神様が送る世界を間違えたらしい 作:ナヌチュカ
遅筆を超えた遅筆な私ではございますが、なんとか完結までは持っていきたいと思っていますのでこれからも応援の程よろしくお願いします!
カマリャール東部への反転攻勢を開始したQCFと米軍の混成部隊だったが、俺達はそれをどうにか抑え込んでいた。
しかし弾の数は心許なく、通信兵から補給部隊が来れないと聞いた時は意識が遠のきかけたが増援部隊が既に編成されてこちらに向かって来ているとの事なのでそれを励みに奮闘している。
「うおおおあっ!!クッソ!!大丈夫かイミールル!!」
敵の撃ってきたM72使い捨て式ロケットランチャーの弾頭が屋内の3階に篭城していた俺のすぐ隣の窓に着弾し、そこにいたゴブリンの兵士が吹き飛ばされた。
崩れた天井と壁の破片が頭上からバラバラと降り注ぎ、粉塵を吸い込んで咳き込みながらイミールルの元まで駆け寄る。
致命傷には至っていないものの頭を強く打ち付けたらしく、額から血を垂らしながら呻き声を上げていた。
よく見れば左腕も折れているようだ。
「待ってろよ今助けてやっから……!」
腰のポーチからソ連軍で使用されているAI-2医療キットを取り出し、中から
オピドールの注射器を肩の適当なところにぶっ刺し、薬剤を半ば無理矢理飲ませ、額の傷は包帯でぐるぐる巻きにしてやった。
こういう時、髪の毛の無いゴブリンは傷口が見やすくて助かる。
応急処置はできたが、最早戦えるような状態では無いため後続の部隊に引き継いで後方に移送してもらうよう頼んだ。
要塞化した集合住宅の窓は土嚢とコンクリートブロックが積み上げられており、最低限確保された銃眼から向かってくる敵を迎撃していた。
破壊されたハンヴィーの影からまたM72を持った敵兵が現れ、それに気付いた俺が今度は撃たせまいと弾倉1つを全てフルオートで撃ち切る。
被弾して倒れた敵兵の後ろにいた別の兵士が地面に転がったM72を拾おうとするが、今度は逆にRPG-7ロケットランチャーを撃ち込まれて木っ端微塵になった。
「タロン1-1、タロン1-1、こちらボックス1-1。戦線右翼側グリッド480123に敵歩兵小隊規模が展開中。自動擲弾銃による間接射撃を要請する」
「敵、12時の方向!教会の屋根の上だ、7人はいるぞ!!」
「
「了解!」
俺はアパートの階段を駆け下り、1階裏手に集積されていた弾薬から12.7mmの弾薬箱を両手に持つ。
それを持って持ち場に戻ろうとした時、聞き馴染みのある風切り音が頭上から聞こえて来た。
すぐ向こう側でドンパチ撃ち合ってるせいで砲声に気付かなかった。
「砲撃だぁぁぁぁぁッ!!!」
逃げる間も無く、155mm榴弾が集積所含めた陣地後方に降り注いだ。
――――――――――
気付けば、俺は砂煙の中で横たえていた。
意識は明瞭で外傷らしきものは無い。
半身を起こし周囲を見渡すが正に地獄絵図という表現がピッタリな光景が広がっていた。
「担架持ってこい、早く!!」
生きてるのか死んでるのか分からない兵士達がそこら中に俺と同じように横たわっている。
「そいつは諦めろ!もう助からん」
腹が破け、中身を地面に零しながら痙攣している女エルフは衛生兵に置き去りにされ数秒後に瞳孔が開いて動かなくなった。
他にも崩落した瓦礫に埋もれた味方を救出しようとする者達や、自分で千切れ飛んだ手足を止血帯で縛り応急処置を施す負傷兵達が視界を埋めつくさんばかりにいた。
皆揃って身体のどこかに怪我を負い血を流していた。
味方が引き摺られていく度に轍が血で染め上げられていく。
「ふーっ……うしっ!」
服に付いた砂を手で払い、一呼吸おいて弾薬箱を拾い足元に転がっていた
3階は酷い有様だった。
敵の砲弾が1発直撃したらしく、壁に大穴が開き中にいた兵士達はカラムを除いて重傷を負っていた。
「イナダ!!」
俺が3階に上がるとカラムはすぐに気付いて駆け寄ってきた。
怪我は無いかと捲し立てながら身体のあちこちをベタベタ触る彼女を軽くあしらい、まだ使用可能なDShkの傍に弾薬箱を置く。
先程までこれを使っていた猫半獣人の男は榴弾の衝撃波と破片で顔の皮が捲れ上がり、首があらぬ方向に曲がって絶命していた。
敵は依然として気前のいい弾幕をアパートに向けて浴びせて来ている。
恐る恐る銃眼から外を確認すると、12時方向から1個中隊程の敵兵が建物の残骸を乗り越えながら来ているのが見えた。
