※この作品はR-18です。

TSゆりフタ令嬢侍女メイド!   作:min(みならい)R18

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10章 汚泥の軍団 カエル人の怒りを知れ!
修行回


◆♀◆ 1、お嬢さまの、よい知らせ ◆♀◆

 

 ドロゴンを撃破して、『曲がり川の郷』に戻った、その翌朝のことでした。

 

「『変容からの帰還』だけど、どうやら習得できたようだわ」

「おお!」

 

 ハーフエルフの侯爵令嬢・テニッサメイズさまが、嬉しい話をしてくれました。

 フワッフワ金髪のお嬢さまが、特別に美人に見えました。

 ま、もともと可愛いんですがね!

 私を見上げてくる灰緑の瞳とか。

 主人ぶろうとして、胸を反らしてまっすぐこっち向くとことか。

 

 当のお嬢さまも、得意げな表情です。

 エルフ耳も └(・v・)┘ こんな感じ。

 

「ついに『変容からの帰還』を習得なさいましたか・・・!」

「ドロゴンのおかげね。いい実験になったわ」

「さすがですな」

 

 敵で呪文の実験をする──言うほど簡単なこっちゃありません。

 走って敵に近付き、慣れない呪文を大急ぎで唱えて、走って逃げるワケですから。

 それを当たり前みたいに言うとは・・・

 

 ・・・やっぱこの子、マッドサイエンティストの気があるよね。

 

「その目やめてくれる?」お嬢さまが ─(-_・)┘ こうなりました。

「はて? どの目でござるかな」

「ファリアの御国言葉で私をバカにしてそうな目」

「そんなこと! 個性的なご主人さま、可愛いなあ、などと考えてはおりましたが」

「たまにメイド服着せると調子に乗るんだから」

 お嬢さまは、私のメイド服に手を伸ばしてきました。

 

 むぎゅ。おっぱい掴んできました。

 

「・・・真面目なカオして何しとんじゃ」

「今日も硬いわね。このブラジャー」

「揉んでも柔らかくはなりませんぜ?」

 

 むっぎゅむっぎゅ。白い手が、ダークブルーのメイド服にめり込みます。

 メイド服の下は絹のシャツ。

 シャツの下が、鯨骨入りのブラジャーです。一流の職人による、本物のオーダーメイド下着。

 ホントに着け心地がいいんですよねぇ。初めての時は複雑だったけど。

 職人には敬意しかない。

 なので乱暴に揉まれるとイラッときます。

 お嬢さまはそういうライン見極めるのはうまいんだよな・・・

 

「侯爵家にお仕えして良かったと思う点のひとつですね。このブラは」

「ひとつめがそれ?」 ─(-_・)┘

「ひとつめは、あなたと出会えたことですよ。ニーズ」

「ふぅ~ん」 └(・v・)┘

 

 よし、機嫌直った。話変えるか。

 

「いやぁ、やっぱっ、メイドっ服はっ、落ち着きっ、ますねっ」

 ユッサユッサと乳を揉まれてるので、声も途切れがちになります。

「やっ、ってやろう、って気にっ、なりまっすわっ」

「いやらしいわね」

「なんっでじゃっ」

 

 はい。フターリアです。今日はメイド服です!

 久しぶりに制服を着た気分。自分が何者かを思い出した気分です。

 

「はぁ」お嬢さまは揉むのをやめて、手をヒラヒラしました。「硬すぎよ」

「揉まれるための下着じゃないんですよ」

「そうね。でも、運動もしないと」

「パンでもこねてろ」

「たわけた侍女ね。主人にパンをこねろとは」お嬢さまは机に戻りました。「仕事するわ」

「お茶、淹れておきますか?」

「冷めるからいいわ。ナータが戻ったらお願い」

「かしこまりました。では、私はユリさまのところに」

「行ってらっしゃい五ツ股メイド」

「心外な」

 

 五ツ股て。

 テニスお嬢さまだろ? ユリだろ? モリーヌに、ツナちゃん。

 ・・・4人だよね?

