金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
「……??? アンタ、なんで――」
俺が質問を終える前に、姫菱が顔を真っ赤にして割り込んできた。
「だっ……だから、危ない場所には近づかないでくださいって言ったじゃないですか! いまこの街がどんな状況になっているか、わかっているでしょう!? なのにどうしてこんなところに来るんですか!」
初めて見せる、姫菱の怒りの顔。
別に最初から彼女の言うことなんて聞くつもりはなかったのだが、そのすごい剣幕に押され、俺は言い訳するように口を開いた。
「うるさいな……偶然だって。今日は本当に、事件の現場にたまたま居合わせただけ」
「ぐ、偶然? 本当ですか……?」
その言葉にまだ納得がいかないのか、姫菱が疑わしそうな目で俺を見つめている。
「そっちこそ、なんでここにいるんだ? 授業はさっき終わったばかりだろ? 電車に乗るにしてもタクシーを使うにしても、こんなに早く来られるなんて……」
「へ? ……あっ!」
俺は何の気なしに尋ねただけだったのだが、姫菱は大げさに声を上げて、あたふたしながら説明を始める。
「え、えぇ~っと、これはですね……私が通ってる塾が、この街の駅前にありまして……? えっと、テ、テ、テストみたいなものが……今日行われる予定で……? それがいつもより早い時間だったから、特別に早退させてもらった……んですか?」
「いや、聞かれても」
全体的にしどろもどろなうえに、言ってる内容もさっぱりだ。
「それに駅前の塾に行くなら、なんでこんな路地裏を通る必要があったんだ? ここを通り抜けたって、駅とは反対側に出るだけだけど」
「え、えっ? あの、そ、それは……~~~~~~っって、ごまかさないでください! 今はあなたの話をしてるんです! 私は本気で黒河くんを心配して――」
俺たちの言い合いで、路地裏の小路は険悪なムードに包まれた。
……その時。
「ぐすっ……ぅぇぇ……もうやだあぁ~~~~~~! おかあさぁぁぁ~~~~~~~ん!!」
魔物の襲撃に、親とはぐれたストレス……さらに見ず知らずの二人が目の前で口喧嘩を始めたという状況に、ついに女の子の不安がピークを迎えしまったようだ。
「シーッ、シーッ! あんまり大声を出したら、あのゴリラに見つかっちまうぞ?」
俺は自分の口に人指し指をあて「静かにしろ」と合図するが、女の子は一向に泣き止まない。
「おい、黙れって。お母さんに会いたいんだろ? 静かにしてたら、後でいくらでも探しに行ってやるから。それより、今はここから少しでも……」
俺は語気を強めて、しっかりと言葉を伝えようとする。
「おがあ゛さぁ゛ぁ゛ぁ~~~~~~~~ん!!」
……しかしそれがよくなかったのか、泣き声はさらに大きくなるばかり。
いったいどうしたものかと途方に暮れていると――
「……ね。あなた、お名前は?」
「えっぐ……ぐす……ぐすっ……???」
姫菱が女の子の前にしゃがみ込み、目線を合わせて話しかけた。
「お姉ちゃん、陽花梨っていうんです。あなたは自分のお名前、ちゃんと言えますか?」
「……ひとみ……」
「そっか、ひとみちゃんっていうんですね。ふふふっ……お姉ちゃんの名前と、ちょっぴり似てますね」
「……うん。へへへっ」
「ひとみちゃん、お母さんに会いたいですか?」
その問いかけに、女の子がコクリとうなずく。
「そっか……ふふっ、安心してください。こっちのお兄ちゃんが、ひとみちゃんのお母さんを見つけてくれるそうですから」
「…………ほんと?」
「本当です。でもそのためには、ひとみちゃんが大人しくして、お兄ちゃんの言うことをちゃんと聞く必要があるんです……できますか?」
「………………」
今度はやや躊躇いながらも、女の子はまた首で返事をした。
「はい、いい子です♪ それじゃ、お兄ちゃんのお手てをしっかり握って……ぜったい迷子になったらダメですよ?」
「うんっ」
元気に返事をすると、すっかり泣くのをやめた女の子は、自分から俺の手を握ってきた。
「ふふっ。黒河くん、ひとみちゃんのこと、よろしくお願いしますね?」
「………………」
「えっ? ど、どうしたんですか?」
「いや、なんか納得いかないなーと。俺の言うことはぜんぜん聞かなかったのに、アンタが相手だとなんでこんなに……」
渋い表情を浮かべる俺を見て、姫菱がクスリと笑う。
「黒河くんの優しさは、小さい子にはちょっとわかりづらいかも……あんな怖い言い方をしたら、伝わるものも伝わらなくなっちゃいますよ?」
「え……怖い? 俺?」
優しいかはともかく、言い方は普通にしたつもりなんだけど……。
やっぱり腑に落ちない部分はあるものの、いつまでもここでこんな話をしていても仕方ない。
俺は行動を再開し、安全な場所を探すことにした。
「とにかく行くぞ……ほら、アンタも」
「へっ? い、いえ、私は……」
「……??? ここに残るつもりか? あっちは魔物が暴れている大通りだし、逃げるならアンタが来た道を戻るしかないと思うけど……」
「あっ、あのあの! えっと、なんて言うか……ここに残るとか、逃げるとか、そういう話じゃなくて……」
急にモジモジし出した姫菱が、落ち着きなく目線を泳がせる。
(何やってんだ。人にはさんざん『危ない』だのなんだの言ってきたくせに、自分は要領を得ないことをゴチャゴチャと……)
その態度に再び苛立ちが募ってきた俺は、女の子と繋いでいるのとは反対の手を、姫菱の腕に伸ばした。
「ほら、急げって」
――グイッ!
「…………あっ」
さっきまで挙動不審だった姫菱が、俺が手首を引っぱった瞬間、時間が停止したかのように動かなくなった。
口を半開きにした締まらない表情で、自分の手首と俺の手が重なった部分を見つめている。
……よくわからないが、静かになったのなら都合がいい。
そう考え、俺がこの場から二人を連れ出そうとした――その時だった。
「…………っっ!? 黒河くんっ!」
「えっ?」
姫菱の叫ぶのと同時に、頭上に影が降りてきた。
何事かと思い、俺が空を見上げると……。
――ズシィィィーーーーーーン!!
「いやあああぁぁぁーーーーっ!?」
ものすごい風圧と、左右のビル壁を震わせるほどの衝撃。そんなものにいきなり見舞われて、幼い女の子が悲鳴を上げないわけがない。
突如として俺たちの目の前に降ってきた物体。それは先ほどまで大通りで暴れていた、巨大な魔物だった。