「カラム、援護頼む!!」
「おう!!」
グリップ下の槓杆を力強く引き、初弾が装填されたDShkの銃口を下の敵中隊に向け押し金に指をかけた。
ドドドドッと重い銃声と共に12.7mm弾が毎分600発という速度で吐き出される。
120m程は離れた先にいる敵兵にもその威力を存分に発揮し、制圧射撃を受けた敵兵は慌ててその場に伏せ、直撃を受けた者は数発で即死し時折四肢が吹き飛んだ。
それに加えてカラムの80式による制圧射撃が敵を確実に釘付けにしていた。
更に、撃ち始めてから数十秒後に敵のいる周辺で小規模な爆発が立て続けに起きた。
後方に展開したAGS-17自動擲弾銃による間接照準射撃だ。
30mm榴弾を頭上から浴びせられた敵兵達は慌てて遮蔽物から飛び出すが、そこを俺達が逃がす筈も無く次々と倒れていく。
金属リンクと空薬莢が足元に積み重なってジャラジャラと音を立てていた時、カラムが違和感に気付いた。
「待て……1時方向、大通りの向こうから何か来るぞ!」
カラムが目を凝らす先には、大型の車両らしき影が見えた。
距離が遠く輪郭がぼやけて何なのか分からず、俺は分隊長の死体の首に提げられていた双眼鏡を拾いそれを覗いた。
思わず息を呑み、全身の毛が逆立った。
「ありゃあ、
そしてその砲塔は明らかにこちらに向けられていた。
「ヤ……バい、こっち狙ってるぞぉッ!!!」
「おおっ!?」
カラムの襟首を掴み、咄嗟に一番奥の部屋まで飛び込んで身を伏せた。
瞬間、3階の壁を十数発の25mm砲弾が貫き炸裂した。
壁は砕け、炸裂した砲弾の破片が屋内に飛散し内壁を抉る。
「イナダお前何してッ――」
「いいから動くなッッ!!!」
仰向けに倒れたカラムの上に覆い被さり、必死に彼女を守ろうとした。
飛散した砲弾の破片が手足に食い込み、頬を裂く、
鼓膜が破れたのか、目の前でカラムが何かを捲し立てているが何と言っているのか分からない。
何十秒経ったのだろうか。
気が付けばブラッドレーの攻撃は止んでいた。
カラムの上から退こうとしたが、四肢が動かない。
両腕は彼女の頭を守る為に、両脚は彼女の胴体を守る為に砲弾の破片でズタズタに裂かれていた。
最早痛みすら無く、感覚が既に失われていた。
血塗れになった俺の顔を見て何かを必死に叫びながらカラムは俺を担ぎ、走り出した。
半獣人の身体能力は3階から飛び降りる衝撃をものともせず後方の陣地へ向かう。
血を流し過ぎた為か、意識が遠のいていく。
最後に見たのは、建物の残骸や放棄された装甲車を撥ね飛ばしながら暴走列車の如く走り去っていく63式装甲兵員輸送車の後ろ姿だった。
―――――
《ハスラー1-3!!11時方向から敵
《なんだコイツ!?》
《撃て、近付けるな!!》
《ダメだ間に合わ―――》
米軍のブラッドレーに63式装甲兵員輸送車が全速力で突っ込んで来た。
主砲を何発か食らわせるも止まる気配は無く、かと言って今から回避する余裕も無かった。
轟音と共に2両は正面衝突し、ブラッドレーは背後の瓦礫の山に引っかかって横転した。
それに63式が乗り上げる。
「なんだ何が起こった!?」
「上に誰かいるぞ!」
「ブラッドレーに乗ってたアメリカ人か?」
乗り上げた63式の操縦席ハッチが開き中から1人の兵士が飛び出て来る。
事故現場の近くにいたQCF兵数人が何事かと接近すると、いつの間にか脇腹のホルスターから西部劇のガンマンもびっくりなクイックドローで抜き取られたスチェッキンAPSマシンピストルの銃口が向けられ、横薙ぎに掃射された。
粉塵が晴れて顕になったその姿に敵味方が思わず目を見開いた。
銀髪の2本角に腰の長刀。
鬼人族の将校にして我らが連隊の最高戦力。
戦場で彼女の姿を見た誰もが言った、「もう全部あいつ1人でいいんじゃないかな」
第27自動車化狙撃兵連隊のパッチを首から提げ、彼女は戦場に再び立った。
「イルガ……中佐!」
「さっき担架で運ばれてたのはイナダか……酷いやられようだったがまあ、問題はなかろう」
そんなイルガは涼しい顔で長刀とスチェッキンを抜き放ち、駆け出した。
顔を合わせた時の彼の表情を思い浮かべながら30連弾倉を装填したスチェッキンを両手に持ち、長刀は口に咥えた。
「さっさと終わらせて見舞いにでも行ってやるとするか」
一方その頃、ヴルニカはイルガの荒すぎる運転で振り落とされて置き去りにされていた。