 

◆♀◆ 2、ユリの、お誘い ◆♀◆

 

「フターリアです。お館さま、御在室でしょうか」

「ああ。入っていいよ」

 

 ノックして入室。

 左手には銀盆。お茶セットが載ってます。右手でドアを開け、閉めます。

 閉める私のお尻をニヤニヤして眺める視線を感じました。

 伯爵──赤毛の美人勇者・ユリの視線です。

 

「だらしねぇ顔すんなや」私は座ってる伯爵を見下ろしました。

「おまえこそ、その言葉づかいやめろ」

「一言、諫言したまでですわ」

「ネコかぶんな」

「ダメ出し多過ぎでござる」

 銀盆をユリの茶卓に置きました。

 暖炉にかかってる黒い鍋を、鉤のついた鉄棒で取ります。鍋掴みで掴んで、ポットにお湯を入れる。水瓶から水を補充した鍋は暖炉に戻します。

 ポットでしばらく休ませたお湯で、お茶を淹れる・・・と。

 茶卓がちょっと低いので、腰曲げて淹れる感じになります。

 ユリが音もなく忍び寄ってきて、スカートのお尻を撫で始めました。

「・・・なんで尻から来んの?」

「リアの尻エロいんだもん」耳元に囁かれます。「おっぱいより控え目で、可愛くてさぁ・・・」

「やめっw くすぐったwww」

「感じてんだろ・・・?」

 

 このセクハラ女め。感じてるよクソ。

 

「リアは私と相性いいもんね」

「か・・・カラダはな?」

「カラダだけぇ?」

 ユリはバックからフターリアのお尻に密着して、両手を前に回してきました。

 左右の手をそれぞれになめらかに動かして、フターリアの、15歳の女体を、下から上へと撫で上げます。

 なんというかこう・・・ありがちな映画のエロシーンって感じ。

 女体のラインを撮るための見せ愛撫。『このオンナはこんなカラダしてます』っていう。

 フターリアの口の中に、甘酸っぱい刺激がせり上がってきました。

「カラダだけ?」

「す・・・好きだよ。ユリ。可愛い勇者さま」

「可愛いとか♥ 可愛いのはオマエだよ」

 ユリの愛撫が粘っこくなってきました。

 手に力が入ります。胴を抱き締めてフターリアを喘がせ、くの字に折れた女体の中心に手を突っ込み、フターリアの女体を支配下にしました。

「く・・・!」

「リアちゃん? 主人への返事は?」

「うぅ・・・♥ あ、ありがとう・・・ございます・・・♥」

「よしよしw」

 ユリの手はフターリアのお腹を撫でます。

 

 俺、男とヤルのは絶対にイヤだし、レズセックスで女役するのもイヤだけど・・・

 ユリが男だったら、ヤバかったな・・・

 

 とか考えながら、茶卓にグニャッと伸びたところで。

 

「このへんにしとくか。お茶の時間だしな!」ユリの野郎、サッと離れやがった。

「く、くそ・・・!」フターリアはくの字に伏せたまま、茶卓で拳を震わせました。

「ヒヒヒw」

 ユリはニヤニヤしながらお茶を呑みます。

「今後の予定だけど」

「は・・・ハイ・・・」

「曲がり川の村の応急処置が済んだら、モターズ城に上がることにした」

「はい・・・」

 俺は首のリボンをゆるめて、シャツの第一ボタンを外しました。

 ハンカチで汗を拭います。

 ユリは満足そうに見ています。性悪だなホント。覚えとけよ。絶対やり返しt──

「リア」

「はいっ!?」

「キスされたい?」

「・・・。」

 指を軽~く握られて、引っ張られました。

 それだけで、俺はユリの前に膝立ちになってました。

 座ってるユリの前に、ペットの犬みたいに膝で立ってんの。

 頬を抱かれて、撫でられて・・・笑ってるユリの唇が迫ってきて・・・

 

 お茶の香りのする舌で、口の中を愛でられました。

 

「・・・♥」

「うむ。やっぱりメイドのリアはイジメ甲斐があるな!」

 唇を拭う俺を、ユリは本当に満足したという顔で見下ろしました。

 メッチャ見下ろしてきました。

 床にぺたんこ座りになってしまった俺を・・・

 屈辱すぎる・・・!

