、マリ・テニスと調整して、フタゴンになって庭に来い」
「チッ。・・・かしこまりました」
セックスの誘いだと思ったのに。修行回かよ・・・
◆♀◆ 3、モリーヌの、アドバイス ◆♀◆
「ということで、ユリに鍛えてもらうことになったわ」
「それっはっ、よい機会っ、でっすねっ・・・♥」
フターリアです。
モリーヌを見つけたので、背後から抱きついて、おっぱい揉んでます。
両腕を背後から回して、下から揉む。名づけて『おっぱい締め』です。相手の両手が自由なので、いくらでも反撃可能というのがポイントです。
「それっでっ、なんでっ、私のっ、胸をっ?」
モリーヌはセクハラする私の手を撫でてきました。
「お嬢さまとユリにセクハラされてさぁ」
「それはひどい・・・」
「いいトコでお預け喰らったんで、八つ当たりしてる」
「ひどい・・・♥」
モリーヌが軽く息を切らせ始めたところで、私は手をゆるめて、振り向いた彼女とキスをしました。
この子はバックから抱くと文句言うんですが、キスするとグンニャリと身体を預けてきます。
モリーヌ。私の侍女。27歳独身。
男に戻れたら、真っ先に孕ませようと思ってます。
まだ本人には言ってないけど。ときどき探るような目はしてくる。
いままでは『もう少し待て』って目で返してたけど、今日は『楽しみにしてろ』って返しました。
そしたら、モリーヌが向き直ってキスを求めてきました。
「うぅン・・・♥」
「リーヌ♥」
ねっとりとキスを楽しんで、少しフターリアのボディも落ち着きました。
まだ下腹部が熱くて痛いような感じはあるが・・・
「なんかさ、アドバイスとかある? 稽古するに当たって」
「そうですね・・・先生の指示通りに身体を動かすこと、でしょうか」
「素直になれって?」
「心の中はどうでもいいです」
「ええんかい」
「身体の話です。先生の言葉を、素直に動きにしてみせる、ということです」
「ふむ?」
「技の伝授とは、師匠の動きを、言葉とモノマネによって、弟子の身体に写すことです」
「うん」
「簡単な動きすらマネできないようでは、どうせ何も習得できない──と、教える側は考えるものです」
モリーヌは私にキスして、まばたきしました。
私はモリーヌにキスして、まばたきしました。「なるほど」
「ふふ♥」
◆♀◆ 4、マレーナ姉さん、恋敵に一言 ◆♀◆
司厨長の部屋にお邪魔すると、彼女は書類とにらめっこしてました。
司厨長にして『渾火の魔術師』マリエレジーナさん。
ダークグレイの波打つ髪が大人っぽい、『秘書』って感じの美人。
まあ、司厨長は秘書じゃなくて、農林水産財務厚生労働大臣、みたいな役職だけど。
アスカリア伯爵家のカナメですな。
姉さんの思考を邪魔しないよう、お茶など淹れてタイミングを待ちます。
「・・・ありがと」姉さんが休憩に入りました。
「難題ですか?」
「稗の納税を調べてたんだけどね」
「ヒエですか」
この『曲がり川の郷』の主要作物ですな。
豊かに実ってるのに、上がってくる報告は少ないらしい。
「やっぱり、過少申告ですか?」
「うーん・・・記録自体は、地元の役人の仕事なのよね・・・」
「全員にウソを書かせるのは難しいですよね」
「そうなのよ・・・」
マレーナ姉さんは首を振ってから、「で、用はなあに?」
「はい。午後、ユリさまと訓練することになりまして。フタゴンで、という御命令で」
「ああ、呪文の調整ね・・・」
そうです。
私がフタゴンになるには、お嬢さまに呪文かけてもらう必要がありますんでね。
『フタゴン』は、大型の呪文です。ゴソッとMp(?)が減るらしい。
そうすっと、同じ大型呪文の『樹ターリア』なんかの回数が減っちゃうワケです。
樹ターリアは、植物の促成栽培ができますんで・・・
「稗を育ててもらおうかと思ってたんだけど」
「再調整します?」
「・・・いえ。いいわ。疑いが晴れてからにしましょう」
マレーナさんは首を振りました。で、私を見て、
「とは言え、呪文を譲るんだから、しっかり成果は掴んでちょうだいね」
「かしこまってござる!」
応援の一言いただきました。
ちょっと恩着せてきてるけどw
ま、私は恋敵だし。この人ツンデレですし。
さて。
私が部屋を退出して、お嬢さまのところへ戻ろうとしたところで・・・
「おっと! 失礼いたしました。ダンゼイズのお姫さま」
「こちらこそ。ユリヲワーナ閣下」
・・・廊下の角で、赤毛のおばちゃんとぶつかりそうになりました。
女代官・ユリヲワーナさんですな。
◆♀◆ 5、ユリヲワーナ代官と、ナータちゃん ◆♀◆
ユリヲワーナ代官。
赤毛のおばさん文官です。
ユリと出身地が同じらしい。アスカリア伯爵領──当時は『ビビワメッツ伯爵領』──ですね。
我が前世である日本人男子が『ユリをワナ・・・w』とか反応してますが。
これはもちろん、口にも態度にも出せません。
礼儀正しく頭を下げて、応対します。
「伯爵に御用でしょうか?」
「・・・ああ、お嬢さまは、伯爵閣下のお世話もなさっておられるのでしたな」
ユリヲワーナ代官は、何か言いたげな表情で私を眺めました。
『言わなくてもわかるわよねぇ・・・?』みたいなツラで。
伯爵令嬢が下女のコスプレをするなんて、ってコトでしょうな。
ハハハ。いまさらなんですよ!
