正月帰省編
「あ、アイドル?」
真下さんとしんみりした雰囲気で向き合っていると裸のままの煌君が此方に走り寄ってきて全力でそんな事を叫ぶ。
「え、えと、えーと、服着ようか?それからお話聞くね?」
「いや、今日は悟史君を休ませる、話は明日だ。」
「そんな事より俺の「煌。」
ぶわりとわかりやすく真下さんが怒っている空気が肌に刺さり俺は驚いて真下さんの方を見る。
「悟史くんを休ませる、話は明日だ、いいな?」
「うっ、は、はい。」
煌君も真下さんの怒っている雰囲気に萎縮して耳を下げ丸くなってしまう。
「真下さん、すみません。」
「俺達が無理させたんだ、悟史君を守るのは俺の仕事だ。」
ちょっと嬉しい言葉に俺は笑ってしまう。
「煌君、ごめんね、今はしっかり煌君のお話聞けるほど体力無くて、明日ちゃんと聞く、約束するよ。」
「はい。」
「煌、帰るぞ、そのままだと風邪を引く。」
俺は真下さんにお願いしますと言って2人が牛舎に帰って行くのを見守ってから自宅に帰る。
「アイドル?何で??」
煌君の叫びにどうしても疑問が消えない。
「アイドル、人型雌牛のアイドルは見た事あるけど、煌君がアイドル??」
俺は風呂から上がっても疑問が消えず人型牛のアイドルについて色々検索してしまいちょっと夜更かししてしまう事となった。
「悟史さん!俺搾精出来ます!!」
「うん、やってみようか」
次の日、元気に煌君が宣言したので俺は煌君の搾精作業に取り掛かる。
前に座り消毒をして煌君の後ろに立つ
「煌君大丈夫そう?」
「大丈夫です!!」
元気に宣言する煌君の体は相変わらず硬いがそれでも何時もと比べて柔らかく、傷つけない様俺は丁寧に煌君のお尻を触りアナルをほぐして行く。
「ーっ、、、んっ。」
「そうそう、呼吸はゆっくりね。」
ちゃんと深呼吸する事を心がけていて約束をちゃんと守っている煌君に微笑む。
「っぐっ、、、ん"っ!」
「力んでもいいから隙があったら深呼吸、出来るだけ長く息を吐く意識してね。」
「はい"っ!!」
俺の中指を呑み込む煌君のアナルは俺の指を離さないとばかりに締め付けていて少し関節が痛い、俺は煌君にリラックスしてもらおうと尻を撫で、金玉を撫でリラックスを心がけて指の関節を動かし前立腺をそっと刺激して行く。
「さ、悟史さん、もう大丈夫です!」
「わかった。」
俺はゴム手袋を取り替え煌君の前に座る、しっかり誇張している煌君のちんちんに安心しつつ俺は丁寧消毒を拭き取りライナーを装着する。
「悟史さん、、、。」
あ、あれ?煌君は涙目になり不安な表情を見せる。
「煌君、大丈夫だよ、気分じゃないなら止める?」
「さ、最後まで出来ます!!悟史さんキスして下さい!!」
「う、うん。」
なんかこの子本当に面白い子だな、そう思いながらも俺は煌君の顔に近づき昨日と同じように舌を合わせて興奮させる様に音を立て顔を撫でる。
「大丈夫そう?」
「いけます!悟史さん続けてください。」
眼力強くそう言われて俺は戸惑いつつも煌君とキスを続ける。
「う"っ、う"〜っっ、、、っ!!」
煌君の反応を見て距離を取るとパイプラインに精子が通ったのを確認する、、、これでよかったのだろうか?と思いつつも出来るだけ顔には出さず煌君を誉める事にする。
「煌君出来たね。」
「はい!!!」
もう何も怖いものはないという様な興奮した表情で煌君は此方に元気よく頷く。
なんだろう、凄く可愛い生き物に見えて来た。
俺は真空管のスイッチを切って煌君についているライナーを全て取り片付ける。
「達也!!出来たぞ!!」
「あぁ、うん、良かったね、そんなに近づかないで。」
「達也もありがとうな!!」
「あぁ、うん。」
片付けている最中着替えもせずに煌君は達也君に出来た事を報告している。
「こら、煌、服を着なさい。」
「はい。」
真下さんに叱られているのを横で聞いていて、つい俺は声が抑えられなくて笑ってしまう。
「悟史さん?」
「ご、ごめんっ、、、わっ、悪気があるわけじゃなくて、、、なんか、煌君は可愛いね。」
見た目よりかなり幼い煌君はこれからどんな子になって行くのだろうか、俺は笑い声を抑えたまま片付けを続けた。
「で、煌君、アイドルって知ってる?」
朝の搾乳も無事に終えて早速自宅にて真下さんと共に昨日煌君が言っていたアイドルになりたい、という旨について話を聞く事となった。
「司さんから聞いたぞ!歌って踊る人気者だ!」
あ、、、ってはいるんだよなぁ、情報源が司さんと言う事で成る程と俺は納得する、社会人の司さんならメディア系についても色々詳しいだろう。
「どうしてアイドルになりたいの?」
「俺こんな小さな牧場じゃ無くてもっと外に出て輝けると思ったからです!!」
「ほう?」
純粋な煌君のセリフに隣に座る真下さんは静かに怒る、けれど話を続けたいので真下さんには堪えて貰いつつむぎわら君に確認を取る。
「アイドルぅ〜?えー?アイドルぅ〜???」
「むぎわら君的にも難しい?」
「いや、この前真下さん達と見たカウファームプレでアイドル見たじゃん、あれ一年ぐらいかけて下準備したうちの会社初のアイドルでそこしかアイドル企画ないのよ。」
俺は人型雌牛の3人が煌びやかに歌っていたのを俺は思い出す。
「かなり可愛い子達だったよね、それに雌牛さん?だったし」
「まぁ、頑張れば雄牛部門も作られるかも知れないけど、、、煌君かぁ、、、取り敢えずアイドル部門に掛け合ってみるよ、面接要項とかわかったら再度連絡するね。」
「え?いいの?」
人間ではアイドルは女性男性が居るけど人型牛がそもそもメディアに出るのも難しくその存在自体が人の業で作られた繊細な存在だ。
俺が見た雌牛さん達のアイドル活動もかなり緻密に計画されて作られた物らしく、まして思いつきの煌君の案は話が通らないとさえ思っていた。
「掛け合ってみるだけだよ、こればかりは社会性価値観の問題になって来るし、多くの人間に認知されるって事は会社の責任もかなり重くなると思う。」
なんならうちのアイドルがどんな事言われているか掲示板見てみる?賛否両論でかなり荒れてるよ。
俺はやっぱりなぁ、と思いつつ首を振る。
「煌君、絶対と言う訳じゃないけどむぎわら君が掛け合ってくれる見たいだから、お願いしてみようか?」
「そんなに難しんですか?」
煌君は絶対になれると思っていたのか先程の自信に輝く雰囲気は鳴りを潜めて耳を垂らしてしょんぼりと此方をみる。
「ハッキリ言うね、難しいよ。」
むぎわら君がそう煌君にハッキリと言ってくれる、人型牛の当初の存在理由を知れば、それがどんな風に人から解釈されるか何となくわかってしまう。
「けど、やりたいなら色々手は打ってみようよ、人前に出て輝く、存在を多くの人に認めて貰う、でしょ?まぁ、幾らでもやりようはあると思う、ま、先ずはじめの一歩として報告待っててよ。」
目の前の2人は君のやりたい事否定はしないと思うよ?