 けどフターリアの身体が言うことをきかねぇ・・・

 これユリに何されても抵抗できねぇぞ・・・

「リア」

「はい・・・」

「今日、午後、ちょっと時間があるんだ」

「・・・♥」

「少し鍛えてやるから、マリ・テニスと調整して、フタゴンになって庭に来い」

「チッ。・・・かしこまりました」

 

 セックスの誘いだと思ったのに。修行回かよ・・・

 

◆♀◆ 3、モリーヌの、アドバイス ◆♀◆

 

「ということで、ユリに鍛えてもらうことになったわ」

「それっはっ、よい機会っ、でっすねっ・・・♥」

 

 フターリアです。

 モリーヌを見つけたので、背後から抱きついて、おっぱい揉んでます。

 両腕を背後から回して、下から揉む。名づけて『おっぱい締め』です。相手の両手が自由なので、いくらでも反撃可能というのがポイントです。

 

「それっでっ、なんでっ、私のっ、胸をっ?」

 モリーヌはセクハラする私の手を撫でてきました。

「お嬢さまとユリにセクハラされてさぁ」

「それはひどい・・・」

「いいトコでお預け喰らったんで、八つ当たりしてる」

「ひどい・・・♥」

 モリーヌが軽く息を切らせ始めたところで、私は手をゆるめて、振り向いた彼女とキスをしました。

 この子はバックから抱くと文句言うんですが、キスするとグンニャリと身体を預けてきます。

 

 モリーヌ。私の侍女。27歳独身。

 男に戻れたら、真っ先に孕ませようと思ってます。

 まだ本人には言ってないけど。ときどき探るような目はしてくる。

 いままでは『もう少し待て』って目で返してたけど、今日は『楽しみにしてろ』って返しました。

 そしたら、モリーヌが向き直ってキスを求めてきました。

 

「うぅン・・・♥」

「リーヌ♥」

 

 ねっとりとキスを楽しんで、少しフターリアのボディも落ち着きました。

 まだ下腹部が熱くて痛いような感じはあるが・・・

 

「なんかさ、アドバイスとかある? 稽古するに当たって」

「そうですね・・・先生の指示通りに身体を動かすこと、でしょうか」

「素直になれって?」

「心の中はどうでもいいです」

「ええんかい」

「身体の話です。先生の言葉を、素直に動きにしてみせる、ということです」

「ふむ?」

「技の伝授とは、師匠の動きを、言葉とモノマネによって、弟子の身体に写すことです」

「うん」

「簡単な動きすらマネできないようでは、どうせ何も習得できない──と、教える側は考えるものです」

 モリーヌは私にキスして、まばたきしました。

 私はモリーヌにキスして、まばたきしました。「なるほど」

「ふふ♥」

 

◆♀◆ 4、マレーナ姉さん、恋敵に一言 ◆♀◆

 

 司厨長の部屋にお邪魔すると、彼女は書類とにらめっこしてました。

 司厨長にして『渾火の魔術師』マリエレジーナさん。

 ダークグレイの波打つ髪が大人っぽい、『秘書』って感じの美人。

 まあ、司厨長は秘書じゃなくて、農林水産財務厚生労働大臣、みたいな役職だけど。

 アスカリア伯爵家のカナメですな。

 

 姉さんの思考を邪魔しないよう、お茶など淹れてタイミングを待ちます。

 

「・・・ありがと」姉さんが休憩に入りました。

「難題ですか?」

「稗の納税を調べてたんだけどね」

「ヒエですか」

 

 この『曲がり川の郷』の主要作物ですな。

 豊かに実ってるのに、上がってくる報告は少ないらしい。

 

