配信しか出来ないと追放された俺、迷惑系エロ配信者になってダンジョンで【通信】スキルで好き勝手する事にしました 作:九凪
クラン【黒の復讐者《ネーロヴァンデッタ》】の本拠地は、いくつかの廃ダンジョンに点在していた。
もっともネットの特定班の執拗な追跡により、すでにいくつかの場所は特定され、俺たちは常に移動を余儀なくされていたのだが。
仮面で地上での姿を変えられるため、地上に拠点を築く方が安全ではあったが、俺の【通信】スキルはダンジョン内でしか使えないという致命的な制約があった。
そのため、ダンジョン内の拠点は俺たちの活動の生命線であり、同時に最大の弱点でもあった。
「やはり、緊急撤退のための準備が急務ですね」
山田が、スクリーンに表示されたダンジョンマップを指しながら言った。
スクリーンには、最近特定された廃ダンジョンの座標が赤く点滅している。
「うんうん、いつまで経っても追いかけっこじゃ、面白くないもんねー。そろそろ反撃の狼煙を上げないと」
俺は、静かに二人の話を聞いていた。俺の目は、常に先を見据えている。復讐の本番に向けて、着々と下準備は進んでいた。
スキルの検証、そして強化。
特に俺たちが切望していたのは、『アイテムボックス』だった。
アイテムボックス。それは有名なレアスキル、あるいはレアアイテムの名前である。
様々なアイテムを異次元に収納できて容易に持ち運べる便利な力。
簡単な、収納出来る品物やサイズ、容量に制限のあるアイテムボックスなら比較的容易に産出され、売られている。
しかし俺達が必要なのは、世に出回っているような、数十キロ程度の荷物が入る程度のアイテムボックスではない。
「拠点設置用の結界アイテムやスキル、転移スキルやアイテム……そして、様々な生活道具や武器防具などを瞬時に収納するためのアイテムボックスは、現状の俺たちには必須だ」
俺の言葉に、山田が深く頷いた。俺たちの活動は、常に物資の運搬と隠匿に頭を悩ませていた。
追手が来た際、すぐに撤収し、次の拠点へ移動するためには、大量の荷物を安全かつ迅速に移動させる手段が必要不可欠だった。
しかし、それを満たすほどの『アイテムボックス』の永続スキルカードやアイテムは、市場では極めて高額で取引されており、俺たちがすぐに手に入れられるような代物ではなかった。
「でも、まさかあのスキルカードがこんなところで役に立つとはねー」
アメリアが、楽しそうにニヤリと笑った。
彼女の視線の先には一枚の使い捨てスキルカード、『スキルスティール』があった。
それはつい先日、俺達が姿を変えてダンジョン探索していた折に偶然にも手に入れたものだった。
『スキルスティール』は、一度しか使えない使い捨てのスキルカードでありながら、その価値は尋常ではなかった。
なにしろその効果は名前の通り、「対象のスキルを奪う」ものなのだ。それも一時的ではない。奪ったスキルは自分のものとなり、奪われた相手は、おなじスキルスティールで取返しでもしない限り、手元には二度と戻らない。
使い方と運次第では、有名トップ探索者のユニークスキルすら奪える代物だ。
捨て値で売っても数千万、いや億は軽く超えると言われるほどの超レアアイテムである。
「売らなくて正解ですね。まあ世間的な一般論では、売り払って山分けしたほうが揉めずに済む……というのでしょうが」
「ボクたちはそんなくだいない事で喧嘩しないからね、むっふっふ」
「ええ。そもそも私達は、大金や地位を得て成り上がる事が目的ではありません。そんなくだらない価値観は、あの奈落の深層に置いてきました」
山田が遠い目をする。
「私達の目的は、私達三人を追放したそれぞれのパーティー、クランへの復讐です。今やっている事はその布石に過ぎません。まあ趣味も入っている事も否定できませんが」
「そこは否定してよー。ボクも趣味入ってるけど」
「まあ、そこはな。
そしてこのカードをただ売って金にするってだけなのは、つまらない」
俺は言った。そう、例えば……。
「例えば、俺達の仲間だった連中には、スキル頼りで戦ってる奴らも当然いる。
そいつらが強敵と戦ってる時に、このカードで横から頼みの綱、生命線であるスキルを奪えば……とてもオロ白い事になる」
「アリだよねー、それ。うちのパーティーにも他にもテイマーがいたけどさ、その子のスキル盗んだ場合、テイムされたモンスターたちどうなるのかな?
