配信しか出来ないと追放された俺、迷惑系エロ配信者になってダンジョンで【通信】スキルで好き勝手する事にしました 作:九凪
とある小さなダンジョン。
新宿ダンジョンや梅田ダンジョンといった巨大なダンジョンではなく、とっくに攻略され尽くし、魔素もなかば枯れ果て人気も無くなり人の出入りも無くなった小さなダンジョン。
そんなダンジョンの薄暗い部屋に掲げられたモニターなには、いくつもの画像が移っていた。
御岬瀬里奈の復帰配信、そしてダンジョンへの再挑戦。
それは多くの人々に希望を与え、同時に嘲笑の的ともなった。ニュースサイトの見出しが次々と更新される。
『奈落のヒロイン、奇跡のカムバック!』
『傷だらけの歌姫、再びステージへ』
『ダンジョンに咲く一輪の花、御岬瀬里奈の軌跡』。
画面には、リハビリに励む彼女の姿、再びスキルを振るうダンジョン内での戦闘シーン、そして涙ながらに感謝を伝える記者会見の様子が映し出される。
彼女の歌声が、かつては暗闇だったリスナーの心に響くように、希望のメロディを奏でる。その動画は瞬く間に拡散され、再生回数は右肩上がりに伸びていく。
コメント欄には「瀬里奈、おかえり!」「負けるな!」「応援してる!」といった、温かい言葉が溢れかえった。
彼女は、奈落の淵から這い上がった、まさに「再生の象徴」だった。
そしてその隣には……
『はい! というわけでですね! この可愛い瀬里奈ちゃんを助けることができたわけで、とてもラッキーで私達とてもみ嬉しいので!
彼女の安否は! 瀬里奈ちゃんのチャンネルのリスナーたちにかかっていまーす!』
明るい声が響く。
アメリア・スミスという少女が、瀬里奈を弄ぶと残酷な宣言をしたシーンだ。
『いやあああーーーーっ!』
瀬里奈が叫び、そしてその裸体が少しずつあらわにされていく。
そして……黒井勇樹という男、この惨劇の主犯が、瀬里奈を犯していく。
二つの種類の動画が混在するモニターの光に照らされ、御岬瀬里奈は部屋の中にいた。
外界の喧騒とは隔絶された、静かで、しかし熱を帯びた空間。モニターの明かりが、部屋の奥に置かれた大きなベッドをぼんやりと照らす。
その上では、瀬里奈が一人の男の上に跨り、腰を振っていた。
瀬里奈は当然のように裸だ。全裸ではなく、学校の制服をはだけさせ、その乳房を揺らしていた。
男は、黒井勇樹。彼女を奈落の淵に突き落とし、その姿を世界に晒した張本人。
「んっ……ふぅ……っ、勇樹、さま……もっと、深く……」
彼女の口から漏れるのは、甘く蕩けるような嬌声。
その瞳は潤み、頬は桜色に染まっている。
先ほどの動画で映し出された、恐怖と絶望に満ちた表情とは真逆の、恍惚とした表情だった。
彼女の腰は、まるで自らの意思を持っているかのように、勇樹の体に合わせてしなやかに動く。
嫌がっている様子は微塵もない。むしろ、その快楽に身を委ね、全身で貪っているかのようだ。
珠のような汗と、喜びの涙の粒、口から垂れる涎の雫が宙に宝石のように飛び散る。
(あれ……私、なんでこんなことをやっているんだっけ?)
