金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
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――ガキィィィンッ!! ズドオォォォォッ!!
空中で衝突し合う二人の魔族。
獅子面の魔物の注意が自分たちから逸れたと見るや、人々は蜘蛛の子を散らすように走り出した。
大通りはまさ阿鼻叫喚……誰もが互いのことなど気にせず、自分が生きるため逃げるのに精いっぱいだ。
「……チャンスです! 今なら、誰にも気づかれずに変身を!」
この期に及んでも、姫菱はシャイニングディオーネに姿を変えて、人々を守ろうとしているようだ。
「ま、待てよ! アイツの相手はダークアメジスティアがしてるんだろ? だったらお前が行くことなんて……!」
もはや何が正しいことなのか分からなくなってきた俺は、弱々しく姫菱を引き止める。
そんな俺の手を握り、姫菱がはっきりとした口調で言った。
「きっと今までで一番大きな戦いになると思います……逃げ遅れる人たちもたくさん出るはずです。後でその人たちを助けられるように、黒河くんもとにかく今はここから離れてください」
「バカッ!! そんなヤツらのことよりも、俺はお前が……!」
「……くすっ、またバカって言われちゃいました。安心してください。私にはお母さんから受け継いだ力と、歴代シャイニングディオーネの中でも一番の才能がある……
(……お母さん? それって――)
その言葉に気を取られた一瞬……姫菱は俺の手を放し、スカートのポケットからブローチのようなものを取り出した。
その真ん中には、純白の光を放つ宝石が――
「……もし二人とも無事に帰れたら、私、黒河くんともっとお話がしたいです。黒河くんが抱えている悩みとか……好きなケーキの味とか」
そう言って微笑むと、姫菱はブローチを空高く掲げて叫んだ。
「ダイヤモンドパワー! クリービング!」
その瞬間、彼女の身体がまばゆい光に包まれ――
「闇を清める不屈の心――金剛心輝シャイニングディオーネ、ただいま見っ参っ! ですっ!」
混迷を極める大通りに、人々を守護する正義のヒロインが降臨した。
突然現れたその姿に、避難中だった人々もさすがに足を止める。
「シャイニングディオーネだ……来てくれたんだ!」
「さすが正義のヒロイン! ありがとう!」
「シャイニングディオーネ! 早く魔族をやっつけて!」
周囲から投げかけられる、歓声と喝采の嵐。
さっきまで勝手なことを言ってたくせに、救いの手が差し伸べられた途端に手のひらを返して賛辞の言葉を送る……その変わり身の早さに、俺は怒りを通して呆れてしまった。
「みなさん、もう心配いりませんからね! いまはお互いに協力し合い、安全なところに逃げることだけを考えてください!」
ディオーネの出現に多少は落ち着きを取り戻したのか、人々は比較的整然とした動きで避難を開始する。
それを見届けたディオーネは、地面にわずかな砂埃を立てて、ふわりと宙に浮いた。
「それじゃあ、黒河くん……いってきます」
「待ってくれ! ひめび――っっ!!」
それを止めようと咄嗟に伸ばした俺の手が、虚しく空をつかんだ。
ディオーネは俺に背を向けて、空中で激闘を繰り広げている二人の魔族のもとへ飛んでいく。
……魔王の生まれ変わりのくせに、女の子ひとり止めることができない。
自分の無力さを歯がゆく思いつつ、俺は逃げ行く群衆の波に呑み込まれていくのだった。
◆
――バキッ!! ガキィィィン!!
「フハハハハハハ! その程度か、ダークアメジスティア!」
「クッ……ぅぐっ!?」
獅子面の魔族が振るう二本の剛腕。
それをなんとかブラッタースピアで受け流すも、さばき切れない打撃や爪の一撃を受け、アメジスティアが劣勢に追い込まれていく。
「所詮は下賤な淫魔……純粋な戦闘種族であるこのオレに、かなうはずがないッ!!」
「ほざけっ! 私の力はこんなものでは……!!」
身体のいたるところに傷を負い、血を流しながら、それでもアメジスティアは怯むことなく敵に向かっていく。
――その時。
「……ムッ?」
地上からとつぜん立ち昇った、きらめく光の柱。
闘争の只中にあった魔族、そしてダークアメジスティアも、一瞬その方向に気を取られてしまった。
するとその光の中から、こちらに向かって近づいてくる人影が――
――ガシイィィィィィン!!
