TSゆりフタ令嬢侍女メイド! 作:min(みならい)R18
◆♀◆ 14、人魚 v0.1 ◆♀◆
翌朝。
頼んでおいた絵を見に行きます。
人魚の絵。フタゴンを描いた男は、どのように仕上げたのか?
「よう」
「あ、お嬢。おはようさん。絵はできてるぜ」
「どこだ?」
「あそこの岩だよ」
アタカータは、街道脇の大きな岩に、私を案内しました。
わりと綺麗に割れてる岩です。
街道建設するとき、カチ割ったんでしょうな。そういう技術はこの世界にもありますからね。岩にノミで短い溝をいくつも掘って、クサビ打ち込んで、割る、っていう。職人芸かつ重労働ですわ。
その岩のキャンバスの、左のほうに、『人魚』がいました。
白い線画です。
「チョークか?」
「ああ。石灰岩の破片がそこらにあったからよ」
「ラクガキでいっぱいだな?」
「だな」
岩のキャンバスは、ラクガキでいっぱいでした。
キャンバスの右の方に、カエル人・・・かな? 尻尾のある小人が描かれてます。
中央には、大きな丸。これは石投げの的かなんかでしょう。
「カエル人っぽいのは、地元の子供の絵か」
「みてェだな。これなら、俺が絵ェ描いても怒られねえだろうと思ってよ」
「なるほど。・・・街の守護者っぽい感じで、いいポジションだな」
「だろ! そのほうがアンタの名が高まると思ってよ!」
「そりゃどうも」
人魚は、かなりデカい絵でした。
石灰岩の破片じゃ、細かい線が引けないからだろうね。
ほぼ等身大。乳なんか、フターリア本人よりデカい。デカくしすぎだよバカ野郎。
ま、絵そのものは、さすがの出来というか。十分リアルなんですが。
ですがね?
「・・・なんでツノつけた?」
「その方が喜ぶと思ってよ」
「喜ぶ?」
「おう」
「俺が?」
「子供が」
「子供にウケなくていいんだよなぁ」
描いてもらった人魚。
なんか・・・
余計なモンが、いっぱいくっついとるんですわ。
まず、額にフタゴンみたいなツノが2本生えてる。
それだけじゃなくて・・・
「なんで水掻きつけた?」
「いや、だって、カエルもこういう手ェしてるしよ」
「カエルじゃねぇんだよなぁ」
手の指に、水掻きがついてる。指も変に長いし。マジでカエルみてぇ。
それだけじゃなくて・・・
「なんでヒレつけた?」
「あ?」
「腰ンとこの、これ。魚みてェなヒレ。なんでつけた」
「魚なんだから、ヒレはあんだろ」
「魚でもねぇんだよなぁ」
マジで魚みてぇ。
これがなけりゃ『下半身はOK』って言えたんだけど。惜しい!
結果、出来上がった『人魚』は・・・
全体としては、まあ、人魚なんですが。
頭のツノがメッチャ目立つ。腰のヒレも異形感ありすぎ。手足がカエル。
美人でも可愛くもねぇ。
キモい。
「うーん・・・」私は腕を組みました。
「ダメか?」アタカータはデカパイを見てきました。おまえオッパイ好きだよな。
「いや・・・うーん・・・戦士長! どう思う?」
私は戦士長に話を振りました。
「そうじゃなぁ・・・わしゃ、絵はわからんが・・・」
戦士長は、考えるフリをしてくれました。
さすがベテラン。私が『時間が欲しい』と考えたのをわかってる。
いやー・・・『こんなモンダメに決まってんだろ!』って怒鳴っちゃいそうだったからさ。
資料もナシで徹夜仕事させて怒鳴っちゃダメだよな。
「ツノは、ええんじゃないか? わしゃ好きじゃ。フタゴンみたいで、カッコええし」
戦士長は私の顔を見ながらいいました。
言われてみれば。
頭部はカッコいいわ。
水掻きとヒレが気持ち悪いだけで。
「そうだな。ツノはいいな」
「そうだよ。お嬢ちゃんおっかねぇしよ。ツノあった方が鬼バb・・・いやなんでもねぇ」
「鬼ババじゃねぇよ」
フターリアは、女神さまも孕ませた(?)一人前のふたなり(?)だぞ!
