ヤバすぎる悪魔の実を食べたのは、現代日本から転生して天竜人になった男。 作:レルクス
東の海のナガグツ王国にあるスーツ専門ハイブランド。『ニョンニョ・ニャルマーニ』
SBSで『五老星はこの店の特注スーツしか着ない』と語られ、俺もそのスーツを着ている。
世間一般で見る天竜人のような、クソダサい宇宙服もどきで頭にシャボンをかぶっているわけではない。
刀を持っているが、どこかの国の高官、もしくは商人といったもので、『権力者本人』とは思われていない可能性がある。
そもそも、ニライカナイを『美味しい物がたくさんある場所』くらいにしか思っていない。
要するに、おそらくこの船に乗っている連中は、俺が『聖界卿』だと気が付いていないようだ。
「お、おい、早くこいつを倒せ! できた奴は、一週間、カーミラ様と夜を共にできるぞ!」
「一週間だと!?」
「マジか! 絶対ぶっ倒してやる!」
ビビっていた連中だが、クエストの内容と報酬が知れ渡った瞬間、武器を手に取った。
「男ってのはわかりやすくていいよな。まぁ、海賊なんだ。まともに生きろだなんて今更、野暮なこと言わねえよ」
さて、そろそろ甲板にいるのも飽きてきた。
奥に行かないと出てこないなら……。
「おーい、そろそろどうだ? もういいか? ……まだか、めんどくさい」
刀に向かって聞いてみたが、俺の覇気を吸い取ってきた。
まだ暴れたいらしい。
「はぁ、しかも、さっき腕を伸ばした時、機嫌が悪そうだったし、ゴム技もなしか」
「死ねええええええええっ!」
後ろから銃を持った奴がこっちに銃口を向けた。
が、俺の見聞色がそれを見逃すことはない。
「ゴムの体だ。銃弾は効かんが……」
飛んでくる銃弾を、刀で切り落とす。
「なっ、こ、コイツ、銃弾を……」
「ほいっ」
刀を振り下ろして、飛ぶ斬撃をぶち当てる。
「ぐ、がああああああっ!」
傷はついていない。
まぁ、激痛だろうが。
「ありゃ? 覇気を構えてろよ」
「な、なんだ。今のは……」
「ふあぁ……しっかり構えてな。さすがに……お前らを片付けた後で、まだ暴れ足りないとか言われたら面倒だ」
「ふざけんなああああああああああああっ!」
大砲をこっちに向けてきた。
まぁ、海賊船の甲板だ。それくらい置いているだろう。
飛んできた砲弾を刀で両断する。
「ぐっ、ほ、砲弾もきかねえだと」
「珍しい話じゃねえだろ。ほい」
飛ぶ斬撃で、大砲を両断する。
「うわああああああああっ!」
「はぁ、つまらん」
とりあえず、奥まで進まないと出てくるつもりはないらしいが……。
「……そうだ。よくよく考えたら、順路通りに行く必要はないか」
俺は刀を、引き絞る様に構える。
「な、何をするつもりだ!?」
「ああ……まぁ端的に言うと、雑魚狩りは飽きたんだ。出てこないのはいいが、直通で行こうと思ってな」
俺は真下に、突きを繰り出す。
すると、抜群の貫通力を持った『飛ぶ突き』が炸裂し、穴を開けていく。
「んなっ!?」
「バカな!?」
「何が起こってんだ!?」
随分驚いているようだが、まぁいい。
さて、行くか。
「ほいっ」
突きで『強い覇気を感じる高さ』まで精密にあけた穴。
そこに容赦なく飛び降りて、その階まで落ちていく。
「……ほう?」
着地して顔を上げると、そこは、とても広いパーティー会場となっている。
船の中ではあるが、天井の高さは5メートルはある。
ところどころ、柱に支えられて、酒池肉林の真っ最中だ。
甲板でも同じパーティーをやっているが、肉や酒、薬の質は、そっちとは比べ物にならないだろう。
「な、てめぇ、一気にここまでくるたぁ何様のつもりだ!」
近くにいた男が槍を構えて突撃してきた。
刀を一閃すると、槍ごと体を切って、血が噴きでる。
「ぐ、ぐあああああああああっ!」
「何様のつもり。か。よく俺に言ったもんだよ」
溜息を吐いて、一番奥を見る。
とても豪華なソファだ。
豪華で、きらびやかで、ふかふかな素材のソレ。
明らかに高級ブランド物だ。
手入れしないとすぐに駄目になりそうなものだが……技術者を一緒に下僕にすれば問題ないということなのか。
「フフッ、こんなところに一気に下りてくるなんて、せっかちな男」
そこに座るのは、ワインレッドのドレスを着た美女。
美貌もスタイルも抜群。身長は185センチだろうか。
その身長をもってしてもわかるほどの爆乳の持ち主であり、谷間が良く見えるようになっている。
深いスリットから見える足も長く、肉付きもいい。
だが腰の括れはすごいものだ。
なるほど、優れた歓楽街の高級娼館でもお目にかかれないレベルなのは認めよう。
「お前が紅巣のカーミラか。随分、美味そうな体をしてるな」
「随分いいスーツを着てるけど、どこかの高官なのかしら。お名前は?」
「……いつもは名乗らずに潰すだけだが、お前らの末路は決まってるし、監視してるのもジジイ共だけだ。別に名乗ってもいいだろう」
笑みを浮かべつつ……。
