それは突然の出来事だった
「未来きた…」
起きた瞬間、発達しすぎた現代文明を目の当たりにしていた。
何を言っているのか自分でも理解できない。
ニュースが映る気球ロケット、全自動で自ら動くロボット、そして何より美男子美少女しかいない世界。
夏の日差しに蝉の鳴き声、夏の匂いを運ぶ風。ここは日本で間違いないだろう、その証拠に皆日本語を喋っている。
そうだ。間違いない。ここは未来だ
「どうしてこんなことになったんだっけ」
機能停止直前の小さな脳みそを振り絞って思い出す
「あれは確か…」
ゆっくりと繊細に記憶は蘇って行く
おい豚、キモいんだよ!
ウグッ ヒィヒィ、ゆ、許して…
お前がっ!視界に映るとっ!吐き気がしてっ!迷惑なんだよっ!
う、うう…う…
痙攣してやがる!!あはははは!
不良の三人組に囲まれ、蹴られ続ける
僕は何もしていないのに
なんで…
『これが私の子…嘘でしょ、気持ち悪いッ!こんな子いらないわ』
『お前の顔も見たくない…なんでこんな奴が…』
どうして僕は…
この世界では僕のような豚は人としてみられない
ヌメヌメと油ぎった汗
嫌な男男しい臭い
荒い鼻息に口
でかい見た目に貧弱な力
背が低くて出っ腹
その醜い見た目から『四ノ宮
(僕の性格が悪かったの?)
もっと人に優しくしてれば良かったのか、ちゃんと謝れたら良かったのか…
(僕がもっとちゃんとやっとけば良かったの…?)
勉強、生活習慣それらをちゃんしてれば良かったのか…
(いや…僕は悪くない…)
だが、生まれてきたから全て否定されてきた時点で、そのスタートは随分と送れてしまった。それは今更走っても勝てないと知っていて走るようなもので、気力なんてもうなかった。
(生まれた時からもう、僕の人生は終わっていたんだ)
達者なトーク力があったら、ちょっとした特技があったら、そんな現実逃避ももういずれしなくなっていた。今ではそんな自分を受け入れてしまっている、立派なゴミクズである。
人を嫉妬し、努力している者を嘲笑う、そんな生きる価値も無い豚が僕という存在だ
(どいつもこいつも、結局はもともと"普通"があったから上手く言ったんだ、誰も僕の気持ちなんてわかりゃしない)
そんな僕は、ただただそんな妬みを呟くことしかできなかった
「…帰らなきゃ」
地面に散らばった教科書を拾う。
いつもの日常。こんなの日常茶飯事だ。
馬鹿みたいに殴られて金をふんだくられ、落ちた教科書を拾って帰る。なんでこんなことされなくちゃならないのだろう。
まぁ、もう慣れたが
反撃したとしてもめんどくさくなりそうだし、帰りを待っている女神たんに癒して貰えばいい。
女神というのは魔法少女ミシェルたんのことである。どんなに辛い状況でも負けずに戦い続ける。そんな姿を見てからもう10年以上は経つ。ずっと自分の支えになってくれるから、自分の女神なのだ。
銀髪、碧眼、小ぶりな身体、小さい胸、ロリ…
いやいやいやいや、そんな目では見てはいけない。彼女は女神なのだから
「それにしても…なんだか今日は頭が痛い…」
偏頭痛だろうか。チクチクと頭に針が刺さってるような痛さが永遠と続いている。
どっかダメなところに拳をもらったからか、原因はわからない。がしかし、とにかく痛い。
「くっ…!?」
ズキッとトンカチで頭を殴られたかのような瞬間的痛みが僕を襲う
「なんだ…これ…」
いつもの帰り道、痛みを背負いながらいつもの信号前を止まる。
目眩、吐き気、眠気、状態異常だらけな中、意識が朦朧とする。霞む目前には、赤光るものは確認できていた。
信号前、大きなトラックが近づく
「わぁぁぁぁい!あははは!」
女の子の声。最初は後ろからだった。
可愛らしい声はアスファルトを強く踏み締め、タタタタと元気よく走る。子供は風の子、本来微笑ましい光景だが頭痛が邪魔してそれどころではない
声は後ろから隣、隣から前へと行く
(ん?前?)