「やっぱり、過少申告ですか?」

「うーん・・・記録自体は、地元の役人の仕事なのよね・・・」

「全員にウソを書かせるのは難しいですよね」

「そうなのよ・・・」

 マレーナ姉さんは首を振ってから、「で、用はなあに?」

「はい。午後、ユリさまと訓練することになりまして。フタゴンで、という御命令で」

「ああ、呪文の調整ね・・・」

 

 そうです。

 私がフタゴンになるには、お嬢さまに呪文かけてもらう必要がありますんでね。

 『フタゴン』は、大型の呪文です。ゴソッとMp(?)が減るらしい。

 そうすっと、同じ大型呪文の『樹ターリア』なんかの回数が減っちゃうワケです。

 樹ターリアは、植物の促成栽培ができますんで・・・

 

「稗を育ててもらおうかと思ってたんだけど」

「再調整します?」

「・・・いえ。いいわ。疑いが晴れてからにしましょう」

 マレーナさんは首を振りました。で、私を見て、

「とは言え、呪文を譲るんだから、しっかり成果は掴んでちょうだいね」

「かしこまってござる!」

 

 応援の一言いただきました。

 ちょっと恩着せてきてるけどw

 ま、私は恋敵だし。この人ツンデレですし。

 

 さて。

 私が部屋を退出して、お嬢さまのところへ戻ろうとしたところで・・・

 

「おっと! 失礼いたしました。ダンゼイズのお姫さま」

「こちらこそ。ユリヲワーナ閣下」

 ・・・廊下の角で、赤毛のおばちゃんとぶつかりそうになりました。

 

 女代官・ユリヲワーナさんですな。

 

◆♀◆ 5、ユリヲワーナ代官と、ナータちゃん ◆♀◆

 

 ユリヲワーナ代官。

 赤毛のおばさん文官です。

 ユリと出身地が同じらしい。アスカリア伯爵領──当時は『ビビワメッツ伯爵領』──ですね。

 我が前世である日本人男子が『ユリをワナ・・・w』とか反応してますが。

 これはもちろん、口にも態度にも出せません。

 礼儀正しく頭を下げて、応対します。

 

「伯爵に御用でしょうか?」

「・・・ああ、お嬢さまは、伯爵閣下のお世話もなさっておられるのでしたな」

 ユリヲワーナ代官は、何か言いたげな表情で私を眺めました。

 『言わなくてもわかるわよねぇ・・・?』みたいなツラで。

 伯爵令嬢が下女のコスプレをするなんて、ってコトでしょうな。

 ハハハ。いまさらなんですよ!

「ええ、光栄なことに」

 私はニッコリしてやりました。

 フターリアのニッコリは、攻撃力あります。

 クッキリ黒髪クール美少女メイドの、不意討ちニッコリ。

 男はもちろん、女にもダメージが入ります。

 ユリヲワーナ代官には・・・

 目元をピクッと痙攣させる効果がありました。

 ・・・嫉妬ダメージが入ったようです。

「お取り次ぎいたしましょうか?」

「伯爵令嬢を使いにするなど! 御用向きがあればと、お伺いしたまででして」

「いまの私は、ユリさまの侍ですから、どうぞ遠慮なくお申し付け下さいませ」

「いえいえ! 一地方の代官に過ぎぬ私なぞ、下女を使いにするのも勿体ないこと」

 

 などと笑顔でやり合っておりますと。

 

「おはようございます、御二方。御機嫌よう」

 メイドのコスプレしたナータちゃんが、姿を現しました。

 

 ・・・なんでメイド服着とんじゃ殿下!!!

 

「おや、こちらは・・・」と、ユリヲワーナ代官。

「私の・・・・・・・・・侍女ですわ」と、私。

「お初にお目にかかります。フターリアさまにお仕えする、ナータでございます!」

 

 ナータちゃん。

 黒髪も美しい、13歳の美少女ですが・・・

 その正体は、誰あろう。

 我らがブレロッケ王国の姫、ネムリタロッカ王女殿下!

 

 お忍び旅行とか言い張って、フターリアに『ご主人さま』の役をさせる。

 気配りできるようでいて、要所で爆弾投げてくるナータちゃん殿下です。

 

 今日の爆弾は、メイド服!