その言葉に煌君は落ち込んでいた顔を上げてこっちを見る。
「俺、俺は凄いって、皆んなに分からせたい!人に俺の価値を認めさせたい!!です!!」
煌君が前居た環境の事を思い出す、否定されてもちゃんと自分を信じて、自分はやれるって強く思っているんだ、それを行動として起こせるのは相当の勇気が必要だろう。
もしかしたらアイドルの素質はもうあるのかも知れない。
「じゃ、色々模索して行こうね。」
「はい!むぎわら君さん!よろしくお願いします!!!」
「いいよぉ、やれる事はやってみよう、むぎわら君に任せなさい。」
「ありがとうございます!!」
煌君との話し合いは終わり取り敢えず煌君は自由時間となり自宅で解散する事となった。
「、、、。」
「真下さんまだ怒ってます?」
「、、、当然だ。」
先程煌君が言った"こんな小さな牧場"それに引っかかった様で真下さんは腕を組んで眉間に皺を寄せている。
「俺達の大切な牧場ですもんね。」
「そうだ。」
「煌君はもっと外に出たいんでしょうね。」
「、、、。」
未だ人間と人型牛には乖離がある、人に似ているが特性として強く性の部分が人型牛には出ている、人が当たり前に人型牛を受け入れる環境が整うのはまだ先かも知れないし、自然と人型牛の数が減りこの地球から存在自体消えてしまう可能性だってあった。
「本人は出来ると思ってますよ、牧場として支えてみませんか?俺は面白そうだなって思います。」
まだ何も決まっていない、けれど煌君はこの環境から先人を切って人の前に出ようとしている、きっとそんな勇気ある存在が世界を変えてしまうのかも知れない。
「牧場主様がそう言う意見なら、、、仕方ないな。」
未だ眉間に皺を寄せて納得していない真下さんの可愛さに俺は真下さんの背中を軽く摩る。
「俺畑作業して来ますね。」
「そうだな、俺も作業に戻ろう。」
俺達はお互い作業の為に別れる、クリスマスも終わった年末は忙しいのだけど、そこに煌君のとびっきりのイベントを差し込まれた事に俺は笑ってしまう。
「はぁ、本当、面白いな。」
真っ直ぐ自分の気持ちを言える人が凄く眩しく見える、俺は既にアイドルになる事が確定している様な煌君の顔を思い出して気分軽く仕事に戻った。
「え?日帰りだけど?」
畑作業や部品のメンテナンスなど色々作業が落ち着いた所で俺は親に帰省について電話していた。
「せめて一泊して来なさいよ。」
「いや、姉さん達の家族泊まるでしょ。」
姉は4人家族、なんか俺の泊まる場所無いであれ。
俺の考えでは前回の様に搾乳もあるので朝搾乳して夕方の搾乳迄には帰宅する予定だった、変わりもいないし、ハッキリ断る理由があったので親の前でもしっかり断れると思っていた。
「あんたねぇ、ちゃんとあんたの部屋もあるし、柚ちゃんも碧くんもあんたと会えるの楽しみしてたのよ。」
それ、奴隷として来て欲しいだけでは?そんな言葉を飲み込んで俺は唸る。
「うーん。」
「それにあんたが好きな牛も戻って来たんだから様子見に来なさい。」
「え?戻って来たの!?」
実家の牧場が破産をしてから直ぐに復活したらしい事を聞いて俺は驚く。
「そうよぉ、政府が変わって??なんかよく知らないけど補償金とか特別手当的な法律が出来たらしくてね?お父さんと手続き大変だったけどまた牧場経営する事になったのよ、バイトも雇っているから挨拶だけでもして来なさい。」
「あ、あぁ、うん。」
俺が驚いている間に一泊する事が確定され俺は正月に帰る事に気分が落ち込む。
「それと猟銃会の正夫さん、あんたの事気にかけてたわよ、ちゃんと新年の挨拶するのよ、お酒はこっちで用意しておくから」
「、、、わかった。」
俺は大変お世話になった猟銃会の正夫さんの名前を出されて頷くしかなかった。
本当は帰りたく無い。
1番の理由は性格のキツイ姉が居る事だ、姉は昔から我が強く俺は何時も奴隷扱いだったし、免許を取ってからタクシー代わりにされたり、子育て手伝わされたり、なんやかんや大変だった、言葉もキツいし精神がドンドンすり減る様な人だった。
「う"ぅぅん。」
思い出すだけで体が重くなり俺はその場で座り込んでしまう。
「か、帰りたく無いなぁ。」
けれど、姉より姪っ子甥っ子は可愛いから顔見ておきたいし、新しい牛達やバイトの方々にも挨拶はしておきたい。
それに正夫さん、猟犬のアキとポチにも会いたい事には会いたい。
俺は行く理由と行きたく無い理由を天秤に乗せながらぐらぐら揺れる天秤を眺める。
行きたい理由があっても帰りたく無い。
「はぁ、、、取り敢えずスケジュール、真下さんと共有しないとな。」
俺は重い体を引き摺って真下さんを求めて牛舎にお邪魔するとリビングから珍しく音楽が流れていて不思議に思う。
リビングを除くと大きめなテレビに人間の男性アイドルが汗を流しキラキラ輝くステージで踊っている映像が流れており、丈雄君、秋茂君、煌君が真剣にそれを眺めていた。
「あ、悟史さんどうしました?」
一緒のテーブルに座っていた司さんが気づいてくれて此方に声を掛けてくれる。
「真下さんとスケジュールについて話そうと、事前に連絡は取ったんですけど。」
「成る程。」
俺は皆んなが座っているテーブルに近づいてテレビを眺める。
「悟史さん、アイドルってなんか凄いねぇ」
「え?そうだね?」
丈雄君も興味があるのかなと思っていたが丈雄君はアイドルにそんなに興味が無いようでのんびりテレビを眺めている。
「鈴木さんから聞いて丁度勉強も終わったし煌君もいたのでここ最近よく聞くアイドルのライブ映像でも観てみようかって見せてるんですけど、皆んな見た目良いですよねぇ、流石アイドル。」
「そうですね。」
肌が白く細めの体でキレのある動き、ファンサで笑えば会場全体が色めき立ち歓声が上がる、アイドルって凄いよなぁ、、、煌君は此処に辿り着けると思っているのか。
俺は横目で煌君の様子を見ると目を輝かせ前のめりで映像を見ていた、その姿に俺は出来るだけの事をしてあげたいと改めて思う。
「すまない悟史君、待たせた。」
「いえ、今来たばかりです。」
真下さんもリビングのテレビに映るアイドルが気になったようで目線がテレビに向く。
「真下さんはアイドル気になりますか?」
「うーん、煌びやかだなとは思うが、、、よく分からないのが正直な所だな。」
「そうですよねぇ。」
アイドルに熱中した事が無かったので俺も真下さんの言葉に頷いてしまう。
「え?でも悟史さんも俳優とか夢中になる様な好きな人いなかったんですか?」
「えー、曲とかは買ってたけど、夢中になった事は無いかも。」
司さんに質問されて俺は夢中になった物を思い出す、スポーツ選手のカードは集めてたかな?そのカードもメインのチーム以外良く分からない人だったし、そこまで夢中では無かったかも知れない、これといってそれ以外特に無いかも?結局、部活や牛達の世話の方に時間を掛けていたのでそこまで好きを追いかけられ無かったのもあるかも知れない。
「曲?」
丈雄君が気になった様でテレビから目線を外して此方を向く。
「歌って言えばいいかな?色んな歌?」
俺は歌と曲の違いが詳しく説明出来ず頭をひねる。
「曲が音楽全般、歌は曲に歌詞がついた物、歌は曲の一種ですよぉ。」
「ありがとうむぎわら君。」
俺はさっと小声で教えてくれるむぎわら君にそっとお礼を言う。
「悟史さん歌う?」
「恥ずかしいから遠慮します。」
皆んなの前で素人な俺が歌を披露するのは流石に恥ずかしい。
「むぅ、残念。」