などと、内心でツッコミつつ。
しばらく考えて。
私は、こう言いました。
「よっしゃ! とりあえず、この絵は買おう!」
戦士長が、アタカータに残りの金を渡しました。
昨夜依頼したときに、前金は渡してあるんで。残りの金ね。
アタカータは、これで依頼達成! なのですが・・・困った顔してんな。
「どうした?」
「・・・いいのか? 気に喰わねぇんだろ?」
「いいんだよ。支払いケチったら、ダンゼイズの名にキズが付くしよ」
「やっぱ気に喰わねぇんじゃねえか」
「うん。気に喰わねぇ」
「くそっ!」
はっきり言って、こんな異形には『変容』したくねぇ。
けど、可能性も見えてきた。
フターリアっぽい人魚の可能性ね。
「アタカータよ。別バージョンを描いてほしいんだが」
「別バージョン?」
「そう。これはバージョン0.1としてな」
「れいてんいち」
「0.2のテーマは、」
私は、バサッと翼を広げる──イメージで、両手を広げました。
乳が揺れました。アタカータはしっかり観察してました。見るトコそこじゃねぇぞ。
「ドラゴン人魚だ!」
◆♀◆ 15、人魚 v0.2 ◆♀◆
「・・・それで出来たのが、コレってワケ?」
テニスお嬢さまは、羊皮紙を広げて、しげしげと眺めました。
「そうです」私は説明しました。「人魚の絵、バージョン0.2!」
「バージョン0.2」
「名付けて、マーメイド・フタゴンです!」
マーメイド・フタゴン by アタカータ 編集フターリア
ツノと翼と足ヒレのあるドラゴン人魚。
上半身はフタゴン。ただし、翼はプヨプヨした感じ。皮膜が水掻きのよう。
下半身はイルカ。ただし、足ヒレはプヨプヨした感じ。カエルの足のよう。
「モチャッとしてるわね」と、お嬢さま。
「ええ。翼とかね」
「イルカってもっとスマートなイメージだったわ」
「ええ。同感です」
「ポーズはいいわね。動きがイメージできるわ」
「ね!」
ポーズは、ダイナミックです。
頭を下にして、グイーンと反り返るみたいな感じ。
飛んでるようでもあり、泳いでるようでもある。
「動きは説明してやったんですよ。尾を左右に振るんじゃなく、上下にこう、波打つんだって」
私は、ドルフィンキックの真似をしました。
スカートが乱れました。お嬢さまが無言で私のスカートを抑えました。
「やっぱ、才能ありますよ、アイツ」
「そうね。じゃ、結婚する?」
「何言ってんの?」
「気に入ったんでしょ?」
「なに嫉妬してんの?」
「私に相談もナシに絵を描かせるぐらいだもの」
「お嬢さま、あの夜はもう山の上に戻ってたでしょ!」
「でも気に入ったんでしょ?」
「私が気に入ったのはマーメイドです」
「人魚が好きだったの? なら言ってくれれば」
「いえ、マーメイドです」
「うん?」
「マー メ イ ド !!!」
「・・・あ、そう」お嬢さまは羊皮紙に目を落としました。「それにしても、」
「はい」
「絵本の人魚とは、だいぶ違うわね」
「ダメですか」
「ダメじゃないのよ。けど、私が混乱してると、呪文が失敗しちゃうから」
「混乱を解消するには?」
「そうね・・・。本物のイルカが見れれば、一発だと思うけど」
「本物のイルカぁ!?」
と、私が叫んだときでした。
「イルカがいるぞー!」と、水夫が叫んだのは。
ざぱ~~~ん!
船が波を砕き、白い波しぶきが甲板の上まで飛んできました。
「イルカですってよ!」
「渡りに船とはこのことね!」
私たちは立ち上がり、舷側に駆け寄りました。
──そう。我々はいま、船の上にいるのです!
