※この作品はR-18です。

金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~   作:johnny内藤

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第7話-3

 

 ◇

 

 ――そして現在。

 

「…………魔宝石」

 

 曜が手にさげた石を見て、陽花梨が重々しく口を開いた。

 

 曜はネックレスを上着の中に戻し、先ほどから変わらぬ淡々とした口調で言う。

 

「この石は、俺が産まれたときから傍にあったらしくてな……これこそが、俺が人間じゃないってことの証だろ?」

「黒河くん……それじゃあやっぱり、あなたは……」

「ああ、名実ともに人間の敵らしい。……それに、その人間に味方するお前のな」

 

 彼のきっぱりとした物言いに、陽花梨が一瞬だが泣きそうな表情を浮かべる。

 

「そんな……っ! 私は、黒河くんと戦いたくなんて……!」

「甘えるなよ。絶対に守るって決めたんだろ? どんな目に遭わされても、どんな痛い思いをしてでも……お前を簡単に裏切って、表面上の感謝しかしないゴミみたいな人間たちを」

「…………私は、感謝がほしいわけじゃありません」

 

 陽花梨は精一杯虚勢を張り、悲しみを悟られぬよう固く拳を握りしめる。

 

「まあ、すぐにわかる時がくる。人間っていうのが、お前が思ってる以上にクソで、救う価値なんかないヤツらだってことが」

「黒河くん……それでも私はみんなを守り、命を助けたいです。……それに、あなたの心も」

「……優等生のくせに、やっぱりとんでもないバカだな」

 

 最後にそう言い捨てて、曜は陽花梨を残して教室へと戻っていく。

 

 込み上げてくる涙を強い心で抑え込み、陽花梨も一足遅れでその背中を追うように廊下を後にした。

 

 

 ◆

 

 ――その日の放課後。

 

 とある郊外の街を選び、俺はダークアメジスティア――英子叔母さんが本来持つ、魔族としての姿――と共に、彼女の力を借りてそこへ転(・)移(・)した。

 

「便利だね、『影から影に移動する術』。……必死に自転車こいで、遠くの街まで駆けつけてたのがバカらしいや」

「フフ……練習なされば、魔王様もすぐ使いこなせるようになりますよ」

 

 高いビルの屋上に立ち、町並みを見渡す……。人通りはそれなりに多いものの、企業が撤退したビルやシャッターの降りたテナントも多く目につく。

 

 ……まあ魔王として初めての仕事をするには、これくらいの規模の街の方がちょうどいいだろう。

 

「……しかし、息苦しいなコレ。正体を隠すなら、絶対に外すわけにはいかないんだけどさ……」

 

 人間の姿しか持たない俺は、アメジスティアのアドバイスにより、闇のエナジーから作り出したマスクとマントを装着している。

 

「お似合いですよ、魔王様……♡」

 

 自ら率先してそれをデザインしたアメジスティアが、胸の前で両手を握ってうっとりと目を細めている。

 

 俺的には、いかにも「悪者です」感が強すぎて若干ダサ……いや、せっかくアメジスティアが用意してくれたのだ。これ以上は思うまい。

 

「じゃ、さっそく始めようか……アメジスティア、まずはあそこの廃ビルを壊してくれる?」

「廃ビル……ですか? どうせ破壊するなら、人が大勢いるビルのほうが効果的かと思いますが」

「いいんだよ、今日はア(・)イ(・)ツ(・)をおびき出すのが目的なんだから。あと、人死にはできるだけ避けて。特に子供は絶対巻き込まないように」

「ハ……。しかしいずれこの世界に侵攻する同族のためにも、ひとりでも多く殺したほうが都合がいいのでは――」

 

 ――ガシッ!!

