神様が送る世界を間違えたらしい 作:ナヌチュカ
そんな中で頂ける感想が私の創作活動の原動力です。
読者が自作を読んで思った事を具体的に知ること程楽しみな事は無いと言っていいでしょう。
敵のAH-64は依然としてこちらに向かって来ており、俺の肉眼でも豆粒ほどの機影が見えた。
ローター上部にレドームが無いから
スタブウィングの翼下兵装パイロンにはハイドラ70無誘導ロケットポッドが装備されている。
狙いは後方の迫撃砲陣地に違いない。
俺は既に本隊への通報を終えたリーリュと共に先程の部屋の中に身を潜めていた。
「間が悪い時に来るなぁもう……」
「あれ、確かここ来る時対空機関砲とか運び込まれてたよね?アレ使えないの?」
装甲車やトラックで牽引されていた何台かの対空兵器の姿を思い出したのだろうリーリュはその事について聞いてみるが、俺は肩を竦めて首を振った。
「
この戦争が始まって以来、ソ連は一応こちらを支援してくれている立場にあるが実際の所はあまり効果的な支援ができていないのが現状だ。
なにせ何年も前に起きた内戦に伴う政権交代の影響から未だ立ち直れておらず、政局も経済も不安定の只中にある。
その為俺達に供与されるのは殆どが冷戦初期の頃の旧式兵器のオンパレード。
一部の部隊じゃ第二次世界大戦時の在庫品で戦わされている所もあるという。
お陰で、DNLFで運用されている兵器の割合の多くは中国からの供与品が占めている。
俺の持ってる56-2式自動歩槍だって中国の供与品から支給された物だ。
といった風に支援国側の問題もあるが、ウチにもそれなりの問題がある。
それは兵站、特に物資の輸送部隊の脆弱性だ。
DNLFは無駄に兵の数だけは多いので必然的に消費する物資の数も多いのだが、それを運ぶ装備や人員がまるで足りていないのだ。
ソ連や中国から供与された自動車は便利だが数が足りず、結局荷役に適した種族の亜人を輸送部隊に配属し直接運ばせている。
その結果発生した問題が、
前線で戦う部隊の殆どを半獣人や獣人が構成しているのだが、彼らは身体能力や持久力に人間に比べて極めて優れている。
お陰で疲れを知らぬかのように徒歩で長距離をノンストップで走破し、その上戦闘までこなす。
機械化すらされていない軽歩兵部隊が一日に何百kmと移動することさえあるんだから恐ろしいことこの上ない。
当然、そんな化け物共に重い荷物を背負った輸送部隊は追いつけるはずもないのである。
「…じゃあどうしようもないじゃん」
「だから隠れてようって言ったんだよ」
一瞬、リーリュがコックピット狙撃すれば落とせるんじゃね、とかいう暴言が口から出かけたがすぐに引っ込めた。
一発撃った後に速攻で見つかって30mmチェーンガンに挽肉に加工される姿が容易く想像できる。
暫くして、アパッチのローター音が次第に近付くと共に後方で爆発音が連続して聞こえて来た。
遂に攻撃が始まった。
俺達は恐らくここで難なくやり過ごせるだろう。
しかし問題はその後だ。
「真っ先に潰されるのは迫撃砲だろうから……それで足止めされてた連中が雪崩込んでくるかもしれないね……」
三脚を分解してKSVKを手に取りこの場から脱出する準備を整えるリーリュ。
何時かは、我が物顔で空を悠々と飛ぶ奴らを撃ち落とせる日が来ると信じて56-2式を握り締める。
―――――――――――
イナダ達のいる前線より後方の指揮所もまた、慌ただしく動いていた。
「敵攻撃ヘリの
「
「
無線機に耳を傾けながらオペレーター達が各部隊の状況を報せる。
中央で地図を見下ろしながら
「なんたるザマか、これでは折角取り付いたカマリャールから叩き出されるぞ」
白髪のポニーテールを揺らしながら額の鉢巻を締め直し、顔を上げる。
腰には銃が急速に普及した世の中では既に珍しい長刀が携えられていた。
彼女の名はイルガ。
イナダの所属する第27自動車化狙撃兵連隊連隊長を勤める女性将校であり中佐の階級を拝命している。
種族は鬼人族で額に直上に聳える一対の角とその体躯からは想像も付かぬ怪力と俊敏性という特徴を持つ。
DNLF結成以前から亜人奴隷や強制労働施設の解放運動に参加していた古株の戦士でその強さは彼女が積み上げてきた無数の死骸が証明している。
