ヤバすぎる悪魔の実を食べたのは、現代日本から転生して天竜人になった男。 作:レルクス
ソファに深く座り直し、テーブルに用意されたコーヒーを一口飲む。
「まぁ、いきなり言っても恐ろしさがわからんだろう。その前に、お前が見てきたものを整理しようか、『紅巣』のカーミラ」
「……何が言いたいのよ」
「この『ヴォイドール』の住民たちだ。なぜ、この俺を前にして、膝もつかず、怯えもせず、まるで道端の石でも見るかのように『次の会議がある』と走り去っていった?」
「……」
「なぜ、あの裏路地の連中は、この島の主である俺を無視して、倒錯したルーレットに熱狂していた?」
「それは……わからない。何かしらの、教育?」
俺は吹き出した。
「教育!? アハハハハッ! 天竜人への認識が、教育であんなに変わるかよ。まぁ、考える時間も与えてないし、それくらいでいいか」
仕方がないといえば仕方がないが、まぁ、俺がちょっと落ち着くか。
「次、お前が推測した俺の能力」
「……」
「お前は、俺の戦いを見て『ゴムの覚醒』と推測したな? 傷を与えない刀も、『ゴム』の影響だと思った」
「……違うというの?」
「ああ、違う。船の甲板でお前の部下に見せた『グミ・ピストーレ』も、ゴムの力じゃない」
カーミラの目が見開かれる。
当然だろう。
彼女が必死に組み上げた、この異常な島に対する唯一の論理的な『答え』。
それが今、あっさりと否定されたのだから。
「じゃあ、なぜ……! なぜ腕が伸びたのよ!」
「答えを言う前に、お前のような元女王に、この世界の『本当の価値』について講義してやる」
俺は指を一本立てる。
「『寿命』の価値だ」
「……!」
「ホルホルの実をご存じかな? ホルモンを自在に操る能力だが、たとえ猛毒に侵され、生きる可能性のない体であっても、わずかな復活の可能性を与えることができる。もっとも、奇跡の代償に『寿命』をコストとして要求するがな」
「……」
「オペオペの実の最大の技、『不老手術』は、術者の『残りの寿命全て』を捧げることでしか成立しない。ビッグ・マムの『ソルソルの実』ですら、相手の『恐怖』という制約がなければ『
俺は立ち上がり、彼女の前に立つ。
「海軍の英雄ガープでさえ、子供と老人なら、『子供の
カーミラの顔色が悪くなっていく。
「……わかったか? この世界において『寿命』とは、魂そのものであり、奇跡のコストであり、守るべき未来の価値そのものだ。それを動かすには、必ず等価交換の『コスト』か『制約』が伴う。それが、この世界の絶対的なルールだ」
カーミラは、その言葉の恐るべき帰結に気づいたようで、顔を青ざめさせる。
「まさか、あなたは……そのルールを……」
「そうだ」
俺は、彼女の絶望的な表情を見て、完璧な笑みを浮かべた。
「俺は『払わない』し、『捧げない』し、『制約』も受けない。俺は、その『寿命』という名の絶対的なリソースを、コストゼロで、自在に奪い、与え、創造する」
俺は、その名を口にする。
カーミラの顔が、真っ青になった。
「ノチノチ……命、そして、
「察しが良いな」
「ヒッ――」
「なぜ、ここの住民が俺を無視したか? 簡単な話だ。俺が彼女たちの『寿命の質』を『俺を空気のように扱う、優秀な会社員』と定義したからだ。この街は、俺の『寿命自在』の能力でデザインされた、完璧なドールハウスだ」
「あ……あ……」
「なぜ、俺の腕が伸びたか? それも同じだ。俺が、俺自身の『
「……」
俺は台車に拘束されたまま震えるカーミラの顎に、そっと手をかける。
「ああ、ついでに言っておくと、俺は『覚醒』している。刀のような無機物にすら『痛みだけを与え、傷はつけない』という新しい定義を与えることも出来る」
「それって……」
「俺の解釈において、『寿命に影響を与えない』ことは、『傷を与えない』ことと同義だからだ」
彼女の瞳から、光が消えた。
この世の絶対的なルールそのものを、足元から覆す存在。神が定めた『命のコスト』という概念を、嘲笑う存在。
それを理解してしまったのだろう。
「『紅巣』のカーミラ。お前の『
「は、覇気が、覇気さえ使えれば……」
「その通り。強すぎる覇気に能力は効かない。お前が万全な状態で覇気を出していれば、俺はお前を、思い通りに編集できない」
しかし、今、彼女の両腕は背中側に回されて、高純度の海楼石の手錠で両手を封じている。
「お前が能力者じゃなかったら、海楼石の手錠があっても、覇気で抗えただろうに、残念だったな」
「あ……あぁ……」
天竜人はしょっちゅう、『ゲーム』を行う。
ドレスローザ編におけるドフラミンゴのトリカゴの中や、先住民一掃大会。エルバフ編の神の騎士団など、それは誰もが納得する話だ。
だがそれと同時に、ドラム王国のイッシー20や、トラファルガー・ロー率いるハートの海賊団の『総勢20名』のように、『医学』と『20』という数字には密接な関係がある。
そして、『20』の国の連合軍が、今の世界政府だ。
ゲームと医学。
その両方を象徴するのは、『命』に他ならない。
俺の能力は、天竜人にふさわしい力だ。
「だが、お前の寿命は編集しない」
「っ!」
「お前は性奴隷、こんな社会シミュレーションではなく、俺の『奴隷開発ゲーム』に使う、性的資源にすぎない。精々、俺を楽しませるんだな」