「ええ、光栄なことに」
私はニッコリしてやりました。
フターリアのニッコリは、攻撃力あります。
クッキリ黒髪クール美少女メイドの、不意討ちニッコリ。
男はもちろん、女にもダメージが入ります。
ユリヲワーナ代官には・・・
目元をピクッと痙攣させる効果がありました。
・・・嫉妬ダメージが入ったようです。
「お取り次ぎいたしましょうか?」
「伯爵令嬢を使いにするなど! 御用向きがあればと、お伺いしたまででして」
「いまの私は、ユリさまの侍ですから、どうぞ遠慮なくお申し付け下さいませ」
「いえいえ! 一地方の代官に過ぎぬ私なぞ、下女を使いにするのも勿体ないこと」
などと笑顔でやり合っておりますと。
「おはようございます、御二方。御機嫌よう」
メイドのコスプレしたナータちゃんが、姿を現しました。
・・・なんでメイド服着とんじゃ殿下!!!
「おや、こちらは・・・」と、ユリヲワーナ代官。
「私の・・・・・・・・・侍女ですわ」と、私。
「お初にお目にかかります。フターリアさまにお仕えする、ナータでございます!」
ナータちゃん。
黒髪も美しい、13歳の美少女ですが・・・
その正体は、誰あろう。
我らがブレロッケ王国の姫、ネムリタロッカ王女殿下!
お忍び旅行とか言い張って、フターリアに『ご主人さま』の役をさせる。
気配りできるようでいて、要所で爆弾投げてくるナータちゃん殿下です。
今日の爆弾は、メイド服!
私のより地味! 色が暗くて、シンプル!
生地に、南方の麻独特の光沢がありますね。私のと同じ、コノマーズの輸入品か。
ツクノー・コノマーズ侯爵に調達してもらったのかな?
ツナちゃん・・・せめて、私のより豪華な仕立てにしてくれ・・・
・・・いや待てよ。もしかしたら、これもツナちゃんのメッセージかも知れん。
『私の居らぬところで、メイド服でイチャイチャできると思うなよ』という・・・
「これはこれは、お似合いの主従でいらっしゃる」
赤毛の代官は、ホッホッホと笑いました。
失言してくれないかな。そしたら面白いのに。と、ちょっと期待したんですが。
ユリヲワーナ代官。なかなかどうして、そういうミスをする女ではなかった。
「まったく、お美しい。花のような主従だこと」
「ありがとうございます! 御用でしたら、お伺いいたしましょうか!」
ナータちゃんが爆弾投げつけました。
『じゃあお願い』などと言っていたら、ドカーン! でしたが・・・
「お気遣いはありがたいが、御主人にも申し上げた通り、御用向きに伺ったまででしてな」
「そう仰るのなら・・・」私は、会話を締めることにしました。「伯爵は、突き当たりの部屋ですわ」
「ありがとうございます。では、失礼」
代官は奥へ。
私たちは、テニスお嬢さまの部屋に向かいます。
チラッチラッ。ナータちゃんがこちらを見上げてきます。
「・・・部屋でね?」
「・・・はい!」
部屋に帰還。
「戻りました。ナータも一緒です」
「お帰り。おはようございます、ナータ」
「おはようございます、テニスさま!」
ナータちゃんは楽しそうです。
私は、廊下に誰もいない(王女の護衛はいる)ことを確認してから扉を閉め、彼女を見ました。
「ビックリしましたよ。メイドになるなんて」
「どうですか!?」
「似合ってる・・・って言っちゃいかんのでしょうが、似合ってますわ。正直、可愛いです!」
「うふふ♥」
ナータちゃんは嬉しそうです。
テニスお嬢さまは -(´~`)ヽ こんななってます。
なるほど。
『五ツ股』って、ナータちゃん入れてたのね・・・。
◆♀◆ 6、修行回 ◆♀◆
午前中は、ナータちゃんと一緒に事務仕事をしました。
テニスお嬢さまがこちらに投げてくる書類の整理、写し書き。
お嬢さまが書いた手紙の校正、などなど。
引っ詰めた黒髪をプルプルさせながら仕事するメイド殿下。
正直・・・可愛かったです。
目が合うとニコッとしてくるのが、ヤバい。フターリアに魅了ダメージ!