霞む目を無理矢理開くと、そこには大きなトラック目前に動けなくなっていた女の子だった。腰を抜かして大泣きしており、とてもその場で立って逃げれるような状況には見えなかった。
トラックを見るとブゥゥゥゥゥゥンと止まる気配がない。
それはつまり
「危ない!!」
この時、ダンッととてつもない衝撃を受けたのは覚えている。頭の痛みで思考が回らなかったのか、自分は飛び出してしまったらしいのだ。
鉄の味に、体全身の痛み。女の子の泣き声に、周りの悲鳴。トラックの遠くなっていく音
そして心臓の鼓動がゆっくりになっていく音
もうそこから記憶がない
「そうだ。僕は車に轢かれたんだ」
あれから記憶がない。つまりはそういうことだろう。
「女の子を守るために、僕が飛び出した?」
女の子を突き飛ばしたのを覚えている限り、助けに行ったのは確実であろう。だがしかし、こんなチキン野郎にそんなことをする勇気はあるだろうか
「信じられない。いや、今はそれどころじゃないか」
問題なのは車に轢かれたことでも命を顧みず女の子を助けたことでもない。未来に来てしまったということだ
「未来、いや異世界か。どっちかわからないけど、どちらにしても異常すぎる」
車に轢かれたら異世界にきていた。最近のラノベでもここまでベタな展開で異世界に行ったりしないというのに。
「とりあえず状況を整理しよう」
考えても無駄だと判断した僕は現状把握することにした。
まず、ずばりここはマンション、または学生寮だろう。
地面が明らかに遠い、下のベランダから順番に見てだいたい七階と言ったところか。自分が学生証を持っていることから学生寮である確率が高い。マンションでここまでだと中々家賃が高いだろう。学生寮でなければ高校生にとってはなかなかきつい値段のはずだ
四ノ宮不細男。高校一年生。学生証を見る限り、あまり経歴は変わっていない。
「つまり僕は高校生で、この高校に行けばいいのかな。けどこの教科書、何書いてあるか全然わからない」
意味を理解できない単語の羅列が教科書に書かれていた。物理演算やら何やら、余りにも教育が発達しすぎている。
「学生生活、不安しかない」
行くとして、まともに学べる気が全くしない。
「これからどうすれば…高校もどこにあるかわからないし」
そんなことを考えている時、電話が鳴る。
《プルルルル、プルルルル》
鳴ったのは携帯電話、ガラケーである。こんな発達した技術から急にガラケーとは、やはり異世界なのだろうか
「も、もしもし…」
たどたどしくもそう返すと、可愛らしい幼女の声が帰ってくる
《あ、四ノ宮ちゃんですか。はじめまして。これからあなたの担任になる月詠小萌先生ですー》
これからあなたの担任になる、とは。
声からして明らかに幼女だというのに担任を名乗っている。そしてまだ入学していないような言い回しをしている。状況整理に謎二つが追加され、またまたややこしくなる。
「え、えっとすみません。た、担任ですか?」
混乱しながらも謎について聞いてみる。
《あー!もしかして子供だと思ってるのですかー?こんな声でも先生は立派な大人の女性なのですよ》
「は、はぁ」
全くもってそう聞こえない
《えっとー。四ノ宮ちゃんは今日はもう…この時間に登校しちゃってください」
やはり、転校生らしい。変な言い回しだと思っていたが、それなら辻褄があう。
「はい…わかりました。でも、いややっぱり先生というのは…」
《先生なのです!とにかく早く来るのですよ》
電話が切れてしまったようだ。
「来るのですよって、どこに」
高校の場所がわからない。しかも転校生とは、後が怖い。
いや、待てよ。まだ救いの定番はある
「身体が変わって、ないか」
鏡を見たら化け物が映った。異世界転移しても、身体の呪縛は追ってくるのか
「どうしよう…いや、行ってみるしかないか」
迷いに迷った挙句、机に乗っていた銀行通帳と財布を見た後、制服を着て鞄を持ち、外へ出ることにした。
何が何だかわからないが、きっと登校すればイベントも進むだろう。
というよりは、早くこの世界を見てみたい。少しだけワクワクしているという興奮が勝っただけだが。
「おぉ…暑い」
