金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
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自宅がある街から二つほど市をまたいだ、都内の雑居街。大通りから外れた小路を、俺は制服姿のまま全力で走り抜けていた。
目指しているのは、ここから三つほど離れた区画から立ち上っている黒煙。
逃げてきた人たちの会話から、そこで家が燃えているということを聞きつけ、駆けてきたのだ。
目的の場所に着くと、目の前には燃え盛る民家。
おそらくここも、
二階からは窓越しに、助けを求めて泣き叫ぶ子供の声が聞こえる。
「誰か! 誰かお願いします! 息子が逃げ遅れたままなんです!」
「おねがいよぉ! 誰でもいいから助けてよぉ! タクちゃん! タクちゃぁ~~~ん!!」
家の前で周囲に呼びかけているのは、その子の両親と思しき二人の男女。
しかしそこに集まった何人もの人たちは、皆一様に気の毒そうな表情を浮かべながらも、誰ひとりとして彼らに手を貸そうとする者はいない。
「消防はどうした? 警察だってまだ来てないぞ?」
「大通りに現れた怪物にかかりっきりだよ。消防車も、みんな大きなビルがある方に向かってるってさ」
案の定。すでに街中が混乱に見舞われていて、誰の助けも期待できないらしい。
「……ああっ!」
パリンという音と共に、母親の絶叫にも似た悲鳴が俺の耳に届く。
二階の窓が熱で割れ、中から蛇の舌のような炎が上がってチロチロと外壁を舐めだした。
両親は絶望のあまり頭を抱え、両手で顔を覆い……揃って道路に崩れ落ちてしまった。
「…………チッ!」
俺は舌打ちして、わき目もふらず駆け出した。
両親が家から逃げ出す際、そのままにしていたのだろう。開きっぱなしの扉は、俺という不躾な訪問者をフリーパスで通してくれた。
その際、新聞受けに入っていた数枚の広告チラシを拝借しておく。
玄関に入ってすぐに階段を見つけ、一気に駆け上がる。
そして泣き声が聞こえる部屋――おそらく子供部屋だろう。その扉の前に立った俺は、高温によって熱を帯びたドアノブをチラシで覆い、力いっぱいねじ回した。
「ケホッ、ケホッ! おっ……おとうさん……?」
扉が開いた気配に気づいたのだろう。煙に巻かれて咳き込んでいた、小学生に上がりたてくらいの男の子がホッとしたように振り返った。
しかしそこに予想外の人間が立っていたためか、俺の顔を見るなり幼い顔をキョトンとさせてフリーズしてしまう。
「……タクちゃんか」
その問いかけにやや遅れて、男の子がコクリと頷く。
火の手はすでに部屋の天井にまで及んでいたが、幸いなことに火傷ひとつ負っていないらしい。
俺は素早く制服の上着を脱ぐと、雑に丸めてその子の口に押し当てた。
「うわぁっ!! だれ……なにっ――むぐぅっ!?」
「いいから。出来るだけ動くんじゃないぞ」
そして米俵をかつぐような体勢で、小さな身体を持ち上げる。
手足をバタバタされて走りづらいことこの上ないが、この距離ならまあ問題ないだろう。
俺は昇ってきた階段を息を止めたまま駆け下り、来た道を逆走する……!
「……ぶはぁっ! はぁ、はぁ、はぁ……!」
屋内にいたのは数十秒程度だったが、俺には何分間にも感じられた。
燃える家屋から飛び出した俺は肩で大きく息をして、外の冷たい空気を思い切り吸い込ん――
「――ゲホっっ!? ゲッホ、エホっ……えぇ゛っほ!!」
……いや。すぐ隣ではまだ家が燃え盛っているのだ。
「タクちゃん! ああっタクちゃん……早く、早く返してよぉっ!」
そんな俺の状況にはお構いなしとばかりに、母親が駆け寄ってきて、金切り声を上げてすがりついてきた。
……ああ。そう言えばまだ、男の子を担いだままだった。
「ゲホッ……返すって。別に人さらいをしに来たわけじゃないんだから……ホラよ」
俺は男の子の身体を母親に押し付けると、預けていた制服を乱暴に奪い返した。
「タクちゃん……よかったぁ、タクちゃん!」
「あの……あ、あはは……そのぉ、なんて言ったらいいか。妻が失礼なことを……」
半狂乱で子供を抱きしめる母親と、その隣でヘラヘラしながらしきりに頭をかいている父親。
苛立ちながら制服に腕を通していた俺は、その気持ちを二度目の舌打ちと共に彼らにぶつける。
「チッ……そんなに大事な子供だったら、命賭けてでも自分で助けろよ」
「……なっ……!?」
「そんな言い方は! お、俺たちだって必死に……なあ?」
夫婦は揃って顔を見合わせ、不服そうにジトッと細めた目でこちらを睨んできた。
――付き合ってられない。
そう思った俺は二人に何も言い返さないまま、その場から立ち去るべく踵を返す。
「けほ、けほっ……お、おにいちゃん……ありがとう」
「おー……ゲホッ! ゲッホ!」
その場でただひとり。夫婦の子供だけが、背中にお礼の言葉をかけてきた。
俺はいがらっぽい喉から出てくる大きな咳で、それに返事をした。