しかもね。有能なんですわ。この子。私より目も手も速いのよ。
お昼を食べて、さらに半刻ほど事務をして。
私たちは、『曲がり川の郷』の郊外の、お花畑に向かいました。
また花畑ですわ。
アスカリア歩兵(私たちに同行してきた連中ね)が、外周をランニングしてます。モリーヌが青鹿毛の軍馬に乗って監視してます。警備を兼ねてのランニングでしょうな。
王女さまの護衛も、四方に立ってます。
花畑の中央には、ユリと私、見学のマレーナ姉さん・テニスお嬢さま・ナータちゃんメイド殿下。
我らがベロ~ン君(黄色い去勢馬)、ユリの鹿毛も一緒です。
──全員やないか!
「観客多いですね・・・」
「変に分けるより、警備しやすいからな」ユリが肩をすくめました。
「なるほど」
真剣な理由でしたわ。
そういうことなら、私も真剣に稽古・・・
「お弁当作ってきました!」
「ありがとう、ナータ姫」
「『姫』なんていりませんわ、『渾火』さま! 今日の私は、メイドでございます」
「まあ・・・」
「ナータのサンドイッチはおいしいですよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて。ん・・・む! ホント、美味しいわね。香草が3種類?」
「さすが園芸長。その通りです! テニスもどうぞ」
「頂きまーす」
・・・メッチャくつろいどるがな!
「じゃ、始めるぞ」
「がおーぅ」
フタゴンです。すでにストレッチはしといたので、いつでも動ける状態です。
「とりあえず走ってみろ。あいつらを2回追い越せ」
「は、はい!」
いきなりランニングを命じられました。
尻尾ニョロニョロさせて走っていくと、ビビった歩兵がバラけた。
「列を乱すな!」モリーヌが怒鳴る。「ペース上げろ!」
「うへっ」歩兵どもがうんざりした顔して速度を上げました。
「おいやめろ。おい」私は呼びかけました。
「なんスか!」「訓練中にダベったら怒られるんスよ!」
「そんなペース上げんなって。2回追い越せって言われてんだよ」
「イヤッス」「追い抜かれたら、俺らが怒られるッス」
「あっ、クソ、逃げんな!」
逃げるアスカリア歩兵。
尻尾ニョロニョロ追うフタゴン。
追っかけっこです!
初めはドッタバッタと兵士を追っていた私ですが・・・
途中で、気が付きました。
翼使うなとは、言われてねぇよな? って。
バサッ!
翼、広げてみた。
抵抗で速度が落ちた。けど・・・
前屈みになって角度を調整。わずかに仰角をつけて風を受ければ・・・
フッ・・・と、身体が浮く感覚。
スピードが、上がった!
ドッタンバッタン走ってたのが、舟を漕ぐような浮き走りに変わりました。
漕げば漕ぐほど、速度が上がる・・・って感覚です。
気持ちいい!
「ワハハハハ! 遅い遅ーい!」
「うおっ、速ェ」「喰われるぅ~」
グワア、グワア! ワタリガラスが騒いでます。フタゴンにビックリしたか?
「がお~!」
「熱っち熱ちっ」「火はやめろってフタゴンちゃん!」
火吐いたりしながら楽しく走って、簡単に2周先行、達成です!
「ハァハァ、先生、戻りました!」
「よし。じゃあ『駿馬』やるからもう一回やってみろ」
「・・・はい!」
「我が侍、ドラゴンの姫、フタゴンは変容する。駿馬のごとく、カッ飛ばせ!」
「うおおおお!」
内心『まだ走んの?』と思った、私でしたが。
これは・・・
爽快!
ヤバい。メッチャ速い。
バイクぐらいスピード出てない?
