※この作品はR-18です。

金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~   作:johnny内藤

67 / 127
第13話-1

 ◇

 

「変身っ! ダイヤモンドパワぁーーー……クリービングぅぅ!」

 

 とある休日の昼下がり。白い雲が漂う夏の空に、快活そうな声が響き渡った。

 

 

 ――ミ~~~ンミンミンミンミン……

 

 

 どこからかセミが鳴いている声が聴こえてくる。

 

 ここは都内にある姫菱家の、手入れが行き届いた小さな庭。真っ白なワンピースに身を包んだ少女が、細い手足をパタパタとせわしなく動かして、ちまたで話題の正義のヒロインの変身ポーズを真似している。

 

 少女の名前は姫菱陽花梨。この家の一人娘だ。

 

 陽花梨はまだあどけなさが残る顔に満面の笑みを浮かべて、ポーズが完璧に決まったことの喜びを噛みしめている。

 

 育ちがよくて勉強もでき、大人しく控えめな性格の陽花梨。しかしシャイニングディオーネごっこをする時は話が別だ。

 

 同世代の友達の前で見せる遠慮がちな振る舞いが嘘のように、明るく活発な一面を覗かせる――

 

 そんな陽花梨を見守っているのは、若いながらにして一児の母である姫菱純玲。庭先に置かれたガーデンテーブルに肘をつき、娘の雄姿をニコニコしながら眺めていた。

 

 近所の人の目には、楽しくごっこ遊びに興じる仲睦まじい母娘……といった光景に映るだろう。

 

 しかしその実体はご(・)っ(・)こ(・)どころではない。純玲こそ、邪悪な魔物から人々を守るために戦うシャイニングディオーネであり、陽花梨はその血を受け継いだヒロインの卵なのだ。

 

「くらいなさい! 必殺ぅ……カッティング、ブレぇぇ~~~ドぉっ!」

 

 ――スパッ!

 

 キリッと表情を引き締めた陽花梨が腕を振るうと、母が練習用に木の枝から吊るしてくれていた革製のボールが真っ二つに裂けた。

 

「わぁ……っ! できたっ! できたよぉ~、ママっ♪」

 

 空気が抜けてペラペラになったボールを見て、陽花梨が目を輝かせて母のもとへと駆け寄った。

 

 純玲は胸に飛び込んできた娘の身体を受け止めて、愛おしそうにその頭をなで回す。

 

「ふふっ、陽花梨は上手ねぇ。まだ小さいのに、もう聖なるエナジーを使えるようになったなんて」

 

 娘の胸できらめいているのは、純白に光る聖輝石を埋め込んだブローチ。母がシャイニングディオーネとして活動する際に使用する、パワーを引き出すためのアイテムだ。

 

 そのサポートを受けているとはいえ、物理的に外部へ作用するほどのエナジーの片鱗を、早くも見せ始めている陽花梨。そんな娘の天才とも言える素質に、純玲は驚きと誇らしさを感じていた。

 

「でもいくら才能があるからって、この力を悪いことに使っちゃダメよ? 聖なるエナジーは、人々が幸せになれるように使わなきゃいけないの」

「うんっ、わかってる。ママがいつも言ってるもんね! ひかり、大きくなったらこの街のみんなを守ってあげるんだ~。おとなりのおばちゃんもおじちゃんも、コウも大好きだもん♪」

 

 コウというのは、姫菱家の隣に住む夫婦が飼っているジャーマンシェパードの名前だ。

 

 小さな陽花梨にとっては、まだこの町内こそが世界のすべて。まずは顔見知りのご近所さんを救うため、正義のヒロインになることを夢見ている――

 

(……私も最初のころはこうだったわね)

 

 純玲は先代のシャイニングディオーネであった自分の母とのやり取りを思い出し、なんとも言えない懐かしい気持ちになった。

 

 

 ――ミ~~~ンミンミンミンミン……

 