扉を開けると蒸し暑い風が一気に押し寄せる。今日は自分のようなデブにはかなり厳しい猛暑日らしい。蝉のうるさい鳴き声が蒸し暑さを増長し、部屋から出てたった数秒しか経ってないというのに汗が噴き出る
だが、なんだか少し気持ちがいい
見慣れない景色を見るのが久しぶりだからだろうか。いつもいじめられるような街で一人暮らししていた自分にとって、新世界に踏み込むのはとても刺激的で魅力的だった
…やはり帰る方法を探さなきゃならないのだろうか
異世界転移系ラノベだったら、皆巻き込まれたという感じで大体は元にいた世界に帰る方法を探すというケースが多い。
だが自分は巻き込まれたというか、偶然の産物というか、全く困ることはなかった。逆に向こうも自分がいなくても困ることは一切ないだろう
もういっそのことこの第二の人生を歩んでもいいのではないか
「あぁぁぁ、不幸だ」
するとそこには地面に散らばったお金を涙ぐみながら取る少年が1人
「これで全部。あ、一万円札がない!?」
開いたドアから後方、部屋の中を確認するとどういうわけか諭吉が迷い込んでいる
「探せ探せーどこかにあるはずだー」
学生にとっての1万円札。それがどれだけ貴重なものか、同じ学生なら気持ちがわかる。
僕はまた部屋に入り直すことにした
「いやー助かったぜ。サンキューな」
あれから僕はこの
「にしてもお前が転校生かー。どおりで見ない顔なわけだ」
彼からの情報によるとここは学園都市という、学生の育成に全力を注ぐようなところらしい。
技術開発局からさまざまな提案を推奨され続けた結果、このような警備ロボットやら画面付き気球ロケットやら、近未来的になってしまったようだ。
しかもこの世界、もしかしたらバトル系なのかもしれない
最初は青春ラブコメ系世界に入り込んでしまったと思っていた。ラブコメ系の場合は痛いことも少ない分、物語に干渉しなければ気兼ねなく住むことができるという異世界転移するなら一番いい世界だ。
だが、その逆に回避したいジャンルの一つにバトル系がある
理由は痛い。ただそれだけである。物語によっては死ぬ可能性も十分あり得る。さらにこの顔だったら、キモ死ねで人生が終わる。ちなみに一番転生したくないのはサイコホラー系と鬱系である。理由は言わずもがな、嫌である
そんな話はいいとして、バトル系かもしれない理由は超能力という単語が彼の口から出たことだ
先ほどの学生の育成というのは主に超能力の開発らしい
というのも超能力というのは科学によって開発された力であり、その種類は森羅万象とのこと。
レベル0からレベル5までいるらしく、レベルが高いほど能力は強いらしい。しかしレベル0は無能力者とも呼ばれ、超能力を持っていないものに名付けられる名称らしい。
この男も無能力者らしい
「なんだそれ。親の身勝手じゃんか。そんな名前つけられて四ノ宮も大変だなー」
「もう慣れたよ。上条君も不幸だらけで大変そうだね」
「そうだな。というか俺らって結構似たもの同士なのかもな」
あれからなんとか会話が続いているが、なんというかこの男はすごい
僕なんかと喋って笑っている人を見るのは初めてかもしれない。いつもはキモがられるだけなのに、上条君は何気なく話してくれる。どこか器が大きい。
「おぉカミやん」
目前からそう話しかけてきたのは金髪のヤンキーだった。そして隣に青髪にピアスをかけた男がいる。
「それにしてもー隣のエロ同人に出てきそうな竿役はだれー?」
「おいお前…いや確かにそのまんまだな」
キモと言われると思いきや、また普通に話しかけてくる男2人
「みない顔、転校生かにゃあ?」
「いや、神様だ」
「おぉ!男根の神様か!なら絶倫ちんこください!」
なんやかんやあって、信じられないことに友達が3人できた
「「「ははー神様ー。私たちに漢の恵みをくださいー」」」
「四ノ宮ちゃんもうこんな沢山友達ができて、先生はとっても嬉しいです」
「は、はは」
いつの間にかクラス全員、主に漢が友達になっていた
青髪ピアス君が変な噂を広めてしまったせいで、僕はいつの間にか男根教という宗教の教祖となってしまったらしい。
