※この作品はR-18です。

金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~   作:johnny内藤

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第20話-6

 

 ◇

 

「…………ぅ、っんん……?」

 

 あれからいったい、どれくらいのあいだ眠っていたのだろう?

 

 意識を取り戻したブラックディオーネが、まだ薄ぼんやりと霞む目を懸命に開いて辺りの様子をうかがう。

 

(……部屋? どこなの、ここ……?)

 

 その場所は、以前連れ去られたダークアメジスティアの空間とはまるで別物だった。

 

 どこまでも続く底なしの闇に囚われた、一種の悪夢を見ているような影の世界――

 

 それとは違い、この場所は広々としてはいるものの……四方を壁に囲まれた、極めて現実感のある人工的な部屋のようだ。

 

 どうやら自分はパイプ椅子に座らされて、目の前のテーブルに突っ伏して眠っていたらしい。

 

 テーブルは木目調の長机で、天板の長さはちょうど二人分ほどあるようだ。

 

 そのまま横に目を移すと、自分と同じくこの部屋に拉致されたシャイニングディオーネが、腕を枕にして「すぅすぅ」と寝息を立てていた。

 

 敵の大技を受けてボロボロになっていた二人のコスチュームは、何事もなかったかのように元通りになっている。

 

 地面との激突による痛みもきれいさっぱり消えていて、まるであの激しい戦いが夢だったかのような錯覚すら覚えてしまう。

 

「シャイニングディオーネ、起きなさい?」

「んぅぅ……むぁ……?」

 

 母の呼びかけにピクリと肩を揺らし、シャイニングディオーネがむっくりと頭を上げる。

 

 頬に赤いあとが付いているのは、戦闘の後遺症ではなく、腕枕に長時間、顔を押し付けていたためだろう。

 

「はっ……ぉ、ブラックディオーネ!? こ、ここは……っ!」

 

 二秒ほど間を置いて跳ね起きた娘の口が、一瞬「お母さん」の形になりかけた。

 

 しかしすぐに我に返り、寝ぼけ眼を擦りながら周囲を見渡す。

 

「ここ、どこだかわかる? 見たところ、どこかのホールみたいだけど……」

「えっと……? ごめんなさい、ちょっと知らないかも」

「アメジスティアに夢でも見せられているのかしら。普通の建物みたいに見えるけど、実は異次元の空間だったり?」

「わからないけど、たぶん現実……だよ。前にも……えっと、こ、こういうことが……」

 

 言いながら何かを思い出したのか、シャイニングディオーネは急激に顔を赤くしてうつむいてしまった。

 

 なるほど……。以前にも似たようなシチュエーションで、そ(・)う(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)をされたのだろう。

 

 いろいろと尋ねておきたいことは尽きないが、娘にも言いづらいことはある。

 

 根掘り葉掘り訊くのは憚られるし、彼女と曜のいまの関係を見ても、余程凄惨な仕打ちを受けた……というわけでもなさそうだ。

 

 そう信じて、ブラックディオーネはその疑問を棚上げしておくことにした。

 

(ともかく、いまは状況を把握することが先決よね……)

 

 もしこれが敵の罠であるのなら、下手に動くのはかえって危険だ。

 

 ブラックディオーネは椅子に腰かけたまま、辺りの様子を注意深く観察する。

 

 ガランとした広いホール。この場にあるのは、自分たちが座らされているパイプ椅子と長机のみだ。

 

 薄暗い人工のライトに照らされたこの部屋は、例えるなら、一般人がちょっとしたイベントを行うフロアのようで――

 

(そう、あれは確か……)

 

 ブラックディオーネは、以前に一度だけ参加したことがある、有名小説家のサイン会を思い出していた。

 

 大き目のデパートの一角に設けられた、100人入っても余裕がありそうなスペース。

 

 そう言えばあの時の会場も、ちょうどこれくらいの広さだったような――

 

 ブラックディオーネがそう考えた……その時だった。

 

「クッックック……まあ、そう不安げにキョロキョロするな。別にこの場所自体に、特別な仕掛けなどない」

 

「「…………っ!?」」

 

 ブラックディオーネとシャイニングディオーネが、同時に同じ方向を見た。

 

 いったい、いつからそこにいたのか……長机の横にダークアメジスティアが立っていて、彼女たちを見下ろしていたのだ。

 

「いつまでも寝ぼけたようなマヌケ面をして……ほら、さっさとシャンとしろ。そんなことでは、貴様らを応援している人間どもにも合わせる顔があるまい?」

「アメジスティア! こ、ここはいったい……!?」

「フッ……母親の前だからと言って、躍起になるな。いまの貴様では、私に歯向かうだけの力など出せない……これまでの経験でわかっているだろう?」

「…………くっ」

 

 椅子から腰を浮かせかけていたシャイニングディオーネが、悔しそうに奥歯を噛みしめながら引き下がる。

 

 娘の疑問を代弁するかのように、ブラックディオーネが落ち着いた口調で訊ねた。

 

「……私たちを応援している人たち、そう言ったわね? このタイミングでそんな話を持ち出してくるなんて、何か特別な理由があるのかしら?」

「ククッ……ああ、その通りだ」

 

 自分を睨むブラックディオーネの視線など歯牙にもかけず、アメジスティアが愉しそうに喉の奥を鳴らす。

 

「いや、なに……いつも同じようなやり方で、正義のヒロインを辱めてばかりだというのも哀れだと思ってな? 今日は魔王様が、特別に取り計らってくださることになったというわけだ」

「回りくどいわねぇ……そんなこと言ったって、やることはどうせ一緒なんだから。どういうつもりなのか、さっさと教えなさい?」

「クククッ――だから、集めてやったのだ。貴様ら二人のシャイニングディオーネの、フ(・)ァ(・)ン(・)とやらをな」

 

 いつもとは打って変わった猫なで声で……しかし攻撃的に唇の端をつり上げて、アメジスティアが言った。

 

「せいぜい保ってみせるのだな。貴様らに憧れを抱く者どもを失望させぬように……正義のヒロインという名の偶像――そのイメージとやらをなァ」

 

 ――パチンッ!