自転車より全然速い。身体思いっきり倒さないと曲がり切れねぇ!
しかもね、ブレないんだよ。視界がさぁ。
人間が全速力で走ったら、ガックンガックンするでしょ? 視界。
アレがないのよ。
翼で半滑空してるから。
すげぇ気持ちいい・・・!
2回追い越す程度、あっちゅう間ですよ。もっと走りたいぐらいだ。
けど、稽古だからね。
素直に切り上げて、戻ります。
「ハァハァハァ、戻りました、先生!」
「よし。では組み手!」
「はっ・・・・・・い゛ッ!?」
ユリが迫ってきたかと思うと・・・
尻尾が、地面に激突しました。
「わー!」「キャー」「ユリー!」
お嬢さまたちが盛り上がってます。
私は、地面に仰向けです。ユリに手を握られてる。
「こうなったら、コレでトドメだぞ」ユリの手が、私の首に添えられました。
「投げられた・・・のか?」
「そうだよ」
「全然わかんなかった」
「投げ飛ばされると、一瞬記憶が飛ぶからな」
脳震盪か・・・
「確かに、これは致命的ですね」
「うむ。いきなり防御はできないだろうが、やられたパターンは覚えとけ」
「こういう風に接近されたらヤバい、みたいな?」
「そう。立て」
「はい」
「どうやって逃げる?」
「飛ぶしか・・・」
「やってみな」
立ち上がって、仕切り直し。
スッ・・・と迫ってくるユリから逃げようと翼を広げて、打ち下ろs──
足払い喰らった。すこーんと仰向けに。
空に向けて翼を打った形になってしまい、背中から地面に激突です。「ぐえっ」
「ハイ死んだ」ユリのチョップがお腹に添えられました。
立ち上がって。
飛びのくしかないか? 迫るユリから大きく後ろへジャンプして逃げ──
また足払い。すこーんと仰向けに(ry
「速っ・・・!?」
「私も『駿馬』かけたからな」
立ち上がって。
右に飛びのく。ユリに先回りされ、体落とし・・・いや払い腰? で、グルン、どてーん!
左に飛びのく。ユリのチョップがサッと眼前を横切りました。『斬った』ってことか・・・。
立ち上がって。
「火吐いていい?」
「いいけど?」
「・・・ゴメン、やめとく。『妨害』されたら無意味だよね」
「かな?」
「どうすりゃいいんだコレ・・・」
モリーヌからは、先生に言われた動きをちゃんとやれって言われたけど。
全然そんな訓練じゃなかった。何もマネできねぇ。
ユリが迫ってきました。
うわー、また投げられる!
──って瞬間、ドロゴン戦の前に習った教えが、頭に浮かびました。
『自分勝手に動け』。
「んがぁ!」私は火を吐きました。ユリは『妨害』、無傷。
ぶうん! 尻尾をブン回しました。ユリはハードル飛び越す感じでクリア。
ぶわっさ。翼を打ち下ろし、地面を蹴り飛ばしました。わざと爪で土をすくって、後方にバラまきます。
空中へ。
ばっさばさばさ! 羽ばたいて、高度を稼ぎました。
後ろを振り向きます。
ユリの笑顔が、目の前にありました。
「ひぃッ!?」
「いや、いい。よくやった。降りといで」
ユリはそう言って、グルグル渦巻く風と共に地面に降りました。
びっくりした・・・
『つるぎの竜巻』か。そういや、前もアレで追いかけられたわ。
「先生からは逃げれませんわ」私は降参しました。
「いや、良かったよ」
ユリは笑ってます。
「ブレスで目潰し、尻尾振りながら背中向けて、土蹴り上げて空中へ。うん。なかなかいい」
「通じなかったじゃん」
「この程度で通じてたら、私はとっくに死んでるよw」
「・・・。」
経験の差がありすぎる・・・。
「先生。前に、『飛ぶな』って言われたけど」
「フにゃーリアはね。フタゴンはいいさ。空中でも制御できるんだし」
「そっか」
「けど、今日は私が付き合ってるんだ。斬りと組みの間合いを、集中的にやろう」
「はい!」
そっからは、もう、ボッコボコにされました。
木の枝持ったユリに上下左右からビシバシ叩かれ・・・
突然懐に入られたかと思うと、投げ飛ばされビシッと叩かれ・・・
疲労で立てなくなるまで、負けパターンを叩き込まれました。
負けグセがつくだけじゃねぇの? コレ。
と、中盤までは思ってたのですが。
意外と・・・慣れるというか。
『あコレ投げられるわ』ってのが、わかるようになってきて。
最後に、たった一回だけ・・・
「ンガァ!!!」
「っと!?」
投げられる瞬間、火を吐いて、空中側転して、自分の足で着地することができました。
投げ抜け成功です!
