※この作品はR-18です。

金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~   作:johnny内藤

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第20話-5

 

(さて、と――あ(・)っ(・)ち(・)の調子はどうかしら……?)

 

 魔王に充分な注意を払いつつ、ブラックディオーネが隣の空域で戦っている娘の動向を観察する。

 

「フゥッ……ハァアアッ! 死ねぇッ、シャイニングディオーネ!」

「くっ……そ、そんな攻撃、当たりませんっ!」

 

 ――ガキンッ! ガァァァァン!

 

 アメジスティアの追撃を切り払いでかわしながら、シャイニングディオーネは相手との絶妙な距離を保って反撃の機会をうかがっている。

 

 同時に、自分とアメジスティアを結んだ直線上……つまり自分の背後の空間に常に魔王が位置するよう、巧みに立ち回っているようだ。

 

 ――上手い。

 

 基本に忠実な娘の戦い方を、ブラックディオーネが心の中で賞賛する。

 

 アメジスティア最大の決め手である「アメジストエクスキューション」は、破壊力を伴った闇のエナジーを一直線に放出する大技だ。

 

 つまりこの位置取りであれば魔王を巻き込むことを恐れ、アメジスティアは技を撃つことができない……というのが、シャイニングディオーネの目論見だ。

 

 見方によっては、彼らの信頼や主従関係を逆手に取るようで、正義のヒロインがとる戦法としては少々ず(・)る(・)い(・)ような気がしないでもないが――

 

 相手だって、勝利のためなら手段を選ばない非情な魔族だ。勝ち方にこだわってもいられないだろう。

 

「ふふっ……娘があんなに頑張ってるんだもの。私だって、負けてるわけにはいかないわよね」

 

 ブラックディオーネが魔王に向き直り、誰にともなく呟いた。

 

 先ほどはあらゆる手を使って攻撃を試みたが、魔王の堅牢な守りを破ることができず、本人にはまだかすり傷ひとつ付けられていない現状――

 

 にもかかわらず、彼女の口元に浮かんでいるのは不敵な笑みだ。

 

 そう……ブラックディオーネにはさらに隠し持っている、彼女だからこそ可能な秘策中の秘策がある。

 

 それは――

 

「はぁぁああああ……っ! やぁあああああああああ!」

 

 ――ガガガガガンッ! ズドドッガンガンガンズガガガガガッッッ!!

 

「……ッ!? ぐ……あっぐ……ッッ!?」

 

 一瞬で距離を詰めてきたブラックディオーネに拳の嵐を浴びせられながら、障壁を盾にして魔王がたじろいだ。

 

 彼女だからこそ可能な秘策……それは力技を上から押し潰すほどの、さらなる力によるゴリ押し。

 

 反発し合う二つのエナジーをあえてぶつけて爆発させ、そこから生まれた莫大な力で身体機能を増強するという荒業だ。

 

 もちろん暴(・)走(・)の(・)不(・)安(・)というものは、少なからずある。

 

 この状況が長く続けば続くほど、均衡が崩れたエナジーは彼女の肉体や精神面に多大な影響を及ぼすだろう。

 

 だが、多少のリスクを冒さなければ倒せないほどの実力を身につけた魔王――そんな彼の成長に対する畏怖と喜びの想いを抱いたからこそ、ブラックディオーネは危険を承知でこの作戦を選んだのだ。

 

「くッ……そ……んぐッ、ぐぅぅ……!」

「ほらっ! ほらほらほらほらっ! そんなもの……? 自慢のバリアが悲鳴を上げているわよ?」

 

 その言葉の通り、分厚い氷に細かいヒビが入るようなピ(・)シ(・)ピ(・)シ(・)という小さな音が、魔王が前方に掲げた障壁から鳴っている。

 

 魔王はひたすら防御に徹しながら、障壁を修復すべくエナジーを送り続ける。

 

 傷を負った肌にか(・)さ(・)ぶ(・)た(・)が張り、さらに丈夫になるように――ヒビの隙間をエナジーで補強された障壁もまた、厚さと密度を増して強度を高めていく。

 

「本当、大した堅さね……こんなに頑丈な盾を持った敵なんて、今まで倒してきた魔族や魔獣の中にはいなかったわ」

 

 拳の勢いを決して緩めることなく、ブラックディオーネが懐かしむように過去の戦いに思いを馳せる。

 

 歴戦の正義のヒロインですら手を焼くほどの防御力――

 

 これぞ彼の中で眠る圧倒的なエナジー量によって裏打ちされた、魔王が魔王であることの証。

 

 …………だが。

 

「それでもあなたは私に勝てない……なぜだかわかる?」

「……ッ、っ……! ッ……クッ……!」

「たしかに防御力は一級品――でもね、あなたには他に攻(・)め(・)手(・)がない。相手を倒す技がなければ、どれだけ戦いを長引かせてもいつかは押し負けてしまう!」

 

 そう、それもまた道理だ。

 

 ブラックディオーネの攻撃は、障壁にわずかな傷をつけるだけ――だが確実に魔王を消耗させてはいるのだ。

 

