金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
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それからさらに数十分後。やっとのことで泣き止んだディオーネに、俺は元居た場所へと降ろしてもらった。
「あの~……本当にここでいいんですか? きょ、今日は本当にご迷惑をかけちゃったし、よかったらおうちまでお送りしますけど……」
……などと言われたが、電車が止まったときのために乗ってきた自転車を放置して帰るわけにもいかない。
俺はそこで彼女と別れ、自宅に向かって夜の街を駆け抜けた。
「ただい――」
ようやくマンションに着き、玄関の扉を開けると……。
「おかえりぃ~、曜。遅かったじゃな~い♪」
テーブルに両肘をついて前のめりに構え、こちらを見据えている英子叔母さんの笑顔が俺を迎えた。
一見にこやかに目を細めてはいるのだが、引きつった目元や口元など……表情の細かい部分に、怒りのニュアンスをにじませている。
……まずい。これは本気でキレているときの顔だ。
そんな叔母さんの目の前……テーブルの上には、何か二つのものが広げられていて――
「…………げっ!?」
その正体に気づいた俺は、喉の奥から引き絞るような声を上げた。
片方は、いかにも
そしてもう片方は……凝固した血液で黒く染まった、もう使い物にならないズタズタの制服だった。
「今朝、あんたの部屋の押し入れでこれを見つけたんだけど……どういうことかな~?」
叔母さんは笑いながらそう言って、ボロキレと化した方の制服を俺の目の前に突き出した。
「あっ、いや! それは、え~っと……わけがあって……」
「わけって何! 車にはねられたって、こうはならないでしょう!? いったいどんな無茶したっていうの!」
笑顔から一転、般若のような表情を浮かべながら、叔母さんは制服をバシバシ叩いて俺をどやしつける。
「たしかに叔母さん、あんたの思うとおりにしなさいって言ったけど……いくらなんでも限度ってものがあるでしょ!」
久しぶりに聞く叔母さんの怒鳴り声……普段はめったに怒らない分、いざとなるとすごい迫力だ。
「まったくもう! 制服が着れなくなったなら着れなくなったって、素直に言ってくれればいいのに……変に気を使うところは、昔から変わってないんだから!」
「…………はい、ごめんなさい……」
「別にお金のこととかは気にしなくていーの! 叔母さんけっこう稼いでるんだから! あんたは甘えるべきところで私に甘えて、無事に大人になってくれればいーの!」
「はい……」
「で、こっちが新しい制服ね。今日は仕事をキャンセルして、お店の人に無理言って突貫工事で仕立ててもらったから。明日からはこれ着ていきなさい」
「はい……誠にありがとうございます……」
ピカピカの制服をうやうやしく受け取り、俺は平謝りすることしかできなかった。
女性に泣かれたり怒られたり……今日は実に忙しい一日だった。
◇
――都内のとある高級住宅街。その一角にある自宅にて、姫菱陽花梨は母と夕食を共にしていた。
「………………」
泣きはらして少し厚ぼったくなった目でおかずを見つめ、黙々とごはんを口に運ぶ陽花梨。
そんな娘を気遣ってか、母がやや躊躇いがちに尋ねた。
「ねえ陽花梨……大丈夫? 今日の戦い……何かあった?」
「…………えっ? あっ! ううん、なんでもない! そ、それどころか、今日はいつもより楽勝だったって言うか……えへっ」
とつぜん母に問われ、陽花梨は咄嗟に笑顔を浮かべた。
しかしその表情はどこかぎこちなく、毎日娘と顔を合わせている母であれば、容易に変化を見抜けるようなものなのだが――
「そう? それならいいんだけど……」
娘の自立心を尊重するためか、母はあえて気づかぬふりをしたようだ。
「でも、だからって油断しないでね? あなたがしている戦いは、ほんの少しの気のゆるみが大きな危険に――」
「あはは、わかってるよぉお母さん。先輩ヒロインからの教えは、私だって小さい時から何度も聞かされてるもん」
「……え? あ……うふふ、それもそうね。ダメねぇ、年を取ると……同じ話を繰り返しちゃって」
そう言って娘と微笑み合う彼女の名は、姫菱
『年を取った』などと自分では言っているが、陽花梨と同世代の友人たちの母親と比べても、はるかに若々しいその容姿。
それでいて、スタイル抜群な娘に輪をかけて、魅惑的に実った大人の
近所でも評判の美人母娘の正体は、正義のヒロインの先輩・後輩といった間柄でもあったのだ。
(ふぅ~、危なかったぁ……)
そんな母からの問いを、なんとかごまかしきった(……と思っている)陽花梨。
その胸中にあったのは、今日の出来事……そう、黒河曜に聞かされた彼の過去。
助かる直前で正義のヒロインに見捨てられ家族を失ったという、あまりにも悲しすぎる記憶のことだ。
(十年前の大侵攻で、街の人たちを助けたシャイニングディオーネ……って、間違いなくお母さんのことだよね……?)
陽花梨がチラリと母の顔を盗み見る。
常に家族のことを一番に考え、厳しくも優しい理想的な良妻賢母……それが陽花梨が母に抱いている印象だ。
そんな母が、自分の同級生とそんな因縁があったなんて――
もちろん曜が言っていた通り、その判断は緊急的でやむにやまれぬものだったのだろう。
母にとっても苦渋の決断だったに違いない。
だからこそそのことを母に打ち明けて、過去の傷をえぐるようなことは、陽花梨にはできなかった。
「…………? どうしたの陽花梨? 今日のあなた、やっぱり少し変よ?」
「へっ? あわわぁわわわわっ! だ、だからなんでもないって! え、えへへへ……」
無意識のうちに、母の顔を凝視していたらしい。
陽花梨は慌てて笑顔を作り、話題を変えようと頭をひねった。
「…………あ、そうだ。お母さんに、ちょっと聞きたいことがあったんだけど」
「あら、なぁに?」
黒河曜との関連で、陽花梨はふと、あることを思い出した。
そしてスカートのポケットに手を入れて……中から、純白にきらめく宝石が付いたブローチを取り出してみせる。
「これと同じものって……他にもあるの?」
「……え?