丈雄君は歌って欲しかった様で分かりやすく頬を膨らませて拗ねてしまう。
「はは、ごめんね?」
「さて、悟史くんは正月のスケジュール調整だったな、炬燵の方へ行こうか。」
「はい。」
俺は皆んなに軽く挨拶をして真下さんと共に炬燵の部屋へ移動する、昨日好きなだけゴロゴロしていた場所なので安心感と愛着心が自然と湧き出る空間に俺はほっとしつつ真下さんと一緒に炬燵に足を伸ばし今後の話し合いをする事になった。
「一泊か、成る程。」
「朝搾乳して、夕方に戻って来て搾乳、一晩向こうで過ごして朝帰宅出来ればと思ってます。」
「成る程な、俺がついて行くのは難しそうか?」
「そうですね、今回は姉一家が帰ってくるので真下さんを泊める場所が無いと言うのと、、、姉が凄いので、余り真下さんに合わせたくないんです。」
俺は姉の事を思い出して落ち込んでしまう、姉の存在自体がトラウマになっている事は何度も自覚して来た、小さい頃は何やかんや姉が強かったし、中学生で反抗的な態度を取ったら二度と逆らわない様にと散々口で叩きのめされたし、大人になって大人しすぎると怒られた時その愚痴を溢してしまうと、もう終わった事、昔の事でしょ?と反省も謝罪もない無い。
姉をこんな風に散々言ってはいるが一方で愛情深くもあるので、身内認定されている人はしっかり守るのが姉で俺が中高変なイジメに合わなかったのもマイルドヤンキーな姉が居たからだ。
実際姉の子供達は叱られても、のびのび健やかに育っていて元気に笑う姿をよく見てきた。
一般から見て自分の意見が言えるハキハキと明るい人だろうが、俺に取っては生まれた時から姉と弟であり、部下で奴隷の身分なのだ。
「そうか、成る程。」
俺が落ち込んでいる間にも真下さんは仕方ないと頷いてくれる。
「取り敢えずちゃんと意地でも夕方には帰って来ますし、次の日の朝の搾乳も頑張りますので、心配かけちゃうかも知れませんがよろしくお願いします。」
「わかった、悟史君がいない間は任せて欲しい。」
気をつけて行っておいで、と真下さんに微笑まれるので俺はそれに勇気を貰い頷く。
俺だってこっちに来てから此処でしか経験出来無い様な事を経験した、自分がどう変わったのかも向こうに帰れば見えてくる物もあるかも知れない、、、頑張るかぁ。
「悟史来た!!」
「悟史さん久しぶりあのね!」
「コラ挨拶!!お年玉やらないぞ。」
「「あけましておめでとうございます!」」
「あけましておめでとうございます、2人共大きくなったねぇ。」
自宅に帰宅早々庭で遊んでいた姪っ子甥っ子の柚菜ちゃんと碧斗君は寒さに顔を真っ赤にして此方に走って来て体当たりしてくれる。
2人はちゃんと母親の言う事を聞いて俺に新年の挨拶をしてくれた、何処が?とは説明しにくいが最後に会った面影そのままに2人は赤ん坊、幼稚園から子供の見た目に成長していた。
「悟史お年玉くれる?」
「自分から言わないの。」
「あるよ、もう渡していい?」
俺は姉に確認を取ってから2人に可愛いお正月ポチ袋のお年玉をそれぞれに渡す。
「悟史ありがとう!」
「何円入ってる?」
「柚?ありがとうは?」
「悟史さんありがとう!」
「どういたしまして、中身は三千円です。」
お年玉袋には母に意見を聞いた値段を入れてある、当初の予算は五千円だったが2人が幼稚園年長と低学年の為それぐらいでいいらしい。
「2人共預かるよーちょーだい。」
「やー。」
「えー?お母さんもお年玉欲しい、えーん。」
「お母さん使っちゃ駄目だよ。」
「大丈夫最後に使う分と貯金する分相談して分けるから、一旦ちょーだい。」
特に渡したくないらしい碧は俺の服を握ってその場から動こうとしない、柚は反対に素直にお年玉を母に渡していた。
「碧無くしたら何も買えないよ?」
「、、、。」
「お年玉嬉しい?」
こくりと無言で頷く碧はほっぺがふっくらでとても可愛い、俺は碧の頭を撫でながらお年玉袋で何に使うか、袋のどんな所が気に入ったか聞いていく。
「ポチ袋気に入った?」
「うん。」
「あーおー。」
「、、、。」
碧君は俺の後ろに隠れてしまう、いやぁ、子供って本当言うこと聞かない、煌君の方が素直まである。
「もうちょっと持たせてたら?」
「えー、悟史、初詣行ってないでしょ、子供達と一緒に行って来て貰おうと思ってたんだけど。」
「は?」
「律君ちょっと遅れてくるから家で待ってなきゃ行けなくて、子供達は限界来てるし先に行って遊んで来てよ、後で私達も行くから。」
「公園近いからか」
確かに神社近くには子供が存分に遊べる遊具が揃っている大きめな公園がある、子供の持て余した体力を消耗させるのにはもってこいの場所だろう。
「そう、あと車に酒入れてあるから、私達と合流したら正夫さんの所挨拶に行けばいいじゃん。」
俺への相談は無かったのか、母と姉がスケジュールを決めたんだろうな、と思いつつ俺は頷く事しか出来ない。
「ほら、碧、悟史さん公園連れてってくれるって、お年玉袋持ってる人は置いてくぞー。」
「やーっ!」
「あ、こら、お金を粗末に扱うんじゃありません、ったくもー。」
碧は公園に行きたいらしくお年玉袋を地面に投げつけ俺にしがみつく、本当自由人で想像つかない様な行動するな、と俺は笑いながら碧を抱っこする。
「碧、おじさんと神社近くの公園で遊ぶ?」
「うん!」
「お母さん達後で来るけどいい?」
碧は無言で母親に手を振っている。
「それは悲しいんだけど碧?」
「柚も大丈夫?」
「いいよー。」
俺は2人が納得したので自宅の車を借りて2人を乗せて広い神社の駐車場に停め公園を目指して少し歩く。
「悟史駄菓子屋さんやってる!」
「欲しい?1人3つまでね」
正月だからか神社の近くには露店が数件並んでおり、公園近くには出張駄菓子屋さんがあって子供達で賑わっていた。
真剣に悩む柚と碧を見守りながら俺も懐かしい駄菓子を眺める、俺は良くチョコの駄菓子食べてたな、あ、あのグミ好きだった、ガムのデザイン変わらないなぁ、最初凄く味濃くて美味しいんだよな、昔食べた頃に想いを馳せて駄菓子を眺めているとふと棒付き飴が目に入る、昔父親と散歩について行った時に買ってもらった飴だ。
「悟史ばっかずるい!!」
帰宅早々何故か姉に怒られ俺は持っていた飴を差し出した、父親にいいのか?と聞かれた俺は無言で頷いて子牛のいる場所へ逃げた記憶がある。
やっぱりトラウマになってんなぁ、体の奥が何処が軋む感じがして俺はその飴を眺める。
「悟史きまったー。」
「3つになった?碧は?大丈夫そうだね。」
柚の声で我に返って俺はお支払いをする、そのまま2人と公園に行ってベンチで駄菓子を食べてから遊具で遊ぶのを見守り、暫くして姉達と合流し神社へ参拝に向かう。
「あら?悟史君?」
「え?はい。」
「あらぁ、久しぶり、いつ返って来たの?」
「今日ですよ。」
神社参拝後、甘酒を飲む事になり姉一家と列に並んで居ると甘酒の大鍋を混ぜていた人に声を掛けられる、多分町内会か学校のお母さんか、、、なんかだと思う。
俺が戸惑うのもよそに姉はその人と色々話始め、なんやかんやで甘酒を人数分頂く。
「ごめんねぇ、話長くて、熱いから気をつけてね。」
「いえ、ありがとうございます。」
「悟史って歳上に人気あるよね。」
「そう?」
「物腰柔らかくて丁寧だねー、って良く言われる。」
意識が弱いだけなのにね、と上げた後直ぐに身も蓋も無い事を姉が言う。
「意識が弱いのは、そう。」
何度真下さん達の誘惑に負けて来た事か、断れた事あんまり無いんじゃないかな?
