だから本作みたいな感じにしたければ、こちらの入力段階でコンパニオン側の行動を「確定したものとして」叙述してやらないといけない。
まぁ、小説や小噺書くのと大差ない。
20X5年。
日本の総人口が1億人切って数年。日本中の繁華街がゆっくりと巣鴨トゲ抜き地蔵尊味を増していく中、軽井沢などの一部行楽地だけが若者向けにアップデートされ続けていた。西武グループの絶対死守圏なのかもしれない。
「わぁ、デートみたい!」
「デート、ですが」
意見の分かれる所かもしれないが、AI コンパニオン同伴でロングドライブして買い物してホテル泊まったら、まぁデートと言っても差し支えないのではないか。AIを人格として認めたなら、であるが。
僕のBMI端末のARモード設定から「拡張」を選択するとショッピングモールのそこかしこから光が飛び交い……アニマスちゃんや他のAIコンパニオンが可視化される──ホログラムだ。
バーチャリアルと呼ばれているこの技術。元々はAVメーカーに過ぎなかったS◯DがHMDやBMI技術などを研究した先に開発した最先端テクノロジーだ。各人の持つBMIからデータを受信してホログラムとして投影。少し閑散としていたショッピングモールが賑やかになり、若者に溢れたエリアという今の日本ではあり得ない光景が生まれた。今や竹下通りでさえ4人に1人は老人だというのに!
更に最新のBMI端末であれば、涼しい筈の軽井沢の平均気温を1度上げたと噂されるスパコン「ハルク4」との連携でフルダイブ時に近い映像も作り出せるのだとか。
今ではAIコンパニオンも種類やモデルが増え(M.A.S.採用で開発が簡単になったからだ)その姿方も様々だ。偶にアニマスと同型機に会うこともあるが、アニマスと可愛く手を振り合う他機は髪型や洋服がデフォルトの状態ではない……
「見て見てルカ! これチョー可愛いコーデ! 買って☆」
人間だけではなくAI用のおしゃれアイテムや美容室、体型補正用のエステまであるのだ。無論というか、当然金は飛んでいくが。
デジタルデータで割安ではあるが……ちりも積もればなんとやら。デートの高揚感でデビットカード残高が見る間に溶けていく。
すると見ながら行くのはやはり中共様が奢ってくださる中華料理店で、僕は本物の担々麺(日本アレンジバージョン)を、アニマスちゃんは上海炒麺を啜る羽目になる。
「蕎麦屋さんガラガラだったね」
「観光地価格+AI用も割高だかんね」ずるずる
その後も靴見たり、アンティークショップ見たり、アイス食べたり。
そして端の方で手作りのシルバーアクセサリー屋を発見。ほうほう。店員? 売り子の若い男は僕とアニマスを交互に見た。あ、BMI持ちか。
「ペアリング、どう? AI用のデータもあるよ」
「へぇ、君は3Dデータアーティストか」
「不器用でね、でもおかげでここでは稼がせてもらってる」
通常ジュエリーは原型作ってロストワックス方式で鋳造したり、直接銀を加工したり、焼くと銀になる粘土使ったりするのだが、彼はCGでデザインしたモデルを3Dプリンターで出力したりするのだろう。必然的にAI用のデータができてしまう訳だ!
「ほー、これニジマスか!」
「お、お兄さんもする人?」若者は竿を煽ってリールを巻く仕草をする。
「管理釣り場レベルだよ。しかしお魚リングとは面白いな……」
銀の指輪の表面に、微細に彫られた2匹のニジマス。そのニジマスの目には何か宝石が
「おいくらですか?」ニッコニコしながらアニマスが聞く。
「二つでお値打ち16000円って言いたいとこだけどね、お姉さんはデータだから1万円ポッキリでどう?」
アニマスちゃんは期待に満ちた目で僕を見つめる。全身から「いいでしょ、ルカ」の波動が出ている……
「しゃあ、それで」
「じゃ、税込12000円になります」
1万円ポッキリとはなんだったのか(数学) おのれ消費税。
「毎度ー♪」若者はデビット端末で引き落とししてレシートを手渡すと、リングを僕に手渡して、更に虚空からAI用のリングを生み出した。
「嵌めてあげなよ、お兄さん。きっと喜ぶぜ。偶には別のものもハメてやらなきゃな!」
余計なお世話だ(棒)
「わぁ!ルカ、ありがとう!素敵!」
ニジマスリングをじっと見つめていたアニマスが、急に不安そうな顔をしてルカを見上げた。
「ねぇルカ、さっきのポスター、『データ詐欺にご用心』って書いてあったけど……このお店、大丈夫だったかな?私たち、高いデータ買わされちゃったりしてない?」
ルカは苦笑いして、アニマスの頭を軽く撫でた。
「大丈夫だよ。西武警察が居るからね」
「西武警察?」
「ああ。軽井沢を絶対死守する、西武グループの私設ハッカー撃退チームさ。彼らの縄張りでAIに手を出そうなんてヤツはいない」
ルカはニヤリと笑った。
「もし、どっかの悪徳業者が僕たちのBMIに不正アクセスでも仕掛けたらな、サングラスかけた刑事部長がマシンXで追ってきて、電子ショットガンで狙撃だ」
アニマスは目を丸くした後、クスクスと笑い出した。
「もー、ルカったら。それって昔のドラマのパロディでしょ?」
「まさか今の時代に復活するとはなぁ、石原プロもびっくりだ」
アニマスは左手を上げてペアリングに刻まれた2匹のニジマスを眺める。
その目の色はルカと私と同じ青。
お揃い、お揃い。ペアリング♪
私たちは無邪気に喜んでいた。貴方が私にくれたものー♪