神様が送る世界を間違えたらしい 作:ナヌチュカ
やはりどれだけ書くのが好きでも他者の評価はいつも大きな原動力になる……。
界暦1752年、刻一刻と変わりゆく戦局の中でどうにか手にした勝利にしがみつき、俺達はこの大都市"カマリャール"へ足を踏み入れることが出来た。
カマリャールはこの近辺に於ける交通の要衝であり、ここを抑える事で敵の補給線を寸断し他の戦線への負担も減らす事が出来る。
それにここを抑えさえすれば西方にあるイルミュク、サジーナ、テーアルの三都市を重砲の有効射程内に捉えることが出来、大陸南方に於ける旧領土の大部分を奪還する為の足がかりとなるのだ。
このカマリャール含めた東方奪還作戦、通称「獣道作戦」が始まったのがまさに今日であった。
《……弾着、目標への直撃確認。諸元そのまま、効力射を始められたし》
「ロングホーン了解、効力射を開始する」
牛のような角を生やした半獣人の巨漢が無線にそう答えると、後ろで控えていたオークの砲兵達が動き出す。
「再装填!!弾種、諸元同じ!!」
崩落した家屋を退かしてできた更地に並べられた120mm迫撃砲PM43に砲弾が装填される。
「装填よし!!」
砲尾に取り付けられた拉縄をオーク達が掴み号令を待つ。
「……撃てェッッ!!!」
―――――――――――
「イナダ、リーリュにこいつを届けてやってくれ」
「なにこれ」
「水と食料だよ、あいつもう半日以上あそこに居座ってるだろ」
一方で俺達は掌握したカマリャール東部に敷かれた防御線にて警戒任務についていた。
残された建物の中に無数の兵士が陣地を築き視線と銃口をあちこちに巡らせる。
そんな中、俺は配達任務という名の雑用を頼まれ路地裏を歩いてある建物へと向かう。
そこら中の壁に弾痕や血の跡が残っており、ここで如何に激しい銃撃戦が行われていたかを物語っていた。
走り始めて5分ほど経つと、120mm迫撃砲の轟音が鳴り響いた。
オーケストラのように規則的な間隔で砲声がなった後着弾した砲弾の炸裂音が数秒遅れて腹の底まで震わせる。
「おーおー、派手にやってるなあ」
砲声を聞き流しながら指示された建物の前までやってきた。
「えーっと……ここか?」
ただでさえ元々大きな都市であったカマリャールは西側諸国によるテコ入れで更に発展を重ね、たったの数年で木造やレンガ造りの建物の殆どがコンクリートジャングルに置き換えられた。
ここもその一つ。
嘗ては集合住宅だったのであろうその建物の階段を駆け上がり、
扉を勝手に開けるとブービートラップで上半身が消し飛ぶと事前に警告されていたので、ノックをする。
「俺だ、メシ持ってきたぞぉ」
暫くすると玄関の向こう側からガタガタと何かを動かすような音が聞こえ、鍵が開いた。
「……入って」
中から出てきたのはエメラルドグリーンに輝く瞳が特徴的な一つ目の少女だった。
亜人種の中で
その名の通り普通の人間と違って二つの目の代わりに一つの大きな目を備えている。
ただの目ではなく特殊な構造をしており、眼球単体で術式を処理、実行することが出来る優れものだ。
なので毛皮目的で狩られまくった獣人同様人間による乱獲という名の大虐殺の標的となり、尚且つ元々の個体数も少なかった為絶滅が危惧されている種族でもある。
殺された単眼族達は皆人間によって魔道具の素材や触媒にする為に目をくり抜かれて死んでいたという。
リーリュもその虐殺から生き残った数少ない者達の子孫だ。
今はDNLFの俺やカラムと同じ第56自動車化狙撃師団隷下第27自動車化狙撃連隊で狙撃手を勤めている。
「どうしたの、早く入りなよ」
「いや、俺メシ届けに来ただけだから……」
そう言いながら背中に背負っていた背嚢を掲げると、リーリュは俺の腕を掴み半ば強引に部屋の中に連れ込む。
度重なる戦闘で荒れ果てた部屋は綺麗に片付けられ、カーテンで覆われた窓の前には三脚で固定されたKSVK対物ライフルが鎮座している。