◆♀◆ 16、帆船の旅 ◆♀◆
帆船です!
天高くそびえる帆柱。
風を孕んでまあるく膨らんだ帆。
ギシギシと音を立てる太綱。
夏の太陽。波しぶきの混じった、心地よい風。そしてイルカ!!!
マモノノメイ内海、豪華帆船の旅
発:アスカリア伯爵領・希望の港
着:コノマーズ侯爵領・ウタールデントの都
ガレー艦隊の護衛付き!
ですわ!
・・・あ、ちょっと場面が飛びすぎましたか?
経緯を説明しておきましょう──
お祭りは、無事終わりました。
いや、まあ『フターリア姫暗殺未遂事件』とかはあったけど。お客様には被害ナシでね。
みな家路に着きます。
お嬢さまは、王女殿下との別れを寂しがっていました。
祭りのあいだ、義兄のボンロウケさまと3人で仲良くしてたそうですわ。
ツクノー・コノマーズ侯爵閣下は、ずーっと私たちと一緒でした。
私たちと一緒にアスカリア本領の伯爵邸に戻って。
一緒に寝て。
一緒に『希望の港』まで下って。
一緒に船に乗りました。
彼女は、
「もう、こんなに一緒に居れる機会はないじゃろうから・・・」
と呟いてました。フターリア(男体)の腕の中でね!
──というワケで。
マモノノメイ内海、豪華帆船の旅! です。
マモノノメイ内海は、ブレロッケ王国南部の、広大な内海です。
『希望の港』は、この内海の北岸。
ウタールデントは、西岸にあります。
歩くと1週間ほどかかる道のりですが・・・船なら、なんと、1日です!
空は晴れ、風は穏やか。北に見える沿岸の景色も美しい。
そして、イルカ!
「いたわ! あそこよ!」
お嬢さまが、波打つ海面を指差しました。
夏の太陽にギラギラ輝く海面に、一瞬「サメ?」ってなる背ビレが見えました。
それから、丸い頭と胴体が。
最後に、斧の刃のように見事に広がった足ヒレが。
1頭、2頭、3頭・・・7頭ぐらい? 群れで、帆船と併走してくれました。
「すげぇ!」
「・・・。」お嬢さまは無言で見つめています。
「おいおい! お嬢さんがた、走っちゃダメだぜ」ユリが走ってきました。
「しー。お嬢さま、観察中だから」私が答えました。「ってか、オマエも走ってんじゃん」
「私は落っこちたりしないからいいんだよ。イルカだって?」
「うん」
「おお・・・!」
「そなたらは幸運じゃ」
ツクノーさまもニコニコしながらやって来ました。
「めったに見れるモンではないぞ。海は、広いからのう」
「そっかぁ・・・」
「あと半刻ほどでウタールデントじゃ」
「え」
「なんじゃ?」
「もうついちゃうの?」
「うむ。いま船長に確認した」
「そうなんだ・・・」私はガッカリしました。
「なんだよ」ユリが背中を叩いてきました。「いいだろ、速いんだから」
「それはそうだけどさ」
ユリには悪いけど。
帆船のスピードぐらいで感動はしねぇんだ。
フタゴンのが速ェし。新幹線はもっと速ェしさ。
帆船だあ! ・・・ってトコなんだよ。日本人男子の感動ポイントはさ。
「船が気に入ったようじゃな?」ツナちゃんが、私の腕にもたれかかってきました。
「ずっとこうしていたいぐらいにね」私は、彼女の背中を抱きました。
イルカを眺めながら。
私たちは、残りわずかな船旅を楽しむのでした。
◆♀◆ 17、ウタールデントの夜 ◆♀◆
その日の夕方。
私たちは、コノマーズの都・ウタールデントに着きました。
小さな島を通り過ぎ、美しい砂浜を横目にして・・・
高い城壁(バリスタだらけ)の内側に、入港です。
「改めて見ると、すごい城壁だよな」と私。
「オマエ、よくこんなのに突撃したよな」とユリ。
「ホントだよ」
「ホント馬鹿だな」
「ンだと?」
「ヒヒヒw」
「ターラは突くのが好きじゃからなw」とツナちゃん。
「ツナは下ネタが好きじゃな」と私。
「大好きじゃぞ」
港に入ると、ウタールデントの国民が歓迎してくれました。
ツクノーさまの人気を感じる。
ユリも、手ェ振っただけですごい歓声が上がってます。
俺は・・・
「フタゴンさまはどこかしら?」
「アレじゃない?」
「どれ?」
「あのハーフエルフのお姫様の後ろに立ってるメイドみたいな人」
「うわぁ・・・ツクノーさまより背が高いんじゃない? ・・・けど、なんでメイドなの?」
・・・こんな感じですわ。
メイドみたいな人じゃなくて本業がメ(侍女よ!)ドだからな?