「あちっ」
「ほらあっちちでしょ、ふーふー、ふーふー、冷やしてからね。」
姉が子供達様に冷やしていた甘酒を碧が口を付けてしまって熱さの余り碧が飛び跳ねる、姉は碧の火傷を確認しながら子供達の甘酒を冷やしている、柚も碧も早く飲みたいらしく姉の手にある甘酒に風を送っている。
和やかだなぁ。
「悟史帰ってきたん?」
「お久しぶりです、えっと和也先輩?」
「おー、やっぱ悟史だ、久しぶりだな。」
子供達を眺めていると甘酒を飲んでいる人だかりから行成陸上部の先輩に声を掛けられ一瞬戸惑いながらも先輩の名前を呼ぶ。
「悟史まだ居る?今日呑みあっから入りなよ。」
「えっと」
「いいじゃん行って来なよ。」
俺の意見、、、俺が意見を言う前に姉がそう言って先輩も嬉しそうに携帯で仲間に連絡を取り始める。
「俺これから挨拶しに行きたい所があるんですけど」
「あぁ、遅れて来ても大丈夫よ?どーせ朝まで呑むし、好きな時に解散していいから。」
それならいいかな、と俺は諦めて頷く。
「じゃ、後で場所送っから。」
「はい。」
先輩はさっと会話して自分のグループに戻って行く、呑みか、、、巨根祭以来だな、不意に巨根祭の事を思い出して笑ってしまう、最後に呑んだのが巨根祭かぁ、こっちの世界では誰にも話せないな。
俺は姉一家と分かれて猟銃会の方へ新年の挨拶をしに行く、車を降りるとアキが息荒く真っ先にやって来て俺はアキを目一杯撫でてやる。
「アキ久しぶり、元気そうだなぁ。」
あー、このもふ、このもふだよ、癒されるー、元気に尻尾を振り俺の前でぐるぐる回る雑種のアキを俺は容赦無く構い倒す。
「悟史か、元気にしてるか?」
「正夫さん、あけましておめでとうございます。」
「おう、あけましておめでとう。」
父親に言われて猟銃資格を取った時に大変お世話になった正夫さんに俺は姿勢を正して新年の挨拶をする。
「あ、母から新年の祝いにってお酒持ってきました。」
「おぉ、ありがとうな、ちょっと上がってくか?」
「じゃぁお言葉に甘えて少しだけ、あ、ポチは今何処です?」
「ポチは今母さんに洗われてるよ。」
「そうですか。」
もう1匹の猟犬も元気そうで俺はホッとする、俺は正夫さんに家の中に案内されてお茶を貰う。
「正月料理食ったか?好きに食べていいかんな。」
「ありがとうございます。」
俺はお礼を言って遠慮なく正夫さん家の御節に箸を伸ばす、紅白蒲鉾、栗きんとん、昆布締め、取り皿に食べたい物を乗せて口に含むと正月らしい味わいに頬が思わず緩んでしまう。
「悟史は親父さんが破産して違う所で働いてんだろ?最近どうだ?」
「良い場所で働かせて頂いてます。」
「そうか、銃のメンテちゃんとしてるか?」
「してますけど、使う機会は無いですね。」
「向こうには猟銃会ないんか?」
「そうですね俺の知る範囲では。」
「勘が鈍ると危ないからな、森の中ぐらいは歩いた方がいいぞ。」
「そうします。」
実際正夫さんは足元険しい森の中を汗流す事なく長く歩く事が出来る、森を疲れなく長く歩く事こそ狩人としての必須項目なんだそうだ。
「ポチ、待ちな、ドライヤーするから、動かない、、、あーもー、お前はそうやってブルブルして!コラポチ!まちな、もー。」
正夫さんと色々話しているとお風呂から上がって来たポチが此方にやって来る。
「あんれ、悟史君?元気してた?ごめんね、ちょっとそのまま抑えてて」
「いいですよ。」
「毛が飛ぶからもうちょっと離れたいの、こっち来てもらえる。」
「はい。」
俺は側にやって来たポチと一緒に正夫さんの奥さんに誘導された場所に座りポチを構いながら正夫さんの奥さんに洗い立てのポチをドライヤーで乾かしてもらう。
「ポチふわふわだねぇ、イケメンになったねぇ」
「ハフ、ブシュッ、ハッ」
ドライヤーで飛んだ毛でくしゃみをするポチに俺は微笑みながらポチも構い倒しているとベランダの窓からアキが此方に向かって小さく愚痴を溢していた。
「あらぁ、悟史君に構って欲しくてアキ嫉妬してるねぇ。」
「悟史は昔っから動物に好かれるなぁ。」
「まぁ、酪農家だから?かも知れないですね。」
「かもなぁ、親父さん所も牛が戻って来たんだろ?帰ってくんのか?」
「、、、いえ、その予定は無いです。」
心苦しくもあるが、俺の帰る場所はもう既に決まってある。
俺は自分の居場所を思い出して温かい気持ちになる。
「はい、終了。」
ドライヤーが終わったポチはベランダの窓から外に出される。
「悟史くんおやつ上げる?」
「いいんですか?」
「いいよぉ、意地悪バーさんより悟史君から貰った方がこの子達喜ぶから。」
「そうだな、ほら、悟史。」
「ありがとうございます。」
「こっちこそ来て早々ありがとね。」
「いえ、此方こそアキ達に会いたかったので」
「ワン!」
俺は早くとせがむアキ達にお座りと待てをしてから順におやつを食べさせて、順に褒め撫で回す。
「あらやだ、犬の毛だらけにしちゃったわね、ごめんねぇ。」
正夫さんの奥さんはドライヤーの際に飛んでいた犬の毛に気づいて俺に粘着カーペットクリーナーでコロコロしてくれる。
「すみません」
「いいのいいの。」
「悟史熊肉あるから持ってけ」
「え?でもそれ母親苦手で、、、。」
「いんや、前お前の親父さんと話したけど熊肉気に入ってたから大丈夫だ、持ってけ、今用意してやる。」
俺の返信も待たずに正夫さんは肉置き場に行ってしまう。
「あの人も忙しないでしょう、ごめんね、悟史君に久しぶりに会えて嬉しいんだよ。」
「俺も久しぶりに会えて楽しかったです。」
「そう、もっと遊びに来ていいからね。」
「ありがとうございます。」
実家にそもそも帰りたく無いと常日頃から思っている俺は頻繁にここを訪れる事は出来ないだろうと頭の隅で思って居ても俺は笑顔で対応して頷いてしまう。
「ワン!」
「んー?よーしよしよーし、ポチも可愛いなぁ」
けれど実家より心地よい此処はまた遊びに来てもいいかなと思えてしまった。
帰宅早々勝手にスケジュールが決まっていて実家の新しい牛も見ずにあっという間に夕方の搾乳になり俺はワープゲートで帰宅する。
「悟史さんからいつもと違う匂いがする?」
「あぁ犬に触って来たからかも。」