 

 私のより地味! 色が暗くて、シンプル!

 生地に、南方の麻独特の光沢がありますね。私のと同じ、コノマーズの輸入品か。

 ツクノー・コノマーズ侯爵に調達してもらったのかな?

 ツナちゃん・・・せめて、私のより豪華な仕立てにしてくれ・・・

 

 ・・・いや待てよ。もしかしたら、これもツナちゃんのメッセージかも知れん。

 『私の居らぬところで、メイド服でイチャイチャできると思うなよ』という・・・

 

「これはこれは、お似合いの主従でいらっしゃる」

 赤毛の代官は、ホッホッホと笑いました。

 失言してくれないかな。そしたら面白いのに。と、ちょっと期待したんですが。

 ユリヲワーナ代官。なかなかどうして、そういうミスをする女ではなかった。

「まったく、お美しい。花のような主従だこと」

「ありがとうございます! 御用でしたら、お伺いいたしましょうか!」

 ナータちゃんが爆弾投げつけました。

 『じゃあお願い』などと言っていたら、ドカーン! でしたが・・・

「お気遣いはありがたいが、御主人にも申し上げた通り、御用向きに伺ったまででしてな」

「そう仰るのなら・・・」私は、会話を締めることにしました。「伯爵は、突き当たりの部屋ですわ」

「ありがとうございます。では、失礼」

 

 代官は奥へ。

 私たちは、テニスお嬢さまの部屋に向かいます。

 チラッチラッ。ナータちゃんがこちらを見上げてきます。

「・・・部屋でね?」

「・・・はい!」

 部屋に帰還。

「戻りました。ナータも一緒です」

「お帰り。おはようございます、ナータ」

「おはようございます、テニスさま!」

 ナータちゃんは楽しそうです。

 私は、廊下に誰もいない(王女の護衛はいる)ことを確認してから扉を閉め、彼女を見ました。

「ビックリしましたよ。メイドになるなんて」

「どうですか!?」

「似合ってる・・・って言っちゃいかんのでしょうが、似合ってますわ。正直、可愛いです!」

「うふふ♥」

 

 ナータちゃんは嬉しそうです。

 テニスお嬢さまは -(´~`)ヽ こんななってます。

 

 なるほど。

 『五ツ股』って、ナータちゃん入れてたのね・・・。

 

◆♀◆ 6、修行回 ◆♀◆

 

 午前中は、ナータちゃんと一緒に事務仕事をしました。

 テニスお嬢さまがこちらに投げてくる書類の整理、写し書き。

 お嬢さまが書いた手紙の校正、などなど。

 

 引っ詰めた黒髪をプルプルさせながら仕事するメイド殿下。

 正直・・・可愛かったです。

 目が合うとニコッとしてくるのが、ヤバい。フターリアに魅了ダメージ!

 しかもね。有能なんですわ。この子。私より目も手も速いのよ。

 

 お昼を食べて、さらに半刻ほど事務をして。

 私たちは、『曲がり川の郷』の郊外の、お花畑に向かいました。

 また花畑ですわ。

 アスカリア歩兵(私たちに同行してきた連中ね)が、外周をランニングしてます。モリーヌが青鹿毛の軍馬に乗って監視してます。警備を兼ねてのランニングでしょうな。

 王女さまの護衛も、四方に立ってます。

 花畑の中央には、ユリと私、見学のマレーナ姉さん・テニスお嬢さま・ナータちゃんメイド殿下。

 我らがベロ~ン君(黄色い去勢馬)、ユリの鹿毛も一緒です。

 ──全員やないか!

 

「観客多いですね・・・」

「変に分けるより、警備しやすいからな」ユリが肩をすくめました。

「なるほど」

 真剣な理由でしたわ。

 そういうことなら、私も真剣に稽古・・・

 

「お弁当作ってきました!」

「ありがとう、ナータ姫」

「『姫』なんていりませんわ、『渾火』さま! 今日の私は、メイドでございます」

「まあ・・・」

「ナータのサンドイッチはおいしいですよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて。ん・・・む! ホント、美味しいわね。香草が3種類?」

「さすが園芸長。その通りです! テニスもどうぞ」

「頂きまーす」

 

 ・・・メッチャくつろいどるがな!