 

「ぅぐッッッ!?」

 

 俺の指示に疑問を呈したアメジスティア。

 

 次の瞬間、俺の腕が彼女の首に伸び、その身体を10センチほど浮き上がらせた。

 

「……何か勘違いしてない? たしかに俺は人間の敵にはなったけど、魔族の味方になったってわけでもないんだ。十年前に俺が住む街を焼いて、家族を殺したこと。忘れたわけじゃないから」

「ぐッ……ガッ……!? ま゛……まお……っさま……ッッ!」

「アイツとの一件が片付くまでは共同戦線を張るけど、そこから先はどうなるかわからない。だからまあ、それまではせいぜい俺の機嫌でも取っててよ」

 

 首の肉にめり込ませていた指を離すと、着地したアメジスティアがわずかによろめき、赤いものが混じった咳をした。

 

「ゲホッ! ゲフッ……! しょ……承知しました、魔王様の思うとおりに。で、ですが完璧にお望みに応えられるかは……」

「ああ、善処してくれたらいい。やれる範囲でね」

「ハッ!」

 

 やがて俺たちの存在に気づいたのか、周囲の人々がこちらを見上げてザワつき始める。

 

「さあ、魔王様……最初が肝心ですよ?」

「わかってるって……あー、コホン」

 

 アメジスティアに促され、俺はマスクの下でひとつ咳ばらいをした。

 

 そして空を切るように腕を横なぎに払い、わざと大げさな口調で叫んだ。

 

「愚かな人間たちよ! 我が名は魔王オブジディア! この世界を手中に収めるため、永き眠りから目覚めた破壊者だ!」

 

 ビルを囲む群衆のどよめきが、いっそう強くなった。

 

「もはや貴様らには絶望の未来しかない……助かりたくば、貴様らが信奉する正義のヒロインとやらに祈ってみろ!」

 

 用意していたセリフを最後まで言い切り、俺は腕を下げた。

 

(……ちょっと芝居がかりすぎたかな?)

 

 言ってから後悔した。しかし――

 

「魔王様……ご立派です……♡」

「やめてよ……マスクがなかったら、まともに顔を上げていられないくらい恥ずかしいんだから」

 

 アメジスティアは先ほどと同じポーズで、子供のお遊戯会を見守る母親のように目を潤ませていた。

 

 その隣で、俺は誰に知られることもなく、顔を真っ赤に染めていた。

 

 

 ――やがてアメジスティアが、俺の命令を実行に移すべく飛び上がった。

 

「……一応聞いておくけど、お腹の傷はもういいの?」

「ご心配なく……魔王様から賜った信頼とエナジーにより、あれしきの傷、とっくに治してしまいました」

「それならいいけど……ま、気を付けて」

 

 その言葉に凛とした微笑みで返し、アメジスティアが廃ビルへと向かっていく。

 

「さあ逃げろ、逃げ惑え! 己を守る力も持たぬ人間どもよ!!」

 

 アメジスティアが槍を振るうと、破壊力を伴った闇のエナジーが、斬撃の軌跡を描いて放たれた。

 

 それは廃ビルの壁を削り、柱を砕き、建物全体をぐらつかせる。

 

 先ほどの演説が効いたのかは定かではないが、すでに群衆は避難を始めており、周囲に人の影はまばらになっている。

 

 その後もアメジスティアが順調に破壊を続け、いよいよビルが崩落すると思われた……その時。

 

「そこまでです! ダークアメジスティア!」

 

 遠くの空から、光の尾を引きながらこちらに近づいてくる飛翔体。

 

 それは間違いなく――

 

「来たな、シャイニングディオーネ!」

 

 ……そう。変身を終え、この街に駆け付けた姫菱だ。

 

 そのコスチュームは以前と同じ輝きに満ちていて、人間たちの手で無残に破られた痕跡は残っていない。

 

 高速で接近するディオーネを迎え撃つべく、アメジスティアが切っ先を向ける。

 

「はぁぁぁっ……! カッティングぅ、ブレぇぇード!」

 

 それに呼応するように、ディオーネもまた光の剣を生成する。

 

 そして二人が刃と刃を合わせようとした刹那――

 

 ――ババババババババッ!!

