金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
(い……
闇のヒロインに姿を変えた母親という思わぬ存在……そしてその口から告げられたとんでもない言葉に、ディオーネの脳内の情報処理が追い付かず、完全にパニックに陥っていた。
そんな娘の頭を、当の母の言葉が現実に引き戻す。
「数年前、あなたに使命と力を託して以来……私はほとんどのエナジーを失って、普通の主婦として過ごしてきたわ。でも、そんな私に魔王様は新たな力をくれたの……それがコレ」
そう言うとブラックディオーネは、先ほど変身したときに使っていたアイテムを娘に見せた。
「ま……魔宝石……?」
そう……母が手にしていたのは、闇のエナジーを含んで黒く染まった宝石。シャイニングディオーネが持つ聖輝石とは対をなす、魔界の石だった。
それだけじゃない。母の中に残っていたわずかな聖なるエナジーが、闇のエナジーに侵食されて今にも消えかかっているのが、娘の目にははっきり見えている。
「私、気づいてしまったの。このまま人間として生きていても、満たされない想いを抱えたまま一生を終えていくだけ……だったら魔王様に従って、オンナの悦びを味わいつくしたほうがいいんだって」
「お母さん……そ、それは違うよ! だってお母さんはすごく立派な正義のヒロインで、私がずっと憧れてた人で……絶対に
「……いいえ、シャイニングディオーネ。間違っているのはあなたの方。だって私は……あなたが思っているほど、立派なヒロインじゃないもの」
ブラックディオーネは横目で魔王を見つめた。
その目には強い罪悪感が宿っており、脳裏にはこの十年間何度となく夢に出てきてうなされた、
「だから、ね? あなたにも教えてあげる……魔王様に忠誠を誓うことが、私たちにとってどれだけ幸せなのかってことを!」
「お母さ――っっ、くっっ!?」
――ギュンッ!!
ブラックディオーネが地を蹴ると、彼女の身体は一瞬で加速し、娘に向かって弾丸のように突進した。
その強烈な脚力で踏み抜かれたコンクリートが砕け、彼女が立っていた地面に穴を空けている。
――ガィィィンッ!
「くっ……ぅぐっ……!?」
すんでところで腕を上げ、そこに込められた聖なるエナジーで、母の突進をガードしたディオーネ。
人の身体から出たとは思えないような金属質の音を響かせて、数十メートルもの距離を弾き飛ばされ、商業施設の屋上から空中へと放り出される。
「――はぁぁぁぁぁっ!!」
ブラックディオーネは突進の勢いそのままに娘を追いかけ、自身も宙に身を躍らせた。
――ガガガガガッ、ガチンッ! ガキッ! ガィイイィィィィンッッ!!
そして繰り出される拳の乱打。聖なるエナジーと闇のエナジーが高速でぶつかり合い、空中で火花のように輝く粒子をまき散らす。
「お……お願いっ、目を覚まして! お母さんは、黒河くんたちに操られているだけで……!」
「あらあらダメよぉ、教えたでしょ? 変身中は、正体を明かすような言動はマナー違反……正義のヒロインの基本中の基本よ? たとえ魔王様相手でも、それは同じこと――♪」
――バキィィィッ!!
「きゃあぁあぁぁっ!」
ブラックディオーネが身体を斜めに回転させ、体重とエナジーを十全に乗せた蹴りを振り下ろす。
連撃によって消耗していた聖なるエナジーのガードを破られ、ディオーネはそれをまともに浴びてしまう。
「まだまだっ――これで終わりじゃないわよ?」
猛スピードで道路へと落ちていく娘に追撃をかけるため、ブラックディオーネが急降下する。
「ぅくっ……え、えぇぇーーーいっ!!」
ディオーネはギリギリで態勢を立て直して、アスファルトに叩きつけられる直前で旋回。地面への激突だけはなんとかまぬがれた。
……次の瞬間。
――ドッゴオオオォオオオオォォォォォォン!!