 いくらエナジーの総量に優れているとは言っても、それは無限ではない。

 

 ましてや彼は魔族と言えど、生き物には違いないのだ。当然腹は減るし、眠くもなる。

 

 このまま延々と攻撃を防いでいるだけでは、いつかは体力が枯渇して、それによって支えられていたエナジーも底を尽きる。

 

 そうして修復が追い付かなかくなった障壁は、やがて――

 

 そうなる前に、目の前の相手を排除しなければいけないのだが……その術が、そもそも彼にはないのだ。

 

「ふふっ……得意技に磨きをかけるのに忙しくて、敵を倒す方法を考えることは忘れちゃっていたのかしら?」

「…………、ッ……! チッ……!」

「でも、だからって手加減はしてあげられないわよ? 悪いけど、このままバリアごと打ち砕いて、あなたを連れ去ってあげるっッッ♪」

 

 ――ガンガンガンガンガンッッ! ドギャガガガッ、ガンガガンガンガッガツンッ!!

 

 エナジーのバランスが闇(・)のほうに傾いてきたのか、ブラックディオーネの好戦的な一面が顕著になってきた。

 

 もはや目では追えないほどの速さになってきた拳から、キラキラ輝く光の粒子が尾を引いて、苛烈な連撃の軌跡を浮かび上がらせている。

 

 これは彼女の中でぶつかり合ったエナジーが余剰の力を生み出し、それが体外へと溢れ出たために起きている現象だ。

 

 それほどまでに闘争心が燃え盛っている状況にありながら――ブラックディオーネの頭は冴えわたり、冷静に戦況を分析していた。

 

(……やっぱり変ね。いま私が言ったことなんて、曜くんなら百も承知のはず)

 

 たしかに魔王は戦闘においては経験不足かもしれないが、馬鹿ではない。

 

 そんな彼が、まさかそ(・)の(・)場(・)し(・)の(・)ぎ(・)のためだけに守りに徹し、亀のように手足を引っ込めているとは考えづらい。

 

 ――だとしたら、何を待っている?

 

 もしかして自分は障壁の修復だけに最小限のエナジーを費やして、こちらの体力が先に尽きるのを狙っているのだろうか。

 

 だがそれはあり得ない。なぜならブラックディオーネは体内で少量のエナジーを衝突させることで、多量のエナジーを生み出すことができるからだ。

 

 いくら魔王が膨大なエナジーを持っているとは言え、このまま我慢比べをしていては、いずれ軍配が上がるのはブラックディオーネのほうだろう。

 

 ――あるいは自身の右腕であるダークアメジスティアが加勢して、2体1の状況になるのを待っている?

 

(そういうことなら……ちょっとガッカリねぇ)

 

 障壁の脆い部分を的確に突きながら、ブラックディオーネが口の中で呟いた。

 

 もし魔王がそれを期待しているのだとしても、当のアメジスティアは、同等の戦力を持ったシャイニングディオーネと戦闘中だ。

 

 二人の実力は五分と五分……良くてもアメジスティアが6、シャイニングディオーネが4といったところだろう。

 

 そんな力関係を前提に、ア(・)メ(・)ジ(・)ス(・)テ(・)ィ(・)ア(・)が(・)都(・)合(・)よ(・)く(・)勝(・)利(・)し(・)て(・)助(・)け(・)に(・)来(・)て(・)く(・)れ(・)る(・)という丁半博打にすべてを賭ける……というのは、戦略としてはあまりに見通しが甘いと言わざるを得ない。

 

 ――そうこうしている間にもブラックディオーネの攻撃は速度を増し、障壁の耐久度を着実に奪っていく。

 

「ふふふっ……あはははははッ♪ いい加減あきめたら、曜くん? 別に嫌がる必要なんてないじゃない……前みたいに誰にも邪魔されない空間にあなたを閉じ込めて、娘と一緒に浄化してあげるだけなんだから」

「……! …………ッつ……!」

「あなただって、本当はそういうの嫌いじゃないんでしょ? 今のうちに素直になっておけば、無駄に痛い思いなんかすることなく、気持ちよぉ~くなれるのに……♡」

 

 ガラス越しにキスでもするかのように、障壁の向こうから甘くささやきかけるブラックディオーネ。

 

 白と黒の光をまき散らすその拳はすでに音速に近くなっており、まともに当たれば、今度は骨折だけでは済まないかも――

 

 それに対し、魔王は変わらず防御を固める戦法のようだ。

 

 最初は半透明だった障壁は、繰り返しエナジーを注ぎ込まれたことで密度を高め、もはや一筋の光も通さないほどの黒(・)に染まっていた。

 

 厚さも大きさも倍増し、その表面はまるで磨き抜かれた鏡のようにブラックディオーネの美貌を映している。

 

 割れた黒曜石を思わせる、濡れたように重厚な光沢を帯びた断面には一点の曇りすら―――――――――――――――――――鏡?