港を守る出城を、グルッと迂回します。
フタゴンが危うく『石化』喰らいかけた出城ですな。
そして、また別な城壁をくぐる。
ここがすごい。
門柱は天をつくほどで、びっしりとレリーフが刻まれてる。
重量感といい、レリーフの見事さといい、素材の美しさといい・・・
現代日本人の感覚でも「すごい」と言える、壮麗な巨大建築です。
「ドラゴン門じゃ」とツナちゃん。
「ドラゴン」
「そなたではないぞ。ハジンドータのドラゴンじゃ」
「御父君がたが討伐なさったヤツですな?」とユリ。
「そうじゃ。テニスの父母や、私の父が倒し・・・奇しくも、アヤツリアを救う結果となった」
「おお・・・」
言われて、よーく見直してみれば。
レリーフの中に、エルフ耳してる魔術師がいました。
「あ! お嬢さまの母上では?」
「そうね・・・」
「ドラゴンの目の前で魔法かけてる。すげぇw」
「実際、すごい御方じゃった・・・」ツナちゃんがしみじみと言いました。
『ドラゴン門』をくぐり、金持ちの住む区画を抜けて、お城に入ります。
初日の夜は、歓待の宴で大変でした。
私は『侯爵の御相手』として正式に紹介されました。
婿入りの話はしませんでした。
話を出して荒れるとまずい、という判断らしい。
まあ、反乱直後だしな。
侯爵配下の伯爵たちにしてみりゃ、
「ウチの息子を拒んでおいて、ヨソ者の女じゃと!?」
ってのが本音だろうしね。
一方こちらは。
ユリの指示で、手の内を見せることにしました。
「変容せよ、我らがフターリア。あなたにない性器も手に入れて、女神も認める彼氏にな~れ!」
男への『変容』を、コノマーズ貴族たちに披露したのです。
「──改めまして。フターリアです。
魔術の神マーミクリーテさまから才能を賜りまして、この『変容』ができました。
神々に感謝を捧げます。
そして、コノマーズの方々には、美しい侯爵の下での末永い繁栄をお祈りします」
挨拶をした私の隣に、ツクノーさまが立ちました。
伯爵たちは、ひとまず、拍手で迎えてくれたのでした。
その夜は、ツナちゃんの正式な寝室に、2人でシケ込みました。
もちろんヤることヤッたよ。
ただ、侯爵の護衛がすぐ近くに控えてるので、ムチャはできなかった。
礼儀正しいセックスになりました。
礼儀正しいセックスってなんだよ。NO フタゴン! だよ。
神経使う顔見せは、3日ほどかかりました。
疲れた・・・。
それからようやく、私たちの夏休みが始まりました!
「お嬢さま・・・?」
「人魚ね? 準備は万端よ!」
お嬢さまは、拳を握って、力強く答えてくれました。
「自分で実験もしたわ!」
「おお! ・・・その、自分で実験するのやめません?」
「やめないわ! 自分にかけれない『変容』を他人にかけたら、攻撃でしょ」
「一理ある」
「名前はどうするんだ?」とユリ。
「もう決めてあるわ」
テニッサメイズお嬢さまは・・・
かの大魔術師ティニーモノーシャ博士の一人娘にして・・・
御本人も『発動』の天才であらせられる、愛しのお嬢さまは・・・
胸を張って、こう仰いました。
「魚タゴンよ!」
ダッサ!!!
