ヤバすぎる悪魔の実を食べたのは、現代日本から転生して天竜人になった男。 作:レルクス
デボーチャリー号。
アリュール海賊団の船であり、ガレオン船を大きく上回ると資料に書かれているが……。
「なるほど、確かにデカいな」
俺は港に用意している執務室に来ていた。
港で仕事するときの部屋で、仕事に関して、割とどうでもいい書類を置いてある場所。
本当に重要な書類は全て『屋敷』においているので、ここに置いてあるのは、一回の取引が五千万ベリー以下の小遣い稼ぎのようなものだ。
執務室があるのは10階建てのビルの最上階だが、その窓から見える船は、確かに大きい。
「倉庫の区画が一番広いのでしょうか。誰もいない場所が多いようです」
「ほー、オランピアの見聞色でそれか。俺もそう見える」
オランピアの見聞色の覇気は、やたら広い。
その上で、聞き分ける、見分ける能力も高い。
まぁ、それができるようになるまで、徹底的に鍛えたからだが。
「……ところで、ジルの機嫌はどうですか?」
「んー、最近、ハンコックのプランを考えてて、遊んでないからか? あんまり機嫌はよろしくなさそうだ。さっきから7が見えやしない」
ジルは俺のペットであり、トリトリの実、モデル『ケツァルコアトル』を食べたスロットマシン。
鳥の姿にもなれるが、当然、スロットマシンとして鎮座することも出来る。
リールに関しては目押しだったり自動停止だったり、カスタマイズ可能だ。
ただ、リールの並びは一定ではない。
一ゲームごとに、別の配列に切り替わる。
7が少ない。明らかに少ない。
「……今日は、珍しく取引が少ない日だ。ビッグマムみたいな大口の相手もいない日。まぁ、めんどいことが少ないのはいいことか」
「そうですね」
クソジジイから、『五老星の判断ではないという建前にしろ』ということで、海賊団の隔離に動いている。
大口取引の多い時にそんなことをやらされるとめんどくさくはあったが、どうやらジジイの方も、俺に必要以上の迷惑をかけようとはしないらしい。
「港の様子はどうだ?」
「思ったより混乱しているようです。アリュール海賊団は『欲しいものを全て奪って去っていく集団』であり、港には様々な取引に関わる物があります」
「もしも奪われて、今後の取引に影響が出たら目も当てられねえって話か」
俺はため息をついた。
「で、船の上からクルーたちが見えるだろ。どんな様子だ?」
「港にある物資を望遠鏡などで見ながら、興奮しているようですね。見るだけでおいしそうだとわかるということでしょうか」
「あの港に歓楽街なんてないからなぁ。食い物しかないが、その食い物が一級品だ。補給用の港として最適、なんて思われてそうだが……舐めすぎだろうに」
レバーから手をはなす。
「ジル。出番だ」
「クエエエ……」
普通のペットサイズの鳥になった。
「オランピア。そろそろか?」
「はい」
「なら、港に出るか」
俺はソファから立ち上がる。
オランピアが壁のスイッチに触れて、窓を展開した。
「クエエエッ!」
ジルが飛んで、ビルの外に出る。
俺はソファの近くにおいてある刀の鞘を握ると、軽く走って、ビルの外で大きくなったジルの背に飛び乗った。
オランピアもビルから飛び出し……
「さーて、港まで来てもらってアレだが、お前らの『搬入口』はこっちじゃねえんだよなぁ」
ジルが、海賊船に向かって飛んだ。
下から声が聞こえる。
「お、おい、あれって……」
「巨大な鳥?」
「いや、聖界卿もいらっしゃる……こ、これから何が起こるんだよ……」
俺が直々に出る機会は……珍しいとは言われないが、多いとも思われない程度。
そもそもニライカナイは俺の箱庭だ。
ビッグマム関係者相手に取引を行うような場所で、調子に乗るような奴はほぼいない。
「……おっ」
オランピアの足元から、灰があふれ始める。
すぐに横に広がると、せり上がり、巨大な壁になった。
もうこれで、港にいる連中から、海賊船は見えない。
それだけではない。
さらに溢れた灰が鎖のようになって、海賊船に向かって伸びていく。
あっという間に、ガレオン船より大きな船が、捕獲された。
「ハハハッ! さすがだな。まあ、青キジみてえに、海をまとめて凍らせるような規模も世の中じゃあるんだ。俺の部下なら、港に立ちながら、海賊船の一つくらい捕縛してもらわねえと」
捕縛した海賊船に向かって、ジルは飛ぶ。
左手の親指で、刀の鍔を押し上げようとして……。
「あ、そうだ。さすがにジルの上で抜くのはマズイか。ビビッてしょうがねえ」
「クエェ……」
「まあまあ、クソジジイの刀と真正面からやりあえる刀だぞ。使うつもりはなかったが、通話が終わってから『うるせえ』し、使わんとしゃーない」