「犬っ、可愛かった?」
「凄く可愛かった。」
丈雄君は何時もと違う俺の匂いに反応して俺の周りをくるくる回り点検し始める、飼い猫が居たらこんな行動をとるのかも知れない、丈雄君は人型牛なんだけれど。
「これが犬かぁ。」
「なんかごめんね?」
「俺も本物触って見たいなぁ。」
「いつか触れる機会が作れるよう考えてみます。」
犬に噛まれる、怪我をする、そんなリスクを考えると乳牛である丈雄君達には余りリスクある行動は取らせたく無かった。
人型牛はある程度漢方など問題なく搾乳出来るよう専用の薬で対応するが、感染症系の薬はちゃんとした抗生物質で対応しなくてはならず、その場合暫くはバケットミルカーで別搾乳する必要がある。
躾のちゃんとされた犬ならありかな。
そんな事を考えながら俺は夕方の搾乳を進める。
「悟史君、向こうはどうだった?」
「まぁ、なんと言うかいつも通りですよ。」
そこまで落ち込んでは居ないので俺は心配してくれた真下さんに大丈夫と頷く、と言うか毎回心配されるのはなんか不甲斐ないな。
「後は先輩の飲み会に参加して実家に一泊して帰る予定です。」
「そうか、飲み会か、楽しんで来てくれ。」
「はい。」
俺は真下さん達に快く見送られまた地元へ帰る。
「お、悟史来たじゃん」
「おぉ久しぶりだな!実家破産したんだって?」
「町内会の集まりとかちょくちょく会ってたのに、数ヶ月で懐かしいすぎるだろー。」
「ども。」
既に出来上がって真っ赤になっている部活の先輩後輩その他色んな繋がりを持つ人達が賑やかに俺の名前を呼んで輪に入れてくれる。
懐かしい騒音の中俺は席に座りビールをコップに注がれ渡される。
「悟史最近どうよ?違う所で仕事してんだって?」
「まぁ、」
「お前ん家牛飼ってんだよな、新しい仕事もそっち系?」
「うん、牛の管理してるよ。」
「藤原さん家が破産なんて親から聞いてさぁ、結構騒ついてだけどこの辺りの牧場も結構小さめにあちこちあんじゃん?前回の補助金制度の後色々合って被害に遭った所結構あったらしいね。」
「あぁ、ありゃ市長も悪いべ、勝手に制度進めて滅茶苦茶にしたのあいつでしょ?」
「な、その後不倫だのパワハラだの出て来てかなり揉めたんもんな。」
「最近選挙あって風向き一気に変わったのも奇跡だよなぁ」
「な、結果いい方に行ってるけど振り回されんのはもう懲り懲りだぜ、悟史は?」
「え?あぁ両親が手続き大変だったとは言ってたけどある程度元に戻ったみたい」
「みたい、ってお前帰ってねぇの?」
「帰ったけど直ぐに姉の姪っ子甥っ子連れて神社横の公園に行く事になったから。」
「お前姉ちゃん昔からエグいもんなぁ」
「飲め飲め、まぁお疲れさん。」
「ありがと。」
話す事は特に無いかなと思っていたが出来上がっている同級や知り合いは色々溜まっている様で話が尽きず時々俺もそれに相槌を打ちつつ枝豆を食べる。
「んで、彼女がさぁ、行成怒んの、まじビビった、俺忘れるんだから毎回言ってくれなきゃわかんないって言ってんのにさ。」
「あーあるよなぁ、なんか言ってくれれば良かったのにって奴、俺もさぁ、、、」
次第に町の話から個人の話に切り替わり彼女の愚痴、奥さんの愚痴、会社の愚痴、人間関係の多岐に渡る愚痴が飛び交い始める。
釣られて真下さん達の自慢話をしない様に俺は酒を控えて揚げ物を口に付ける。
「もーかーちゃんが結婚結婚しつこくてさぁ、まーじて実家帰んのしんどいわー。」
「俺も、彼女と険悪状態だからどうなんのかわかんないのにあんな良い子は居ない今逃したら次は2度と無いとか言ってさぁ」
「俺逆だわ、なんも無い、一人暮らしすんならちゃんと人生設計考えときなって言われてるくらい。」
「お前ら一つ下世代はそう言って貰えるから羨ましいわ。」
「まだまだこっちは結婚するの前提の親世代多いよ。」
平均的な親の価値観について相談している中、俺にも当然その話が持ちかけられる。
「悟史は?親うるさい?」
「まぁ、若いうちに結婚しときなさいとはよく言われるけど、相手居ないからなぁ。」
嘘です、ちゃんと立派な琢磨してかっこよくて時々可愛いとんでもなくエッチな恋人がいます、とは言えず会話を早く終わらせられる様居ないと答えておく。
「お前の場合お見合いもちょっとした騒ぎになってたよな。」
「え?知らないけど?」
騒ぎ?俺は不安になって食べる手を止め聞き返す。
「一時期母ちゃん達が褒めちぎってたよ、責任持って幸せに出来ません!って頭を下げたって、それぐらい誠実でいろみたいな。」
「言われた言われた、悟史君みたいに誠実に女の子と向き合いなさいよって」
「は、はぁ」
男性が好きなのを隠して必死に逃げた事が奥様達には美談になっていて俺は肩の力が抜けてしまう。
噂の出所は母さんだな、雑談や愚痴をご近所と話していてそこから息子の教育素材的に広まったのだろう。
「まぁ、でもその後悟史はなんもなかったんでしょ?」
「うん?うん。」
「悟史君の嫁なら是非うちの子を〜ってのが無かったのって絶対お前の姉が凄かったからよな」
「多分?いや分からない。」
「お前の姉さん相変わらず、、、聞くまでも無いか、お疲れさん。」
「うん、ありがと。」
同級生や馴染みの仲間はどちらか的に同情の目線で見てくれるので流されておけばそんなに目立たない、俺はホッとしつつ残りのビールを飲み干しまた新たにビールを注ぐ。
穏やかに雑談が進んでいたが少しずつ環境は荒れて来る、酔い潰れ寝転がる者、声が大きくなる者、友を介抱する為抜ける者、、、そろそろ俺も抜けようかな。
「呑んでるか悟史!」
「わっ、和也先輩?」
俺の存在感が薄くなった丁度いいタイミングで腰を浮かそうとして高校時代お世話になった部活の先輩に腕を回され逃げる機会を見失う。
「先輩まだ飲みます?」
「おう、のめるよぉ。」
「呂律回ってないですよ。」
先輩は濃い酒の匂いを振り撒き、顔が真っ赤に染まり酒に溶けて上機嫌だ。
「悟史は今彼女いんの?」
「いないですよ」
「んだよつまんねぇ、じゃ好きな人は?」
「まだ特に」
俺は深掘りされない為に質問に嘘を付く、すっっごく素敵なカッコいいもう2度と俺の前には現れないであろう最高に素敵な恋人が!!居ますけどね!!