火を吐いたことで、ユリが反射的に『妨害』姿勢になった。手を放したんだよね。
放してくれりゃ、空中で姿勢制御できる。着地は難しくなかったね!
「ファリアー!」「キャー」「フタゴンおめでとうー!」
お嬢さまたちが盛り上がってます。
「やるじゃねぇか」「あの投げ抜けるとか」「俺、何が起きたかわかんなかった」
アスカリア歩兵も拍手してくれました。
「・・・。」ユリは自分の手を見てます。
「先生! いまのどうッスか!?」
「・・・。」ユリは私を睨んできました。
あ。やべ。
コイツ、自分が負けそうになるとキレるんだった。
どうしよ。と、俺が悩んでると。
「クックック・・・w」ユリは低く笑いました。「よく・・・やった・・・なぁ・・・!」
「おお!」
フタゴン感激です。
両手を広げて天を仰ぎました。
「天よ照覧あれ。不肖フターリア、勇者に近付くこの一歩を!」
・・・で、そこをユリに掴まれて投げ飛ばされました。「ぐえっ」
「よし。終わり」
「ファリアさま。タオルをお持ちしましたわ!」
ナータちゃん殿下が、冷たいタオルで、地面に伸びた私を起こしてくれました。
「ありがと・・・」
「大丈夫ですか?」
「うん・・・くっそー、ユリのヤツ、大人げねぇよなぁ・・・」
「勇者さまを本気にさせるファリアさまがすごいのですわ」
「いやぁ、追いつける気ィしねぇわ、アイツには・・・」
「・・・。」
ナータちゃんは、お母さんみたいな笑顔で私を見ました。
それから、ちょっとびっくりして、
「ファリアさま、鼻血が」
「ん?」
ペロリ。私は舌を出して鼻を舐めました。
「ホントだ」
「まあ、はしたない」
「ははは」
その時でした。
グワラ、グワラと鳴くワタリガラスの声が、突如、歌のように聞こえたのは。
◆♀◆ 7、ワタリガラスの言うことにゃ ◆♀◆
♪DON'T DOWN GUARDS, DRAGON GIRL!
GOB OF LIFELESS MUD GET CLOSE.
BEGONE! THE LOVELESS MAD GAGGLERS!
DEFEAT! ERASE! ANNIHILATE THEM!
OR YOUR LOVE: YURI MAY CROAK.
SO I GROWL, GROWL... ※訳は17行下で。ナータがしてくれます
・・・グワラ、グワラ! ワタリガラスの声は、ただの鳴き声に戻りました。
「またこれか」
「どうなさいました?」
「いや、フタゴンの血舐めると、鳥が歌ってるみたいに聞こえるんだよね」
「本当ですか?」
「あっ、こら」
ナータちゃんが指で私の鼻血取って、舐めました。
「王女がヘンなモン口にするんじゃないよ・・・」
「不気味な歌ですわ」
「聞き取れたの?」
「ええと、」
「ガードを下げるな、ドラゴンガール!
来るぞ、生命を持たぬ泥くれが。
いね! 愛情知らぬガチョウども。
倒せ! 消し去れ! 鏖殺せよ!
さもなくば、おまえの愛するユリは死のう。
さらば私は、がなる、がなる・・・」
「よくわかったね!」よっこらしょ。私は立ち上がりました。「相談しなきゃ」
「信じるのですか?」
「え?」
「私は、父に教わりました。この世には、耳を貸してはならぬ言葉があると」
ナータちゃんは、確信をもってそう言いました。
「死の予言、不死の秘術、隠された秘宝──そうした言葉は、人を揺さぶる常套句であると」
「ほう?」
「いまの歌は、『死の予言』です。飛びついてはなりませんわ」
「ナータちゃん・・・」
私は彼女に手を差し出しました。
ウロコだらけの手を、ナータちゃんは恐る恐る掴みました。私の隣に立ちます。
「御父君もあなたも、本当に賢い御方ですね」
「ありがとう」
「たださ、ツクノーさまの時にも、似たようなことがあってね?」
「まあ」
「鳥の声が聞こえたよってだけは、言っとこかなって」
「そうですか。では私もご一緒いたしますわ」
「ありがと」
フタゴンとナータちゃん殿下は、肩を並べて、ユリのところへ向かうのでした。