 

「…………っ!?」

「ま、魔王様……!?」

 

 俺は空を飛んで両者の間に割って入り、ガラスのように固めて圧縮した闇のエナジーを盾に、ディオーネの剣を防いだ。

 

 闇のエナジーで作られた障壁と、聖なるエナジーで作られた刃……相反するエナジー同士が互いの領域を侵食し合い、激しい音と明滅が繰り返される。

 

「――っ、く……っ!」

 

 やがてディオーネが、弾かれるようにその場から飛びのき距離を取る。

 

「その強力なバリアー……あなたは、いったい……!?」

「思ったより早かったな。あんな目に遭ってもまだ人間を守りたいって言ったのは、嘘や強がりじゃなかったんだ」

 

 仮面の下で漏らした俺の言葉に、ディオーネは表情を凍らせた。

 

「……っっ!? そんな……黒河く――」

「あー……一応、この場では魔王オブジディアってことで通してくれるか? 正体を知られたくないって点では、お互い事情は同じだろ?」

「……へっ? えっ? そ、そうですね……それは、まあ……」

 

 一瞬、言いくるめられたように目をそらしたディオーネ。

 

 しかしすぐに戦意を込めた瞳で俺を見つめ直した。

 

「くろ……っ、ま、魔王オブジディア! あなたは、本気でこの世界の人たちを……!」

「ああ。苦しめ苦しめて、苦しめ抜いて追い詰める。嫌だっていうなら、俺を殺してでも止めてみろよ」

「……っ!! そ、そんなことできません! できませんけど……私は私なりのやり方で、あなたを必ず止めてみせます!」

 

「ハッ! 貴様ごときが魔王様を止めるだと……? 面白いッ! やれるものならやってみろ!!」

 

 その時、俺の後ろにいたはずのアメジスティアが、ディオーネの頭上から奇襲を仕掛けた。

 

「くっ……!!」

 

 ――ガキィィィィィン!!

 

 咄嗟に剣を構えたディオーネがそれを受け止めるが、体勢を崩してしまう。

 

 それを見逃さず、アメジスティアが槍を続けざまに突き出し、息もつかせぬ連続攻撃を仕掛ける。

 

「そらそらそらそらッ! 思い上がるな、まだ未熟な小娘の分際で!」

「ぅくっ……! ぐっ……!」

「先日はやむを得ず共闘という形を取ってやったがな……馴れ合いはあの日限り! 今日こそは貴様に引導を渡してやる!」

「そ、それはこっちも同じです! あなたみたいな魔族には、私は絶対負けません!」

 

 激しく打ち合う二人。

 

 俺はそれ以上干渉せず、戦いの成り行きを見守っている。

 

 ……その時。

 

 ――ズゴゴゴゴゴゴ……!!

 

「…………っ!?」

 

 自重を支えきれず、廃ビルが轟音を立ててついに崩れ去った。

 

 ディオーネは一瞬そちらに気を取られる――それは彼女にとって致命的な隙となった。

 

「どこを見ている! くらえッ、アメジストエクスキューション!!」

 

「……っっ!? きゃああぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

 アメジスティアの槍から放たれた極太の闇の光線が、ディオーネを飲み込んだ。

 

 黒き破壊の光を全身に浴び、彼女はそのまま地面に墜落していく。

 

 それを追うように俺たちも地上へと降り立ち、身動きが取れないディオーネを見下ろす。

 

「ぅ……うぅぅぅっ……!」

 

 ディオーネがうめき声をあげ、頭を振っている。

 

 全身を地面に強く打ち付けたようだが、命に別状はなさそうだ。

 

 しかしダメージは甚大なようで、もはや戦闘に使えるほどのエナジーは、彼女には残されていないだろう。

 

「決着か……アメジスティア」

「ハッ、魔王様……手はず通りに」

 

 俺が顎で合図すると、アメジスティアがうやうやしく頷いた。

 

「わ、私をどうするつもりですか……?」

「言っただろう? 人間なんて守る価値がないってこと、たっぷり教えてやるって」

 

 ディオーネの疑問に、俺がそう答えた瞬間。

 

「――――っっ!?」

 

 ディオーネが地面に触れている箇所……正確には彼女の影が、泥のように粘性を帯び、その身体を飲み込み始めた。

 

「こ、これはっ……!?」

「フフフッ……光栄に思うがいい、シャイニングディオーネ。魔王様のご命令により、貴様を我が世界に招待してやろう」

「あなたの世界って……ど、どういう意味ですか、アメジスティ――っっ」

 

 アメジスティアが念じると、俺たちの影もまた同様に、底なし沼のようになる。

 

 三人はそろって影の中に沈んでいき……やがてその場所には誰もいなくなった。

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