金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
車用の坂道は建物の外に飛び出す形になっていて、しかも真下の通路もすでに崩れてしまっている。
もはや落下は免れない。よくて大怪我か、悪ければ――
突然の事態に身をすくめ、悲鳴を上げることもできない子供たち。
俺は咄嗟に二人を引き寄せ、可能な限り自分の身体がクッションになるよう抱え込む。
そして硬く目を閉じ、落下の衝撃に備える――!
「………………ッッ……!」
……しかし。
「……………???」
どれだけ待っても、俺たちを衝撃が襲ってくることはなかった。
それどころか、何かフワフワと宙を漂う浮遊感まであるような……?
「――だ、大丈夫ですか、黒河くんっ!」
その時、足元から馴染みのある声が聞こえてきた。
「ひめ……っ!? き、来てくれたのか!?」
「はいっ! ついさっき魔物をやっつけて……間に合ってよかったです!」
空を飛んだシャイニングディオーネが、落下中の足場ごと俺たちを受け止め、支えているようだ。
子供たちは手を叩いて、助けに来てくれた正義のヒロインの登場に沸いている。
「ん、んん゛ん゛~~~~~~~……っっ!! あ、あんまり動かれると……! とっ……とにかく降ろしますねぇ……っ!」
いくら彼女とは言え、コンクリートの塊と三人分の体重を同時に支えるのはさすがにキツイようだ。
ディオーネは重たそうに力んだ声を上げながらフラフラと降り立ち、俺たちを慎重に地面へと下ろした。
「よかった……みんなっ!!」
全員の無事を確認し、保育士の女性が泣きながら俺たちに頭を下げてきた。
「ありがとうございます! ありがとうございますっ! こんなの、なんとお礼を言ったらいいか……!」
「ふふっ、気にしないでください。それよりも、早くその子たちを親御さんのところへ」
「はいっ! お兄さんも……本当にありがとうございます!」
最後に俺を見てそう言い、女性は子供たちと共に去っていった。
「……はぁ~っ。よかったです、みんな助かって。お子さんたちも、黒河くんも」
ディオーネは俺の横で深く息を吐き、勝利の味を噛みしめている。
だが俺はと言うと――
「………………」
その横で、気まずい思いで立ち尽くしていた。
「……あれ? どうしたんですか、黒河くん……?」
「いや……さっきは偉そうなこと言って別れたくせに、ガキ共を助けるのにメチャクチャ時間をかけて……最終的には危ないところを助けられて……さすがに情けないな~、と」
「えっ!? そ、そんなことないですよ!」
自分の不甲斐なさに凹んでいる俺に、ディオーネが慌てふためきながら励ましの言葉をくれる。
「時間をかけてでも、少しずつみんなを逃がした黒河くんの判断……大正解だと思います! もし大勢の子たちと一緒に落ちていたら、私の力では支えきれませんでしたから」
「…………そうか?」
「はいっ! だからみんなが無事だったのは、黒河くんのおかげです! 私、黒河くんにここのことをお願いしてよかったです!」
ディオーネが満面の笑みを浮かべて、俺の両手を握り締める。
「ああ、そう……まさか
あまりに全面的な褒めっぷりに、今度は逆に気恥ずかしさを感じてしまう。
なので俺はわざと大げさに嫌味を言って、彼女から目を反らした。
すると……。
「~~~っっ……! あのぉ~、さっき自分で言っておいてなんなんですけど……その肩書き、やめてもらってもいいですか? あ、あれからよくよく考えてみたんですが、ちょっと恥ずかしくなってきて……」
ディオーネが顔を真っ赤にして、俺の手を放す。
そして落ち着かないように視線をさまよわせて、胸の前で指をモジモジさせ始めた。
……なんとなくお互いに居心地が悪いような、微妙な空気が流れる。
その時――
「ふんっ! 何が正義のヒロインだ、バカバカしい!」
「――えっ?」
俺とディオーネは、声がした方向に揃って顔を向けた。
そこにいたのは、さっきのサラリーマン。縁石に腰かけ、不機嫌そうな顔でこちらを睨んでいる。
