※この作品はR-18です。

金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~   作:johnny内藤

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第6話-6

 ◆

 

 空中で渦を巻く、微細な闇のエナジー。

 

 それは2メートルほどの円状に寄り集まると、魔界と人間界を繋ぐ『門(ゲート)』と化した。

 

 狭苦しそうに身を屈め、その門をくぐり抜けてきたのは、獅子の頭部を持つ偉丈夫然とした魔族。

 

 彼は宙に浮いたまま、下界から己を見上げている人間たちを俯瞰した。

 

「――フン。魔王が復活したと聞き、久方ぶりに暴れられるかと思って馳せ参じたが……人間共は街に満ちたままではないか」

 

 彼がよく知る魔王オブジディアであれば、復活と同時に人間など排除し、こんな街など即座に廃墟と化しているはず……。

 

 予想と期待を裏切られたことに苛立ち、獅子の魔族は顔面を覆った体毛の下で青筋を立てた。

 

「ふざけるな!! 魔王が復活するまでの数年間、オレは人間界に手を出すのを我慢してやったのだぞ!? なのにようやくその禁が解かれたと聞き、喜び勇んで来てみれば、魔王の気配すらしないというのはどういうことだ!!」

 

 獅子の怒号がビリビリと大気を震わせ、人々を居竦まらせる。

 

「……まあいい。魔王が姿を見せるまで、人間共で暇潰しでもしていてやろうか」

 

 魔族はそう呟きながら、怯える人々の顔を値踏みするように見渡した。

 

「フム……どいつもこいつも脆弱そうな雑魚ばかりで、退屈しのぎにもならんな。どうせ闘(や)るなら……そう、やはりシャイニングディオーネがいい。十年前、オレを魔界へと追いやったヤツとならば、満足いく闘いができるだろう」

 

 獅子の魔族は大きな口で舌なめずりをし、好戦的な笑みを露わにした。

 

 

 ◆

 

 俺たちは地上から、街中に響き渡るんじゃないかと思うほどの雄叫びを聞いていた。

 

「こんな強力なエナジーを持つ魔族が隠れていたなんて……今までの敵とは桁違いのパワーです!」

 

 姫菱が隣で、俺にだけ聞こえるくらいの声量でささやいた。

 

 その顔は緊張感に満ちていて、頬には冷や汗が伝っている。

 

 それだけで、敵がこれまで以上にヤバイ奴だということが理解できる。

 

「とにかく、私はどこか人目につかない場所を探して変身します。黒河くんは、できるだけ大勢の人を安全な場所に誘導してください!」

「いや、これだけの人数はさすがに面倒見きれないぞ? ……まあ、やるだけはやってみるけど」

 

 周囲の人たちは浮足立ち、何かのきっかけひとつで大通りはパニックになりそうだった。

 

 俺は姫菱と目配せして、その混乱をどう収めようかと考える。

 

 しかし――

 

「逃げるな、人間共!! 逃げようとした奴から殺す!!」

 

 その一喝で、そこにいた者すべてが動きを止めた。

 

 魔族は大きく息を吸い、先ほどまでよりもさらに大きな声を響かせた。

 

「聞こえるか、シャイニングディオーネよ!! この街の人間すべてが人質だ!! こいつらの命が惜しければ、今すぐ出てきてオレと闘え!!」

 

「…………えっ!?」

 

 とつぜん名指しされ、姫菱が目を見開いた。

 

「さあ! いまもどこかで聞いているのだろう、人間共の守護者よ!! 早く出てこい、そしてオレを楽しませろ!! さっさと姿を現さなければ、お前が守りたがっているコイツらを一匹ずつ殺していくぞ!!」

 

 魔族の言葉に、周囲から悲鳴が上がる。

 

「…………くっ!」

 

 居ても立ってもいられないといった表情で駆け出そうとした姫菱……その腕を、俺はすんでのところでつかんだ。

 

「は、放してくださいっ! 私が早く行かないと、街の人たちが……っ!」

「やめとけって、強い敵なんだろ? 戦ったって、勝てるかどうかもわからないんだろ?」

「それでも……私は、行かないわけにはいかないんですっ!」

 

 守るべき人々のため、自分の身を投げうってでも未知の敵との戦いに臨もうとしている姫菱。

 

 だが……。

 

「シャイニングディオーネはまだか? 何をグズグズしてるんだよ!」

「早く来てくれないと、私たち殺されちゃう……!!」

「あんな魔物、いつもみたいにさっさと倒してくれよ!」

「俺たちを守るのが仕事なんだろ? だったら自分を犠牲にしてでも早く戦えよ!」

 

 当の本人がこんなところにいるとは思いもせず、人々は好き勝手に騒いでいる。

 

 ソイツらの言葉に、俺は無性に苛立った。

 同時に、先日駐車場で助けたサラリーマンや、女性を襲っていたホームレスの顔を思い出す。

 

「お、お願いです、放してください黒河くんっ……!」

 

 つかんだ手を振りほどこうと、姫菱が身をよじる。

 しかし俺の指は彼女の腕にがっしりと食い込み、ビクともしない。

 

「……聞こえただろ、コイツらの言葉? こんな自分たちのことしか考えてないようなヤツらのために、お前が危険を冒すことはない……お前が辛い思いをしてまで、身勝手な人間を守る必要があるのか?」

 

 姫菱の目をまっすぐ見つめ問いかける。

 

 姫菱は大きな瞳を丸くさせ、一瞬キョトンとしながら俺の顔を見返した。

 

 しかしすぐに両目に強い意思を宿し、その問いに応える。

 

「はいっ、それが私の役目ですから……私、正義のヒロインですから!」

 

 ……もはや俺にとっては理解を越えた答えだった。

 

 自己犠牲? 献身の心?