 

 

「………………ッッッ!!」

 

 

 魔王の――――否。

 

 敵(・)方(・)の思惑に気づいたブラックディオーネが、高速で動いていた拳をピタリと停止させた。

 

 そして自分たちから数十メートルほど離れた空間で戦っていたシャイニングディオーネに向けて、あらん限りの大声で警告を発する。

 

「よけてぇぇッ、陽花梨!!」

 

「――――えっ?」

 

 だがそれは皮肉にも、娘の気をこちらに引き付けるという結果をもたらしてしまった。

 

「……ククッ」

 

 ディオーネの注意が母に逸れた、ま(・)ば(・)た(・)き(・)ほどの間――

 

 その隙を突き、アメジスティアは手にしていた大槍の穂先にエナジーを集中させる。

 

 ……そして。

 

「アメジストォォ……エクスキューションンンッッ!」

 

「な……っ!? ――きゃああぁぁあああああああああっっ!」

 

 意気軒昂と放たれた黒い光の帯が、シャイニングディオーネの全身を瞬時に呑み込んだ。

 

 敵は決して飛び道具を撃てないはず――そう思い込んでいた彼女にとっては、まさに慮外の一撃。

 

 闇のエナジーに直撃されたディオーネは甚大なダメージを負い、一瞬にしてすべての力を失ってしまった。

 

 ――同時に、彼女の背後にいた魔王に向かって暗黒の光線が直進する。

 

「グぅ……ッ!」

 

 アメジスティア渾身の大技を障壁に浴び、そのパワーにうめき声を上げる魔王。

 

 だが障壁は砕かれることなく、アメジストエクスキューションの絶大な破壊力を受け止めきってみせた。

 

 ――そう。彼が待っていたのは、今(・)ま(・)さ(・)に(・)こ(・)の(・)時(・)だったのだ。

 

 激しい攻撃に耐えながら磨き上げた障壁が、光線の威力に耐え得る強度を持つまでに至ったこの瞬間……。

 

 そして鏡が光を跳ね返すように、障壁によって弾かれた漆黒の光線が、反射角の直線上にいたブラックディオーネに襲い掛かかる!

 

「ぁぐッ……ああぁぁぁああああああああっ!」

 

 これが魔王の策略。彼が隠し持っていた奥の手。

 

 敵に告げられた決(・)め(・)手(・)の(・)な(・)さ(・)を、魔王は他者の技を利用することで変則的に克服してみせたのだ。

 

 咄嗟に光線から逃れようとしていたブラックディオーネだったが、魔王は障壁の角度をわずかに調整するだけで彼女を狙い撃ちにすることができる。

 

 遮蔽物も何もない空中では、反射を利用した狙撃から逃れることはほぼ不可能に近い――!

 

 黒き破壊の光に全身を灼(や)かれたブラックディオーネは、娘同様に戦う力を失い、地上に向けて墜ちていく。

 

 

 

「――くっ……ぅぐっ!? ごほっ、ごほっ……!」

 

 瓦礫の中に墜落したブラックディオーネは、アメジストエクスキューションと落下のダメージによって、もはやまともに動くことができない。

 

「ぅ……うぅぅん……」

 

 少し離れた場所で倒れている娘の方から、かすかな声が聞こえた。

 

 なんとか息はあるようだが、母と同様に大ダメージを負い、すでに意識を失っているようだ。

 

 優位だと思っていた勝負を、一手ですべてひっくり返された――

 

 ボロボロになったコスチュームを見下ろして、自らの慢心と油断を悔いるブラックディオーネ。

 

 そんな彼女の前に、アメジスティアを引き連れた魔王が降り立った。

 

「……やられたわ。まさか大(・)切(・)な(・)魔(・)王(・)様(・)に向けて、あなたがあんな大技を撃つなんてね……二人の作戦にまんまと乗せられた、私の負けよ」

 

 せめてもの虚勢を張って、ブラックディオーネは口元に笑みを浮かべてみせた。

 

「フン、作戦だと? そんなものは知らん」

 

 だがその程度の嫌味など通じないとばかりに、アメジスティアが毅然とした態度で鼻を鳴らした。

 

「私はただ、信じていただけだ。魔王様が、私(・)な(・)ら(・)ば(・)こ(・)う(・)す(・)る(・)だ(・)ろ(・)う(・)と信じていることをな――――我らのその信頼の証が、いまの貴様ら母娘の姿だ」

「………………」

 

 堂々と胸を張って言い放ったアメジスティアの言葉に、一瞬呆気にとられたように黙った後――

 

「……信頼……ねぇ。まさか魔族であるあなたの口から、そんな人間らしい言葉が出てくるなんて思わなかったわ……」

 

 ブラックディオーネは軽い憎まれ口を返し、全身から力を抜いて地面に身体を預けた。

 

 薄れゆく意識の中、天を仰いで「ふぅ」とため息。

 

 そして先ほどから黙って自分を見下ろしている魔王に目線を戻して、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

 

「……さっきは、ごめんなさいね」

「………………」

「最初に言った、ご両親のこと……あれ、本心じゃ……ないから……」

「……わかってる。俺も同じだったから」

「………………ふふ」

 

 最後に、魔王が仮面の中でボソリと漏らした答えを聞いて――

 

 ブラックディオーネは満足そうに微笑みを浮かべ、ゆっくりと意識を手放した。

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