 

「じゃ、始めるぞ」

「がおーぅ」

 

 フタゴンです。すでにストレッチはしといたので、いつでも動ける状態です。

 

「とりあえず走ってみろ。あいつらを2回追い越せ」

「は、はい!」

 

 いきなりランニングを命じられました。

 尻尾ニョロニョロさせて走っていくと、ビビった歩兵がバラけた。

「列を乱すな!」モリーヌが怒鳴る。「ペース上げろ!」

 「うへっ」歩兵どもがうんざりした顔して速度を上げました。

「おいやめろ。おい」私は呼びかけました。

 「なんスか!」「訓練中にダベったら怒られるんスよ!」

「そんなペース上げんなって。2回追い越せって言われてんだよ」

 「イヤッス」「追い抜かれたら、俺らが怒られるッス」

「あっ、クソ、逃げんな!」

 逃げるアスカリア歩兵。

 尻尾ニョロニョロ追うフタゴン。

 追っかけっこです!

 初めはドッタバッタと兵士を追っていた私ですが・・・

 途中で、気が付きました。

 翼使うなとは、言われてねぇよな? って。

 バサッ!

 翼、広げてみた。

 抵抗で速度が落ちた。けど・・・

 前屈みになって角度を調整。わずかに仰角をつけて風を受ければ・・・

 フッ・・・と、身体が浮く感覚。

 スピードが、上がった!

 ドッタンバッタン走ってたのが、舟を漕ぐような浮き走りに変わりました。

 漕げば漕ぐほど、速度が上がる・・・って感覚です。

 気持ちいい!

「ワハハハハ! 遅い遅ーい!」

 「うおっ、速ェ」「喰われるぅ~」

 グワア、グワア! ワタリガラスが騒いでます。フタゴンにビックリしたか?

「がお~!」

 「熱っち熱ちっ」「火はやめろってフタゴンちゃん!」

 火吐いたりしながら楽しく走って、簡単に2周先行、達成です!

「ハァハァ、先生、戻りました!」

「よし。じゃあ『駿馬』やるからもう一回やってみろ」

「・・・はい!」

 

 「我が侍、ドラゴンの姫、フタゴンは変容する。駿馬のごとく、カッ飛ばせ!」

 

「うおおおお!」

 内心『まだ走んの?』と思った、私でしたが。

 これは・・・

 爽快!

 ヤバい。メッチャ速い。

 バイクぐらいスピード出てない?

 自転車より全然速い。身体思いっきり倒さないと曲がり切れねぇ!

 しかもね、ブレないんだよ。視界がさぁ。

 人間が全速力で走ったら、ガックンガックンするでしょ? 視界。

 アレがないのよ。

 翼で半滑空してるから。

 すげぇ気持ちいい・・・!

 2回追い越す程度、あっちゅう間ですよ。もっと走りたいぐらいだ。

 けど、稽古だからね。

 素直に切り上げて、戻ります。

「ハァハァハァ、戻りました、先生!」

「よし。では組み手!」

「はっ・・・・・・い゛ッ!?」

 

 ユリが迫ってきたかと思うと・・・

 尻尾が、地面に激突しました。

 

「わー!」「キャー」「ユリー!」

 お嬢さまたちが盛り上がってます。

 私は、地面に仰向けです。ユリに手を握られてる。

「こうなったら、コレでトドメだぞ」ユリの手が、私の首に添えられました。

「投げられた・・・のか?」

「そうだよ」

「全然わかんなかった」

「投げ飛ばされると、一瞬記憶が飛ぶからな」

 脳震盪か・・・

「確かに、これは致命的ですね」

「うむ。いきなり防御はできないだろうが、やられたパターンは覚えとけ」

「こういう風に接近されたらヤバい、みたいな?」

「そう。立て」

「はい」

「どうやって逃げる?」

「飛ぶしか・・・」

「やってみな」

 