 

 言葉自体の意味はわかる。それが人間にとってとても尊く、崇高な想いだということは同意する。

 

 だが胸を張ってそう言いきれるほどに優しい心を持った姫菱が、こんな連中のために傷つくなんて絶対に間違ってる!

 

「く、黒河くん……いたいっ……!」

「……え? あ……わ、悪い」

 

 姫菱をどうにかして行かせまいと考えているうちに、無意識に力が入ったようだ。

 

 俺が慌てて指を離すと、姫菱はその部分をさすりながら微笑んだ。

 

「……ふふっ。力持ちなんですね、黒河くん。さすが男の子」

「いや、それは……」

 

 ――これも魔王としての力なんだ。

 

 そのことに引け目を感じた俺は、彼女の目を正面から見つめ返すことができず、顔をそむけた。

 

 ……その時だった。

 

「――待てッ!!」

 

 風を切り裂き、空の彼方から猛スピードでこちらへ近づく影が見えた。

 

「あれは……ダークアメジスティア……!?」

 

 それを見て、姫菱が驚きの声を上げる。

 

 英子叔母さん……いや、アメジスティアは獅子面の魔族の前で停まると、ヤツと話しだした。

 

 ただでさえ強そうな魔族が相手なのに、そこに叔母さんの力も加わるのか。

 これは姫菱にとって、かなりの重荷になるはず――

 

 と、危惧したのだが……どうも様子がおかしい。

 

 ビルの上で向かい合った二人は、何か言い争いをしているようにも見えた。

 

 

 ◆

 

「どういうつもりだ! ここは魔王様が住まう街……この街だけは襲うなと、全軍に通達していたはずだ! 勝手なことをするな!」

「フン、ダークアメジスティアか……なに、これもただの余興だ」

 

 激昂して詰め寄ってくるアメジスティアの言葉を、獅子の魔族は涼しい顔で受け流した。

 

「何が余興だ! いま我らの指揮を執るべきお方は、復活を遂げた魔王様唯(ただ)お一人! 独断で動いて、無用な混乱を招くことは控えろ!」

「ほほう……ならばその魔(・)王(・)様(・)はどこにいる? これだけの人間がウジャウジャ群れているのに、姿も見せずに隠れたままではないか」

「魔王様は、まだ完全な覚醒には至っていないのだ! いまもこの街のどこかにおられるのかもしれない……貴様はそんな魔王様まで、破壊に巻き込もうというのか!?」

「ハッ!! 何十年も眠ったままで、ようやく目を覚ましたと思ったら、すっかり寝ぼけているようだな? ならば目覚めのちょうどいい刺激になろうもの……ひと暴れして、このオレも魔王の覚醒とやらに手を貸してやろう」

 

 魔族は笑い飛ばすようにそう言った。

 その瞳は侮蔑の色に満ちており、魔王に対する尊敬や畏怖の念など微塵も込められていない。

 

「……もしや、また繰り返そうというのではあるまいな? かつて貴様たち強硬派が引き起こした大侵攻……あの時のように、街ひとつ焼き払って!」

「ガッハッハッハ! それも善(よ)かろう! その程度の災禍で生き残れぬようなら、魔王たる資格などない! オレが新たな魔王に成り代わり、魔族どもを率いてやろう! お前はまた十年前のように、魔王の身を案じながら指をくわえて眺めているがいい……ダークアメジスティア!」

「貴様……ァッ!! 魔王様を危険に晒そうというだけでなく、反逆の意志まで示すとはな……!」

 

 アメジスティアが、手のひらに闇のエナジーを集中させる。

 

 するとそれは形を持った実体となり、黒く禍々しい巨大な槍――ブラッタースピアとなって彼女の手中に顕現した。

 

「――ならば魔王様の前に、この私が直々に裁きを下してやろう!」

「面白い……シャイニングディオーネと闘う前の、肩慣らしといこうか!!」

 

 誰もが予想しえなかった、魔族同士の激突――

 

 その幕開けに、周囲の人間たちは一瞬にして混乱に包まれた。

 

 

 ◇

 

 ――姫菱家のキッチンにて。

 

 愛する家族のため、今日も腕によりをかけて夕食を作っていた姫菱純玲。

 

 だが街のどこからか巨大な闇のエナジーを感じた彼女は、IHコンロのスイッチを切り、神経を研ぎ澄ませてその様子を伺っていた。

 

 ……やがて現れたもうひとつの闇のエナジーが、そのエナジーとぶつかり戦いを始めた。

 

「…………陽花梨……」

 

 現役のシャイニングディオーネだったころの自分ですら経験したことがない異常事態に、純玲はただただ娘の身を案じて祈ることしかできなかった。

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