「世界貴族・天竜人。聖界卿イーザンバロン・ムーゲ聖。お前たちが物資を奪おうとしている島、『ニライカナイ』の主だ」
「世界貴族だと」
「天竜人……あの服もシャボンもしていないのに……」
世間一般の天竜人となると、服装は決まっている。
そう、あのダサい奴だ。
そのイメージがあるのか、高級ブランドスーツを着こなした男が天竜人だとは思っていなかったのだろう。
「へぇ、天竜人……ただ、わかってるわよね? 新世界は、四皇が支配する海。世界貴族の権力も及ばない場所。一部の強者が全てを牛耳り、縄張り争いの真っ最中。そんな場所よ?」
「重々承知だ」
カイドウはワノ国が本拠地になるが、ドフラミンゴともつながりがあり、そのドフラミンゴは闇の取引で様々なところに網を張り巡らせていた。
ビッグマムは言わずもがな。様々な縄張りでお菓子を作らせている。
白ひげもまた、多くの縄張りを持ち、その名で守っている。
そこに、天竜人だからといって好き勝手にできるはずもない。
「……ただ、お前らの末路は決まってるんだ。そのために動くだけだ。別に俺である必要は本来なかったんだが、コイツがうるさくてよ」
刀を見ながら言う。
それに対し、カーミラは微笑んだ。
「随分舐められたものね。まぁ、夜を共にする権利を得て、ベッドの上なら、いくらでも私を舐めまわしていいんだけど」
「ほー……」
ファンサービスをしっかりするタイプらしい。
「私の懸賞金。知らないとは言わせないわよ?」
「15億だろ? まぁ、四皇のナンバーツーくらいはなれるだろうな」
「そうよ、縄張りの頂点たちに食らいつける位置。あなたにそれがわかってるのかしら?」
「わかってるさ。まぁとりあえず……お前はここで終わりだ」
刀を手に、カーミラに向かって歩く。
「残念ながら、倒れ伏すのはあなたよ。あなたが能力者なのはわかってる。海楼石の錠をつけたまま、私の言いなりになってもらうわ」
カーミラが立ち上がって、一気に接近してくる。
さて、何かの能力者なのは確定だが……。
「シッ!」
柄をうまく持ち替えて、峰が前に出るようにする。
そのまま、カーミラに切りかかった。
「フッ……」
カーミラは太刀筋を見て、攻撃を避けると、そのまま蹴りを繰り出してくる。
顔を狙ってきたが、武装色で防御した。
「……ほう、なかなか鋭い武装色だ」
「あなたの方は硬いわね」
「まあな」
次々と斬撃を繰り出すが……当たらない。
まあ、斬撃の威力は確かだから、カーミラの後ろはとんでもないことになっているが。どうせ解体する船だ。どれだけ傷がつこうとかまわん。
「あらあら、随分荒っぽいわね。そんなんじゃモテないわよ?」
「関係ねえな。支配して俺好みにするだけだ」
「そんな当たらない太刀筋で、よく言うわ」
確かに、攻撃は当たらない。
ただ、見聞色にしては、刀を見すぎだ。
というより……そもそも、見聞色を使っているように見えない。
「……」
「隙あり!」
脇腹に蹴りが飛んでくる。
だが、武装色で防いだ。
「なんだ? 今のは」
刀を振る。
だが、当たらない。
カーミラが蹴りを繰り出してくる。
武装色で防ぐ。
六式の
「……」
「あら、何を考えているのかしら」
「動きが、的確すぎる」
「!?」
カーミラの頬が少し動いた。
先ほどから、動きがあまりにも的確過ぎる。
新世界レベルで達人同士の戦いなど、基本的には見聞色での読み合いも込みだ。
だが、カーミラはしっかり俺の動きを見て動いている。
俺が何をしようとしているのかという、内側の声を聴く様子がない。
そして、脇腹への蹴り。
武装色で防御したが、隙はわざと作った。
問題なのは、その隙に対する反応が早すぎることと、身長が2メートルある俺への攻撃としても的確過ぎる。
ワンピ世界の一部はでかいやつばかりだが、モブから何から、デカいわけではない。
体に叩き込んだ戦闘の反復稽古は、普通の人間に対して発揮されるもののはず。
「確かに強いけど、まだまだね。そんな剣術で、私に攻撃を当てるなんて無駄よ」
「……」
……まぁ、この船の広さ程度なら、俺が覇王色を使えば、全てが威圧範囲だ。
しかし刀がうるさいので、満足するまで覇王色は使わない方がいい。
で、刀を満足させるなら、攻撃を当てざるを得ない。
攻撃を当てるなら、まず、能力を解読しなければならない。
「……フフッ」
ワンピ世界に転生して18年。
確かな身体能力と武装色を持ちながら、一見するとよくわからん能力の敵。
こんな探り合いができる相手に会えるとは、思ってもいなかった。
阿修羅真打の機嫌が悪くなければ、そもそも俺が出る必要もなかったし、俺が出るとしても、本来なら覇王色の覇気で終わる話だが、『特殊能力バトル』としては面白い。
阿修羅真打からの、『たまにはこういう勝負もしておけ』という助言だろうか。
……ただ、剣術、もうちょい、ジジイから教わっとけばよかったなぁ。いや、俺の剣術も、『鷹の目』の準備運動くらいは付き合えるから、別に弱いわけじゃないんだけど。