 立ち上がって、仕切り直し。

 スッ・・・と迫ってくるユリから逃げようと翼を広げて、打ち下ろs──

 足払い喰らった。すこーんと仰向けに。

 空に向けて翼を打った形になってしまい、背中から地面に激突です。「ぐえっ」

「ハイ死んだ」ユリのチョップがお腹に添えられました。

 

 立ち上がって。

 飛びのくしかないか? 迫るユリから大きく後ろへジャンプして逃げ──

 また足払い。すこーんと仰向けに(ry

「速っ・・・!?」

「私も『駿馬』かけたからな」

 

 立ち上がって。

 右に飛びのく。ユリに先回りされ、体落とし・・・いや払い腰? で、グルン、どてーん!

 左に飛びのく。ユリのチョップがサッと眼前を横切りました。『斬った』ってことか・・・。

 立ち上がって。

「火吐いていい?」

「いいけど?」

「・・・ゴメン、やめとく。『妨害』されたら無意味だよね」

「かな?」

「どうすりゃいいんだコレ・・・」

 

 モリーヌからは、先生に言われた動きをちゃんとやれって言われたけど。

 全然そんな訓練じゃなかった。何もマネできねぇ。

 

 ユリが迫ってきました。

 うわー、また投げられる!

 

 ──って瞬間、ドロゴン戦の前に習った教えが、頭に浮かびました。

 『自分勝手に動け』。

 

「んがぁ!」私は火を吐きました。ユリは『妨害』、無傷。

 ぶうん! 尻尾をブン回しました。ユリはハードル飛び越す感じでクリア。

 ぶわっさ。翼を打ち下ろし、地面を蹴り飛ばしました。わざと爪で土をすくって、後方にバラまきます。

 空中へ。

 ばっさばさばさ! 羽ばたいて、高度を稼ぎました。

 後ろを振り向きます。

 ユリの笑顔が、目の前にありました。

「ひぃッ!?」

「いや、いい。よくやった。降りといで」

 ユリはそう言って、グルグル渦巻く風と共に地面に降りました。

 

 びっくりした・・・

 『つるぎの竜巻』か。そういや、前もアレで追いかけられたわ。

 

「先生からは逃げれませんわ」私は降参しました。

「いや、良かったよ」

 ユリは笑ってます。

「ブレスで目潰し、尻尾振りながら背中向けて、土蹴り上げて空中へ。うん。なかなかいい」

「通じなかったじゃん」

「この程度で通じてたら、私はとっくに死んでるよw」

「・・・。」

 

 経験の差がありすぎる・・・。

 

「先生。前に、『飛ぶな』って言われたけど」

「フにゃーリアはね。フタゴンはいいさ。空中でも制御できるんだし」

「そっか」

「けど、今日は私が付き合ってるんだ。斬りと組みの間合いを、集中的にやろう」

「はい!」

 

 そっからは、もう、ボッコボコにされました。

 

 木の枝持ったユリに上下左右からビシバシ叩かれ・・・

 突然懐に入られたかと思うと、投げ飛ばされビシッと叩かれ・・・

 疲労で立てなくなるまで、負けパターンを叩き込まれました。

 

 負けグセがつくだけじゃねぇの? コレ。

 と、中盤までは思ってたのですが。

 意外と・・・慣れるというか。

 『あコレ投げられるわ』ってのが、わかるようになってきて。

 

 最後に、たった一回だけ・・・

 

「ンガァ!!!」

「っと!?」

 投げられる瞬間、火を吐いて、空中側転して、自分の足で着地することができました。

 投げ抜け成功です!

 火を吐いたことで、ユリが反射的に『妨害』姿勢になった。手を放したんだよね。

 放してくれりゃ、空中で姿勢制御できる。着地は難しくなかったね!