◆♀◆ 18、ギョタゴン、泳ぎ初め ◆♀◆
はい! 魚タゴンです!(ヤケクソ)
本日は、ウタールデント城内の『お池』にやって参りました。
小さくて綺麗な池です。城の敷地内にある。
御影石を敷き詰めて四角く区切られてます。
見た目は温泉っぽくもある。流れ込んでるのは冷水ですが。
「侯爵家の、泳ぎ初めの池じゃ」とツナちゃん。「私も、赤子の時に放り込まれた」
「厳しいね」
「いや甘い。ヨトンマリ伯は、3歳で海に蹴り落とされたそうじゃから」
「んなアホな」
そんな紹介があっての、
「変容せよ、フターリア。ドラゴンの、イルカの力を手に入れて。陸海空を泳ぐ者に、な~れ!」
「ぎゃおーぅ」
マーメイド・フタゴンに『変容』です!
「っとと・・・!」
直後。
私はバランスを崩して、コケました。
だぱぁぁーーん!!
盛大なしぶきを上げて、水面を叩き割るように、池に沈んだのでした。
「お嬢さま!」モリーヌがあわてます。
「大丈夫、大丈夫」
私は手を上げて、みんなを制止しました。
ざぶーん!
長~い足を持ち上げて、見せてあげました。
「ほらね? 足がこうなったんで、バランス崩しただけだから」
『変容』は、大成功です。
こうなるんだろうな・・・と思ってた通りになった。
上半身はフタゴン。下半身はイルカ。
ドラゴン・マーメイド・侍女メイド・フターリア!
略して──
「これが魚タゴンよ!」
「Oh...」
「・・・なに?」
「何でもないです。リーヌ、髪飾り取ってくれる?」
「?」モリーヌが首をひねりました。
「いつもの、それ」
「なぜこれを・・・?」
「マー メ イ ド だから」
「あ、はい」
モリーヌにメイドの髪飾りを取ってもらい、しっかり装着します。
これでヨシ!
ざぶーん!
足ヒレで水面を撃って、グルッとロールしてみました。
翼が水面にぶつかって大きな波を立てます。
水の抵抗で、動きが鈍った。
一回転するつもりだったのに、うつ伏せで回転が止まってしもうた。
がぼがぼ。
バチャバチャもがいて、仰向けになります。
「お、お嬢さま・・・!」モリーヌがすごい心配してます。
「大丈夫。前世では泳いだことあるから。ちょっとこの、翼がね。水に馴染んでないだけだから」
「飛ぶのと一緒だろ?」とユリ。
「いや、勝手が違うんだよ。抵抗がデカすぎてさぁ」
「いったん、広げてみたらどうじゃ?」
ツナちゃんが提案してくれました。
「仰向けになって、ゆっくり漕いでみるのじゃ」
言われた通りやってみた結果。
「あ、行けそう」
翼を軽くねじった時に、いい感じに身体が進みました。
バサッと羽ばたく動きじゃなくて・・・
手のひらを返すみたいな感じでね?
えーとホラ、背泳ぎの姿勢で浮かんで、手をヒラヒラさせたら、ゆっくり進むじゃないですか?
あんな感じ。
人間の手より遥かにデカいんで、ちょっとひねっただけで、スイッ・・・と、進めるんですわ。
これはいいぞ!
ここでドルフィンキックを一発。
ごちーん!!! ツノ先端に衝撃!
「いてぇ」
「ターラよ。お池は、イルカが泳ぐほど広くはないぞ」
キック一発で池を横切って向こう岸にぶつかってしまったようです。
「すごい推進力・・・」
「自分で言うなよ」ユリがあきれました。
「進むのは問題なさそうじゃな? うつ伏せになって、息継ぎの練習をしてみよ」
「はいな」
うつ伏せにロール。
顔を完全に水中に入れます。
モリーヌが「・・・!?」と動揺してるのが伝わってくる。
なので、予定より早めに顔を上げることにしました。
・・・あれ? どうやって上げりゃいいんだ?