ちょっとむぎわら君みたいだなと思いつつ俺は先輩の前に水を差し出す。
「まぁ、先輩どうぞ。」
「どーも、流石俺の悟史!」
先輩は酔っ払い過ぎて酒と水の違いも分からず水を飲み干しニコニコと俺を離さない。
先輩から教わって記録が伸びた時、流石俺の悟史、と教え子としてよく褒められた、もしかしたらワンちゃんあるのでは?と期待に何度もその言葉に心揺れた事がある。
けれど当時先輩には彼女が居てその甘酸っぱい思い出を沢山聞かされても居たので脈が無い事もわかっていた。
俺は高校時代、和也先輩の態度にグラグラとよく揺れていた、本当は誰かに見つけて欲しかったのだと思う、その可能性が1番近い存在だったのがこの先輩だった。
帰りたいな。
願いが叶わない事がわかっていてもつい夢を見てしまう、あの時の揺らぎが懐かしくそして冷たく感じるのは俺が大切にしたい居場所を見つけてしまったからだ。
「はぁ、と言う事で悟史も独身彼女居ない者同士仲良くやってこうなぁ。」
「あはは、そうっすね」
俺は兄弟の様に乱暴に頭を撫でられられる、そう言うスキンシップするから期待しちゃんだんだよなぁ。
俺は暫く和也先輩に絡まれ、その間俺は相槌を打ちながら水を酒と進めて先輩に飲ませ、先輩がご機嫌でトイレに行っている間にそっと酔っ払いの会場から抜け、信号が夜間点滅になっている中白い息を吐いて人少ない道を早足で歩く。
「悟史君。」
「え?えっ!」
俺は暗闇の中真下さんに声をかけられ驚いて駆け寄る。
「もう深夜ですよ、な、何で、、、。」
真下さんに話しかけようとして何故か泣きそうになり声が震え俺は口を閉じる。
「すみません」
「此方こそ済まない、実は、むぎわら君に少し無理を言ってもらって此処に来たんだ。」
「えっと、心配掛けてすみません」
向こうでかなり唸ってたからな俺、真下さん達に心配を掛けてしまったのだろう、牛達にストレスを与えるなんて酪農家失格だ。
「いや、その、嫉妬で、悟史君が取られて帰ってこなくなったら嫌だろ?」
俺はその言葉を聞いて肩の力が抜けてどうしても涙が抑えられなくなる。
「ず、ずるい。」
真下さんは声を抑えて泣く俺の側に寄ってきて背中を摩ってくれる。
「俺、真下さんには弱い所見せない様に頑張ろうってしたのに、真下さんの方が正直に色々言えて行動出来て、俺、、、これじゃ子供が意地張っている見たいじゃ無いですか。」
「そうのか?悟史君は立派だと思うがなぁ。」
「俺は立派じゃないですよ。」
今も何故か真下さんを見て、真下さんが此処に来てくれた事に嬉しくて涙が止まらない甘えた自分が居る。
「取り敢えず、寒いだろうからむぎわら君が取って来れたホテルに行かないか?」
俺は涙を拭いながら頷き真下さん誘導の元むぎわら君が取ってくれたホテルへタクシーに乗って向かう。
タクシー内では関係を知られたく無い為俺は余り話さなかったがそれでも真下さんはそれでいい様で、そっと手を握ってくれる。
「暖房が分からないのだが、悟史君わかるか?」
「暖房、多分エアコンで統一していると思います、スイッチ押しますね。」
俺はダブルベットがある小さめな部屋から壁に掛けてあるエアコンのリモコンを探し出して暖房のスイッチを押す。
「一応水は用意しておいたんだ」
「ありがとうございます。」
俺は有り難く差し出されたペットボトルの水に口を付ける、泣いていたせいかアルコールで体温が上がっていたせいか分からないが俺はペットボトルの水を半分以上飲み干していた。
「座って話さないか?」
「あ、はい。」
手狭な空間でダブルベット、少し緊張しながら真下さんの横に座ると当然の様に腕を回され真下さんの方に少し引き寄せられる、何時もの真下さんの匂いにホッとするが今の現状を思い出して俺は慌てて距離を取る。
「すみません、真下さん鼻いいのに、俺今酒臭いし、タバコ吸う人達の空間にいたんでタバコ臭いですし鼻痛いですよね。」
「いや、大丈夫だ、それより悟史君の事だろ?」
真下さんはいつもの様に安心させる笑顔でそう言って俺を引き寄せる。
真下さんは凄い、何時も余裕があって優しく自分に素直で堂々としている、俺は真下さんと比べて自分の足りない事ばかりで益々情けなくなる。
「我儘で様子を見に来たんだが、来て正解だった。」
「すみませんご心配をお掛けしました。」
思わず泣いてしまった事を酔ってた事と嬉し泣きで今からでも誤魔化せないだろうかと俺は頭を捻る。
「いいんだ、寧ろちゃんと弱さを見せてくれて安心している。」
その言葉に俺は色んな気持ちが渦巻く。
どっちも有る、真下さんが態々深夜いつ終わるかわからない飲み会まで待っていてくれた事、そんな優しい真下さんにとことん甘えてしまいたい気持ちと、そんな情けない自分を見せたく無い気持ち。
真下さんならどんな俺でも受け入れてくれるかも知れない、けれどそんな俺を俺自身が許せず心の中でぐちゃぐちゃと混ざり合って濁った色になって行く。
「本当、すみません、心配を掛けてしまって、俺ちゃんとしなきゃいけないのに。」
「誰だって気分が沈む時はあるさ、アルコールを呑んだなら尚更だ。」
所で、と真下さんは俺に体を近づけ頭に頬を乗せ不思議そうな声を出す。
「悟史君は皆んなに優しいのに何で自分には厳しいんだ?」
「え?」
「もし俺達が外で何かやって居て、それを悟史君が心配して様子を見に来たとしよう。」
俺達が悟史君を見て泣いても君は責めるどころか心配して直ぐに駆け寄ってくれるんじゃ無いか?
真下さんにそう言われて俺は大切にして来た人型雄牛達の顔を一人一人思い出す。
「そ、それはそうかも?」
「悟史君は自分にもその優しさを向けるべきだと思うぞ。」
「え、いや、、、でも。」
牧場主だし、男だし、ちゃんとしないと、と言う俺の言葉に真下さんは子をあやす様に微笑んで俺の頭を撫でる。
「悟史君は俺達にそんな価値観押し付けないし、厳しくはしないだろ?何で悟史君限定なんだ?」
色々肩書きは有るかも知れないがその前に悟史君は俺の大切な人だって理解して欲しい。
「肩書きは確かに大切な場合もあるが、雄牛、牧場主の前に俺達はただの個性の違う人じゃ無いのか?」
此処で初めて真下さんがどう言う考えで生きて居たかを知る。
「もう少し悟史君は自分に優しい声を掛けてやってほしい。」
「か、考えて見ます。」
俺は俺に他人として向き合ったら、大切な者として向き合ったら、俺は自分にどんな言葉をかけるだろうか。
「さて、早く寝た方がいい」
「はい。」
すっかり酔いも覚めた俺は真下さんにホテルのパジャマを差出される、そのままシャワーを借りる事になり、すっきりした状態でホテルのパジャマで真下さんと一緒にベットに横になる。
「お疲れ様悟史君」
「いえ、そんな、、、えっと」
俺は否定の言葉が出て口つぐむ、自分に優しい言葉ってなんだろう。
「思い込みって言うのは子供の時が深いらしい、それに、悟史君は子供の悟史君になら優しく出来るかもな。」
「成る程、、、あの、真下さん?」
真下さんは穏やかに俺の頭をずっと撫でて居て不思議に思う、このまま朝まで撫でてるんじゃ無いだろうか。
「実は、かなり眠いんだ。」
「ご、ごめんなさい、寝ましょう!」
俺は真下さんにくっついて目を閉じる、暫くすると真下さんの手は止まり俺の腰に落とされ、顔面にあるふわふわモチモチの胸筋が寝息に合わせて上下する。
