※この作品はR-18です。

金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~   作:johnny内藤

124 / 127
第20話-4

 

「はぁああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 唸りを上げて空気を切り裂きながら、正義の鉄拳が魔王に迫る。

 

 

 ――ゴツッ!!

 

 

 だが身体の正面に現れた平面状の障壁によって、胸部のど真ん中を狙いすました正拳突きが阻まれた。

 

「はっ! てぁああっ! はぁああああああっ!」

 

 それをまったく意に介さず、左右からパンチによる連撃を繰り出して、ブラックディオーネが障壁ごと魔王に攻め込んでいく。

 

「……ッ……ク……ぅ、チ……ッ!」

 

 ――ピシッ……ピキピキッ、ビシ!

 

 ミサイルですら防ぐであろう堅牢な障壁に、少しずつ亀裂が入っていく。

 

 防御に徹する魔王だが、反撃の糸口すら与えない連続攻撃によって、空中でジリジリと後退する。

 

 そして……。

 

「はぁあああっ!!」

 

 

 ――ガッシャァァァアアアアアン!!

 

 

 抉るように突き出されたストレートに中心を貫(ぬ)かれ、障壁はガラスのように砕けて飛散した。

 

 同時に、伸び切った拳は完全に勢いを失い、ブラックディオーネは魔王の前で大きな隙を晒してしまう。

 

 ……だがこれは文字通り、ほ(・)ん(・)の(・)軽(・)い(・)ジ(・)ャ(・)ブ(・)。

 

 ここまでは、ブラックディオーネにとっても計算の内だ。

 

 魔王がエナジーを練り上げて、次の障壁を展開するまでのわずかな時間――

 

 そのタイミングは、前回までの戦いですでに完璧に把握している。

 

 彼が再び防御を固める前に体勢を立て直し、本命の一撃を届かせるには充分すぎる時間……!

 

「――――てぁあぁっっ!」

 

 ブラックディオーネは拳を引くと同時に下半身をひねり、魔王の側頭部目掛けて回し蹴りを放つ!

 

 

 ――――ガヅンンッッッ!!

 

 

「…………っっ!?」

 

 だが魔王の顔面横――ブラックディオーネの足の甲が蹴り抜こうとしていた空間に新たな障壁が現れ、奇襲は完全に阻まれた。

 

 しかも、たとえ防(・)御(・)が(・)間(・)に(・)合(・)お(・)う(・)と(・)も(・)余(・)裕(・)で(・)ぶ(・)ち(・)破(・)り(・)、魔(・)王(・)を(・)蹴(・)り(・)飛(・)ば(・)せ(・)る(・)は(・)ず(・)だと意気込んでいた全力の一撃だ。

 

 それを防がれて、目を丸くするブラックディオーネ……だが、それもほんの一瞬だ。

 

「――っ、せぇっ! やぁっ! たぁっ、だぁあぁぁっっ!」

 

 頭で考えるよりも身体を先に動かし、息もつかせぬ連続攻撃を与える。

 

 それも身体の正面からだけでなく、先ほどよりもさらに鋭く、より多角的にだ。

 

 だが……。

 

 ――ガンッ! ガッガツッ! ゴッ、ガッ、ガヅッッン!!

 

 ブラックディオーネの拳や足刀が迫るたび、魔王が素早く障壁を出現させ、そのことごとくを受け止める。

 

 しかも、一撃一撃を防ぐために必要な強度と厚さを見極めて、最小限の大きさに留めた障壁をピンポイントでだ。

 

(……それだけじゃない。使い終わった障壁はすぐに消し去って、エナジーのロスを抑えてる……曜くん、いつの間にこんな丁寧な戦い方を――)

 

 ほんの数週間前までは、低密度の障壁を広い範囲に展開し、エナジーを無駄に垂れ流すような戦い方しかできなかったヒヨッコ魔王。

 

 そんな彼がこの短期間で身につけていた芸当に、内心驚嘆してしまう。

 

 ならば――と、ブラックディオーネが両手に備えたクリスタルに力を集中させた。

 

「カッティングブレードっ!」

 

 二つクリスタルから伸びたのは、エナジーによって形成された二刀流の刃。

 

 魔王を多少傷つけるリスクはあれど、もはや徒手空拳による攻撃では彼に届かないとの判断だ。

 

「せぇええええっ!!」

 

 光と闇。白と黒

 

 左右の手に一本ずつ備えた刃により、二色の軌跡が空中に走る。

 

 ――ギャリッ! ギッ、ガギィィン!!