 

「ねえねえ! ひかりも変身したら、ママみたいにいろんな必殺わざを使えるようになる?」

「う~んと……それはちょっと考え方の順番が逆かもね。変身したら必殺が使えるようになるんじゃなくて、変身できるほどに強力なエナジーをその身に宿していれば、技はおのずとついてくる……そんなところかしら?」

「……??? うんっ、わかった! ひかりも早く、ママみたいなかっこいいせーぎのヒロインになりたいな~♡」

 

 何もわかっていなさそうな陽花梨は無邪気な笑顔を浮かべたまま、母の豊かな胸に顔や頭をこすり付けて甘えている。

 

 いずれ母の力と使命を受け継ぎ、戦いに身を投じる運命の陽花梨。

 

 そんな娘に、純玲は心からの信頼と頼もしさを抱いていた。この子なら自分以上の戦士になれる。この子なら、歴代シャイニングディオーネが成し遂げられなかった悲願……魔族の手から人類を救い出すことも夢じゃない。

 

 ……同時に、大切な陽花梨が危険な目に遭ってほしくないといった想いも――

 

 そんな複雑な親心を抱えながら、純玲はまだまだ小さなその背中を優しく撫でてあげる。

 

「ねえねえっ、ママもやって? シャイニングディオーネのかっこいいやつ!」

「え、ええっ? ママはいいわよ……人に見られたら恥ずかしいし」

「なんでー? いつもみんなの前でやってることでしょ? ねっねっ、いいから早く早くっ♪」

 

 元気にはしゃぐ娘に手を引かれ、純玲が庭の真ん中までやってくる。

 

「も、もう、しょうがないわね……こほんっ」

 

 そしてわずかに頬を染め、庭の前を通る人がいないことを確認すると――

 

「悪は絶対許さない! シャイニングディオーネの勝利よ!」

 

 娘の前で、恒例の勝ち名乗りを披露した。

 

 陽花梨は頬を紅潮させ、大興奮でピョンピョンしながら両手を打ち鳴らしている。

 

「わぁ~~~っすご~~~い! にてるにてる!」

「に、似てるはおかしいでしょ? 一応、ママ本人のことなんだから……」

「ひかりもひかりも! 悪はぜったいゆるしません……シャイニングディオーネの勝利です!」

 

 そして母の隣で同じポーズを決める、未来のシャイニングディオーネ。

 

 その姿にクスクスと笑い、現役のヒロインである純玲が指導を与える。

 

「ほらほら、そんなに背骨を曲げていたら格好よくないわよ? もっと顎を引いて、背筋を伸ばして……」

「えっと……こう?」

「うん、そうそう。正義のヒロインっていうのは、人々にとっての希望のシンボルなんだから。ただ強いだけじゃなくいつでも可憐に輝いて、みんなからの支持を受けなくちゃいけないの」

「ママ、いっつもキラキラしてるよ?」

「ふふっ、ありがとう。陽花梨もいつかそうなれるといいわね……ほら、また背中」

 

 そしてだんだん熱が入り始めてきた純玲は、娘に必殺技の動作も指南してあげることに。

 

「いくわよ……必殺! シャインブラスターッ!!」

「シャイぃぃン、ブラスターぁぁぁーーーっ!!」

「ちがうちがう、そうじゃないでしょ? そんな風に間延びした叫び方じゃなくって、もっと歯切れよく。シャインブラスターッ!」

「シャイぃぃぃん……ブラスタぁぁぁ~~~~!」

「う~ん……力めば力んだ分だけ、気が抜けた感じになっちゃうのよねぇ。ま、優しい陽花梨にはこっちのほうがお似合いかもしれないけど」

 

 エナジーに関しての才能はともかく、性格面ではどうも戦いには向いていなさそうな陽花梨。

 

 正義のヒロインになるには、まだまだ課題が山積みだ……と、純玲は苦笑いを浮かべるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。