 

「…………っ!?」

 

 アメジスティアが指を鳴らすと、フロアの照明がスゥッと落ちて、周囲が暗がりに覆われた。

 

 そして再び明かりが点くと――

 

「……あれ? ここ、どこだ……?」

「さっきまで俺たちがいた部屋とは違うよな……?」

 

 辺りは一瞬にして、どよめきに包まれた。

 

 二人の目の前に、フロアを覆いつくさんばかりの、黒山の人だかりができていたのだ。

 

 どうやら明かりが消えたわずかな間に、アメジスティアの魔術によって、この場に集団で転移させられてきたらしい。

 

(……お母さん、この人たちって――)

(ええ……どうやらただの一般人みたいね)

 

 二人は互いに目配せをして、そのことを確かめ合う。

 

 とつぜん部屋に現れたのは男性のみ。少なくとも二人の位置から見て、女性はひとりもいないようだ。

 

 彼らはまだ、自分たちが置かれた状況が飲み込めていないようで、全員オロオロと辺りを見回してざわついている。

 

 年齢層は、若者から中年まで様々なようだ。

 

 ……特徴的なのは、彼らの身なりだ。

 

 尋常ではない黒髪&メガネ率に、アイロンがかかっていないチェックのポロシャツ――

 

 そして多くの者が、その下にシャイニングディオーネの写真やイラストをプリントしたTシャツを着込んでいたり、彼女たちを模したフィギュアやぬいぐるみを手にしている。

 

(なるほどねぇ。つまりこの人たちは……)

 

 先ほどのアメジスティアの言葉と照らし合わせて、ブラックディオーネは合点がいった。

 

 ここに集められた人間は、シャイニングディオーネのディープなファン……。

 

 もっと言えば、シ(・)ャ(・)イ(・)ニ(・)ン(・)グ(・)デ(・)ィ(・)オ(・)ー(・)ネ(・)オ(・)タ(・)ク(・)と呼ぶべき人種のようだ。

 

「……えっ? お、おい、あれって……!?」

 

 やがて集団の中の数名が、二人の存在に気づいて声を上げ始めた。

 

 その声はすぐに周囲に波及していき、フロア内は喧騒と興奮に包まれる。

 

「おおぉぉおおおおっ! シャイニングディオーネ、本物だよな!?」

「俺、生で見るの初めて……!」

「あ……あれって先代のシャイニングディオーネ!? ああ、死ぬ前にもう一度見られるなんて……生きててよかった!」

 

 男たちは我先にと身を乗り出し、口々にシャイニングディオーネへの愛を叫んでいる。

 

 中には感動のあまり、涙を流す者まで……。

 

「アメジスティア、どういうつもり……? 今日は私たちのファンを集めて、襲わせようとでも――あら?」

 

 改めてアメジスティアを問いただそうと、目線を横に向けたブラックディオーネ。

 

 しかし当のアメジスティアは、いつの間にか姿を消していた。

 

「うおおぉぉぉぉっ! シャイニングディオーネ、こっちこっち! 俺のほう見て!」

「これ! 見て! ディオーネちゃんのフィギュア! ぬいぐるみもあるよ!」

 

 そうこうしている間にも、男たちの熱はさらに高まっていく。

 

 ひたすら叫びかける者。様々なグッズを手に、アピールする者……。

 

 熱狂が熱狂を呼び、会場のボルテージは加速度的に上がっていく。

 

 もうほんの僅かなきっかけさえあれば、男たちがいつ二人に襲い掛かってきても不思議ではないような状況だ。

 

「お、お母さん、このままじゃ……」

「ええ……困ったことになったわね」

 

 このままでは、収拾をつけることは不可能だ。

 

 だがアメジスティアによって連れてこられただけの一般人である彼らを、力で排除するわけにはいかない。

 

 そんな打つ手がない状況に、二人の間に絶望にも似た緊張感が走った――――その時だった。

 

『――さぁ~、会場にお集まりのみなさん! お待たせしました……新旧シャイニングディオーネによる、感謝の握手会! ただいまよりスタートです!』

 

「へっ?」

「…………は?」

 

 突如フロアに響いた。エコーがかかった音声。

 

 二人は揃って、その声が聴こえた方向に振り向いた。

 

 先ほどまでアメジスティアがいたはずの、机の横――そことは正反対の位置に、気づけばまた彼女が立っていたのだ。

 

 しかも、いつ着替えたのだろうか……。

 

 いつもの露出度が異様に高いコスチュームとは真逆の、蝶ネクタイで襟元を止めた長袖のワイシャツに、肉付きのいい脚をピッチリと覆ったパンツスタイル。

 

 さらには仮面舞踏会の参加者が着けるような、目元だけを隠すマスクを着けた異様な風体で、片手にはマイクを握り締めている。

 

 良く言えば、彼女らしからぬフォーマルな……悪く言えば、胡散臭いプレゼンターのような装いに、アメジスティアは様変わりしていたのだ。




更新が長らく滞っていて申し訳ありません!

まだしばらく多忙が続くので、この少し後から入るHシーンは、

ある程度まとめて投稿できるまで、書き溜める時間をいただくかもしれません。
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