※この作品はR-18です。

金剛心輝シャイニングディオーネ~世界一面倒くさい魔王とヒロインの純愛(?)凌辱バトル~   作:johnny内藤

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第2話-2

 

 ◆

 

 学園がある街から、一時間ほど自転車をこいだ先にある住宅街。

 この日はそこが魔族に襲われたとSNSで知り、俺は授業が終わると同時に教室を飛び出した。

 

 

「ハァ、ハァッ……くっ……! チッ……くしょお!」

 

 手を埃まみれにして、倒壊した建物の瓦礫をひたすら取り除く。

 

 足元から聞こえてくるのは、恐怖からか激しく泣き叫ぶ女の子の声。

 

「待ってろ! 絶対助かるから!」

 

 俺は絶えずその声の主を励まし続け、一個ずつ着実に瓦礫を除けて――

 

「――ケケェェーーーーーーーッ!!」

「はぁぁぁっ……えぇぇぇぇい!」

 

 ――ガキィィィンッ!!

 

「……ッ!? くそぉっ……!」

 

 頭上で激しい空中戦を繰り広げているのは、鳥の翼を背中に備えた猛禽の魔物。それに輝く剣を携えて、生身で自由自在に空を飛ぶシャイニングディオーネだ。

 鋭いくちばしと剣が交差するたび、金属質の重たい音が辺りに響き渡る。

 

 二人がこちらに気づいている様子はない。これなら安心して作業を続けられそうだ。

 

 ……いや。

 

 それだけに、ここがいつ戦いに巻き込まれるか予想ができず、かえって危ないとも言える。

 

 俺は一刻も早く女の子を助け出すため、瓦礫をどける腕に力を込める。

 

「……ッッ、つぅっ!?」

 

 ひときわ大きな壁の残骸を持ち上げようとした時、ズルリと手が滑り、鋭い痛みが走った。

 手のひらを見ると、皮がめくれてしまっているようだ。

 

「ハァ、ハァ……ぐっ……ッ! 誰か手伝えよ! 子供がいるんだ!」

 

 安全な場所へ避難するため、背後を横切っていく何人もの大人たち。

 瓦礫に手をかけたまま、俺は助力を求める……が、彼らは我先に逃げようとするばかりで、こちらを気にする者などひとりもいない。

 

「……チぃッ!!」

 

 助けが期待できない以上、自力で何とかするしかない。

 怪我自体は、どうせすぐに治る。俺は手のひらの痛みを見て見ぬふりし、ひとりで瓦礫を除け続けていく――

 

 ……やがて幼児ほどの女の子の姿が見えてきた。

 

 よかった。これくらいの大きさなら、隙間から楽に出られそうだ。

 俺は瓦礫の間に肩をねじ込み、力いっぱい腕を伸ばしてその小さな身体を引き上げる。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……大丈夫か……? どこも痛くないな?」

 

 女の子は多少のすり傷を負ってはいるものの、骨が折れたりしている様子はないようだ。

 

「ハァ、ハァ……ははっ。頑張ったな……」

 

 俺は心底安堵し、その子の頭に手を伸ばす――

 

「ママ……ママぁっ」

「えっ?」

 

 ――しかし女の子はそんな俺に一瞥もくれることなく、自分が這い出てきた穴に必死に手を伸ばし、懸命に何かを訴えている。

 隙間から見えるのは、瓦礫に押し潰されピクリとも動かないの人間の両脚……。

 

「…………ッ……!?」

 

 どう見ても手遅れだった。

 

「……お前のお母さんか?」

 

 俺はその子にこれ以上遺体を見せぬよう、小さな身体をこちらに向けさせ、頭をギュッと抱き寄せる。

 

「…………ごめんな」

 

 そして痛くなるくらいに奥歯を噛みしめ、一言そう呟いた。

 

 ――と。

 

「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ――ドゴォォオオオオオオン!!

 

「――んなっ!?」

 

 空気が震えるような轟音。

 

 弾丸のように飛来してきたディオーネが、ここから十メートルも距離がない場所にある、建物の壁をぶち抜いた音だ。

 

 おそらく魔物と空中で激突し、弾き飛ばされたのだろう。コンクリ壁に大きく開いた黒い穴が、その破壊力を物語っている。

 

「くっ……けほ、けほっ!」

 

 パラパラと音を立てて降り注ぐコンクリートの粉を頭に浴びながら、すぐに立ち上がったディオーネが穴から顔を出してきた。

 タイトな白いコスチュームにはところどころ穴が空き、傷ついた肌が露出している。

 

「……っ、まだです! これくらい、ぜんぜん効きません!」

 

 ディオーネは空中を睨み返し、そう叫んだ。

 

 端正な横顔を痛みで歪めてはいるものの、ダメージ自体は大したことないようだ。たしかな闘志を感じさせる彼女の瞳を見て、俺はホッとため息をつく。

 

「……チッ。戦(や)るなら余所で戦(や)れよ……」

 

 だがすぐに思い直し、ついつい悪態をついてしまう。

 

「…………?」

 

 その声が届いたのか、そうでないかは定かではないが……不意にこちらに視線を向けたディオーネと目が合った。

 

「……えぇっ!? くろ……っっ!! ……ええええええ!?」

「…………???」

 

 一秒に満たないほどの時間見つめ合った後……ディオーネは驚愕の声を上げて、その場で固まってしまった。

 

(なんだコイツ……一般人が瓦礫の中で子供を助けてるのが、そんなに珍しいのか?)

 

 その不可解なほどの驚きように軽い苛立ちを覚えた俺は、ディオーネの顔を正面から睨み返す。

 

「あ、あの――」

 

 こちらに向かってディオーネが何かを言いかけた……その時。

 

「――キケェェェーーーーーーーーッ!!」

「…………ッ!? くっ……!」

 

 彼女にトドメを刺すべく、魔物が地面に向かって急降下してきた。

 

「ハッ、やぁぁっ! ……このぉっ!!」

 

 追撃への対応に追われ、ディオーネは俺たちの相手をしているどころではないようだ。

 鋭い爪やくちばしの連撃をギリギリで捌きつつ、こちらに向かって大声で叫んでくる。

 

「早く! その子を連れて、早くここから逃げてください!」

「……言われなくても!」

 

 別にあんなヤツの指示に従ったわけではないが、俺は女の子を抱えたまま、急いでその場から駆け出した。

 

 逃げた人間のことになど興味はないらしく、背後からは魔物がディオーネと打ち合う激しい音が聞こえてくる。

 

 ……危なかった。見つけるのがもう少し遅れていたら、この子は命を落としていたところだった。

 なんとか間に合ってよかっ――

 

「……ママぁ」

「………………」

 

 そうだった。俺は決して間に合ってなどいなかった。

 皮がめくれて痛みが残る手のひらを、固く握りしめる。

 

 ……次は間に合わせてみせる。これ以上、俺やこの子のような思いを誰かにさせるのは……!

 

 

 ――こうして魔族に襲われた街を巡り、戦いに巻き込まれた人をひとりでも多く助ける。

 それがいま俺が興味を持てる、唯一のことだった。

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