クロールの息継ぎみたいに、横に顔を上げたんですが。
口が水面に出ない。
ツノが重すぎて、頭が沈んでるっぽい。
背中を反らして横を向・・・
がつーん!! ツノ根元付近に衝撃。
「いてぇ」
背を反らした拍子に、ドルフィンキック発動しちゃった。
この足ヒレ、微調整がしづれぇ・・・
真ん中に戻ってやり直し。
うーむ。
羽ばたけばいいのか?
翼で水を押しのけるように羽ばたいてみた。
ぐわっと上半身が上がりました。
ざばーん!
「ぷはー」
息継ぎ成功!
ここでドルフィンキックを一発。
がつーん!!
「いてぇ」
「イルカ泳ぎはやめよと言うておる」
「いや、これさ、反動っつーか、本能的にキックが出ちゃうんだよ」
「息継ぎができないんじゃ、海に出すワケにはいかんぞ?」とユリ。
「広けりゃ大丈夫だと思うんだが・・・」
「ターラ、いったん上がれ」ツナちゃんが手招きしてきました。「息止め時間を計ってみよ」
岸に座って。
水でいっぱいの手桶に、顔を突っ込みました。
どれだけ息が続くかのテスト、ってワケですわ。
・・・全然平気なんですが。どうしますかね?
バシバシバシ! 肩を叩かれました。
「なに?」
「なにじゃないよ!」ユリがびっくりしてます。「気絶したのかと思ったぞ」
「いや。全然大丈夫。苦しくも何ともない」
体感で、1分以上は浸かってたかな?
全然なんともなかった。
「大丈夫そうじゃな」
ツナちゃんが脈を取ったり私の目を覗き込んだりして、判定しました。
「フタゴンは、ブレスの時、ものすごい炎を吐くからのう。肺活量がデカいんじゃろ」
「・・・まぁ、乳はデカいけどさぁ」ユリが乳揉んできました。
「うるせぇよ」
ちなみに、私は現在、トーガを巻いただけの姿です。
水でべっとり張り付いてるトーガ。
揉まれてる乳に、ユリの指の感触がダイレクトに伝わってきてます。
「ずーっと潜ってられそうな気がする」
「過信はダメじゃ。息継ぎの訓練はちゃんとせよ」
「その通りだ。フタゴンが鈍いだけって可能性もある」
2人に言われて『ごもっとも』となり、練習した結果。
「よっ! ほっ! ほっ!」
水面に顔を出したまま、泳げるようになりました!
翼を水中に突っ込むのがポイントです。
鳥が着陸するときみたいな角度でね。仰角キツめで。
で、小刻みにドルフィンキック。
すると、翼に当たる水の抵抗で、上半身が持ち上がる。
名付けて、水中翼船泳法ですわ!
狭い『お池』の中で、器用にクルクル回れるようになりましたぞ!
「よっ! ほっ! どうよ!」
「アシカが走っとるみたいじゃなw」
ツナちゃんが、私のプライドをブチ壊してくれました。
◆♀◆ 19、魚タゴン、海に出る ◆♀◆
魚タゴン、泳ぎ初めに成功。
海に出してもらえることになりました。
突堤へ移動します・・・。
波を防いで港を守る突堤ですが。
バリスタ城壁の基部ともなっております。
突堤に、城壁が建っとるワケですわ。
その壁の内側の、馬で走れる程度のスペース。
平時は一般人がココを歩いていいことになってるらしい。おおらかですね。
そこが、コノマーズの子供たちの海水浴場になってました。
突堤から港に飛び込んで、泳ぐワケです。
私はいったん人間に戻って、濡れたトーガの上に薄いケープを羽織って、そこまで歩きました。
子供たちがワーワー言いながら集まってきます。
注目を集めた状態で・・・
「変容せよ、フターリア。ドラゴンの、イルカの力を手に入れて。陸海空を泳ぐ者に、な~れ!」
「ぎゃおーぅ」
『変容』しました。
頭の上に生えてくるツノ。バサッ! と背中に広がる翼。
足はヒレとなり、立つのが難しくなります。ユリとモリーヌが支えてくれました。
「うわー!」「きゃー!?」「変身したー!!」
子供たちは大騒ぎです。
「女勇者にしてアスカリア伯爵のユリさまをヨロシクぅ~!」
私は翼を広げて、CM。
そのまま、海にダイブします。
翼を広げての、半滑空ダイブです!