で、話している間に、甲板を見下ろせるところに来た。
「ほー……こんな真昼間から、甲板でいろいろやってんな、酒、肉、薬、ギャンブル……何でもそろってるようだが、パーティーにしちゃ『女』がいねえな。不思議なこともあるもんだ」
奪ったものだろう。いろいろ貪っているようだ。
「つーか、船が上手く動いてねえのに、なんか呑気だよなぁ、俺が近づいてるのに誰も危機感がないらしい。『極上の女』ってのは、それだけで、人の意識を夢に誘うもんなのか……まぁそろそろ、起きてもらおうか」
俺はジルの上から飛び降りると、そのまま、船の甲板に着地した。
「うおっ! なんだコイツ!」
「敵か!?」
「刀をもってやがる、剣士か」
「おい、お前らも抜け! 敵襲だ!」
「ギャッハッハッハ! 敵襲っつったって、一人じゃねえか! 随分良いもん着てるが、どうせはったりだろ!」
……もはや、ため息も出ない。
「しゃーねぇ。手早く片付けるか」
ジジイからもらった刀を、抜いた。
「……お、おい、なんだ?」
「なんか、寒気が……」
敵が武器を抜いてやっとか。
「コイツの名は『
ワンピ世界で阿修羅と言うと、九刀流を連想する奴が多いだろう。
ただ、その阿修羅をもってしても、その全身全霊を、この『一振り』に預けるしかなくなるほどのものだ。
「さて、雑魚狩り開始だ」
「ふざけんじゃねえ!」
大きな鉄の盾を構えた大男……2メートル50センチはありそうな、筋骨隆々の男が突撃してくる。
というか、盾しか持っていない。
そのまま突撃し、質量で俺を海に飛ばすつもりなのか……まぁ、別に無意味とは言わない。
そもそも、論外だ。意味は、議題にすら上がらない。
「退け」
鉄の盾を、振り下ろした刀で両断する。
「はっ? ……うがあああああああああああっ!」
盾では斬撃の威力を防ぎきれず、男の体から血が噴き出て、そのまま倒れた。
「お、おい、なんだ!?」
「あの分厚い鉄の盾が両断されたぞ!」
「た、ただもんじゃねえ。さっさと幹部に連絡を……」
電伝虫で、ようやく、『奥』に話が通じたようだ。
「まぁ、どうせ船の上だ。手前から順番につぶそうが、親玉が最初から出てこようが、関係ない……ん?」
目の前に、鋼鉄の壁が出てきた。
「間に合ったぞ! 俺は『ウォルウォルの実』の『壁人間』だ! ただの鋼鉄じゃねえ。どこかで研究されてた『合金』ってやつを再現したものだ。切れるわけがねえ!」
壁の奥からそんな声が聞こえる。
合金か。
まぁ、パンクのジジイからは『研究資料をとられた』という話を聞いていないので、そっちとは関係がないだろう。
とりあえず、刀を振り下ろす。
すると、豆腐のように切れた。
「うわあああああああああああああああっ!」
「なっ、バカな!?」
「あの壁が、切れた!?」
相当自信があったようだが……そんなにすごいだろうか。
斬ってみた感じ、能力者本人の懸賞金は1億と言ったところ。
まぁ、俺を相手にするなら、戦力になるほどではない。
「に、逃げろおおおおっ!」
「ん?」
近くにいた男の足がバッタのようになり、そのまま凄い跳躍で逃走を図る。
「ムシムシの実で、モデルは何かのバッタか」
俺は左腕を振りかぶると……。
「『グミ・ピストーレ』」
そのまま、前に突き出した。
「ゴバッ!」
そのまま拳が男をとらえて、壁に激突した。
「はっ?」
「えっ?」
「なっ……」
「の、伸びた!?」
「腕が伸びたぞ! 能力者だあああっ!」
甲板が騒がしくなった。
「お前ら本当に新世界側の海賊か? 腕が伸びた程度で一々騒ぎやがって」
ちなみに、元ネタのドイツ語版の呼び名は『Gum-Gum-Pistole』だが、こう……ドイツ語ってなんかかっこいいので俺はそう呼んでいる。
「さーて、見聞色で分かった内容から察するに、奥まで入らんと出てこないらしい。準備運動くらいになればいいんだがなぁ……」
とりあえず、奥に向かって進むとするか。
★
パンゲア城。権力の間にて。
「……あの程度の海賊団に、刀を抜かせて良かったのか?」
「刀自身の意思だ。私としても、抜く相手として格が足りすぎんが、ここはいいだろう」
モニターに映る、海賊船の甲板の映像。
確認しつつ、ウォーキュリー聖がナス寿郎聖に尋ねたが、『刀の意思』とのことらしい。
「エージェントが捕縛すると思っていたが、刀が騒いだから本人が出た。といったところか。しかし、久しぶりに見たが……」
「奴の能力の話か? 確かに、『
「異質……ではあるが……」
マーズ聖の言葉に、サターン聖が『異質』と返答したが、ピーター聖は少し唸っている様子。
「私から見ても異質だ。しかし……天竜人としてふさわしい能力。とも言える」
ナス寿郎聖はそう締めた。
それに対して、四人とも、異論はない様子である。