「ひぁっ……あああぁああああああっっ!?」
道路が激しく爆ぜた衝撃に煽られて、ディオーネはそこからさらに数メートルほど吹き飛ばされた。
もうもうと立ち込める砂煙。彼女が落下してようとしていた地面の中心に、アスファルトに拳を叩きつけ、深さ数十センチほどのクレーターを作っていた母の姿があった。
「……ふぅ。まあこんなものかしら? あの頃と比べると、さすがに衰えたわねぇ」
わずかに痛む拳をプラプラと揺らしながら、ブラックディオーネが独り言ちる。
「お……おかあ……さん……」
その桁外れのパワーを目の当たりにした
「――フフッ。さすがはかつての我がライバル……と、言っておくとしましょうか」
「だな。まさかあんなのを相手にしてたなんて……ご苦労さま、アメジスティア」
二人のディオーネの攻防をビルの上から眺めながら、魔王とアメジスティアがそんな言葉を交わしていた。
失った力を闇のエナジーによって補われ、全盛期に引けを取らない強さを見せるブラックディオーネ。
対して、敬愛する母が敵に回ったことに動揺し、本来の力の半分も出せていないシャイニングディオーネ。
そのうえ母を説得しようとしてろくに手も出せないでいる娘を、ブラックディオーネは苛烈なまでに容赦なく攻め立てている。
――結果は火を見るより明らかだ。
「はぁぁぁああああああああっ!」
――ドゴォォォォォォンッ!!
「きゃあああぁぁぁぁぁぁっっ!?」
ブラックディオーネの飛び蹴りが直撃し、シャイニングディオーネは無人のビルの壁を突き破り、建物の中へと吹き飛ばされた。
「もう、仕方ないわねぇ……いくら相手が私だからって、こうも手を抜いたら勝てるわけないでしょう?」
「お……おかあ、さん……」
一歩、また一歩と近づいてくる母に向けて、ディオーネが手を伸ばす。しかし、すでにその腕からは力がほとんど抜けきっており、プルプルと震える指先を頼りなく宙にさまよわせているだけだ。
「おねがい……目、を……いつもみたいなやさしい、おか……さんに……」
「……やれやれ。意志が強いのはあなたのすごくいいところなんだけど、頑固すぎるのも考えものなのよねぇ」
それでもまだ母に対して目を覚ますよう呼びかける娘の姿に、ブラックディオーネは困ったようにため息をついた。
「しょうがない……これでもくらって、少し頭を冷やしなさい?」
「おか――っ」
そう言うと、ブラックディオーネは娘に拳を向けた。
その先端には、ディオーネが手の甲に備えたそれと同じく、内部で闇のエナジーを加速させているクリスタルが――
「――シャインブラスターッ!」
「…………っっ!?」
――ッッッ、ドオオオォォオオォォォォォォォンッッ!!
ブラックディオーネが叫ぶと、クリスタルからシャイニングディオーネと同じ――しかし色と性質は正反対の、闇の破壊エネルギーが放たれた。
至近距離から撃ち込まれた漆黒の光線は、一瞬にして娘の身体を覆い尽くし、周囲の建物ごと飲み込んでいく――
「……決まったようですね」
「ああ……先に人払いを済ませておいてよかったよ」
地面に大穴を空けるほど激しいエナジーの奔流を眺めながら、二人が呟いた。
――そんな彼らが待つ屋上に、ブラックディオーネがゆっくりと空中を浮遊してくる。
「お疲れさま。……でもちょっとやり過ぎじゃない?」
「いえいえ。美人で出来のいい自慢の娘ですが、まだまだ甘いところがあって……再教育するのに、ちょうどいい機会でした」
魔王の問いかけにブラックディオーネが答えると、アメジスティアは面白なさそうな顔で噛みついた。
「なんだ、美人だの出来がいいだの……少しは謙遜するというのが、この国の母親の美徳ではなかったのか?」
「あら、それを言ったらお宅の曜くんだって……」
「うちの曜様は、どこへ出しても恥ずかしくない立派な子だ! 貴様のところの小娘などと一緒にするな! ……いや、どこへも出してたまるか! 曜様は一生私が御世話を焼き、共にいるのだ!」
「まあ……こんなにうるさい叔母さんがいたんじゃ、家にいても気が休まらないわよね。曜くん、よかったら今日からうちの子になる?」
「殺すぞ貴様ァァァッッ!!! いまここで、かつての決着をつけてやっていいのだぞ!?」
「………………」
魔王はその光景を、仮面の下のアホらしそうな表情で静観していた。
なぜかアメジスティアと激しく対立し始めてしまったブラックディオーネ。
ビルに降り立った彼女の豊かな胸の中には――
「…………ぅ……ぅぅぅん……」
ボロボロのコスチュームに包まれて気を失っている、シャイニングディオーネが抱きかかえられていた。