 

「ファリアー!」「キャー」「フタゴンおめでとうー!」

 お嬢さまたちが盛り上がってます。

 「やるじゃねぇか」「あの投げ抜けるとか」「俺、何が起きたかわかんなかった」

 アスカリア歩兵も拍手してくれました。

「・・・。」ユリは自分の手を見てます。

「先生! いまのどうッスか!?」

「・・・。」ユリは私を睨んできました。

 

 あ。やべ。

 コイツ、自分が負けそうになるとキレるんだった。

 どうしよ。と、俺が悩んでると。

 

「クックック・・・w」ユリは低く笑いました。「よく・・・やった・・・なぁ・・・!」

「おお!」

 フタゴン感激です。

 両手を広げて天を仰ぎました。

「天よ照覧あれ。不肖フターリア、勇者に近付くこの一歩を!」

 

 ・・・で、そこをユリに掴まれて投げ飛ばされました。「ぐえっ」

「よし。終わり」

 

「ファリアさま。タオルをお持ちしましたわ!」

 ナータちゃん殿下が、冷たいタオルで、地面に伸びた私を起こしてくれました。

「ありがと・・・」

「大丈夫ですか?」

「うん・・・くっそー、ユリのヤツ、大人げねぇよなぁ・・・」

「勇者さまを本気にさせるファリアさまがすごいのですわ」

「いやぁ、追いつける気ィしねぇわ、アイツには・・・」

「・・・。」

 ナータちゃんは、お母さんみたいな笑顔で私を見ました。

 それから、ちょっとびっくりして、

「ファリアさま、鼻血が」

「ん?」

 

 ペロリ。私は舌を出して鼻を舐めました。

 

「ホントだ」

「まあ、はしたない」

「ははは」

 その時でした。

 

 グワラ、グワラと鳴くワタリガラスの声が、突如、歌のように聞こえたのは。

 

◆♀◆ 7、ワタリガラスの言うことにゃ ◆♀◆

 

 ♪DON'T DOWN GUARDS, DRAGON GIRL!

  GOB OF LIFELESS MUD GET CLOSE.

  BEGONE! THE LOVELESS MAD GAGGLERS!

 

  DEFEAT! ERASE! ANNIHILATE THEM!

  OR YOUR LOVE: YURI MAY CROAK.

  SO I GROWL, GROWL...     ※訳は17行下で。ナータがしてくれます

 

 ・・・グワラ、グワラ! ワタリガラスの声は、ただの鳴き声に戻りました。

 

「またこれか」

「どうなさいました?」

「いや、フタゴンの血舐めると、鳥が歌ってるみたいに聞こえるんだよね」

「本当ですか?」

「あっ、こら」

 

 ナータちゃんが指で私の鼻血取って、舐めました。

 

「王女がヘンなモン口にするんじゃないよ・・・」

「不気味な歌ですわ」

「聞き取れたの?」

「ええと、」

 

 「ガードを下げるな、ドラゴンガール!

  来るぞ、生命を持たぬ泥くれが。

  いね! 愛情知らぬガチョウども。

 

  倒せ! 消し去れ! 鏖殺せよ!

  さもなくば、おまえの愛するユリは死のう。

  さらば私は、がなる、がなる・・・」

 

「よくわかったね!」よっこらしょ。私は立ち上がりました。「相談しなきゃ」

「信じるのですか?」

「え?」

「私は、父に教わりました。この世には、耳を貸してはならぬ言葉があると」

 ナータちゃんは、確信をもってそう言いました。

「死の予言、不死の秘術、隠された秘宝──そうした言葉は、人を揺さぶる常套句であると」

「ほう?」

「いまの歌は、『死の予言』です。飛びついてはなりませんわ」

「ナータちゃん・・・」

 私は彼女に手を差し出しました。

 ウロコだらけの手を、ナータちゃんは恐る恐る掴みました。私の隣に立ちます。

「御父君もあなたも、本当に賢い御方ですね」

「ありがとう」

「たださ、ツクノーさまの時にも、似たようなことがあってね?」

「まあ」

「鳥の声が聞こえたよってだけは、言っとこかなって」

「そうですか。では私もご一緒いたしますわ」

「ありがと」

 

 フタゴンとナータちゃん殿下は、肩を並べて、ユリのところへ向かうのでした。

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