金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
第0話-プロローグ
――小さな背中に、重く重くのしかかる瓦礫の山。
身動きが取れない苦しさと、足元から迫ってくる身を焦がす熱さに、少年がうめき声をあげている。
つい数分前まで楽しい我が家だったモノの残骸が、今では子供ひとり逃さない檻と化し、彼を苛んでいた。
辛うじて空いているわずかな隙間から覗く夜の空は、ここが地獄なんじゃないかと少年に思わせるほど真っ赤に燃えている。
空だけじゃない。車も、学校も。近所のコンビニも、彼がよく遊んでいた公園の遊具も。街のいたるところで、紅蓮の炎が燃え盛っていた。
「おに、ぃちゃん……あつい……あついよぉ……」
腕一本動かすこともできない彼の耳元から聞こえてくるのは、時間が経つにつれ弱くなっていく妹の声。
さっきまで一緒に晩ご飯を食べていた父と母は、もう声すら聞こえてこない。
時おり目に映るのは、助けを求めながら逃げ惑う人々の姿。
誰も兄妹に気づく人はおらず、彼らを見ようとする者もいない。
「だれ……か……誰か、たすけ……て……おねがい……」
徐々に侵食してくる、家族と自分を焼く炎。
――死にたくない。
息を吸うのもやっとな状況の中、少年が声を絞り出そうとする。
――せめて、せめて妹だけでも。
それだけを一心に願いながら、倒壊した家の前を通り過ぎていく人たちに届くよう、彼は煙で痛む喉を限界まで広げる。
……その時。
トッと、着地音をかすかに鳴らし、どこからともなく飛んできた人影が少年の目の前に降り立った。
「――ッ!! そんな……なんてひどいことを……!」
目線を少しずつ上げていくと、スラリと伸びた脚にフィットしたブーツ、腰を覆った短いスカート……そして真っ白に輝くコスチュームを身にまとった女性の立ち姿が視界に映る。
「……ディオーネ……来てくれた……?」
ポツリと、少年がその名前を口にした。
そう、彼女はシャイニングディオーネ。市民を襲い、街を壊す恐るべき魔物から、人々を守護する正義のヒロインだ。
ディオーネのパワーがあればこんな瓦礫の山くらい、ものの数分で取り除いてしまえるだろう。
「待っててね、いま行くから!」
少年を安心させるように柔らかく微笑んだ後、ディオーネが地面を蹴る。
よかった……これで妹が助けてもらえる。自分も死なないで済む。
張り詰めていた緊張の糸が切れ、少年の目からそれまで我慢していた涙がこぼれそうに――
「………………っっ!?」
その場で急停止したディオーネは、少年の家とはまったく別の方向に目をやり、狼狽したように視線を泳がせる。
「……ぁ、ぁぁっ! くぅ……っ! ~~~~~……ッッ!!」
そして食いしばった歯の隙間から言葉にならない声を漏らし、彼女は時間にしてほんの数秒。少年の顔と
「……ごめんなさい……っ!」
彼の前に降りてきた時と同じように空を駆け、シャイニングディオーネはそのままどこかに去ってしまった。
「待って、ディオーネ……たすけて……たす、け……」
少年は必死に腕を伸ばそうとするが、もう指すらまともに動かせない。
「おにぃ……ちゃ……」
炎の音にかき消されていく妹の声を聞きながら、少年はディオーネが飛んでいった方向――朱く染まった夜の空を、うつろな瞳でただただ眺めていた。
――これは、正義のヒロインに見捨てられた少年の物語――