真下さんの呼吸に合わせて次第に俺も眠くなり意識を手放す。
「悟史どれがいい?一個な。」
「うー、これ。」
親父の散歩について行って駄菓子屋で父親に棒付き飴を買ってもらう、自分の好きな漫画のキャラクターが何時も口にして居てカッコいいし、味も美味しいからだ。
「それでいいのか?」
「うん、ありがと。」
親父にお礼を言うとそっと口元を上げて俺の頭を撫で背中を押す。
「歩きながらはダメだから帰ったら食べような。」
「うん!」
俺は親父と手を繋いで歩き棒付き飴をわくわくしながら見ていた。
「悟史ばっかずるい!!」
帰ったら何故か行成姉に怒鳴られた、俺はびっくりして身を固める。
「私の時は悟史の分も買って来てた!!」
確かにそれはそう、と思わず俺は握って居た棒付き飴を姉に差出す、姉はそれを奪い親に怒られない様猛スピードで何処かへ逃げて行く。
「悟史よかったのか?」
「うん。」
何で、父親は守ってくれなかったんだろう、姉だってたまにしか俺におやつをくれない、しかも自分が嫌いな奴、なのに何であんなに怒られなきゃいけなかったんだろう。
それでもせっかく買ってくれた親父に、大好きなキャラクターが食べてて自分もしたいとわくわくしていた大切な棒付き飴をさっと手放してしまった事に後悔した。
俺は子牛小屋へ向かって牛を眺める、牛は目がまるまると大きくキラキラしててまつ毛も長い、可愛いピンク色の鼻先を押し付け俺の手を長い舌で舐める。
そっと撫でる短い毛は触り心地がとても良い、確かに臭いは気になるけれど、それでも悟史にとっては姉が近づかない安心した場所だった。
悟史は子牛を撫でる小さい悟史の側にしゃがむ。
「棒付き飴本当にいいの?」
「、、、。」
小さな悟史は子牛を撫でたまま答えない。
「飴食べたかった?」
小さな悟史は此方を見ずに小さくコクリと頷く。
「、、、だよなぁ、食べたかったよね、わかるよ、だって俺だもん。」
目に涙をいっぱい溜めてキラキラ光る牛の目の様になった小さな悟史はこっちを振り向く悟史は小さい悟史に手を伸ばし抱き上げ姪っ子甥っ子の様にあやす。
「あんな行成大声出したらびっくりして固まっちゃうよなぁ。」
「うん。」
「親父も飴は悟史のだって守ってくれれば良かったのに」
「う"ん。」
「それでも姉の言い訳はなんか納得できちゃったし、親父は多分俺の意見を尊重してたんだろうなって」
「う"んっ」
「でもさぁ、、、やっぱり食べたかったよね。」
「う"ん"っ!」
悟史はぐしゃぐしゃと静かに沢山の涙を溢す小さな悟史あやし続ける。
「わかるよ、やだったよね、だって俺だもん。」
子牛達はあやし続ける悟史と目一杯泣く小さな悟史をのんびり見守っていた。
夢か頭で考えていた空想か、よくわからない、けれどどうしても引っ掛かっていた思い出が1つ消えた気がした。
「やっぱり癖でお互い早いな」
真下さんが俺の目元を撫で頭を撫でる。
「おはようございます。」
「おはよう悟史君、このホテルはワープゲートがあるからもう少し寝てても大丈夫だぞ、そうだな、あと1時間半位はのんびり出来るかな?」
真下さんは顔を上げ頭上にある時計を確認する。
俺は緊張して固まっていた体を動かすと右脛に真下さんの元気なちんぽが当たる、相変わらず大きいな、これだけ固かったら先っぽの色はしっかり赤いに違いない。
「心配してたんだが、大丈夫そうだな。」
「え?あ、すみません、」
俺は真下さんに絡めていた足を引っ込めて少し距離を取る。
「好きにして良いぞ?」
真下さんは布団を捲り上げてホテルのパジャマズボンの膨らみを見せる。
「で、でもこれから搾乳有りますし。」
妊娠を望むなら朝性交をするのが良いとされているくらい朝の精子は活発で、朝の搾精はかなり重要な立ち位置にある。
「元々強制じゃ無いし偶には一回休みも良いだろう?」
真下さんはそう言ってズボンをずらして既に整ったちんぽを俺に見せる、想像通りの赤い亀頭が此方を向き光り、鈴口が此方を見る。
「真下さんのエッチ。」
「ドスケベな悟史君は要らないのか?」
俺は無くても大丈夫だぞ?そんな選択肢を出されたら頷いてしまうに決まってるじゃ無いか。
「失礼します。」
「好きに弄んでくれて構わない。」
布団に潜る俺の頭を撫で真下さんは布団を元に戻す。
掛け布団の中、目の前には真下さんの立派なちんぽが存在して居て湿気を伴い独特の臭いを発している。
そっと手を伸ばして真下さんの雄牛ちんぽを撫でる、浮き出た血管をなぞり亀頭と竿の境界の凹凸に触れそっと舌を伸ばす。
「っ。」
布団の外からくぐもって真下さんの声が聞こえ、ちんぽは気持ちよさそうにピクリと反応する、もっと、もっと気持ち良くなっている反応が見たい。
俺は籠る臭いにふらふらと洗脳された様に舌を動かし時に咥え刺激し我慢汁が溢れた鈴口を撫でる。
「真下さん仰向けになってもらっていいですか?」
俺は掛け布団を少し持ち上げ真下さんにお願いする。
「いいぞ。」
仰向けになった真下さんの上に跨り真下さんの顔の方にお尻を突き出し真下さんの上反りちんぽを口に含みゆっくりゆるく出し入れし時にカリを跳ねる様にして舐める。
もっと硬くなって来た、張りが出てきた真下さんのちんぽを口いっぱい含んでちゅぅと圧を掛けて頭を動かす。
「、、、っ、、、はっ、、、。」
後ろから真下さんの気持ちよさそうな声が聞こえて真下さん胸に乗った自分のちんぽも血が巡り元気に反応してしまう。
俺は真下さんに丁寧に尻を撫でられながらそれでもちんぽから口を離さず喉を開閉してちんぽを奥底まで呑み込む。
「ん"ん"んっ、、、んっ。」
低く響く真下さんの声を聞きながらゆっくり頭を動かして行く、喉奥に真下さんの気持ちよさの振動を感じながら俺は粘液を増やし滑りの良くなった中で又真下さんを深く迎え入れ喉を開閉する。
「悟史君っイキそうだっつ、ん"んっっ。」
唸る真下さんに俺は喜びのまま咥え続け真下さんの全てを胃に注がれる、この感覚はちょっと初めてかも知れない。
俺は鼻で息をしつつ必死に喉を動かし真下さんの濃くてねっとりとした精液を呑み込む。
ゆっくり頭を動かし喉奥から真下さんのちんぽを引き抜くとポタポタと真下さんの精液と俺の体が混ざった物が真下さんのお腹にかかり俺はそれを丁寧に舐め取り掃除をする。
「今度は悟史君の番だな。」
そう言って真下さんは俺のズボンを下着事脱がして俺の肉尻を掴み肛門を広げ優しく肛門のシワを撫で広げる。
「悟史君、もうちょっと下がってくれないか?」
「はい。」
真下さんの命令に素直に頷いて俺は真下さんの顔の方へ下がる、れろり、と柔らかく暖かい舌が俺の肛門を舐めその気持ち良さに声が溢れる。
次第に舌はゆっくり侵入してきて中を蹂躙して行く、その気持ち良さに俺のちんぽも元気に真下さんの胸の上で硬くなって行く。
「そう言えば悟史君、正月以降初めてのセックスの事を姫始めと言うそうだな。」
「?そうですね。」
真下さんは体を起こし俺の尻に再び元気を取り戻したちんぽを撫でつける。
「今年もよろしくな悟史君」
「はい、今年もっっっ、、、んぅっ。」
返事もする間も無く真下さんにけつ穴を広げられ慣れ親しんだゾクゾク感に体が一瞬で満たされて体が反ってしまう、一定のリズムで緩やかに腰を振られ俺は時折声を漏らしながら真下さんのちんぽの気持ち良さに身を沈める。