(このオッサン……まだここにいたのか)
どうやら俺が子供を助けている間も、ここで休んでいたらしい。
男はディオーネを憎々しげに見つめ、唾を飛ばさんばかりの勢いでがなり立てる。
「よくもまあ、能天気に喜べるもんだな! 街にこんなに被害を出しておいて!」
「あ……っ」
ディオーネが辺りを見回した。
周囲の空には、街のいたるところから黒煙が立ち昇っている。
そう……魔物による被害を受けたのは、この駐車場だけじゃない。
今でもどこかの建物で火の手が上がり、人々は避難を余儀なくされているのだ。
「正義の味方だかなんだか知らないが、みんなから持ち上げられていい気になってるんじゃないか? 冗談じゃない……魔物との戦いに巻き込まれて、こっちはいい迷惑だ!」
「ご……ごめん、なさい……」
「見ろ、この足を! これで明日からの仕事をどうしろって言うんだ! 治療費は出してもらえるんだろうな、ええっ!?」
「それは……っ」
口をはさむ暇も与えず怒鳴り続ける男と、理不尽な要求にただただ戸惑うばかりのディオーネ。
「………………」
俺はそんな二人の間に割って入った。
「……行けよ」
「えっ……?」
そして肩越しに視線を送り、ディオーネにそう言う。
「く、黒河くん……でも……」
「いいから行けって。この街のどこかに、まだお前の助けを待ってる人がいるんだろ?」
「はい、でも――――はぇっ!?」
「お前が相手にする必要ない。このオッサンは、俺が説得しておくから」
「………………」
「……??? なにグズグズしてるんだ? さっさと行けよ」
「ぁ……は、はいっ! それじゃあ……お願いしますね?」
何をぼんやりしているのか、途中から反応が鈍くなったディオーネが、慌てて飛び立った。
そして姿が見えなくなるまで、チラチラと何度もこちらを振り返る。
……オッサンと俺を残していくことが、そんなに心配なんだろうか?
「な……なんだ君、勝手なことを! まだ話は終わってないのに!」
男は標的を俺に切り替え、なおも罵声を浴びせてくる。
「…………はぁ~~~~」
その姿に、俺はがっくりと肩を落としてため息をついた。
(外から見たら、俺もこのオッサンと同じようなもんなのか……)
被害に遭った怨みを正義のヒロインに転嫁し、苛立ちをぶつけ、口汚く責め立てる――そんな男と自分を重ね合わせ、俺は心底辟易とした気分になってしまった。
「おい、聞いてるのか!? だいたい君ねぇ、さっきから目上の者に対する態度が――」
――コンッ
「~~~~……ッッぅぎっ……ッッッ!?!?!?」
俺は靴の先で、男の折れ曲がった足首を小突いてやった。
「~~~っ……!! ~~~っっっ……!?」
「……感謝しろよ。
声も出せず、口をパクパクさせ続けている男の耳に口を寄せ、俺はささやいた。
本当なら、残った足もへし折ってやりたいくらいだが……必死に街を守った彼女に免じて、ここは穏便に済ませておくとしよう。
「そこにいれば、そのうち救急車かパトカーが一台くらい通るだろ。そうしたら助けてもらえよ」
「き、きっ……貴ッ様ぁぁぁ!!」
「……っしょっと」
男の怒声も意に介さず、俺は路上に倒れたままだった自転車を起こした。
そして背中に罵詈雑言を浴びせ続ける男を放置して、その場を去るのであった。
◆
――街で一番高い電波塔の先に立ち、下界を見下ろす妖艶な美女、ダークアメジスティア。
その顔は、魔族の戦士として凛々しく引き締まったものではなく……男をゾクリとさせるような、淫蕩と喜悦の色に満ちていた。
「満ちていく……悪意が、憎悪が……正義のヒロインを呪う、人間どもの暗い感情が……」
恍惚の表情を浮かべ、淫靡な手つきで擦り合わせたその指先にあるもの――
それは闇のエナジーで真っ黒に染まった小さな石……魔宝石だ。
「ようやく……ようやくこの日が訪れました。我らの悲願……私が待ち望んだ瞬間……魔王様、復活の日が」
そうささやいたアメジスティアは、黒い輝きを煌々と放つ魔宝石に唇を寄せ――愛しい恋人を愛撫するように、長い舌をねっとりと絡めた。