「……ヌオオォォッ!?」
瞬間。強烈な衝撃を受け、魔族が弾き飛ばされた。
彼はグルグルと回転しながら何十メートルも飛んでいき、空中でなんとか姿勢を立て直した。
光の中から現れて、まっすぐ空を突き進み、魔族に突撃した影。それは――
「……シャイニングディオーネ!?」
正義のヒロインの乱入に、アメジスティアが驚きの声を上げた。
「貴様……どういうつもりだ! まさか助け船でも出したつもりか?」
「……勘違いしないでください。あなたは私にとって……いいえ、すべての人にとって絶対に許せない敵です」
ディオーネは両目に戦意を宿し、魔族とアメジスティア、両者を油断なく見据えている。
「でも今は、あの魔族をなんとかするのが先決です……私が守るべき人々のためにも! だからお願いです、手伝ってください!」
頭も下げず、ただただストレートに自分の要求を突きつけるだけの強気の
それを聞いたアメジスティアが、血が混じった唾を憎々しげに吐き捨てた。
「……フン! 互いを敵だと思っているのが、自分だけだと思うなよ? 正義のヒロインと馴れ合うなど、虫唾が走る!」
手の中で槍を回し、アメジスティアがその鋭い切っ先を――前方にいる魔族に向けた。
「だが、事情があるのはこちらも同じこと! 癪に障るが、今は力を貸してやる……ただし、貴様が私に合わせろ!」
「……はいっ!」
突如として誕生した、光と闇の急造タッグ。
並んだ二人の戦士を前にして、魔族は愉しそうに舌なめずりをした。
「クククッ……想定外の事態だが、嬉しい誤算というものだ! これぞオレが求めていた闘争ッ!! 二人同時でかまわん、かかってこい!!」
咆哮する魔族。その両手には、闇のエナジーを凝縮させて作り出した一対の両刃斧が握られている。
「カッティングブレぇぇーーード!」
ディオーネも手の甲のクリスタルから光の剣を形成し、それぞれが三者三様の武器を構えた。
そして三人の戦士が、空中でぶつかり合う!
――ガキッ! ギャリッッ!! ガキィィィンッッ!!
「攻撃の暇を与えるな! その隙に私が、ヤツの首を!」
「ひとりで無茶をしないでください! 私たちが力を合わせれば、攻撃のチャンスは必ず生まれるはずです!」
「ヌゥゥッ!? フゥンッ! フハハハハハ、面白いッッ! 少しは歯応えが出てきたではないか!」
時に挟み撃ちによる同時攻撃、時に時間差を生かした波状攻撃を繰り返し、ディオーネの斬撃、アメジスティアの刺突が何度もヒットする。
しかし魔族の分厚い毛皮と、装甲のような筋肉を破るには至らない。
「軽いッ、軽いぞォ! それで攻撃をしているつもりか……? フンヌゥゥゥウウウウウッッ!!」
「きゃあああああああああっ!?」
「ディオーネ!? クッ……!」
逆に敵の重たい一撃は、二人の身体に確実にダメージを蓄積していく。
「フッフッフ……どうしたシャイニングディオーネ、お前の力はそんなものか? 十年の時を経て、ずいぶんと衰えたものだなぁ……ならば諦めて、このオレに狩られるがいい!!」
「まだ……まだです! 私の勝利を信じる人たちを守るために、私は絶対負けられません!」
「同意してやろう! 私にも守るべきものがある……この街のどこかに、魔王様がいるはずなのだ! この命に代えても、あの方だけは必ず守ってみせる!」
感情を露わにしたアメジスティアの叫びが、空高く響き渡った。
◆
「…………ッ!? 叔母……さん?」
大勢の人々に紛れて避難していた俺の耳に、その声が響いた。
俺は反射的に足を止めて、上空に目を向けた。
――聞き慣れた英子叔母さんの声。
どんな時でも俺の味方であり、支えになってくれた初恋の人の声。
その人が、傷だらけになりながら俺のために戦っている。
俺が本当に魔王であるならば、いまこそ
(でも、アイツは俺を……!)
ボロボロのアメジスティアを見て突き動かされる衝動と、何年ものあいだ正体を偽り、俺を騙してきたことに対する怒りと悲しみ……それらの感情がグチャグチャに混ざり合う。
自分でも何がしたいのかわからなくなり、俺が立ちすくんでいると……。
「ハァッ……ヤァァァッ!」
――ガギィィィィン!!
素早い連撃を繰り出したアメジスティアの槍が、魔族が手にしていた斧の片方を弾き飛ばした。
斧はうなりを上げて回転しながら、俺目掛けてまっすぐに――
「…………っ!!」
――ドガッッッ!!
飛来した斧は、俺のすぐ目の前……足元のアスファルトを砕き、道路に突き刺さった。
危なかった……あと一歩前にいたら、俺の身体が真っ二つに切り裂かれていたところだった。
すると、斧が飛んでいった先に気が逸れたのだろうか……一瞬こちらを向いたアメジスティアと俺の視線が絡み合った。
「――――――」
瞬間、彼女の顔がほころんだ。
姿は違えど、それは一緒に暮らし始めたころ、家出をした俺を見つけたときの叔母さんと同じ、心の底から安堵したような表情で――
「ズォォリャアアアアアアアッ!!」
「――グプッ!?」
――その隙を見逃す魔族ではなかった。
弾き飛ばされた斧の代わりに、その腕を、その手を……その先に備えた、硬く鋭い巨大な爪を、素早く突き立てる。
爪はアメジスティアの腹に入り――背中まで一気に突き抜けた。
「おばさぁぁぁーーーーーーーーーーーん!!!!!」
俺はあらん限りの声で叫んだ。
……しかし周囲の喧騒にかき消され、三人の耳には届かない。
手足をブランと垂らし、脱力したアメジスティア。
魔族は彼女の腹から腕を抜いて頭をつかむと、興味を失ったおもちゃを捨てるように、人形のようなその身体を無造作に放り投げた。
「叔母さん! 叔母さんっっ!」
遠くへ投げ捨てられ、ビルの向こうへ消えていくアメジスティアの姿。
「頼む、どいてくれよ! おばさぁぁーーーんッッッ!!」
俺は人の波をかき分け、彼女が墜ちていった方角に向けて全力で駆け出した。