――『
それは聖なるエナジーで満ちた神秘の宝石で、シャイニングディオーネの力の源にして彼女が変身するためのキーアイテムだ。
数年前、陽花梨はブローチ状に加工されたその聖輝石を母から譲り受け、シャイニングディオーネとして戦う力を継承された。
以来、できるだけ人の目には触れないように隠しつつ、常に肌身離さずそれを持ち歩いているのだ。
「うぅ~ん、そうねぇ。あっても不思議ではないかも」
「そうなの!?」
あまりにもあっさりとそう告げられ、陽花梨は持っていたブローチを落としそうになってしまった。
「強い魔族なら、ほとんどが持っていると思うわ。例えば……ダークアメジスティア。彼女も、身体のどこかにそれと同じものを持っているはずよ」
「えっ、魔族が?」
意外な言葉に、陽花梨は首を傾げた。
「だって、聖輝石の中に込められているのは聖なるエナジーなんだよね? 魔族が糧にする闇のエナジーとは正反対なのに……どうしてそんなものを?」
「そうね。正確には、彼女たちが持っているのは『
純玲は娘の手からブローチを取り、自分の手のひらに乗せて懐かしそうにそれを見つめる。
「聖輝石と魔宝石は、元々どちらも同じ無色透明な
「へぇ……」
自分が持つ聖輝石のことを、今まで漠然と「強い力を持ったアイテム」としてしか考えていなかった陽花梨は、母の言葉に深々と頷いた。
「で、質問の答えなんだけど……別にこの石自体は、それほど珍しいものではないわ。それこそ、異界の住人なら誰でも持っているくらいにね。だから何かのはずみで、私たち人間の世界に転がり込んでくる可能性も充分考えられるわ」
「そ、そうなんだ!」
(つまり黒河くんが持っていたのは、何らかの方法で
現に、魔界の住人が幾度となく人間界に攻め込んできているのだ。石くらい転がってきても、何の不思議もない……と陽花梨は納得する。
「さっきも言った通り、聖輝石は触れたエナジーによって性質を変えるもの……だから陽花梨も、石が黒くなってきたら気を付けなさい? 特に人の悪意を受けたり、闇のエナジーを直接注がれたりしたらすぐに変質してしまうから」
「も……もし完全に黒くなったら、どうなっちゃうの?」
ゴクリと唾を飲み、陽花梨が恐る恐る尋ねた。
「――そうねぇ。この石の持ち主であるあなたの心も、次第に闇の力に侵されて……魔族と同じように、破壊を求める悪魔に変わっちゃうかも……」
「ええっ!? わ、私、そんなこと絶対に……!」
「……ふふっ、くすくすくす♪ ごめんなさい、冗談よ」
青い顔をした娘の手に聖輝石を返し、純玲がおかしそうに笑った。
「あ、冗談って言っても、いま教えたことに間違いはないわよ? でもね……陽花梨なら絶対そんなことにならないって、お母さん信じてる」
「そ、そうなの……?」
「ええ。だってあなた自身に宿った聖なるエナジーは、誰よりも純粋で澄んだもの……歴代のシャイニングディオーネの中でも、一番の才能よ。聖輝石は、その力を表に出すためのきっかけに過ぎないわ」
面と向かって母から褒められて、陽花梨は気恥ずかしくなり頬を赤らめた。
「だからこそ私はあなたにすべてを託して、その石を譲ったの。最高の素質と、私たちが代々受け継いできた聖輝石を持ったあなたなら……闇のエナジーなんかに、絶対負けるはずはないわ♪」
「お母さん……」
母からの……先代シャイニングディオーネからの信頼を一身に受け、陽花梨は思わず目頭を熱くしてしまう。
母の期待に応えたい。闇の魔族に虐げられる人々を救いたい。
そしてもう二度と、母と曜のような悲劇を生まないためにも――
「……よぉ~し!」
決意を新たにした陽花梨。まずは体力を付けるためにもと、母の手料理を口いっぱいに頬張った。
――その時。
「ところで、どうしてそんなことを聞いたの? どこかで同じ石を見たとか?」
「――むごっ!? もごもご……んうぅぅ~~~~!?」
とつぜん聞き返されて、陽花梨は頬っぺたの中のおかずを喉に詰まらせてしまいそうになった。
(……やっぱり黒河くんのこと、お母さんには言わない方がいいよね)
母お手製のハーブティーで喉の詰まりを流しながら、陽花梨はそんなことを考えた。
いま正直にあのことを伝えて……例えば母が心からの謝罪をしたとしても、彼の気持ちは満たされないだろう。
曜が負った傷は、それほどまでに深い――言葉を交わした時間は少ないが、それがわからない陽花梨ではなかった。
それならまずは自分が彼の想いや憎しみを受け止め、その心が癒えるのを待つ。母がしたことを謝るのは、それからでもいい。
それが現在の正義のヒロインとして自分にできる、精いっぱいのこと――そんな結論に達した陽花梨は、曜との会話を自らの胸の中だけにしまってくことを決めたのだった。