金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~ 作:johnny内藤
◇
都内に張り巡らされた高速道路。
その流れに沿うように、シャイニングディオーネが弾丸のようなスピードで低空飛行していた。
「ハハハハハッ! 臆病風にでも吹かれたか、シャイニングディオーネ。逃げてばかりでは勝負にならんぞ!」
その後ろにピタリとつけ、猛追しているのはダークアメジスティア。
右手に備えたブラッタースピアで、ディオーネを刺し貫こうと狙っている。
「くっ……!」
ディオーネは奥歯を嚙みながら、周囲をうかがった。
路上には、魔王たちの出現によって避難した人々が乗り捨てていった車が点在している。
ディオーネはそれらへの被害を抑えるため、なるべく安全な場所を探していたのだが……このまま飛び続けていては、今度は逃げていった人たちの集団に追い付いてしまいそうだ。
もしそうなれば、車だけではなく、より多くの人の命が戦いに巻き込まれるかも――そう判断したディオーネは、やむなくこの場でアメジスティアを迎え撃つことにした。
「えぇぇい……っっ! シャイぃぃン、ブラスタぁぁぁー!!」
ディオーネは空中で急ブレーキをかけ、振り向きざまに飛び道具を放った。
「甘いッッ!!」
しかしアメジスティアはその動きを読んでいた。直線を描いて放たれた光の軌跡は、素早く振るわれた槍の切っ先で湾曲させられてしまった。
周囲への被害を気にして、全力を出せないシャイニングディオーネ。上空へ逃げようにも、アメジスティアはディオーネを執拗に地上へと追いやろうとしてくる……このままではジリ貧だ。
そんな心の葛藤を見抜いたアメジスティアが、ニヤリと笑って槍を向けた。
「クククッ……窮屈なものだなぁ、正義のヒロインというのは。本気で敵を倒したければ、これくらいのことはやってみせろ! アメジストエクスキューション!」
「きゃあぁああぁぁぁぁぁぁっっ!?」
黒い炎と化したエナジーが、周囲の車や道路ごと、ディオーネを吞み込んでいく。
高速道路の一部が崩れ去り、ディオーネはそのまま高架下の道路に落下してしまった。
「つっ……いたたたた……」
視界を覆い尽くすほどの砂煙。無数の瓦礫とともに道路の崩落に巻き込まれたディオーネだったが、奇跡的に怪我だけは避けられたようだ。
「さあ立ち上がれ! これくらいで死ぬような貴様ではないのだろう? さっさと起き上がって、この私に勝負を挑んでくるがいい!」
高速道路に空いた穴から見上げると、アメジスティアが上空に浮いたまま、ディオーネを挑発してた。
しかし自分の姿を見つけられたわけではなさそうだ。
「くっ……そ、それならっ!」
これはチャンス……とばかりに、ディオーネは素早く地上の道路を走る。
このままアメジスティアの背後に回り、高速道路を下からぶち破って背後から奇襲を仕掛ける。少々卑怯――かつ、被害額もバカにならなそうな作戦だが……どのみち無傷で勝てるような相手ではないのだ。何より戦いが長引けば、それだけ戦域も拡大していき、市民が巻き込まれる可能性だって上がっていく。
多少の被害は出てしまうが、人命には代えられない。ディオーネはそう決意し、頭上の高速道路を突き破るため、飛び上がろうとした――その時。
「グルルルルル……」
「…………えっ?」
砂煙の中から、突如うなり声が聞こえてきた。
視界がきかないこの状況下で、その声はこちらに向かってまっすぐ近づいてくる……。
「ガウッ!」
「……きゃあっ!?」
そして次の瞬間、黒い影が飛び掛かってきた。
ディオーネはすんでところでそれを避けたが、コスチュームの一部が、鋭い刃のようなもので引き裂かれている。
「ゥ゛ルルルルルルル……」
砂塵の中にたたずみ、威嚇の声を上げる謎の存在。
ディオーネが目を凝らすと……そこにいたのは頭を低く下げ、自分を睨みつけている四足の獣だった。
(えっ……い、犬!? なんでワンちゃんがこんなところに……?)
そう。それは体高70センチほどありそうな、大型犬に酷似した生物だった。
ピンと立った三角の耳。胴体や尻尾を覆ったフサフサの毛並み。
しかし姿かたちは狼によく似ているものの、普通の動物と違うところも多い。
目は無機質なビー玉に似た輝きを放ち、たくましい四肢は、筋繊維が剥き出しになっているかのような異形だ。
頭部などの急所、そして関節の一部分は、毛皮の代わりに装甲のような外骨格で覆われている。
「ま、まさか……魔獣っ!?」
ディオーネが慌てて身構える。最近はもっぱら魔王とアメジスティアのコンビばかりを相手にしていたせいで、魔獣が参戦してくるなどといった想定は頭から抜け落ちていたのだ。
そしてその油断は、
「ああ、その通りだ。コイツはとてもよく鼻が利くみたいでな……。お前の匂いを嗅ぎつけて、すぐに居場所を教えてくれたよ」
ようやく晴れてきた砂煙の向こうから、魔王が……それに地上に降り立ったアメジスティアが姿を現した。
魔獣は甘えるように魔王の脚に頭をこすり付けながらも、決してディオーネから目をそらすことなく睨みつけている。
「クックックッ……貴様ともあろうものが、まさか地面を這いつくばって逃げようとしていたとはな。そんなに魔王様や私の力が恐ろしいか?」
「逃げようとなんかしてませんっ! わ、私は、その……」
不意打ちを仕掛けようとしていたことに引け目を感じているのか、ディオーネが口ごもる。
そしてそんな彼女に追い打ちをかけるため、アメジスティアと魔獣が同時に攻撃をかけてきた。
「ハハハハハッ! ならば正義のヒロインらしく、正々堂々と戦って見せろッ!」
「ガルゥゥゥッ!!」
「くっ……!?」
アメジスティアの槍。そして先ほど衣装を切り裂いた魔獣の爪の連携を前に、なす術がないディオーネ。
「な、何が正々堂々とですか……二人がかりなんて卑怯ですよ!?」
「フッ……あいにくこちらは悪の侵略者なのでな。貴様のような矜持は持ち合わせてはおらんッ!」
「ぅぐっ!? つぅ……っ! な、ならっ!」
ディオーネは標的を魔王に変え、捨て鉢のように突っ込んだ。
このまま魔王に取りすがり、無理やりにでもシャイニングディオーネの世界へ連れ去る――その可能性にかけて、突撃をかけたのだが……。
「ガウゥゥゥッ!!」
――ドォォォンッッ!
「きゃあぁぁぁぁっ!?」
猛スピードで飛来したミサイルが、そのままぶち当たってきたかのような衝撃。
横から体当たりをしてきた魔獣に吹き飛ばされて、ディオーネは数メートルも先にある高速道路の
「ふぅん……たしかに便利だな。自分の身を守りたいと思ったらすぐに反応して、自動的に迎撃してくれるんだ」
「フフフッ。魔王様のエナジーが優れてるからこそ、このような優秀な
「……だから前の魔王の趣味は、俺には関係ないって」
「かはっ……! んっく……くは……ぁぁっ!」
背中を強打したディオーネは、呼吸もままならない苦しさの中で、魔王とアメジスティアのそんな会話を聞いていた。
そして気を失う前に彼女が最後に見たもの……それはビー玉の瞳を煌かせながらノシノシと自分に近づいてきて、大口を開けた魔獣の牙だった。