配信しか出来ないと追放された俺、迷惑系エロ配信者になってダンジョンで【通信】スキルで好き勝手する事にしました 作:九凪
翌日、俺たちは計画通り新宿ダンジョンの表層一階にいた。
かつては死と隣り合わせの危険地帯だったダンジョンも、今や表層に限っては安全対策が進み、一種のテーマパークのような様相を呈している。
探索と攻略が進んだ事で魔素が薄れているのだ、というのが研究者の見解だ。
今やスライムやバットなどといった弱いモンスターしか出現せず、安全地帯も多いことから、社会科見学の小学生や、探索者という職業に憧れる子供たちの姿も珍しくない。
「うわー、ゆーくんかわいー! 本当に小学生みたい!」
アメリアが俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。俺は仮面を使い、声まで変えて、いかにも探索者に憧れている無邪気な少年の姿になっていた。少し大きめの、初心者用と書かれたTシャツがアンバランスで、頼りなげな印象をさらに加速させているだろう。
「やめろ、アメリア。目立つだろ」
「いいじゃんいいじゃん、これくらい。むしろ微笑ましい姉弟に見えるでしょ? 山……田中さんもそう思わない?」
「ええ。ですが、あまりはしゃいでいると不審に思われます。あくまでも私たちは『探索者ごっこ』をしに来た子供とその保護者、という設定なのですから」
山田は落ち着いた様子で、周囲を警戒しながら言った。彼女もアメリアも、仮面で普段とはまったく違う、地味な一般人の容姿になっている。これなら、俺たちの正体を知る者は誰もいない。
俺たちの目的は、クラン【白銀の峰】所属、パーティー「水色の鉄」の荷物持ち、笹崎ユニとの接触。
彼女に触れ、【通信】スキルによるマーキングを完了させることだ。
山田の情報によれば、「水色の鉄」は新宿ダンジョンを主な活動拠点としており、週に三、四回は潜っているという。あとは、ひたすらここで待ち続けるだけだ。
「うーん、それにしても人が多いねー。こんなんで見つけられるのかな?」
「そこは問題ありません。彼らはいつも同じ時間帯に入場ゲートを通過します。そろそろのはず……ああ、来ましたよ」
山田が顎で示した先、入場ゲートに四人組のパーティーが現れた。
先頭を歩くのは、軽装の剣士といった風貌のリーダー格の男。続いて、派手なローブを纏った女魔導士と、屈強な体つきの盾役の男。そして、最後尾を、大きなリュックを背負った地味な少女が俯きがちに歩いている。
笹崎ユニだ。
前に見たプロフィール写真よりも、さらに陰気で、自信なさげな雰囲気を漂わせている。パーティーの他の三人が談笑しながら歩いているのに対し、彼女だけが輪に入れず、まるで存在を無視されているかのようだった。
「よし、行くぞ」
俺はアメリアと山田に目配せすると、意図的に「水色の鉄」の進路上に飛び出した。そして、リーダー格の男の足元で、わざとらしく転んでみせる。
「うわっ!」
「おっと、危ねえな、ボウズ」
男は面倒くさそうに俺を見下ろした。
「すみません、この子ったら、はしゃいじゃって……」
アメリアがすかさず駆け寄り、俺を助け起こすフリをしながら謝罪する。
「ああ、いいってことよ。それより、こんなとこで遊んでると危ねえぞ。ここは遊び場じゃねえんだ」
「は、はい! すみません!」
俺は目をキラキラさせる演技をしながら、男たちを見上げた。
「もしかして、パーティー『水色の鉄』の皆さんですか!? うわー、本物だ! いつも配信見てます! ……あ、配信はやってないんでしたっけ。でも、噂はよく聞いてます! すごい強いって!」
俺の言葉に、リーダーの男は満更でもないといった表情を浮かべた。他のメンバーも、少しだけ気分を良くしたようだ。探索者にとって、特に中堅どころの彼らにとって、ファンからの賞賛は心地よいものなのだろう。
「はは、まあな。ちょっとは名も知れてきたってことか」
「はい! あの、あの! 憧れてるんです! 僕も大きくなったら探索者になるのが夢で……! だから、握手してください!」
俺はそう言って、リーダーの男に手を差し出した。男は少し戸惑いながらも、その手を握り返す。続けて、魔導士の女、盾役の男とも握手を交わした。これで、主要メンバー三人のマーキングは完了だ。
そして、最後に本命の笹崎ユニに向き直る。
「お姉さんも! 握手してください!」
俺が笑顔で手を差し出すと、ユニはびくりと肩を震わせ、驚いたように俺を見た。まるで、自分が声をかけられるなどと思ってもいなかった、という顔だ。
「え……わ、私……?」
「うん! 荷物持ち、大変ですよね! でも、パーティーの大事なものを全部守ってるんですよね? 縁の下の力持ちってやつだ! すっごくかっこいいです!」