考えれば考えるほど頭が痛くなる。どういう状況なのだろうか、なんという世界なのだろうか
あれから自己紹介も終え、痛い目で見られ、そこから宗教が広まり今に至る
「よぅ教祖様。俺にもお恵みをくれよ」
「はは。いつも言ってるけど僕は…」
「わかってるわかってる。そんなん信じねーよ」
今話しかけてきたのは坊主の男子高校生である。
前の座席に座っていて、教祖と言われている僕を面白がっているクラスメイト。ついさっき自己紹介も終え、何故か仲良くなった。この世界の住人は優しい奴しかいないのだろうか
「それよりもびっくりしたろ」
「え?」
「小萌先生だよ小萌先生。どう見ても子供なのに教師、最初はみんな勘違いして子供が紛れ込んだと思い込むもんだろ?」
「あはは僕も驚いてるよ。電話で声が子供っぽいと思ったら、まさか見た目まで」
あれから小萌先生にも会い、電話の声通りの人が来た。まだせめて声が子供だと言うならわかるが見た目まで子供なのなら、それはもう子供なのではないか
「信じられないよな。学園都市の七不思議の1人で、俺は今でも子供だと思ってるしな。合法ロリってやつ?」
「はーいそこー。うるさいのですよー」
「す、すみません」
僕が謝っていると、先ほど喋っていた男子生徒がお腹を抑え始める
「く、せ、先生。こ、お、お腹痛いんで、保健室行ってきていいですか?」
「それは大変ですね。早く保健室行ってください」
「は、はい…」
結構冷たい反応。聞こえていたのか、少し怒っているようにも感じた
「お腹が冷えるか…」
「やっぱりちょっと心配ですね。ちょっとだけ補習の時間にするですよー。わかってるとは思いますが、ふざけちゃめっなのです」
「僕にはほど遠い言葉だな。それ」
こんな夏まっしぐら、ちょっとエアコンつけただけで冷えることなどなかなかない。こんな腹を持っていたら暑くさえ感じる
それにしてもどうしようかこれから。
この学園都市内で出来ること、それはほぼないだろう。
現状僕は無能力者。この状況で何か行動を起こしても、結局何にもならないだろう。今では友達もでき、良い先生にも恵まれ、お金もある。これからのお金は同人誌でも売ろうかなと思うのだが、この世界に同人誌という存在はないのだろうか。まぁどちらにしろ稼ぐ方法もいろいろあるだろう
こんな恵まれた環境で行動を起こすなんてとんでもない。これからはゆったり人生を歩もう
車に轢かれたのは運が悪かったが、女の子を助けて尚且つ異世界転移もしてしまうとは一石二鳥。とても運が良かった
だが、ここで一番してはいけないことがある。
それは主人公への干渉だ
そして僕の予想だとこの世界の主人公は上条君だと思われる。不幸体質に強い正義感、そして優しい。これらは主人公項目に全て当てはまる。何より彼の周りの個性がとてつもなく強い。エセ関西弁と語尾ににゃあをつける男2人の友達、確実に主人公ポジの典型例である。
主人公でなくとも物語に関係あるのは間違いないだろう。
つまりは、僕の今すべきことは彼から遠ざかるということだ。
まずは主人公の彼からとにかく逃げる。それしかないだろう。この世界は間違いなくバトル系、関わった途端能力で消し飛ばされる可能性大。
優しくしてくれた彼には悪いが、少しでも気を向けたらこちらの身が危ない。いや、どちらにしろこんな気持ちの悪い友達は向こうからお断りだろう。
「よぉ」
モブであろう男が帰ってきた。
「お腹は大丈夫なの?」
「あぁもうすっかり元気になっちまったぜ」
これからはこの男と仲良くしよう。顔を見ればごく普通のモブだ。
きっと今の僕は少し出番ができてしまった準モブであるが、これから少しずつ真のモブになっていけばいい。
「はーい補修は終わりでーす。また授業に入るのですよー」
「小萌せんせー。もう授業終わってまーす」
「はぇ!?もうそんなお時間ですかー。まだ半分しか授業できてませんよぉぉ」
よし、これからはモブ修行をしよう。
「なぁなぁ。先生って意外にも大人なのかもな」
よし来た。考えろ。モブらしい発言、モブらしい発言。モブに適した発言は。
「いやいや子供でしょ」
「いや意外にそうじゃないんじゃないかって最近思えてきたんだよ」