三脚の下には無数の空薬莢が転がっており俺が来るまでに何人の敵兵が的になったのか想像もつかない。
「アメリカ軍所属っぽい狙撃手の頭吹っ飛ばしてからアイツら屋内に引っ込んで全然出て来なくて……暇だったんだよね」
さらっと凄いことを口にしながら飲用水のボトルを取り出して呷る。
索敵に特化した術式を組み合わせた彼女の目はスコープであり、測距儀であり、レーダーであり
なので観測手も必要無く、単独で狙撃任務を完遂することが可能だ。
それに加えてソ連から供与されたKSVK対物ライフルのお陰で、殆どの敵をアウトレンジから一方的に射殺できた。
俺が彼女と初めて会った時、リーリュは銃弾を目視で回避したり叩き落としたりする化け物でも無ければと我らが連隊長を名指しで人外呼ばわりしながら、全ての標的を確実に仕留められると豪語してみせた。
結果それは真実だった訳だ。
「……」
「……」
俺とリーリュは携帯式のガスバーナーで茹でられているレトルト食品を囲んでかれこれ5分が経った。
お互い言葉を交わすこともなければ、リーリュはこちらをじっと見つめるばかりで部屋の静けさに対してまるで落ち着けない。
沈黙と突き刺さる視線に耐え切れず口を開く。
「な、なあ……コレ暇潰しになるのか?」
「なるよ、イナダの顔ならずっと見てられる」
「それ喜んでいいのぉ……?」
褒めてるのか貶してるのかよく分からない即答に首を傾げながら茹で終わったレトルト食品と缶詰を飯盒から取り出す。
我が部隊に炊事車なんて贅沢な装備は無いし一線級の精鋭部隊でもない限り
お陰で色んな国の食い物がお目にかかれるようになったものだ。
昼食はあっという間に終わり、食器を片付けた俺は背嚢を背負って立ち上がろうとするが唐突にリーリュが袖を掴んで阻止する。
「どこ行くの?」
「どこって、持ち場戻んないと」
そういうと彼女は途端に機嫌を悪くして目を細める。
こういう事は前にもあったなと思いながらため息を吐く。
「イヤだ、あっち行くな。ここにいて」
「仕事中―」
「ヤダ」
「お前も仕事戻れよ」
「こないだ作戦中にあのイヌ女と隠れてズコバコヤッてた癖に」
「ぅえっ、なんで知ってんだ……」
動揺した俺を彼女は即座に引き倒し、馬乗りになる。
「私、別に一途な男を求めてる訳じゃないから……何人関係を持ってようが気にしないよ」
「でもね……」と続けながら体を密着させ、互いの呼吸が当たるまで顔を近付ける。
エメラルドグリーンの瞳が真っ直ぐこちらを覗き込み、反射した自分の顔が見えた。
「君の全てを愛してあげられるのは、私だけだから」
俺の口は彼女の口で塞がれた。
抵抗する暇も与えられず口をこじ開けられ、中の舌を巻き取るように引きずり出される。
その舌を啄むように吸い、舐め回す。
「んぅ…♡ちゅぷ…♡ちゅぅ…♡れぇ……♡ぷぁ」
静寂によって満たされていた部屋に互いの吐息と唾液を絡める音が混じり合う。
気付けば彼女は俺の後頭部に腕を回し絶対に逃がさないとでも言うかのように強く抱き締めていた。
そんな状態で何分経ったか。
一頻り俺の口内を味わった彼女は啄んでいた舌を解放し、銀色の橋が二人の間に架かる。
「ふふっ、もうすっかりヤル気だね……♡♡」
彼女の手が俺の股間に精鋭の工兵部隊もびっくりな速度で設営されたテントに触れ、亀頭をゆっくりと撫でる。
艶やかな微笑とくすぐったいような快感に思わず下半身がビクリと震えた。
「私みたいな一つ目に興奮する奴なんて、後にも先にもきっとイナダだけだよ」
なんの躊躇いもなくジッパーを開きパンツの中に手を入れ、そそり立った竿を鷲掴みにする。
「じゃあ敵が来るまでの間に何発出せるか試してみようか♡♡♡」
一方で俺の元の持ち場で帰ってこないのを心配してるのはほとんどいなかった。
悲しいなあ……。