朦朧とした意識の中で、瀬里奈はふと疑問を抱いた。
しかし、その思考はすぐに快楽の波に搔き消される。脳髄を痺れさせるような感覚が、彼女の全身を駆け巡る。思考は霧の中を彷徨うように曖昧になり、目の前の快楽だけが、唯一の真実として彼女の意識を支配する。
(この人は……そう、私を……イレギュラーモンスターから助けてくれた、命の恩人……そして、私の復帰をずっと応援してくれていた人……)
断片的な記憶が、都合の良い形で脳裏に浮かび上がる。
奈落の底で、得体の知れないモンスターに襲われ、絶体絶命の危機に瀕した時、誰一人として助けに来なかった。
そんな中で、ただ一人、彼女の前に現れ、救いの手を差し伸べてくれたのが、この目の前の男、黒井勇樹だった。
あの時の恐怖と絶望を、彼は光に変えてくれた。彼女の心が砕け散り、社会から見放された時も、彼は陰ながら、ずっと彼女を励まし続けてくれた。
そう、彼女の「再生」を、誰よりも強く望み、支え続けてくれたのは、この人なのだ。彼女の心は、彼への感謝と、深い愛情で満たされていた。
部屋の片隅では、山田とアメリアが、その様子を冷めた目で眺めていた。
「しかし本当に便利ですね、【通信】スキルというのは」
山田が、どこか感心したような、しかし皮肉めいた口調で呟く。その視線は、快楽に喘ぐ瀬里奈と、彼女を抱く黒井勇樹に向けられていた。
「本当だよねー。まさか遠隔操作できるなんて、チートじゃん」
アメリアが、つまらなそうに髪を弄りながら言う。その言葉には、どこか呆れと、しかし確かな興奮が入り混じっていた。
彼女は、黒井勇樹の持つ【通信】スキルが、ダンジョンの外でも、ここまで強力な効果を発揮するとは想像していなかった。
「言うほど万能無敵じゃない。他のスキルと同じくダンジョンの外では使えないしな。だがダンジョンの中から簡単な思念を送る事は出来ると、この子で検証できた」
勇樹は、瀬里奈の腰を抱き寄せながら、冷静な声で答える。その表情には、一切の感情が見て取れない。まるで、目の前の行為が、単なる実験の延長であるかのように。
「その通信で、瀬里奈さんは自分の意思でこのダンジョンに来て、そして黒井君に抱かれている。もはや洗脳じゃないですか」
「そんなことはしていない。ただずっと【通信】スキルで陰ながら応援していただけさ」
勇樹は、あくまで淡々と答える。彼の言葉の裏には、巧妙な欺瞞が隠されていた。彼は、瀬里奈が奈落で精神的に深く傷つき、絶望の淵にいた時、ダンジョンの奥底から、彼女の心に直接語りかけ続けていたのだ。「がんばれ」「立ち上がれ」「お前なら出来る」――弱り切った心、砕け散った心に、まるで慈愛に満ちた声のように、希望の言葉を送り続けた。
それは、絶望の淵にいた彼女にとって、唯一の光であり、救いの手だった。そして、その光は、いつしか彼女の心を完全に支配し、彼への絶対的な服従へと変貌させていった。
「それにしたってマッチポンプでしょうに。いえ、スクラップ&ビルドですかね?
あなたが壊して、都合よく再構成――」
「そうでもないさ」
そう言って勇樹は、スキルを使いモニターをいじる。
そこに浮かんだのは――
『有名人気取りが絶望する瞬間はいつ見てもたまらないw』
『やっとイレギュラーモンスター出て来てくれた、これで死ぬかな』
『推しが失敗して死ぬ瞬間のためにずっと応援してる』
『イレモンがんばえー!w』
『瀬里奈ちゃんのグロ死楽しみwww』
「これは?」
「こいつがイレギュラーモンスターに襲われた時の、配信アーカイブのコメントだよ。
多くの心配する書き込みの中に、こういうのがあった」
その言葉に、瀬里奈の身体がびくんと動く。
快楽に震えたのではない。恐怖だ。
だがそれを勇樹は、胸を揉みしだき、腰をより一層強く動かすことで、彼女の気をそらす。
「偶然これを見てしまった時に、こいつの心は砕けた」
【通信】スキルで後からわかった事だった。
「それはそれは。同情しますね」
「うーわ。やっぱクズばっかだねー」
「ああ。ずっと自分を応援してくれていたファンの土壇場での裏切り――それで御岬瀬里奈は、壊れた」
勇樹は瀬里奈の頭を掴み寄せ、その唇を重ねる。
「んっ、んんっ……はぁ……っ」
