金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
◇
――カチャカチャ……カチャ……
母と娘が向かい合わせに座る、姫菱家の食卓。
「………………」
「………………」
しかし普段のような和気藹々としたやり取りはなく、代わりにフォークやナイフが食器に当たる音だけが、寒々しくリビングに響いていた。
「ね、ねえお母さん。今日のポテトサラダ、すっごくおいしい!」
「……え? あ、ああっ、そうね……ありがとう……」
「………………」
「………………」
――カチャ……カチャ……
こうしてまた無言の時を過ごす母娘。
……先日の戦いから帰還して以来、二人はずっとこの調子だった。
魔王によって仕組まれた罠にかかり、母娘ともども痴態をさらけ出したあの日……。
あれからというもの、純玲は毎日の家事を義務のようにこなしてはいるものの、娘とまともに目を合わせることもできず、ふさぎ込んだままだった。
偽物のペニスだったとは言え、暴走させられた性欲に負けて娘を犯し、何度も何度も精を注いだことを激しく後悔している純玲。
そんな母に、むしろ陽花梨の方が気を遣い、明るく振る舞っている始末だ。
「………………」
――だが、いつまでもこのままじゃいられない。
陽花梨はもう一度母と正面から向き合うため、決意を込めてフォークを置いた。
「ねえ、お母さん……前も言ったけど、あのことは本当に気にしなくていいから」
「………………」
「あれは仕方なかったことだから。それにお母さんも私も、こうして無事に帰ってこられたんだから……ね? 忘れよ?」
ニコリと自然な笑みを浮かべ、母にそう告げる陽花梨。しかし――
「……無事なんかじゃ、ないわよ……」
「…………えっ?」
目を伏せた母が絞り出すように漏らした言葉に、陽花梨がキョトンと口を開いた。
「だってそうでしょう? 陽花里の中にある、明るくて純粋な聖なるエナジー……それを汚されて、闇の力に付け入る隙を与えて……。しかもそれをしたのが私だなんて、忘れられるわけないじゃない……」
「そ、それは……」
「正義のヒロインだったころの力を利用されて、娘の足まで引っ張っちゃって……お母さん、もう陽花梨に顔向けできないわよ……」
そう。帰宅後ブローチを確認すると、黒い部分はさらに拡大し、聖輝石の四分の一ほどが闇のエナジーに覆われていた。
かつては純白だったその輝きが失せてしまったことに、純玲は大きな責任を感じているようだ。
「で、でも、あれは無理やりさせられたことで……それに私の中に入ってきた闇のエナジーは、時間をかければいつかは浄化できるし……」
「そんなのただの言い訳に過ぎないわ。理由はどうあれ、お母さんが許されないミスをしたことには違いないもの……。それに、解放されるまでに時間がかかったからかしら……私に植え付けられた闇のエナジーは、残っていた聖なるエナジーとひとつになって、この身体の中にいまでも残り続けているの」
そう言って、純玲が自分の下腹部にそっと手を当てた。
陽花里がその部分に目を凝らすと、聖なるエナジーと闇のエナジーが母の中で混ざり合い、細かいマーブル模様の塊になっているのが感じ取れた。
「ここまで複雑に融け合ってしまったら、もう浄化もできないみたい……私は一生、光でも闇でもない矛盾したエナジーを抱えながら生きていくの。……ね? こんな中途半端な人間、陽花里のお母さんとしても、正義のヒロインの先輩としても相応しくなんか……」
「そ……それは違うよっ!」
陽花里が叫んで、母の言葉をさえぎった。
そしていきなり立ち上がってテーブルの上に身を乗り出し、驚いたような表情を浮かべた純玲の手をギュッと握り締める。
「たとえ力を失くしちゃったとしても、お母さんの教えは私の中にずっとあるもん! 私はお母さんがシャイニングディオーネだったから、同じ正義のヒロインになろうと思ったの! 身体の中に二つのエナジーがあったって関係ない! お母さんは、ずっと尊敬できる私のお母さんで……憧れのシャイニングディオーネなんだから」
「…………陽花梨ぃ……」
母の瞳をまっすぐ見つめ、少しも迷うことなく言い切った陽花梨。
あまりにもストレートな励ましを受け、純玲の目にいままで堪えてきた涙がにじんだ。
「ごめんね……お母さん、あんなに格好悪いところ陽花里に見せちゃったのに」
「あ、あははは……だからそのことはもういいって、お互い様なんだし。私も、できるだけ忘れるようにするから」
「ぐすっ……。そうね、ありがとう……」
久しぶりに母が浮かべた笑顔を見て、陽花梨は安心したように腰を下ろした。
もちろん完全に忘れることなど不可能だろう。しかし母娘はどちらも互いを恨んだりはせず、あの一件を水に流すことにしたようだ。
「…………それで、陽花梨。魔王の正体についてなんだけど……」
「うん、わかってる。いままで黙っててごめんね? あの人は私の――なんて言うか、すごく気になって、危なっかしくて……放っておけない人で……」
「そうみたいね……。あの子がああなったのも、私のせいであるところが大きいみたいだし……」
魔王と自分たちの関係について、一度も話したことはないものの……ある程度のことなら、二人にはすでに察しがついていた。
「……ね、お母さん。教えてくれる? お母さんの口から聞きたいの……
「ええ、そうね。こうなった以上、黙っているほうが落ち着かないもの」
陽花里の問いかけに、純玲が覚悟を決めたような顔をして重い口を開く。
――こうして母は初めて娘の前で、かつて自分がとある街の一家を見殺しにしたことを。
――娘は、自分のためにクラスメイトが魔王となってしまったことの経緯を、それぞれ告白するのだった。