金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
◆
(魔王様、あなたはいったい誰の味方なのですか?)
人間・藤村英子として、勤めに出ているときも。
愛する甥のため、食事の準備をしているときも。
……それこそ、闘争のときも。
――――
「アメジスティアッッ!!」
「――――はッ!?」
ビル街に広がる青空を切り裂くような魔王の叫びによって、アメジスティアの意識は引き戻された。
ぼやけかけていた焦点を慌てて重ね、正面を見据える…………と。
「――えぇぇぇぇええええええいっ!」
「…………ッ!? く……ッ!」
前方十数メートルほどの中空に、剣を構えてこちらに突進してくるシャイニングディオーネの姿。
そう。いまは恐るべき宿敵との戦闘……その真っ最中だ。
時間にすれば、わずか一秒にも満たないほどの刹那のタイミング。
その間にアメジスティアの頭をよぎった
この千載一遇のチャンスを逃すまいと、ディオーネは先日の戦いの際にもそうしたように、カッティングブレードを腰だめに構えて一直線に突き込んでくる――!
「――チィッ!」
アメジスティアは急いで大槍を構え直し、ディオーネの一撃を払いのけようとした。
……だが、遅い。
次の瞬間には、刃は槍に防がれるより先に、柔らかい腹の肉を貫くだろう。
ダークアメジスティアとシャイニングディオーネ。幾度となくぶつかり合ってきた歴戦の戦士たちが、寸分違わぬ未来図を頭に描いた…………その時。
――バチバチバチバチバチィィッ!
「ぐぅ……ッ!? ぅ……くぁぁッ!」
「――ッ!? なっ……魔王様ッ!?」
「黒河くん……っ!」
彼女たちは同時に声を上げた。
今まさに、カッティングブレードの切っ先がアメジスティアの腹部に突き刺さろうとしていたとき……アメジスティアを押しのけるように割り込んだ魔王が、その剣を障壁にて受け止めたのだ。
――バチィッ! バリバリバリバリバリッッ!
これもまた、前回の戦いの再現だ。
光と闇。相反する二つのエナジーが互いに互いを削り合い、激しい明滅を繰り返す。
……しかし、ただひとつだけ先の戦闘と違っていた点があった。
それは魔王の介入を、ディオーネも予測していたこと――!
「……っ、はぁぁあああああああっっ!!」
「ぬ……くッ!? ぐぅうぅぅぅぅぅ……ッ!」
ディオーネが柄を握った両手に力を込めると、カッティングブレードの刃にさらなるエナジーが注ぎこまれる。
白い光を帯びた刀身はさらに輝きを増し、闇のエナジーで形作られた領域を猛烈なスピードで侵食していく。
――バリバリバリッ……ピキッ! ビシビシビシッ!
「ぐッ……! ぎ、ぃ……ッ!!」
負けじと魔王も全力を出し、障壁にエナジーを注ぐ。
だが、高熱と高圧――凄まじい破壊力をたった一点のみに集中された結果、ディオーネをして「大砲くらいじゃ壊せない」と言わしめた頑強な障壁に亀裂が生じていく。
そして、次の瞬間……。
「……ふぅっ!」
「――――なッ!?」
柄を握り締めていた両手の内、左手だけを自由にしたディオーネが、障壁のヒビが入った部分に、手の甲に備えたクリスタルを押し当てた。
魔王はその意図を瞬時に理解し、損壊しかけていた障壁を補強すべく大慌てでエナジーを練り直す。
…………しかし。
「シャイぃぃン……ブラスタぁーーーっ!」
――ガシャァァァァァン!!
「…………ッ!? ぅああああああーーーーーーーっ!!」
「きゃああぁぁーーーーーーーッ!?」
零距離から放たれた、正義のヒロインの主砲。
それはひび割れた障壁を粉々に砕き、その先にいた魔王とアメジスティアの身体を容易く吹き飛ばした。
――ズドォォォォォンッ!!
「ぐあぁ――ッッ!?!?」
圧倒的なエナジーの奔流に押し流され、数十メートルを落下した魔王は遥か地上……硬いアスファルトの上に叩きつけられた。
「くぅ……ッ! ま、魔王様……!」
同じく、シャインブラスターの余波を浴びて弾き飛ばされたアメジスティアも、自らが半壊させたビルの外壁に背中を強かに打ちつけ、動けないでいた。
ディオーネはそんな彼らを追うように、ゆっくり降下する。
そして短いスカートをフワリと翻し、魔王の前に降り立った。
「ゲホッ! げほ……ゴホッ、ガフッ!」
魔王が咳き込むと、仮面のすき間からわずかな血反吐が漏れ出した。
あの高さからまともに落ちたのだ……いくら魔族と言えど、そのダメージは甚大なものに違いない。
しかし魔王は痛みなど感じていないかのように――いや、どこからどう見ても強がりなのだろうが……ともかく――自分を見下ろすディオーネに向かって顔を上げ、精一杯の軽口を試みた。
「な、なあ……いま本気で撃っただろ? 障壁に穴開けて、あんな近くから大技ぶっ放して……ゲホッ、ゲホッ!」
「……はい。出しました、本気……八割くらいですけど」
「くッ……ククク、ひどいヤツだなぁ。もしこれで俺が死んでたら、どうするつもりだったんだ?」
「……心配はしていませんでした。信じてましたから……あなたなら、これくらい耐えてくれるって」
魔王の顔をまっすぐ見つめ、ディオーネが確信を持ったような表情でうなずいた。
その口ぶりは、魔王を対等な好敵手と認めた敬意を含み……ある種の清々しささえ感じさせるものだった。
障壁だけを全壊させ、魔王とアメジスティアを行動不能にさせるギリギリの出力で放たれた必殺技……そんな調整を、あの短時間でやってのけた才能に感服したのか、ただ単純に気を失っただけなのか――
ディオーネの言葉を聞き届けた魔王は、その場でガクリと
「魔王様……ッ! ま、待て、シャイニングディオーネッ!」
動かなくなった魔王の身体を、まるで
アメジスティアは口から血の泡を飛ばしながら、敵が次に起こすであろう行動を止めようとする。
……しかし手も足も動かせない今、彼女の言葉はなんの力も持たない。
「悪は絶対許しません……シャイニングディオーネの勝利です!」
ディオーネはそんなアメジスティアに一瞥もくれることなく、高らかに勝ち名乗りを上げて――大切な宝物のように魔王をギュッと胸に抱き寄せ、閃光の中へと姿を消していった。
「くそッ……クソクソクソクソ! クソォッ!」
魔王への忠義に一瞬でも疑問を抱いたことによって生じた、決定的な隙。
その隙を突かれて魔王に傷をつけることを許し、あまつさえ徹底的に無視までされて、目の前で彼がさらわれるのを見ていることしかできなかった――
そんな自分が許せずに、アメジスティアは震える拳を握り締める。
「なんなんだ……いったい何をしているんだ、私はッッ!!」
自らが招いた失態に、両目から悔恨の涙が流れる。
アメジスティアは拳から血が出るほどビルの外壁を殴り付け、傷が癒えるまでのわずかな間、ただただ感情に任せて慟哭することしかできなかった。