どぼーーーん!!
・・・いてぇ。
突堤から海面まで、かなり落差があったんで、『着陸』する感じで行ったんですが。
逆にまずかったわ。水面に弾かれる感じになっちゃった。
フタゴン、腹は弱ェんだよな・・・女のままだし・・・。
さてと。
潜ったままドルフィンキックして加速し、水中翼船泳法(アシカ走り)に移行します。
観衆がどよめいてる。
まあな!
人間の泳ぐスピードじゃねぇからな!
さらにスピードを上げていきます。
突堤付近を、円を描いて疾走・・・半滑空疾泳します。
身体がほとんど浮いてるので、すごいスピードが出る。
あ、これ、飛べるかも?
翼を水から引き抜きました。
当然、身体が落ちます。
かなりの速度で水面と接触。
水に弾かれる・・・瞬間、思いっきり水を蹴って、ジャンプ!
羽ばたく!
ざっぱーーーん・・・!!
よっしゃ飛べた!
魚タゴン離水しました!
けど、重いな・・・。
イルカの下半身がメッチャクチャ重たい。
アカン。これは墜落する。さっさと着水したほうが・・・
・・・いや待てよ? 逆に足ヒレを使えば?
足ヒレを、水面に接触させました。
ドルフィンキックはしない。
仰角をつけて、押し当てるだけです。
要は、水中翼船泳法の足ヒレ版ですわ。推進力を翼に切り替えたバージョン。
当然、スピードは落ちるんですが。
翼だけで体重を支えなくていいんで、飛ぶよりラクになりました。
名付けて、水上スキー飛行法ですわ!
子供の大歓声の中を、ぐるーっと回って。
笑顔で手を振る、なーんてことも、できましたぞ!
「はぁはぁ。どうよ!」
「トンボの産卵みたいだなw」
今度はユリが、私のプライドをブチ壊してくれました。
◆♀◆ 20、お嬢さまと ◆♀◆
アシカっぽくてトンボっぽい魚タゴンです!
この日の最後に、お嬢さまを乗せて泳ぐことにしました。
突堤から、砂浜へ移動します・・・
お嬢さまは、白いトーガ姿です。
私とお揃いのを、ツクノーさまが仕立てて下さいました。
腰のあたりにまたがってもらいます。
おんぶに近い形ですが、肩に抱きつくのではなく、ツノに手をかけてもらいます。
なんか、馬になった気分。
「じゃ、行きますよ?」
「え・・・ええ!」
泳げないお嬢さまは、緊張してます。
ライフジャケット・・・みたいなものを、ちゃんと身に着けてはいるのですが。
チョッキに、空っぽの革袋を縛り付けたヤツね。
それでも緊張はするようです。
じゃぶっ、じゃぶっ!