「最近ってさっきまでは子供って言ってたよね」
「さっきまではな。今はなんていうんだろうな。身体はあれだけどさ、言う言葉一つ一つにバブみを感じられるって言うかさ」
「…そ、そうかな?」
あ、本当に意味わからなくて戸惑ってしまった。
「まぁお前にはわからないよな。けどいずれわかるようになると思うぜ」
「そういうものかな?」
「そういうもんだよ」
モブ的にはどうなんだろうこの会話は、少し異様な気もしたが前よりもマシではないだろうか。点数的には、20点ぐらいだろう。
「あと、お前の宗教。俺も入るわ」
「あっ……うん……」
そうだ。男根宗教教祖というとてつもない個性があった。モブは無理だ
「ならギャグ系かな?」
モブがダメならギャグ系のキャラになってなんとか命を取り止めようか。
と言っている今の僕の現在地は建物の屋上、それも真夜中であった。
「はぁ。あまりにも冒険しすぎた。もう夜になっちゃったし、流石にもう帰らなきゃ」
あれから授業も終わり、やることもなくなり、もっとこの世界のことを知ろうと外へ出かけたら、いつの間にか夜になっていた。
「流石に全員が全員、僕に優しいわけないよね」
周りの目はやはり棘があった。それもそうだ。こんな醜い人間がいたのかみたいな周りの反応はどこの世界でもある。実家の安心感さえ感じた。
「よし、帰ろう帰ろう」
実は今日、夏休み前日らしい。
小萌先生から明日が夏休みだと聞き、少しテンションが上がっている。高校一年の夏休み、やることといえば溜めに溜めたアニメを一気見することである。今までのバイトで貯めた金を十分に使い、冷えたクーラー部屋でアイスでも食いながら充実した夏休みライフを過ごす。
なんて考えていたが、貯めていたお金も溜めていたアニメも、今ではもう発散できずにむず痒いまま無駄になってしまった。痒いところに手が届かなかった、で終わってしまったのだ。痒いまま描くのを我慢していたというのに
こんなことになるのなら、溜めていたアニメも早めに見れば良かった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
なんてことを考えていた途端、どこからか走ってくる音が聞こえる
「え…」
そこにいたのは月夜に輝く銀髪を靡かせ、エメラルドでも嵌め込んだような碧眼を持った小さな少女だった。髪は腰まで届いており、その髪に合うような整った顔立ちをしている。
どこかの教会からきたのか修道服を着ている。
だがこの男はもうそんなことを考えていなかった。
「ミシェル…たん?」
「ミ、ミシェル?」
僕がずっと心の支えにしていたミシェルたんにそっくりだったのだ。
あの志の強い瞳に、愛らしさ満点の頬っぺた。首筋に蕾ほどの若さを感じられ、抱きつきたいほどの圧倒的可愛さ。正にミシェルそのものだった。
「どこへ逃げても無駄ですよ」
その後ろから、また女の子の声がした。
いや、女の子というより女性と言った方がしっくりくる。その正体は広い花園の中から圧倒的な存在感を放つ、まるで凛と咲いた一輪の花を体現したような美女であった
腰まで届く髪をポニーテールに結んでおり、その瞳はナイフのように鋭い。シスターと正反対な、大人の女武士といったところか。
白いTシャツに片方切れたジーンズを着ている。Tシャツは腹が見えるように結んでおり、腰のベルトには刀を差している。
「…ど、どうしてここに…人が…」
女性はそう目を見開く。まるで幽霊でも見るように
「…人払いのルーンが効いていない?…いやそんなことが」
ブツブツと呟く女性、そしてこちらを見上げるミシェルたん。いやシスター
瞳を見れば、その無垢さが窺える。
そして僕はそんなミシェルたんを目の当たりにして思考を停止してしまっている。
が、この状況はまずいということだけは理解していた。
「…あなた、何者ですか」
刀に手をかける女性、その手はいつでも刀を抜けるようにギッチリと固定されている
その目は正に殺意そのもの
一言でもいう言葉を間違ったら斬り殺される。そう思った。
ntr要素を含むかどうかは定義が難しいです。どちらかと言えば背徳的な感じです。