 

 しかしその鋭い斬撃も、障壁に傷をつけるには至らない。

 

 いや……正確にはわずかずつ斬り込んではいるのだが、そのたびに魔王がエナジーを注ぎこんで修復しているようだ。

 

「――だったら……!」

 

 正面からの突破を諦めたブラックディオーネが、攻め方に変化をつける。

 

 ダイヤモンド以上の硬度と強度を持ったブレードの刀身が軟らかくう(・)ね(・)り(・)、鞭のようにしなって魔王に襲い掛かった。

 

 これなら障壁に阻まれようとも、柔軟に湾曲した刃の一部が裏まで回り込み、魔王に届き得る!

 

 

 ――バッシィィイイイン!

 

 

「……ちぃっ!?」

 

 が、これも駄目。

 

 刃の形態が変わったと見るや、魔王も平面状だった障壁を、バイクの風よけのような形に変えて対応してくる。

 

 これでは鞭状の刀身は丸い壁面にへばりつくばかりで、彼の身体に到達する余地はない。

 

(くっ……でも、まだまだ!)

 

 しかしブラックディオーネの目から、闘志の光は消えていない。

 

 攻め手はまだ残っている――

 

 それはエナジーを操る精度に関しては抜群のセンスを持つことに加えて、かつて魔王によって闇のエナジーを植え付けられた彼女だからこそ可能な技。

 

 すなわちエナジーの波長を相手に合わせて、エナジー同士の衝突を避けることで、敵の防御を無効化するという奇策だ。

 

「……はぁあああああっ!」

 

 いつぞやはダークアメジスティアでさえも罠にかけた、奇襲の一手――

 

 ブレードを再び頑強に固め、ブラックディオーネが大上段から刀身を振り下ろす。

 

 ――スウゥゥ……ッ

 

(…………入った!)

 

 目論み通り一切の抵抗を受けることなく、障壁の上部に切っ先が食い込んだ。

 

 このまま腕を振り下ろせば、魔王に刃を届かせることができるはず。

 

 激しい攻防の末にようやくもぎ取った一撃だが、彼から継戦能力を奪うには充分なダメージとなるだろう。

 

 刃が障壁を通り抜ける物理的な手応えのなさに、ブラックディオーネが勝利を確信した――その時だった。

 

 

 ――グンッ!

 

 

「…………ん、なっ!?」

 

 腕の先に強い抵抗を感じ、ブラックディオーネは前方につんのめるようにバランスを崩した。

 

 よくよく見ると、そのまま通過するかと思われていたブレードの刀身が、障壁の中心で絡め取られるかのように停止していたのだ。

 

(まさか……この子、こんな力技で!?)

 

 目の前で起きた現象の正体に気づいた瞬間、ブラックディオーネは驚きと同時に、呆れの念を禁じえなかった。

 

 魔王がしたことは至極単純……障壁の中に新たに、瞬時に、そして大量にエナジーを注ぎ込み、ブレードが通過する余地もないほど密度を高めたのだ。

 

 波長が似ているとは言え、所詮は異物に過ぎないエナジーの刃。

 

 固定された刀身は、引き抜くわけにもいかず、さりとてそのまま障壁を斬り進めて脱するわけにもいかず……まさに進退窮まる状況に陥ってしまった。

 

 ――捉(つか)まった!