その場で解放される? それともこっちが支配できる?」
「なんにせよ、面白い事になりますよね」
「ああ、そうだ。それを配信して無様を晒させたら実に面白い。だがまあそれはいい。今俺達が必要としているのは、奴らの戦闘スキルではなくて、アイテムボックスだ」
俺は二人に問う。
「アイテムボックススキルを持つ探索者から、そのスキルを奪うのはどうか、という話になる。心当たりは無いか?」
「うーん……あるにはあるけど、流石にゆーくんの考えてるレベルのアイテムボックスもちに心当たりはないかな」
「ふむ……私は心当たりありますよ」
山田が言った。
「私が所属していたパーティーは、クラン【白銀の峰】に所属していたのですが。
そこに所属している探索者の一人に、いましたよ。
大容量アイテムボックススキル持ちが、ね」
個人的交流はほとんどありませんでしたけど、と山田は付け加える。
「名前は?」
「……笹崎ユニ。パーティー「水色の鉄」に所属する、荷物持ちです
」
山田が、ホログラムスクリーンに一人の少女の情報を表示させた。小柄で、どこか引っ込み思案な印象を受ける、地味で控えめな女の子だった。
「彼女の持つ大容量のアイテムボックススキルは、彼女のパーティーにとっての生命線だと聞いています。一度パーティー連合を組みましたが、実に便利でしたよ。
大量の武器防具、キャンプ用具や食料、医薬品などが収納できる。そのためにほぼ手ぶらで、武器防具の装備だけで探索出来ましたからね」
山田は語る。
なるほど、たしかに便利だろう。
「それを手にいれられれば……有効活用できるな」
「ええ。私のかつていたクランにも打撃を与えられますからね。あくまでも噂ですが……クラン【白銀の峰】の隠し財産や隠し帳簿もそのアイテムボックスにしまっているそうですよ」
「へえ」
俺はそれを聞きながら笹崎ユニのプロフィールを見つめた。
物静かな、いや陰気そうな表情。なるほど、さぞや便利な道具として使われている事だろう。
「うまくいけば、それらが丸ごと手に入る……というわけか」
「問題は、どうやるかですね。ダンジョンでなければスキルカードは使えませんし」
「そうだな。こないだの女みたいに馬鹿正直に自分たちの予定をペラペラと喋っていれば楽なんだが」
ダンジョン探索者には配信をやらない連中もいる。自分たちの情報を極力隠すというのは賢いやり方だろう。
「そうですね。【白銀の峰】は配信もやっていますが、パーティー「水色の鉄」は配信をやっていません。理由は……」
「そのユニって娘のアイテムボックススキル?」
「ええ。特別秘匿はしていなくても、おおっぴらにするものでもないですからね」
なるほど、確かにそれはわかる。
この大配信時代でマヒしてる馬鹿も多いが、自分の力というのはひけらかしていれば弱点となる。
「追跡できればいいんだけどな。こんなふうに」
そして俺はモニターにとある映像を映し出す。
『ん……っ、くふ……んっ』
モニターから甘い声が響く。
それは、自宅のシャワー室で……自分を慰めている瀬里奈の姿だった。
別にこのタイミングを狙ったわけではない。偶然だ。
「これは? 録画ですか」
「いや、リアルタイム映像だよ。【通信】スキルの効果でね、ダンジョンから端末や人間に通信できるとは別に、映像を受信できるとわかったんだ。ただし……」
画面をスワイプして、アングルを変える。
瀬里奈の股間に白い指が這い、まさぐり音を立てる光景がアップで写される。
「俺が触った相手、に限られる」
それが条件だった。
例えばあの女……ミコト、だったか。あの女の末路は見る事が出来る。病院で虚ろな目でぶつぶつ言っていた。
しかしその二人の仲間は、このスキルでその姿を映す事が出来ない。
触っていないからだ。
「なるほどねー。万能じゃないってワケだ」
「となると、うちの元クランの連中を見るのは無理……ということですか」
「ああ。今のままではな。だからまず触れる必要がある。一度触れてマーキングしてしまえば、監視し放題だからな」
そう言って俺はモニターに、今まで触れたことのある探索者達の映像を映し出す。
当然、元パーティー……誠也たちの姿もある。
「しかし、いつどこでダンジョンに現れるかわかりませんからね。元クランメンバーとして言わせていただくなら、新宿ダンジョンをメイン攻略場所にしている……ぐらいですか」
「うーん、じゃあ毎日新宿ダンジョンの入り口で見張ってればいんじゃない? ほら、ボクたちって絶賛無職だし」
確かに、元の身分生活を捨て去った今、無職ではあるが。
しかし……それは使えるな。
「地道だがそれが一番かな。これからしばらくは表層で……そうだな、この姿で」
そして俺は仮面を使い、いかにも新人の……小学生の姿になった。
安全地帯が多く、出て来るモンスターも弱くて命の危険が少なくなった表層一階では小学生の立ち入りも許可されている。
「憧れています、握手してください! という体で近づいて触れる。それでいくか」
「うわー、ゆーくんかわいー! ねえねえ今度その姿でえっちしようよ!」
「今度な。とにかくこの姿で明日から表層一階に陣取るか。いや、小学生がずっといるのも怪しまれるので適度に姿を変えながら、だな」
「そうですね、それでいきましょう」
方針は決まった。
クラン【白銀の峰】のパーティー「水色の鉄」の荷物持ち役、笹崎ユニを待ち構えて触れ、マーキングする。
そして……彼女を監視し、弱みを握り、「水色の鉄」のスケジュールも把握し、好機を見出し、そしてダンジョンにて彼女のスキル、【アイテムボックス】を奪う。
大切なのは……彼女の抵抗の意思を奪う事だ。
スキルは抵抗されれば効果が弱まったり通じない事もある。
一番確実なのは、笹崎ユニを誘い出して拉致し、凌辱して体と心を折ってしまう事だろうな。
廃人同然にしてしまえば、スキルに抵抗するも何もない。
俺は、モニターに映された彼女の顔を見る。
笹崎ユニ。
お前にも恨みはない、が……俺の仲間の山田を裏切ったクランに所属していた。
それだけで、復讐の対象としては十分すぎる。地獄に落として呵責無し。
恨むなら、【白銀の峰】に所属した……いや、ダンジョン探索者を志した自分自身を恨むがいいさ。