金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
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隣町の繁華街で時間を潰すこと数時間――
学園ではそろそろ授業が終わり、学生たちが解放される時間だ。
いつまでもここにいて、遊びに来たクラスメイトと出くわしても、お互い面白くない思いをするだけだろう。
(……帰ろ)
そう考えた俺は、大人しく帰宅の途につこうとする。
――すると。
「お、おい……アレ見てみろよ!」
大通りを行き交う通行人がざわつき始めた。
その中のひとりが指さした先……大きなビルに設置されたローン会社の看板の上に目を向けると、そこに何やら黒いモヤのようなものが集まっていくのが見えた。
そしてそれが人間ほどの大きさの影になったと思うと……
――ぞるっ
その影からこちらの世界にこぼれ落ちてくるように、ひとりの魔族が姿を現した。
「っっ……!? アイツは……!」
「フフフフ……アッハハハハハハ! 群がることしかできない、愚かな人間たちよ! 今日の生贄は貴様らだ……存分に悲鳴を上げ、恐怖を絞り出し、この街を闇のエナジーで満たすがよい!」
黒いコスチュームに身を包んだ女……そう、ダークアメジスティアだ。
彼女が空中に手をかざすと、その指先からポウッと黒い光が放たれる。
すると道路に差したビルの影……その暗がりから湧き上がるように、おそらく俺の身長の倍以上はあるであろう、巨大な魔物が出現した。
「アメジスティア様ァ、今日はコイツらをヤッちまえばいいんですかい?」
「ああ、好きなように暴れるがいい。どんな獲物も、貴様の思いのままだ」
毛むくじゃらの剛腕に、厳ついゴリラのような顔……凶悪な笑みを浮かべた怪物は、自分を囲んで恐怖に固まる群衆を、舐めるように見回した。
「ヘッヘッヘ……ソイツは嬉しいねェ。こんなに大勢人間がいたんじゃ……今日中に殺しきれるか分かりませんやッッッ!!!!」
鼓膜が破れるほどの大声で叫び、ゴリラの魔物が跳躍する。
その高さは、ちょっとしたコンビニくらいの建物なら軽く飛び越えてしまえそうなほどだ。
――ドォォオオオオオオオオン!!
巨体が着地すると、砕け散ったアスファルトの破片が、そこにいた何人もの人々と同じように宙を舞う。
それを見てようやくスイッチが入ったように、群衆は悲鳴を上げてこの場から逃げ出した。
「ハーーーッハッハッハ! 走れ走れ、人間どもォ! 無抵抗なヤツを殺しても面白くねえからなァ! もっと無様に逃げ回って、オレ様を楽しませろ!」
倒れた人間の脚をつかんで、棍棒のように振り回す魔物。その圧倒的なパワーを目の当たりにして、人々は完全にパニックを起こしている。
俺もすぐにこの場から離れるべく、駆け出そうとするが――
「…………っ!? チッ……!」
逃げ惑う人々の中に、小さな女の子が取り残されていた。
近くに親の姿はないようだ……この混乱のどさくさで、はぐれてしまったのだろうか。
このままでは逃げ惑う人々の波に押し潰されて、どうなってしまうかわからない。
俺は川の流れに逆らうように群衆をかき分けて、なんとかその子のもとまで辿り着いた。
「おいっ! ボーッとしてないで、早くっ!」
「ぇ……? なん……きゃあぁぁぁっ!?」
後ろから走ってきた大人に押されて、女の子はバランスを崩して転びかけた。
俺はギリギリでその腕をつかんで引き起こす。そして急いで踵を返し、その子を連れて駆け出した。
「ぅぅっ……あぅっ!? い、いたいっ……!」
「我慢しろ、それくらい!」
腕の痛みに悲鳴を上げる女の子。しかしあの場に残って魔物に捕まるよりは、よっぽどマシなはずだ。
俺はある程度走って最初の地点から離れた後、大勢の人々が行き交う表通りをあえて避け、無人の路地裏に逃げ込んだ。
「ハァッ、ハァ、ハァ……」
人混みからようやく抜け出し、大きく肩で息をする。
ここなら人通りもなく、この子が群衆の雪崩に巻き込まれる心配はない。
「おい、大丈夫か」
「うぅぅ……お母さぁぁぁん……手ぇ痛いぃぃぃぃ……」
「……ああ? っと、悪い悪い」
俺は女の子の腕に食い込ませていた指を放した。
自由になった手首にくっきり残った赤い手形を見つめて、女の子は目に涙を浮かべている。
(……結果的に、授業をサボってよかったな)
もしこの街で暇潰しをしてなかったら、この子は今ごろこの騒動に巻き込まれて、どうなっていたかわからない。
ひとまずのピンチから逃れることができて、俺はひっそりと安堵した。
とは言えまだまだ終わりではない。一刻も早く安全な場所に逃げ、この子の親も探さなくては。
とりあえずはこの小路を抜けて、向こうの大通りを目指そう。あっちなら難を逃れた人たちも少しは落ち着いているだろうし、人探しもしやすくなるはずだ。
「おい、もう少し歩けるか?」
「ぐすっ……もうやぁだぁぁ……」
だが、ここに来て女の子がぐずり始めてしまった。
無理はない。大人ですらパニックを起こしているのだ。幼いこの子が極度の不安に陥るのは当然のことだ。
とは言え我慢してもらわないと、救える命も救えない……。
そう思った俺は女の子の腕をもう一度つかみ、強引にでも歩かせようとする。
「やぁっ……引っぱるのやだぁ!」
「頼むから動いてくれって……ここにいたら死んじまうかもしれないんだぞ」
「やぁーーーーーーーっ!!」
取り乱す女の子への対応で四苦八苦する俺。
そのせいで、周囲への気配りが疎かになっていたのか……。
背後から足音が聞こえるまで、俺は
――カツッ、カツッ……
「…………ッッ!? 誰っ――」
「え……っ? くろかわ、くん……?」
咄嗟に振り返った俺の目に飛び込んできたのは、朝の教室でうんざりしながら見せられた顔――
ポカンと口を開けてこちらを見つめる、制服姿の姫菱だった。