 

 反射的に直感し、危機感を覚えるブラックディオーネ……だが、すぐに頭の中を切り替える。

 

「とぉおおおっ!」

 

 ブラックディオーネは拳から伸びたブレードを瞬時に消し去り、目の前の障壁を足蹴にして後方へと飛びのいた。

 

 魔王と距離を取ったブラックディオーネの頬を、少し遅れて冷や汗が伝う。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「チェッ……惜しい」

 

 仮面の下で淡々と呟き、魔王が今まさに突き出そうと構えていた拳を収める。

 

 あと一瞬退避が遅れていたら、パワーを込めた一撃を受けていたのは自分だっただろう――

 

 間一髪のところで難を逃れたブラックディオーネが、豊かな胸をなでおろす。

 

 ……同時に、魔王が遂げた目覚ましい成長に感嘆のため息を漏らした。

 

 前回ボコボコに打ちのめしたときは、自分の中に眠ったエナジーを持て余し、よ(・)ち(・)よ(・)ち(・)歩(・)き(・)のような戦い方しかできなかった魔王。

 

 それが今や経験豊富な戦士のように自らのポテンシャルを活かしきり、一流の正義のヒロインであるブラックディオーネの動きに対応してくる。

 

 倒すべき宿敵が、知らないうちに着実に力をつけていた――

 

 それは彼女にとって当然憂慮すべき事態……のはずなのだが。

 

「…………ふふっ」

 

 ブラックディオーネは自分でも気づかぬうちに、頬を綻ばせていた。

 

「やるじゃない、曜くん! いったいいつの間に、そんなに腕を上げたのかしら?」

 

 彼(・)の成長に自然と気分が高揚し、戦闘中だというのに思わずそう声をかけてしまう。

 

「はぁ、まあ……おかげさまで、ってことで」

 

 敵からの賛辞を受け、魔王が曖昧に返事をした。

 

 おかげさまで……とは、どういう意味なのだろう?

 

 彼の言葉が何を示しているのかがわからず、ブラックディオーネが首を傾げた。

 

 無表情な仮面で覆われ、真意が読めない彼の言葉……。

 

 ――だが魔王の首にほんのわずかな角度が付いて、仮面の奥から自分に向けられていた視線が一瞬外れたことを、ブラックディオーネは見逃さなかった。

 

 魔王の視線を追い、素早くそちらに目を向ける。

 

 そこにあったのは、ブレードを携えた腕をもう一方の腕で支え、アメジスティアの槍を受け止めながら――横目でこちらを盗み見ていたシャイニングディオーネの姿だった。

 

「…………はぇっ!?」

 

 母とバッチリ目が合ったその瞬間、ディオーネは慌てた顔で正面に向き直った。

 

 おそらくアメジスティアを相手にしながらも、母と魔王の会話が気になって、チラチラとこちらの様子を伺っていたのだろう。

 

「こ……このぉっ! いい加減、離れてくださいっ!」

 

 ――ガキィィン!

 

 アメジスティアの攻撃を弾き飛ばし、シャイニングディオーネは何事もなかったかのような素振りで戦いに戻っていく……が、内心焦っているのは見え見えだ。

 

(……ふぅん、そういうこと♪)

 

 それを見て大方の事情を察し、ブラックディオーネが再び口元に笑みを浮かべた。

 

 おそらく魔王の成長には、娘である姫(・)菱(・)陽(・)花(・)梨(・)が一枚噛んでいるに違いない。

 

 だからこそこの話題に触れた際、魔王は無意識にシャイニングディオーネを目で追ってしまったのだ。

 

(なぁんだ……こんなことなら、私が出しゃばる必要なんてなかったかもね)

 

 そう考えながらブラックディオーネが思い浮かべたのは、先日自宅に呼びつけた黒河曜と交わした会話のことだ。

 

 母として、娘のために良かれと思って口を挟んだつもりだったのだが……どうやら余計なお節介をするまでもなく、二人は二人なりの距離感とスピードで、それなりに上手くやっているらしい。

 

 ……だが、そ(・)れ(・)とこ(・)れ(・)とは話が別。

 

 娘のため――そしてすれ違ってしまった二人に、再び同じ道を歩ませるためにも、まずは彼を捕らえなくては。

 

 そんな強い決意を胸に秘め、ブラックディオーネが気合を入れ直す。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。