前足と足ヒレで、ぶきっちょに移動。水に入ってゆきます。
ちょっと大きな波が来た。身体が大きく揺れました。
「きゃっ・・・」お嬢さまが、ツノを握る手にギュッと力を込めました。
少し沖で、ツクノーさまが小舟を漕いでいます。
ユリとモリーヌが同乗して、空っぽの革袋やロープなど、救助用具を準備してくれてます。
テニスお嬢さまは、他家の侯爵令嬢だからね。万全の体制ってワケです。
「足が着くとこでやるからね、ニーズ。深いトコには行かないから」
「う、うん」
「俺は顔を沈めちゃうけど。話があるときは、ツノ引っ張って」
「わかったわ」
「じゃ、行くよ!」
どぷーん・・・! ごぼごぼごぼ・・・
私は顔を沈めて、水に浮かびました。
ユラ、ユラ、ユラ・・・
身体が揺れます。白いトーガが水中に揺れます。
お嬢さまの股間と内腿が、密着し、離れ、また密着します。
とてもエロい・・・満足・・・♥
ざばー。顔を上げて、立ちました。「どう?」
お嬢さまは私の背中にしがみつきました。「水がすっごく冷たいわ!」
その後、ごくごくゆ~っくりと、進んであげたりして。
海水浴・・・いや、海水騎乗? 体験会は終了しました。
砂浜で、軽い食事にします。
「フワフワして、雲の上を騎行してるみたいだったわ!」
お嬢さまは、とても楽しそうでした。
「この揺れがいいんですよ。海水浴は」
「わかる気がするわ!」
「波の音もいいよなー」とユリ。「いいところだ・・・」
「海神の御機嫌がよろしい時はな」ツクノーさまが笑いました。「気まぐれな御方じゃから、油断は禁物じゃぞ」
食事を終えたあたりで、にわかに空が曇り、カミナリの音が聞こえてきました。
「ほれ、言うたそばからコレじゃ!」
私たちは、急いでお城に引き返して。
ザアザアと叩きつける雨の音を聞きながら、その夜を迎えたのでした。
◆♀◆ 21、豚飼いの女神の話 ◆♀◆
「ところでじゃ。ここに入港する前、小島を通り過ぎたのを、覚えておるか?」
夕食のあと、ワインを呑みながら。
ツクノーさまが、そんなことを言い出しました。
「砂浜の沖にあった島ですね?」お嬢さまは覚えてました。
「そうじゃ」
「・・・あったっけ?」私は思い出そうとしました。
「リア。周囲の景色はちゃんと覚えとけよ?」ユリに注意されました。
「はい。仰る通りです」
この世界、地図もナシ、道もナシ、って状況がふつうにあるからね。
ランドマーク覚えてないとマジで生命に関わるんですわ。
「ずっとお屋敷育ちですからね・・・」モリーヌが擁護してくれました。
「前世は男子なんだろ?」とユリ。
「そうだけど。自然の地形はほとんど歩いたことなくってさ」
「ハァ? 男なのにか?」
「うん」
「深窓の王子ではないですか!」モリーヌが興奮しました。
「いや平民だから。マジでド平民」
「だったら、外ぐらい歩くだろ」
「歩いて行ける範囲、ぜーんぶアスファルト舗装されてたんだよ」
「ンなバカな国があるか。狩りもできないじゃないかw」
「できなかったんだよなぁ」
「──それで、あの小島に何かあるのですか?」お嬢さまが話を戻しました。
「うむ」
ツクノーさまは、ワイングラスを置きました。
真面目な顔で、
「あの島には、近付いてはならぬ」
「なぜでしょう?」
「豚飼いの女神の島だからじゃ」
「ブタ飼いの女神さま」
「うむ。男が近付くと、魔法をかけて、豚にしてしまうのじゃ」
「『変容』ですか」
「さて? 女神じゃからな。魔法の3つの才能に縛られておるかどうか、わからぬ」
「どっかで聞いた話だな」とユリ。
「与太話ではないぞ。船乗りや漁師が、何十人も行方不明になっておるのじゃ」
ツクノーさまは、ふたたびワイングラスを手に取りました。
「フターリア。特に、男になっとる時は、絶対ダメじゃぞ」
「え? 俺?」
「そなたじゃ」
ツナちゃんは、俺の腕をしっかり握ってきました。
「まことに、まことに、美男子ゆえ。豚飼いの女神の、お気に召さぬハズはない」
「いやぁ・・・それほどでも! ハハハw」
ニヤケた私は、ユリとお嬢さまに背中を叩かれるのでした。