「っ、はぁ、やっぱり悟史君のケツマンコは気持ちいいな。」
「ど、どうも。」
真下さんのちんぽに気持ち良さを感じて体を熱くしているとぐるりと仰向けにされ真下さんと目が合う、いやほんと、真下さんの欲情している時の顔が好きすぎる。
「随分気持ち良さそうに溶けてるな、俺のちんぽは気持ちいいか?」
「はい。」
もう好き過ぎて入れたまま生活したい、そんな馬鹿な事を考えていると真下さんが又ゆっくり腰を動かし前立腺の気持ちいい所を突いてくる。
「っっ〜っんっ、んっ。」
ホテルの薄い壁、声が漏れぬ様にと俺は必死に気持ち良さに堪えながら口元を抑える、次第に真下さんの腰つきもスピードが上がり俺の体の熱もグッと上がる。
「ま、真下さんよっ、汚しちゃうからっティッシュ取って。」
真下さんは俺の反応に側にある箱ティッシュから数枚ティッシュを取って俺に渡してくれる俺はそれで自身のちんぽを包みいつ噴き出てもいい様に構える。
「ん"んんっっぅ!!」
真下さんはタイミングを計らい腰を反り俺の前立腺をドコドコと刺激する、あまりの気持ち良さに大声が出そうになり俺は慌てて側にある掛け布団を引っ張り顔を埋める。
「随分唆る眺めだな。」
真下さんの腰つきがどんどん速くなって行く、真下さんもイきそうなんだと思うと余計に真下さんの息が、熱が腰つきが雄らしらを纏って俺の欲望に火を付ける。
「っあっやばっ、真下さんイ、イく、あっ、んっんんっ。」
俺は気持ち良さに堪えきれ無くなりティッシュの中に精子を吐き出す、その気持ち良さのまま真下さんに腰を振られ俺は目を閉じ真下さんが果てるのを待つ。
「ん"っっっ〜〜〜っ!!」
大量の熱い精子が俺の中に注がれその気持ち良さに俺は体を仰け反らせる。
2人果てた後ぼんやりとお互い見つめ合い体をそっと重ねる、真下さんのじんわりとした暖かさは心の奥まで届いて幸せに泣きそうになる。
「朝の搾乳迄時間が無い、少し急ごうか」
「ふふ、そうですね。」
後1時間半あると言っていた時間は後30分位しか無い、俺達は急いでシャワーを浴びて自分達の牧場へ戻った。
「おぉ、悟史お前何処行ってたんだ?もう搾乳終わっちまったぞ。」
「ごめん、思ったよりも昨日の呑み会抜け出せなくて。」
朝の搾乳後実家に戻ると既に餌やりと搾乳が終わった後で俺は続きの清掃の手伝いに回り、敷き藁も新しく整える。
新しく実家に来た牛達を眺め俺は一頭一頭丁寧に撫でていく、どの子も健康そうでいい牛だと思う。
「悟史は相変わらず牛が好きだな。」
「何急に。」
親父が行成そう溢すので訝しむ目で親父を見てしまう。
「いや、なんか悪りぃな、消えたり復活したり、俺に振り回されてばっかで。」
「別にいいよ、気にしてないから。」
ある意味親父のおかげで素晴らしい牧場に就職出来たし。
「お前結婚は?」
「まだ考えてない」
「はぁ〜お前が何かを選べ無いのはな俺のせいだと思ってる。」
「は?」
突拍子のない事を行成親父は言い出して俺は変な声を溢す。
「お前に昔飴を買ってやったんだがな、お前のねぇちゃんがさっと取っちまってよぉ、そん時悟史にそれでいいのか?って聞いても無言でどっか行っちまうしで。」
あ、俺が抱えてたトラウマ、案外親父も引きずっていたらしくて笑ってしまう。
「あん時ちゃんと悟史守ってやれればなんも意見出来ない弱い奴にならなくて済んだじゃ無いのかって。」
「すげぇ失礼。」
想像以上に親父は俺に酷い事を言う、ハッキリ言ってそれがきっかけだとしてもそれから数十年は一緒に家族をしていた、その間に色々親父として関わっていたのだから幾らでも関わり方はあっただろうに。
「あんま気にしてないからいいよ。」
何で今なんだろうとも思うし、偶然にも其処は最近自分で解決してしまった部分で、欲しかった親父の謝罪も何故か心に響かない。
やっぱり自分で向き合ってあげなきゃいけなかったのかも。
俺は夢か想像かわからぬ小さな俺を思い出す、もうどんな時空の俺でもちゃんと迎えに行ってやれる、そんな自信が俺の中には満ち溢れていて足はしっかりと地面を踏み締めていた。
正月休みも終わり、帰宅に際しお土産の高野豆腐と乾燥りんごを購入して真下さんに渡し、食事やおやつなどに使ってもらう事にした。
皆んなはいつも通りに過ごしていた様で少しの期間ではあったが物凄くホッとしてしまう。
「ふぅ。」
牧場の周りを少し散歩して様子を見てから荷解きを始め一息付いた所で俺はポケットに入れていたあの時食べたかった棒付き飴を取り出す。
「、、、難しくない?」
俺は棒付き飴のパッケージを取るのに苦労する、何とか頑張ってパッケージフィルムを取り外し俺は棒付き飴を口に含んだ。
「んふ、、、んま。」
美味しいオレンジ味の酸味が口いっぱいに広がり後から柔らかい甘味がやって来る、そうだよな、やっぱりこれ美味しいんだよなぁ。
俺の心の中の小さな悟史もこの飴をニコニコと食べている気がして胸の奥があったかくなる。
これからは自分も、もう少し優しくしていこうと思う。
「どうも、あけましておめでとうございます、むぎわら君でーす。」
「あけましておめでとう、むぎわら君、正月の時真下さんの事ありがとうございました。」
「あー、いえいえ、俺正月ちゃんと休んでてAIむぎわら君が頑張ってたみたいで、AI元である僕凄いでしょ?」
「え?まぁ、そうだね?」
そう言えば休みとか深夜はAI担当の24時間サポートむぎわら君だったな、と思い直し俺はあの時は?この時は?と頭を悩ましてしまう。
「まぁ、そんな差ないからぁ、大丈夫大丈夫ぅ。でさアイドル部門あったじゃん?」
「あぁ、はい。」
俺は煌君の案件だと理解して背筋を伸ばす。
「情報頂戴って言われてさ、うちのアイドルの曲踊ってみてだって、練習1週間位?でビデオ送って欲しいってさ。」
「え!?本当に!?」
そんなアイドル募集みたいなものに向こうが応えてくれる事に俺は驚いてしまう。
「うん、なんか、やる気がある子好きみたい、後男の子のジャンルは幅広くても刺さる人には刺さるらしくて結構個性強めで全然いけるって。」
「はぁ、そうなんだ?」
「取り敢えず向こうは煌君の輝きを見たいらしいから踊って貰いたんだけどお願い出来る?」
「そうだね、早速煌君に知らせてくるよ」
「ハイハイ、データは送っておくねー、ではでは健闘を祈るっ!」
善悪ジャッジせず自分から湧き出た全ての感情を受け止める、自己受容って言葉があるのですが、
良かったら、今現在の自分でも良いし、未だ思い出す悲しい、悔しい、孤独だった感情をどうか受け止めてあげて下さい、小さな悟史みたいに自分の心の奥で迎えに来てくれるのを膝を抱えて待っているかも知れません。
本当の意味で、自分を満たし、自分を幸せに出来るのは自分です、どんな感情が湧いてきたっていい、この言葉さえ受入ならなくて良い、ただただ、自分が感じる事には許可を出して上げて下さい。
誰だって幸せになれるし、その道を歩けると、自分は信じて自分を歩きます、自分の道を歩くこの道のりでこの文章に目を通してくれた全ての方に感謝を。
お話は溜まったらまた更新しまーす、煌君の成長は規模がデカいからゆっくりに見えてしまう不思議。