瀬里奈が蕩けた声を上げる。
そうだ、彼女はあの時壊れた。みんなに勇気と元気を与える。みんなに楽しんでもらう。大好きなリスナーたちに愛され、自分も精いっぱいの愛を与える。
その矜持は、絶望的な恐怖に晒された時の、追い打ちをかけるようなほんの数人の心無いリスナーたちの残酷な言葉によって――砕け散ったのだ。
「……だからまあ、再利用してみただけさ。スキルの検証も兼ねてね」
「ふーん。そのココロは、リスナーに裏切られたかわいそーな瀬里奈ちゃんをほっておけなかったと。うーわどの口が」
アメリアのからかうような言葉に、勇樹は苦笑する。
「それで? この動画を配信ですか? それとも動画販売?」
山田は、再び問いかける。彼が指す「この動画」とは、もちろん、目の前で繰り広げられている、瀬里奈と勇樹の情事の様子を録画しているカメラのことだ。
「どちらもしないさ。もっと使い道がある、そのために彼女には再起してもらった」
勇樹は、ニヤリと口角を上げた。
彼にとって、瀬里奈の「再生」は、彼の計画のための、単なる布石に過ぎなかった。
そう、御岬瀬里奈にはやってもらう役目がある。
「ただエッチしたいだけかと思ってたー」
アメリアが、つまらなそうに呟く。彼女は、勇樹の複雑な計画よりも、目の前の快楽にしか興味がないようだった。
「それもないとは言えないけどな」
勇樹は、そう言って、再び瀬里奈の唇を奪う。彼女は、彼のキスを受け入れ、さらに深く身をよじる。その姿は、完全に彼に魅入られ、心も体も捧げているかのようだった。
「……山田も参加するか?」
不意に、勇樹は山田に声をかけた。
その言葉に、快楽に溺れていた瀬里奈の体が、ピクリと反応する。彼女は、勇樹に抱き着き、彼の首筋に顔を埋め、小さく首を振った。
その仕草は、まるで子供が嫌がるように、しかし、どこか甘えるような響きがあった。彼女は、勇樹以外の男が自分に触れることを、本能的に拒絶しているかのようだった。
「おやおや、嫌われてしまいましたか。ていうか愛されてますね、黒井君は」
「んー、じゃあ私が参加するー。ゆーくんが終わった跡、アメリアちゃんと二人がかりで可愛がってあげるんだー。いや別に私とゆーくんと瀬里奈ちゃんの三人ででもいいけど」
アメリアは、そう言って、ニヤニヤと笑いながら瀬里奈を見つめた。その視線は、まるで新しいおもちゃを見つけた子供のようだった。瀬里奈は、アメリアの言葉を聞きながらも、勇樹の上で快楽に蕩けた表情を崩さず、さらに腰を激しく振り続ける。
彼女の耳には、アメリアの言葉は届いていないかのようだった。ただ、目の前の男との一体感だけが、彼女の全てを支配していた。
(愛しています、私の勇者様、私のヒーロー、私の王子様)
瀬里奈の心の中で、勇樹への賛美が繰り返される。
彼女の意識は、完全に彼に囚われていた。彼女にとって、勇樹は、あの奈落の底で、自分を救い出してくれた唯一の存在。全ての絶望から、自分を救い出してくれた、ただ一人の救世主だった。
(私がイレギュラーモンスターに襲われた時、誰も助けてくれなかった。誰も来てくれなかった)
あの恐怖が思い出される。それだけで瀬里奈は身体が凍り付き、動悸がとまになかった。
前までは。
(助けてくれたのは、来てくれたのはあなただけ)
今はもう違う。
恐怖も絶望も、快楽が塗り替えてくれた。
(愛してます、ああ、大好き……)
彼女の脳裏に、かつて自分が憧れたダンジョン配信者のパーティーが、ぼんやりと浮かび上がる。彼らの活気ある配信、トークで視聴者を魅了し、多くの人々に勇気を与えていた、あのパーティー。あの頃、彼女は、彼らの配信を見て、自分もあんな風になりたいと夢見ていた。
(誰だったっけ。あの……トークでみんなを盛り上げていた、私に勇気をくれた男の人は)
その男の名前を思い出そうと、彼女は必死に記憶の糸を辿る。しかし、どんなに手を伸ばしても、その糸は掴めない。快楽の波が、彼女の記憶を洗い流していく。温かく、しかし残酷な波が、彼女の過去を少しずつ消し去っていく。
(白峰勇也……)
その名前が、脳裏を掠めた。しかし、それはすぐに消え去る。
彼の名も姿も、今の彼女を支配する甘美な快楽に流され、跡形もなく消えていった。