俺がそう言うと、ユニは戸惑いながらも、おずおずと手を差し出した。その指先は、少し冷たかった。
柔らかく、か細い手を握りしめた瞬間、【通信】スキルのマーキングが完了したことを確信する。
「ありがとうございます! 僕、絶対強い探索者になります!」
俺は満面の笑みでそう告げると、アメリアと山田に手を引かれ、その場を後にした。背後で「変なガキだったな」「でも、ちょっと嬉しかったかも」などという声が聞こえたが、もうどうでもいい。
目的は、達成されたのだから。
◇
仮拠点のひとつである小さなダンジョンに戻った俺は、早速【通信】スキルを発動させ、笹崎ユニの監視を開始した。
スクリーンに映し出されたのは、パーティー「水色の鉄」の拠点であるマンションの一室だった。ダンジョン探索を終え、彼らは打ち上げと称して酒盛りをしていたようだ。
しかし、その雰囲気は俺が想像していたものとはまるで違っていた。リーダーの男、魔導士の女、盾役の男の三人は楽しそうに酒を酌み交わしているが、ユニだけは部屋の隅で、彼らの残した食器を黙々と片付けている。まるで家政婦か、奴隷のような扱いだった。
「ひどい扱いですね。完全にパシリじゃないですか」
山田が、眉をひそめて呟いた。
「まあ、荷物持ちなんてそんなもんでしょ。スキルが便利だからってだけでパーティーに入れてもらってる奴の末路なんて、大体こんなもんじゃない? なんかムカつくわねこいつら。処す? 処しちゃう?」
アメリアは煽るように言う。
俺も、その時点ではそう思っていた。よくあるパーティー内のパワーバランスの問題だろう、と。
だが、俺の考えは甘かった。このパーティーの闇は、俺の想像を遥かに超えて根深いものだった。
監視を続けて数時間。酒盛りが終わり、リーダー以外の二人が帰っていくと、部屋にはリーダーの男とユニの二人だけが残された。
俺は、そろそろユニの入浴シーンでも盗撮して、それを脅しの材料に使おうかと考えていた。しかし、その必要はなくなった。いや、そんな生易しいものではなかった。
『おい豚、こっちに来い』
リーダーの男が、下卑た笑みを浮かべてユニを手招きした。ユニは怯えたように体をこわばらせながらも、逆らうことなく男のそばに寄っていく。
そして、次の瞬間、俺たちの目の前で信じられない光景が繰り広げられた。
男はユニの服を乱暴に引き剥がし、抵抗する彼女を力ずくで組み伏せたのだ。
『ん……っ、や……やめて……』
か細い抵抗の声は、男の嘲笑にかき消される。
それは、合意などとは程遠い、一方的な暴力。凌辱だった。
「……は? え、何これ……」
さすがのアメリアも、呆然と呟く。
「……なるほど。これが、彼女の日常、というわけですか」
山田は、静かな怒りをたたえた声で言った。
さらに監視を続けると、衝撃の事実が次々と明らかになった。この行為はリーダーの男だけではない。魔導士の女も、盾役の男も、気分次第でユニを呼びつけ、その体を好き勝手に貪っていたのだ。
「ホラホラぁもっと舌使えよ頭悪いなぁ!」
「あー、この豚締まりだけは最高だわ、他は全く使えねぇけど」
「それなー、ギャハハハ」
彼女は、パーティー「水色の鉄」の便利な荷物持ちであると同時に、メンバー全員の性的欲求を処理するための『肉便器』でもあったのだ。
大容量のアイテムボックスという稀有なスキルを持ちながら、彼女にはパーティーを抜けるという選択肢がなかった。
いや、逆か。そんな稀有なスキルだからこそ凌辱され調教され、そして脅迫されているのだ。
「……不快だな」
俺は、思わずそう口にしていた。
当初の計画では、彼女を脅してスキルを奪うだけだった。だが、これだけの材料が揃っていると……
「これは、復讐……かな」
「そうですね」
「だねー」
俺達の言葉が揃う。
この女、笹崎ユニは使えるかもしれない。仲間に便利に利用され、犯され、凌辱され調教され脅迫さるている少女。
その絶望と諦観の瞳に、しかし俺は幽かに光る暗闇を見た。
「もし、彼女が完全に心が折れていて、復讐を望まなかったとしたら?」
山田が問うてくる。だが答えは決まっている。
「俺達を不快にさせた。仲間にいいように利用される姿をね俺たちに見せつけた。俺たちのトラウマを呼び起こすこの行為は、復讐に値する」
「まあボクたちが勝手にのぞき見しただけだけど、それはそれこれはこれ。うん、コイツら潰そう」
「ああ、計画変更だ」
俺は二人に告げた。
「笹崎ユニを、俺たちの手で『解放』してやる。その心の闇をな。
そして、パーティー『水色の鉄』には、彼女が味わってきた以上の絶望をプレゼントしてやろうじゃないか」
俺の目には、新たなショータイムの脚本が、鮮明に映し出されていた。