ただ彼女には問題が一つあった。
「見ておられん、儂も出る!!行くぞヴルニカ!!」
「えっ」
背後で作業をしていた巨人族の女の背を叩き、長刀を手に掲げながら指揮所の天幕を飛び出した。
そう、彼女は指揮官の立場でありながら度々指揮所を脱走して独断で前線に飛び込んでしまうのだ。
武人として最前線で戦い続けた彼女が後方でのデスクワークに耐えられぬが故に起きてしまう避けようのない必然でもあるのだが。
「イナダの奴、この程度で死なんとは思うが…やはり目を離しておくべきではなかったか。儂が傍におらねばどうしようもない奴だからなイナダは、なあヴルニカ」
「まあ、人間の身体で無茶をし過ぎるというのは納得します」
両脇腹のホルスターにソ連製のマシンピストル、スチェッキンAPSを差しその辺に停めてあった63式装甲兵員輸送車をパクって兵員室に収まりきらないヴルニカの巨体を車体上部にそのまま載せて基地の正門を走り抜けて行った。
―――――――――――
視点は戻りカマリャールにいる俺達はと言えば……
「カラム!数が多過ぎる!!どこからこんな大軍湧いて出てきやがったッ!」
迫撃砲陣地が潰れたと知るや否やおぞましい数の敵が前線に押し寄せて来た。
狭い路地に無数の銃弾が飛び交い、地面や遮蔽物に当たる度にバチバチと音を立て砂塵を巻き上げる。
「弾ァ切れた!!リロードする!!」
カラムが遮蔽物に身を隠し80式汎用軽機関銃の再装填を始めた。
その間、俺が瓦礫の隙間から15mは先にいるQCF兵にセミオートで十数発の弾幕を浴びせ動きを封じる。
俺のすぐ後ろにいたエルフの擲弾兵がAKMSのハンドガード下に取り付けられたGP-25擲弾銃に破砕榴弾を装填し、敵が隠れている遮蔽物に向ける。
「グレネード撃つぞ!」
遮蔽物に榴弾が着弾し、爆風と飛び散る破片で追い立てられた敵兵が俺達の射線上に放り出される。
それを逃すはずもなく俺とエルフで2人がかりの射撃を浴びせ、敵は被弾したショックで四肢を硬直させながらその場で力無く倒れた。
しかし今度はこちらの足元に何かが転がってくるのを聴いた。
コロコロと音を立て、見覚えのあるフォルムの濃緑の物体がそこにあった。
「グレネード!!」
即座に俺はその手榴弾を誰もいない路地裏に蹴飛ばした。
その一秒後に手榴弾が炸裂し、砂煙が周りを満たす。
もう既に敵は鼻先の吹き出物が見える距離まで迫って来ている。
それに加えてQCF兵に混じって米軍の部隊までいるのが見えた。
目と鼻の先、曲がり角の向こう側に米兵が何人か隠れている。
数に身を任せて突撃してくるQCF兵を抑え込んでる間に奴らは動きを見せた。
「FIRE IN THE HO――」
その言葉を聞いた瞬間、俺は考えるよりも先に走り出した。
「来いッッッ!!!」
その言葉に反応してついて来れたのはカラムだけであった。
米兵の潜んでいた曲がり角まで全速力で駆け、腰だめで乱射してくるQCF兵の弾幕に臆すること無く飛び込んだ。
「ウオォォァァアアアアアアアアッッッ!!!」
飛び込んだ先には手榴弾のピンを抜いて構えた姿勢のまま呆然とこちらを見つめる米兵の姿があった。
まさかこの銃火の中を潜り抜けて殺しに来る奴がいるとは思わなかったのか、表情は100点満点のリアクションだ。
慌ててM4A1カービンを構えようとする彼の顔面に56-2式の銃口を押し付け、獣のような咆哮と共に10発近くはフルオートで撃ち込んだ。
「Mother fuc――」
顔に無数の穴が開き、後頭部がスイカのように割れて即死した米兵の死骸を蹴り飛ばし後続の米兵に押し付ける。
その死体の手にはまだピンの抜かれた手榴弾が握られていた。
死体を盾にされほんの一瞬身動きを封じられた1個分隊程度の米兵達に後方から追い付いたカラムが80式で掃射を浴びせた。
5人程被弾して倒れたのを後目に、即座に近場の瓦礫の山に身を隠した。
一秒後に先程倒した米兵の持っていた手榴弾が安全レバーが外れた事で炸裂し、巻き上げられた砂煙が路地を満たす。
「今だ、進め進め!!奴らを押し返せッ!!」
軽機関銃の軽快な銃声と共に何十人もの亜人兵達が砂煙の中に飛び込んでいく。
俺もそれに続き、カラムと共に走り出した。