金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
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「変身っ! ダイヤモンドパワぁーーー……クリービングぅぅ!」
とある休日の昼下がり。白い雲が漂う夏の空に、快活そうな声が響き渡った。
――ミ~~~ンミンミンミンミン……
どこからかセミが鳴いている声が聴こえてくる。
ここは都内にある姫菱家の、手入れが行き届いた小さな庭。真っ白なワンピースに身を包んだ少女が、細い手足をパタパタとせわしなく動かして、ちまたで話題の正義のヒロインの変身ポーズを真似している。
少女の名前は姫菱陽花梨。この家の一人娘だ。
陽花梨はまだあどけなさが残る顔に満面の笑みを浮かべて、ポーズが完璧に決まったことの喜びを噛みしめている。
育ちがよくて勉強もでき、大人しく控えめな性格の陽花梨。しかしシャイニングディオーネごっこをする時は話が別だ。
同世代の友達の前で見せる遠慮がちな振る舞いが嘘のように、明るく活発な一面を覗かせる――
そんな陽花梨を見守っているのは、若いながらにして一児の母である姫菱純玲。庭先に置かれたガーデンテーブルに肘をつき、娘の雄姿をニコニコしながら眺めていた。
近所の人の目には、楽しくごっこ遊びに興じる仲睦まじい母娘……といった光景に映るだろう。
しかしその実体は
「くらいなさい! 必殺ぅ……カッティング、ブレぇぇ~~~ドぉっ!」
――スパッ!
キリッと表情を引き締めた陽花梨が腕を振るうと、母が練習用に木の枝から吊るしてくれていた革製のボールが真っ二つに裂けた。
「わぁ……っ! できたっ! できたよぉ~、ママっ♪」
空気が抜けてペラペラになったボールを見て、陽花梨が目を輝かせて母のもとへと駆け寄った。
純玲は胸に飛び込んできた娘の身体を受け止めて、愛おしそうにその頭をなで回す。
「ふふっ、陽花梨は上手ねぇ。まだ小さいのに、もう聖なるエナジーを使えるようになったなんて」
娘の胸できらめいているのは、純白に光る聖輝石を埋め込んだブローチ。母がシャイニングディオーネとして活動する際に使用する、パワーを引き出すためのアイテムだ。
そのサポートを受けているとはいえ、物理的に外部へ作用するほどのエナジーの片鱗を、早くも見せ始めている陽花梨。そんな娘の天才とも言える素質に、純玲は驚きと誇らしさを感じていた。
「でもいくら才能があるからって、この力を悪いことに使っちゃダメよ? 聖なるエナジーは、人々が幸せになれるように使わなきゃいけないの」
「うんっ、わかってる。ママがいつも言ってるもんね! ひかり、大きくなったらこの街のみんなを守ってあげるんだ~。おとなりのおばちゃんもおじちゃんも、コウも大好きだもん♪」
コウというのは、姫菱家の隣に住む夫婦が飼っているジャーマンシェパードの名前だ。
小さな陽花梨にとっては、まだこの町内こそが世界のすべて。まずは顔見知りのご近所さんを救うため、正義のヒロインになることを夢見ている――
(……私も最初のころはこうだったわね)
純玲は先代のシャイニングディオーネであった自分の母とのやり取りを思い出し、なんとも言えない懐かしい気持ちになった。
――ミ~~~ンミンミンミンミン……
「ねえねえ! ひかりも変身したら、ママみたいにいろんな必殺わざを使えるようになる?」
「う~んと……それはちょっと考え方の順番が逆かもね。変身したら必殺が使えるようになるんじゃなくて、変身できるほどに強力なエナジーをその身に宿していれば、技はおのずとついてくる……そんなところかしら?」
「……??? うんっ、わかった! ひかりも早く、ママみたいなかっこいいせーぎのヒロインになりたいな~♡」
何もわかっていなさそうな陽花梨は無邪気な笑顔を浮かべたまま、母の豊かな胸に顔や頭をこすり付けて甘えている。
いずれ母の力と使命を受け継ぎ、戦いに身を投じる運命の陽花梨。
そんな娘に、純玲は心からの信頼と頼もしさを抱いていた。この子なら自分以上の戦士になれる。この子なら、歴代シャイニングディオーネが成し遂げられなかった悲願……魔族の手から人類を救い出すことも夢じゃない。
……同時に、大切な陽花梨が危険な目に遭ってほしくないといった想いも――
そんな複雑な親心を抱えながら、純玲はまだまだ小さなその背中を優しく撫でてあげる。
「ねえねえっ、ママもやって? シャイニングディオーネのかっこいいやつ!」
「え、ええっ? ママはいいわよ……人に見られたら恥ずかしいし」
「なんでー? いつもみんなの前でやってることでしょ? ねっねっ、いいから早く早くっ♪」
元気にはしゃぐ娘に手を引かれ、純玲が庭の真ん中までやってくる。
「も、もう、しょうがないわね……こほんっ」
そしてわずかに頬を染め、庭の前を通る人がいないことを確認すると――
「悪は絶対許さない! シャイニングディオーネの勝利よ!」
娘の前で、恒例の勝ち名乗りを披露した。
陽花梨は頬を紅潮させ、大興奮でピョンピョンしながら両手を打ち鳴らしている。
「わぁ~~~っすご~~~い! にてるにてる!」
「に、似てるはおかしいでしょ? 一応、ママ本人のことなんだから……」
「ひかりもひかりも! 悪はぜったいゆるしません……シャイニングディオーネの勝利です!」
そして母の隣で同じポーズを決める、未来のシャイニングディオーネ。
その姿にクスクスと笑い、現役のヒロインである純玲が指導を与える。
「ほらほら、そんなに背骨を曲げていたら格好よくないわよ? もっと顎を引いて、背筋を伸ばして……」
「えっと……こう?」
「うん、そうそう。正義のヒロインっていうのは、人々にとっての希望のシンボルなんだから。ただ強いだけじゃなくいつでも可憐に輝いて、みんなからの支持を受けなくちゃいけないの」
「ママ、いっつもキラキラしてるよ?」
「ふふっ、ありがとう。陽花梨もいつかそうなれるといいわね……ほら、また背中」
そしてだんだん熱が入り始めてきた純玲は、娘に必殺技の動作も指南してあげることに。
「いくわよ……必殺! シャインブラスターッ!!」
「シャイぃぃン、ブラスターぁぁぁーーーっ!!」
「ちがうちがう、そうじゃないでしょ? そんな風に間延びした叫び方じゃなくって、もっと歯切れよく。シャインブラスターッ!」
「シャイぃぃぃん……ブラスタぁぁぁ~~~~!」
「う~ん……力めば力んだ分だけ、気が抜けた感じになっちゃうのよねぇ。ま、優しい陽花梨にはこっちのほうがお似合いかもしれないけど」
エナジーに関しての才能はともかく、性格面ではどうも戦いには向いていなさそうな陽花梨。
正義のヒロインになるには、まだまだ課題が山積みだ……と、純玲は苦笑いを浮かべるのだった。